少額訴訟とは?利用条件や費用、訴訟の流れなど徹底解説

債権回収

この記事の監修

東京都 / 江戸川区
原田綜合法律事務所
事務所HP

「金銭トラブルを抱えているが、弁護士に依頼すると費用がかかり、かえって損してしまう…」
このような問題を解決するための方法のひとつが、少額訴訟です。

少額訴訟は通常訴訟に比べて手続きが簡易で、時間や費用をかけずに解決を図れる便利な制度です。
訴訟と聞くと難しいイメージですが、ほとんどの方が弁護士や司法書士に頼らず、自分で行っています。
この記事では、少額訴訟を利用できる条件や手続きの流れなどを詳しく解説します。
少額訴訟について知りたいという方は必見です。

▼この記事でわかること

  • 少額訴訟とは何か、利用条件や費用などがわかります。
  • 少額訴訟のメリット、デメリットがわかります。
  • 少額訴訟の基本的な流れについて説明します。

▼こんな方におすすめ

  • お金を払ってもらえず困っている方
  • 少額訴訟を検討されている方
  • 少額訴訟について詳しく知りたい方

少額訴訟とは

少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを求めることを目的とした訴訟において、原則1回で審理から判決までを終了させる簡易裁判所での訴訟手続のことです。

少額訴訟が利用されるのは、つぎのような案件です。

  • 個人間でのお金の貸し借り
  • 借主から貸主に対する敷金の返還請求
  • 労働者から雇い主に対する給与の未払い金請求
  • 事業者間の商品代金の未払い請求

ただしこうした案件であっても、後述している一定の条件を満たさなければ少額訴訟を利用することはできません。

なお少額訴訟そのものにかかる費用は、基本的に手数料(収入印紙代)、郵便切手代のみです。
少額訴訟を弁護士や司法書士に依頼する場合は、別途費用がかかります。(ただ、実際に依頼する方は少ないと思います。)

少額訴訟を利用するための条件

 

いかなる場合でも少額訴訟を利用できるというわけではありません。
少額訴訟を利用するには、一定の条件を満たすことが必要です。
以下では、その条件についてみていきましょう。

60万円以下の金銭の支払いを求める訴訟であること

債務者(金銭の支払い義務を負う人)に請求する金額が60万円以下であることが必要です。
ただ、同一の債務者に対して複数の債権(金銭の支払いを請求できる権利)を有していた場合でも、合計額が60万円以下であれば少額訴訟を利用できますし、債務者に請求できる金額が60万円を超えていても、60万円だけを請求するのであれば(一部だけを請求するのであれば)、少額訴訟を利用できます。

金銭の支払いを目的とすること

少額訴訟を利用できるのは、債務者に対して貸金、売買代金、賃金などの金銭の支払いを求める場合に限られます。
金銭の支払い義務がないことを確認すること、不動産の明け渡し、物の引き渡しなどは金銭の支払いを目的としていませんので、少額訴訟を利用することはできません。

同じ裁判所で年間10回少額訴訟を提起していないこと

年間の訴訟件数をカウントする際は、同年の1月1日から12月31日までを対象にします。
回数は裁判が開かれた回数ではなく、少額訴訟を提起した数をカウントされます。
つまり少額訴訟を提起したものの、被告の申出により通常訴訟に移行した場合でも1回にカウントされます。

少額訴訟を利用するメリット


少額訴訟を利用するメリットは以下のとおりです。

裁判に1回出廷するだけで手続きが終了する

「少額訴訟とは」の箇所でも述べましたが、少額訴訟は原則として1回の手続きで審理から判決まで進みます。
そのため、裁判のために予定を空けて裁判所に出廷する手間や負担を軽減できます。
「早期に問題解決を図りたい」という方にとってはメリットといえるでしょう。

費用を安く抑えることができる

少額訴訟にかかる費用は前述したとおり、通常訴訟と比べて申立費用が安く抑えることができます。
弁護士に依頼した場合には、弁護士費用がかかります。
ただし少額訴訟の手続きは通常訴訟と比べて簡易なため、自力で行えないわけではありません。
自力で行った場合は、弁護士費用の節約にもつながります。

財産の差押え手続きが可能となる

少額訴訟で得た確定判決謄本などを債務名義(差押えの根拠となる書面)として、裁判所に少額訴訟債権執行の申立てをすることができます。
つまり、財産の差押え手続きを取ることができるということです。
少額訴訟を提起すれば、相手から金銭を回収できる可能性を高めることができます。

少額訴訟のデメリット

次に、少額訴訟のデメリットは以下のとおりです。

控訴ができない

控訴とは、納得のいかない判決を受けた場合に、上級の裁判所に対してさらに審理をしてもらうことを求める不服申し立てのことです。
少額訴訟を提起したからといって、必ずしも請求が全面的に認められるわけではありません。
一部が認められなかったり、全部が認められない場合もあります。
そうした場合に控訴できないことは少額訴訟のデメリットといえます。

裁判所の判断で分割払いにされる、遅延損害金が免除されることがある

少額訴訟では、勝訴の判決を勝ち取ることができた場合でも、分割支払いを認める判決、遅延損害金を免除する判決となる場合があります。
通常訴訟では一括払いを命じる判決となるのが基本で、遅延損害金もつきますから、分割払い、遅延損害金がつかないという点は少額訴訟のデメリットといえます。

1回で終わらせるため、万全の準備を整えておく必要がある

1回で手続きを終了させるためには、事前に万全の準備を整えたうえで審理に臨まなければいけません。
必要な証拠はすべてそろえたうえで、主張すべき点をもれなく主張しなければならないのです。

また裁判で証人に証言してもらう必要がある場合は、つぎのような準備も進めておく必要があります。

  • その証人との打ち合わせ
  • 「証人尋問」という手続きのため、証人に時間を作ってもらう

ただし、もし被告から通常訴訟への移行の申出があった場合は、1回目の裁判では証人尋問は行われませんから、あらためて証人に時間を作ってもらう必要があります。

通常訴訟に移行し、時間や費用がかかる可能性がある

たとえあなたが少額訴訟を希望しても、被告から裁判所に「通常訴訟に移行したい」旨の申出がなされた場合は、通常訴訟に移行します。
被告が上記の申出をすることについて、特段の理由・事情は必要ありません。
通常訴訟に移行すれば、少額訴訟に比べて手間や時間、費用はかかってしまいます。

少額訴訟の基本的な流れ


少額訴訟の基本的な流れは以下のとおりです。

  1. 訴状の作成&証拠の準備
  2. 訴状の提出(訴訟の提起)
  3. 被告への訴状等の送達
  4. 原告の答弁書等の受領
  5. 追加の証拠・証人の準備
  6. 審理
  7. 和解/判決

1.訴状の作成&証拠の準備

少額訴訟を始めるために、まず簡易裁判所に提出するための訴状を作成します。
訴状は裁判所用(正本)と被告用(副本)を準備します。
訴状の書式(一部)は裁判所の「民事訴訟・少額訴訟で使う書式」に記載例とともに公開されてされており、そこからダウンロードして使うこともできます。
その他、訴状と同時に証拠書類などの添付資料も提出してください。

裁判所への手数料として、訴状には収入印紙を貼付します。
手数料の金額は、債務者に請求する金額(訴額)によってつぎのように決められます。

~10万円
1,000円
~20万円
2,000円
~30万円
3,000円
~40万円
4,000円
~50万円
5,000円
~60万円
6,000円

2.訴状の提出(訴訟の提起)

訴状は、原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に提出します。
管轄の簡易裁判所は裁判所のホームページで確認できます。

裁判所に直接提出するほか、郵送による提出も可能です。
郵送にかかる郵便切手代は、こちらで負担したうえで金額を訴状に記載する必要があります。
なお東京簡易裁判所の場合、郵便切手代は5,200円です。
郵便切手代や提出しなければならない切手の種類・枚数は、訴状を提出する裁判所によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

3.被告への訴状等の送達

裁判所に訴状を受理されたら、第1回の裁判期日が指定され、原告に書面で通知されます。
同時に裁判所は被告に訴状、期日呼出状、証拠書類を送達し、期限までに答弁書や証拠を準備して提出するよう求めます。

4.原告の答弁書等の受領

答弁書とは、訴状に対する被告の反論を記載した書面です。
被告から裁判所へ答弁書や証拠書類が提出されると、原告は裁判所を通じて答弁書等を受け取ります。
なお、被告が少額訴訟を希望しない旨(通常訴訟に移行する旨)の申述をした場合、通常訴訟に移行します。

5.追加の証拠・証人の準備

原告は答弁書を、被告は訴状を踏まえて、指定された期日までに、追加の証拠書類を準備したり、証人と打ち合わせするなどして準備を進めます。

6.審理

指定された期日に裁判所に出廷します。
審理では、準備してきた証拠書類を提出したり、証人を尋問したりします。
審理は原則として1回しか開かれませんから、そのつもりで証拠書類や証人尋問の準備を済ませておく必要があります。

7.和解/判決

被告が出席した場合ですが、少額訴訟の場合、最初のほうで裁判官から和解を勧められることも多いです。
原告、被告が和解案に合意すると和解が成立し、合意した内容が記載された和解調書が作成されます。
和解案に合意しない場合は、判決に至ります。
また、少額訴訟の場合、被告が欠席する場合も多いですから、その場合は和解の話にならず、直ちに判決ということもあります。
判決の場合は判決書が作成されます。

まとめ


裁判所を通す手続きのため、一見難しそうに感じられる少額訴訟ですが、順を追って対応していけば初めての方でも対応することは可能です。
この記事で少しでも少額訴訟について理解を深めていただければと思います。
条件に当てはまる場合は積極的に活用しましょう。

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