「債権回収を進めたい。しかし、支払督促や訴訟など法的手段に訴えるのはハードルが高い…。」
そんな悩みを抱えている方におすすめなのが、「内容証明郵便」の利用です。
本コラムでは、内容証明郵便とは何かという説明や、内容証明郵便を活用するメリット、内容証明郵便で債権回収をする流れなどについて解説します。
▼この記事でわかること
- 内容証明郵便とは何か具体的に詳しく解説します
- 債権の回収で内容証明郵便を利用するメリットが分かります
- 内容証明郵便を利用した債権回収の流れが分かります
▼こんな方におすすめ
- 債権の回収をしたいが、どうすればいいか分からず悩んでいる方
- できれば法的措置をとらずに、債権の回収をしたいと考えている方
- 内容証明郵便を利用したいが、具体的な活用方法が分からないという方
「内容証明郵便」とは?どんな効力がある?
まずは、内容証明郵便の仕組みと、内容証明郵便を送ることで得られる効果について説明します。
内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、文書の内容について郵便局に証明してもらったうえで郵送できる郵便のことです。
送った文書のコピー(謄本)を郵便局が保管し、「いつ」「誰が」「誰に」「どんな内容の文書」を送ったかを証明する仕組みになっています。
一方で普通郵便は、上記のような証明が一切できません。
特定記録や書留であれば「いつ」「誰が」「誰に」郵便を送ったかどうかは証明できますが、「どんな内容の文書」を送ったかの証明はできないのです。
法的に重要な文書を送る際には「どんな内容の文書」を送ったかの証明ができないと、後に裁判になったときに不利になる可能性があるため、内容証明郵便で送ることが必要になります。
債権回収に限らず、契約解除の通知をする場合や損害賠償の請求をする場合など、「郵便物の内容を記録として残しておきたい」というケースで多く利用されます。
債権回収における効果
債権回収の際に内容証明郵便を利用すると、具体的に以下のような効力が見込まれます。
- 弁済を促すことができる
- 督促をした証拠になる
- 時効を一時的に止められる
- 債務不履行にできる
弁済を促すことができる
まずは「心理的な効果」です。
債権の支払い督促は一般郵便ではなく内容証明郵便として送る方が、送り手の「本気度」が伝わりやすいでしょう。
内容証明郵便は、日本郵便が取り扱うサービスの中で(裁判所が使う特別送達を除けば)最上位のサービスです。
1枚の文書を送るだけで1,500円以上の費用がかかりますし、紙媒体を利用する場合は郵便局で1時間程度の待ち時間がかかるのが通常です。
このような敷居の高さから、内容証明郵便といえば「弁護士が使われるもの」という印象を持つ人が多くいます。
内容証明郵便により、相手側に厳しい態度を示すことで、「無視したら大ごとになる」「裁判を起こされてしまうかも」という思いを抱かせやすくなり、弁済を促す効果が期待できます。
段階的に督促をした証拠になる
相手方が支払いに応じず裁判に発展した場合、内容証明郵便が証拠として効力を持ちます。
債権の回収にあたり、内容証明郵便を送っていれば、「きちんと段階を踏んで督促してきた」という証拠になるということです。
ただしメールやLINEなど、内容証明郵便でなくとも督促の証拠になり得るケースもあります。
また、段階的に督促したことが必ずしも必要になるわけではなく、内容証明を送らず、いきなり訴訟提起しても問題ない事案もあります。
時効を一時的に止められる
債権には時効期間が設けられており、その期間を超えると債権は消滅してしまいます。
例えば、一般の債権回収における時効は、「権利を行使できることを知った時から5年」と「権利を行使ができる時から10年」です。
現行法では上記ですが、2020年4月1日以前に発生した債権には旧法が適用されます。(債権の種類によって、1年・2年・3年の消滅時効があります)
もっとも時効が完成する前に、一定の行為をした場合には、時効がリセットされたりストップしたりします。
支払い督促を内容証明郵便で送ることは催告といい、時効の完成を6カ月ストップすることができます。
時効が近づいているときの回避手段として、活用することが可能です。
弁済期日がない債権を債務不履行にできる
債権に「いつまでに返す」という弁済期日が設けられていない場合、まず催告をしないと債務不履行とすることができません。
そこで内容証明郵便で催告書を郵送することによって、催告書の届いた日を弁済期日として設定することができます。
催告書を送らなければ、いつまでも遅延損害金が発生しないリスクがあります。
弁済期日を設けることによって、支払いが滞っていることに対する遅延損害金の請求、契約解除、損金処理なども進めやすくなります。
内容証明郵便で債権回収をする流れ
では内容証明郵便をどのように利用すればいいのか、具体的な手順などを紹介します。
内容証明郵便を利用し、債権を回収する流れは次のようになっています。
- 原本を作成する
- 文書を3部、郵送用封筒を用意する
- 郵便局に持参し、手続きを行う
- 債務者と交渉する
内容証明郵便には、紙の文書を郵送する方法とインターネットで送付する方法がありますが、ここでは郵送について説明します。詳細は郵便局のホームページを参照してください。
1.原本を作成する
まずは、相手方に送る文書の原本を作成しましょう。
内容証明郵便の文書は以下のように行数、文字数が決められています。
縦書 | 1枚26行まで、1行20字まで |
---|---|
横書 |
|
句読点やカッコも1字としてカウントされるので注意が必要です。
文具店などで内容証明郵便用の用紙を購入することもできますが、自分でパソコンを使い作成することも可能です。
ただし使用する編集ソフトによっては、自動校正機能や枠外のページ数の挿入などにより字数や行数が超過してしまうケースもありますので注意が必要です。
用紙の大きさや材質は自由です。
記載内容の例
内容証明郵便で送付する文書に、記載するのは
- 文書の表題
- 通知内容
- 日付
- 相手方の住所、氏名(法人の場合は住所、社名、代表取締役名)
- 自身の住所、氏名(法人の場合は住所、社名、代表取締役名)
となります。
記載内容は、以下の例を参考にしてください。(行数や文字数等は実際のものとは異なります)
株式会社●●●
代表取締役■■■■殿 20●●年●月●日 弊社は貴社との間で、令和○年○月○日付で、商品▲▲について、売買代金を金●●●円とし、左記代金の支払期限を令和○年○月○日とする売買契約を締結し、○月○日に商品を貴社に引き渡しました。 ○○銀行○○支店 なお上記の期日までにお支払いいただけない場合には、法的措置を取らせていただく場合がありますので、ご承知おきください。 (※債権者の情報) 東京都○○区○○ 株式会社○○ 代表取締役■■■■(印) |
2.文書を3部、郵送用封筒を用意する
原本が完成したら、コピー(謄本)を2部作成し、文書を計3部揃えます。
文書が2枚以上ある場合は、ホッチキスで綴じて、綴じ目に契印を捺印することが必要です。
さらに、郵送用の封筒を用意します。
封筒についても、サイズや材質に指定はありません。
一般的な郵送物と同様に、表面に相手方の氏名と住所、裏面に自分の氏名と住所を記載しておきましょう。
内容証明郵便にかかる費用
内容証明郵便にかかる費用は次の通りです。
詳細は郵便局のホームページを確認してください。
郵送料 | 84円(25g超〜50gまでは94円) |
---|---|
内容証明料 | 440円(2枚目以降は1枚ごとに260円加算) |
書留料 | 435円 |
配達証明料 | 320円 |
速達にした場合、速達料は290円です。
複数の債務者へ同じ文書を郵送するケースでは、2人目以降の内容証明料は半額になります。
3.郵便局に持参し、手続きを行う
文書3部と封書を用意できたら、郵便局に持参します。
内容証明郵便は限られた郵便局のみの取り扱いになりますので、事前にホームページなどで確認しておくと安心です。
発行までに1時間程度要する場合がありますので、お時間に余裕を持って行かれる事をおすすめします。
郵便局で3部がすべて同じ内容か確認できたら、文書はそれぞれ相手先へ郵送、郵便局で保管、差出人への控えとなります。
控えを受け取ったら持ち帰り、保管しておきます。
内容証明郵便が届かなかった場合
内容証明郵便を郵送しても、受け取り拒否・不在・住所不明などの理由で、相手方に届かないケースもあります。
受け取り拒否・不在のケースでは、相手方の住所に改めて「特定記録郵便」で督促文書を送ることをおすすめします。
特定記録郵便では相手方が不在でもポストに投函され、配達状況の確認もできます。
ただし特定記録郵便では内容の証明ができないため、「とりあえず相手に書面を確認してほしい」というときに活用しましょう。
「住所不明」のケースでは、調べても正しい住所が判明しない場合、裁判所を通じて解決を目指す形になります。
4.債務者と交渉する
相手方が内容証明郵便を受け取ったことが確認できたら、債権回収の交渉を進めます。
交渉がまとまった場合、その内容をすぐに文書にして、公証役場で公正証書を作成しておきましょう。
公正証書に強制執行認諾文言があれば、相手方が再度、債権の回収に応じなくなった場合も、強制執行をすることが可能になります。
内容証明の作成を弁護士に依頼するメリット
内容証明郵便は自分で作成することができますが、弁護士に依頼することも可能です。
弁護士に依頼するメリットについてまとめました。
「弁護士名義」により相手に危機感を持たせられる
弁護士に依頼すれば「弁護士名義」で内容証明郵便を送ることができます。
個人や会社名ではなく弁護士の名前で督促の文書を送ることで、相手方が危機感を抱きやすくなるでしょう。
それまでは無視をしていた債権者でも、弁護士名義で文書を送ったとたんに態度を変え、応じてくれるようなケースもあります。
弁護士を依頼するとなれば、およそ5〜10万円程度の弁護士費用が掛かります。
ただ、訴訟に比べれば費用面も時間面もはるかに安く、迅速な解決が期待できます。
債権の額などに応じ、上手に弁護士を活用しましょう。
迅速かつ正確な対応が可能
先に説明した通り、債権には時効がありますので、確実に回収するためには迅速な対応が重要です。
しかし法的効力を維持したうえで、記載内容の不備なく、字数や体裁のルールを守りながら内容証明郵便を作成するのは労力がかかることです。
弁護士に依頼すれば、督促内容を正確にまとめ、迅速に内容証明郵便を郵送してもらうことができるでしょう。
トラブルやその後の対応を一任できる
個人で内容証明を送ったとしても「相手に受け取ってもらえない」「この後どう交渉すれば良いかわからない」など、対応に困ってしまうこともあります。
弁護士に依頼すれば、トラブル発生時や債権回収までの対応を弁護士に一任できます。
業務への支障も少なくなり、負担は大きく軽減されるでしょう。
その後の交渉も弁護士を介入させることによって、より良い解決法が見つかる可能性が高められます。
まとめ
内容証明郵便は、債権回収に悩んでいる人にとって助けとなるでしょう。
電話や一般郵便での督促には応じてくれない相手に対して、一歩踏み込んだプレッシャーを与えることができます。
訴訟となれば時間と準備の労力、場合によっては弁護士に依頼する費用がかかります。
その前に個人でも取り掛かりやすい督促方法として、内容証明を活用してみてください。
債権回収を迅速に進めるには、経験が豊富な弁護士に相談してみることもおすすめします。