不倫の裁判とは?訴訟の流れや必要な期間、費用、メリット・デメリットを紹介

離婚・男女問題

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不倫(不貞行為)は民事上の不法行為であり、不倫をした配偶者やその相手方の責任を追及する手段として裁判(訴訟)を利用することが可能です。
「不倫されたから裁判を提起したい」「不倫をしてしまい裁判所から訴状が届いた」といった場合は、不倫の裁判について理解を深め、訴訟の流れや費用などを押さえておきましょう。

この記事では、不倫した側・された側の双方に向けて、不倫の裁判とは何か解説しつつ、訴訟の流れや費用などを紹介します。

▼この記事でわかること

  • 不倫の裁判とは何か、離婚裁判との違いがわかります
  • 不倫の裁判(訴訟)の流れやかかる期間、費用がわかります
  • 裁判で不倫を争うメリット・デメリットがわかります

▼こんな方におすすめ

  • 不倫され、責任追及する手段として裁判を起こすか悩んでいる人
  • 不倫してしまい、裁判に発展しそうな人
  • 不倫トラブルについて弁護士に相談するか悩んでいる人

不倫の裁判とは何か?


不倫の裁判とは、以下では、不倫相手や不倫した配偶者に対して慰謝料を請求する裁判のことを指します。
離婚裁判では配偶者との間で離婚の可否や条件(財産分与、養育費、親権など)を決めますが、不倫発覚後も特に離婚をする意向がない夫婦の場合は、不倫の裁判で離婚について争うことはありません。

ここでは、不倫の裁判の管轄や民事上の責任について解説します。

不倫の裁判の管轄はどこ?

不倫の裁判は、原則として被告の住所地を管轄する裁判所が管轄裁判所となりますが、慰謝料を請求する側の住所地を管轄する地方裁判所(慰謝料を請求する金額が140万円を超えない場合は簡易裁判所)で行うこともできます。
たとえば、不倫相手が遠方に住んでいる場合や、配偶者が単身赴任中に不倫した場合でも、慰謝料を請求する側の住所地を管轄する地方裁判所(又は簡易裁判所)で行うこともできます。

不倫は民事上の不法行為である

そもそも不倫とは法律用語ではありません。法的には不貞のことです。
そして、不貞行為の意味としては、配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。
不貞行為は、民事上の不法行為に該当します。
不貞行為は刑法上の罪ではないため犯罪にはあたりませんが、民事上の不法行為として慰謝料を請求することが可能です。

不倫の裁判(訴訟)の流れについて


不倫の裁判はどのように進んでいくのでしょうか。
ここでは、不倫の裁判(第一審訴訟)の基本的な流れについて紹介します。
訴訟する際は、スムーズに請求を実現するためにも裁判の流れを押さえておきましょう。
また訴訟された側も、裁判の流れを知っておくことで適切な対処や準備が可能となるため、参考にしてみてください。

(1)裁判所へ提起

不倫の裁判を提起するには、地方裁判所(又は簡易裁判所)に「訴状」(裁判を起こした人が、その言い分を記載した書面)と呼ばれる書面を作成し、提出する必要があります。
訴状には、自分(原告)と請求する相手(被告)の氏名、住所、送達場所、慰謝料を請求する旨や金額、不貞行為の具体的な内容などを記載しますが、書き方に関して形式やルールがある点に注意が必要です。
また、訴状とあわせて不貞行為の証拠、証拠説明書(証拠の作成年月日、作成者、立証趣旨などを記載した書面)も提出します。
なお、弁護士に依頼して原告訴訟代理人になってもらった場合には、訴状、証拠説明書などは弁護士が作成し、また、裁判所への一式書類の準備、提出を行ってくれます。

(2)相手へ訴状が送達される

訴状を受け取った裁判所は、形式などに不備がないか確認し、裁判の期日を調整します。
そして裁判所から訴状を被告(訴えを起こされた人)へ送達します。
訴状が入っている封筒には、訴状、証拠などの他に、通常、期日の呼出状や答弁書の書き方を説明する書類などが同封されています。
裁判の期日は、裁判所からの期日調整の連絡時から、約1〜1ヶ月半程度後の日程で調整、指定されるのが一般的です。

被告が、送達された訴状を無視し、何もせずに放っておくすると、呼出状に記載された期日に被告不在のまま裁判が実施され、訴状の内容に問題がなければ、原則として原告の主張どおりに判決が下されることになります(いわゆる欠席判決)。

(3)被告は答弁書を裁判所へ提出する

訴状を受け取った被告は、原告の主張に対する反論を答弁書にまとめ、答弁書の提出期限までに裁判所へ提出します。
なお、被告となった人も、弁護士に依頼すれば、受任した弁護士が答弁書や準備書面の作成を行ってくれます。

(4)第1回期日

裁判所が指定した期日に、第1回口頭弁論が開かれます。
第1回口頭弁論は法廷で行われ、訴状、(被告から提出がある場合には)答弁書の陳述がなされます。

最初の第1回口頭弁論の日程は、通常は原告と裁判所が調整して決めた日程であるため、被告側の都合は考慮されていません。
そのため原告は第1回期日に出席する必要がありますが、被告は第1回期日に出席ができない場合には、事前に答弁書を提出していれば第1回の期日については欠席することも可能です。
答弁書の提出期限は、裁判期日の1週間前を期限として設定されている場合が多いです。

第1回口頭弁論での訴状陳述などの手続の後は、次回の期日(裁判の日)を決めます。

(5)第2回期日以降

裁判所の進行によっては、第1回期日を終えると、公開の法廷ではなく、非公開の場で、双方の主張や証拠を突き合わせていく争点整理に入り、約1か月おきに期日が指定され、双方の主張と反論を繰り返していきます。

ある程度主張、立証が繰り返された後、裁判官から、当事者双方に対し和解の可能性を問われることや、又は、事案によっては裁判官から和解案を提示されることもあります。
双方が和解条件(金額、支払方法など)に納得、合意すれば、その時点で和解によって裁判は終了します。
他方当事者が出した和解条件や、裁判所からの和解案の内容に納得しなければ、断って判決をもらうことも可能です。

(6)証拠調べ

和解が進まない場合、当事者や証人に対して「尋問」がなされる場合があります(尋問は実施されるタイミングとしては通常は訴訟の終盤で行われることが多いです)。

尋問は、書面ではなく、法廷の中で、裁判官の前で、口頭で質問に回答することとなるため、事前にスムーズに話せるように準備しておきましょう。尋問の流れですが、弁護士に依頼をしている場合には、依頼した弁護士からの質問(主尋問)、次に相手方(又は相手方訴訟代理人)からの質問(反対尋問)、当事者双方の尋問が終わった後、必要に応じて裁判官が質問(補充尋問)を行うという流れが想定されます。

(7)判決

最後まで和解ができない場合は、裁判所が判決を下します。
一般的には、口頭弁論が終結した後1〜2ヶ月程度で判決が下され、原告と被告に第一審の判決正本が送達されます。
判決に納得しない場合、判決書の送達を受けた日の翌日から起算して2週間の期間内に控訴(不服申立て)が可能です。控訴をする場合には、控訴期間を過ぎてしまわないように、十分注意して早めに控訴状を提出するようにしましょう。

不倫の裁判(訴訟)にかかる期間


不倫の裁判にかかる期間の目安は、欠席判決となる場合を除けば、早ければ半年程度、長いと1年〜1年半程度です。
裁判の期日はおよそ1〜1ヶ月半ごとに設定されるため、和解ができずに双方が主張・反論を繰り返す場合にはその分期間を要します。

裁判は平日に行われ、弁護士に依頼せずに対応する場合、裁判所に足を運んだり書類を作成したりと、多くの労力と時間を費やすことになります。
裁判を提起する場合は、長期戦になることも覚悟して臨むことが大事です。

不倫の裁判(訴訟)費用はいくらかかる?


不倫の裁判を提起する場合に、かかる費用として主に以下の3つが挙げられます。

  • 印紙代
  • 郵便切手代(予納郵券)
  • 弁護士費用

詳しくは以下で解説します。

印紙代

裁判を提起する場合、裁判所への手数料として原告は裁判所に納める印紙の負担が生じます。
印紙代は、慰謝料の請求金額によって異なります。
例えば、300万円を請求する場合の印紙代は2万円、500万円請求する場合は3万円です。
手数料の一覧が見たい場合は、裁判所の公式サイトから確認してみてください。

郵便切手代(予納郵券)

印紙代の他に、書類の送達に必要な郵便切手代もかかります。
裁判所によって郵便切手の内容、組合せは異なりますが、5,000円〜6,000円程度が一般的です。

弁護士費用

弁護士費用は、弁護士に依頼する場合の費用です(弁護士費用は各法律事務所によって異なります)。
弁護士に依頼しなくても不倫の裁判は可能ですが、裁判手続の遂行は簡単ではなく、証拠集めや主張にも法律の知識が欠かせません。
不倫トラブルの中でも、とりわけ裁判手続は、弁護士に依頼することをお勧めします。
弁護士費用は、主に相談料と着手金、報酬金があります。

相談料 相談料は弁護士に相談する際にかかる費用で、1時間あたり5,000円〜1万円程度が相場です。
初回相談を無料で実施している法律事務所もあります。
着手金 着手金とは、成攻・不成功の結果にかかわらず、弁護士に依頼した際に支払う費用のことです。弁護士費用の設定は法律事務所毎に異なりますが、不貞の裁判の場合、20~30万円程度の費用が想定されます。
報酬金 報酬金とは、結果の成功の程度に応じて支払う費用のことで、金銭又は債権を和解、判決、合意等によって得ることが出来た場合、その経済的利益に対する割合で計算する事務所が多い傾向にあります。
不貞の裁判の場合、報酬金は、経済的利益に対して、10〜20%程度が想定されます。

不倫の裁判(訴訟)のメリットは何?

不倫の事実が発覚すると、双方で感情的なトラブルが発生することは避けられません。
その解決手段として、裁判は有効な選択肢のひとつです。
とはいえ、裁判にはメリット・デメリットがあるため慎重に検討しましょう。
ここでは、不倫した側とされた側の双方に向け、裁判のメリットを紹介します。

不倫された側のメリット

ここでは、不倫された側(慰謝料を請求する側)のメリットを2つ紹介します。

法的手段によって問題解決を目指せる

不倫された側が裁判を提起するメリットは、裁判手続外の交渉とは異なり、相手の同意がなくても裁判所の判断(判決)による解決が可能であり、法的手続によって問題解決を目指せることです。
交渉段階では、相手が慰謝料の支払いを拒むケースも少なくありません。
また、「相手と話し合いをしようと思っても電話がつながらない」「LINEを無視されている」「相手方が連絡書面を無視する」といったこともあるでしょう。

しかし、裁判を起こせば裁判所から被告に訴状が届きます。
仮に、被告が訴状を無視すれば、被告が原告の要求を受け入れたとみなし、訴状の記載内容に問題がなければ、裁判は原則として原告の勝訴となります。
ゆえに、交渉段階では連絡を無視し続けているような被告も、訴状が届いたら慌てて対処する場合が多いでしょう。

強制執行を検討できる

裁判では証拠が不十分などで敗訴する可能性もありますが、きちんと不貞行為の事実を証明できれば、裁判手続の中で一定の慰謝料が認定されることが期待できます。
また、別の手続が必要となりますが、判決が確定したにも関わらず不貞行為をした被告が判決内容の支払いに応じなければ、被告の財産がわかっている場合などには、被告の財産を差し押さえて強制的に回収することも検討できます。

不倫した側のメリット

不倫した側(慰謝料の請求を受ける側)が裁判を利用するメリットは、請求する側から過剰な要求があった場合などに、これを排斥し、適正な範囲での解決が期待できることです。
交渉では、相手が慰謝料の相場を大きく上回る金額を請求してくるケースも珍しくありません。
また、請求する人によっては、相手方に対し、「職場を辞めてほしい」や「親にも不貞の事実を説明してほしい」という要求が出てくることもあるでしょう。

相手に配偶者がいることを知ったうえで不貞行為をした事実に間違いがなければ、慰謝料を支払うという結果は避けられません。
しかし、裁判という判断権者(裁判官)がいる手続を利用することで、請求する側から不当な要求や過剰な要求があった場合に、これらを排斥し、適正な範囲での解決を図ることが期待できます。

不倫の裁判(訴訟)のデメリットとは

A card that says “demerit”.

不倫の裁判は、一定の適正な解決が期待できますが、裁判には労力や時間がかかります。
メリット・デメリットを天秤にかけ、解決手段を検討してみてください。
ここでは、不倫された側とした側の双方に向け、裁判のデメリットを紹介します。

不倫された側のデメリット

不倫された側(慰謝料を請求する側)が裁判を提起するデメリットとして、以下の2つが挙げられます。

労力や時間がかかる

不倫の裁判はケースにもよりますが、欠席判決となる場合を除けば、決着がつくまでに、短くて半年程度、長くて1年〜1年半の期間を要します。
その期間が長引くほど、緊張状態が続き、精神的な負担もかかるでしょう。
また、証拠を集めたり書類を作成したりと、多大な労力もかかります。

このような負担を軽減するためには、弁護士への依頼が有用です。
弁護士に依頼すれば、煩雑な裁判手続きの対応は弁護士に任せられ、ご本人の精神面・労力面の負担をかなり軽減できます(もちろん、依頼した弁護士との間での打合せや資料を準備するなどの適切な訴訟遂行のための協力は必要です)。

費用がかかる

裁判を提起する場合、訴訟提起のための印紙代や郵券代などがかかります。
また、弁護士を依頼する場合には、ご本人の精神面・労力面の負担を軽減することが期待できる反面、弁護士費用(着手金、報酬金)がかかります。

不倫した側のデメリット

不倫した側(慰謝料の請求を受ける側)のデメリットは、以下の点が挙げられます。

原則公開の法廷で審理される

裁判は、原則として公開の法廷で行われます。特に、尋問では、法廷の場で、裁判官、弁護士、傍聴人の前で、不貞の事実関係や認識内容について指摘・質問を受けることとなり、一定の精神的な負担が生じます。

判決の内容に従う必要がある

裁判では、裁判官が最終的な判決を下しますが、その内容が自身の希望とは異なるケースもあります。
「慰謝料が高すぎる」と思っても、判決が確定した場合には、判決の内容には従わなくてはなりません。
判決に不服があれば控訴することは可能ですが、上級審で希望するような結果が得られるとは限らない点に注意が必要です。

不倫の裁判についてのポイント・注意点


裁判は有用な解決方法ではありますが、準備不足で裁判に臨むと、期待する判決を得られないケースも少なくありません。
より良い結果を得るためにも、以下で紹介する3つのポイントと注意点を押さえておきましょう。

有効な証拠を集める

裁判で不貞行為を認めてもらうには、有効な証拠の提出が大切です。
不貞行為の証拠となり得るものには、主に以下のような例が挙げられます。

  • 写真・動画
  • 録音データ、ボイスメモ
  • 不貞行為を認める書面
  • ラブホテルの領収書・利用明細
  • メール、SNS
  • 探偵事務所や興信所などの報告書

上記のような証拠例を、適切、適法な手段で集める必要があります。
なお、証拠を収集する際には、違法行為とならないよう注意する必要があります。

まずは示談での解決方法も検討する

可能であれば裁判の前に、示談での解決を目指すこともポイントです。
裁判をすれば、一定の労力や期間がかかることや、証拠関係によっては敗訴してしまう可能性もあります。
示談であれば相手方が認めている事案などでは早期解決できる場合もあり、精神的な負担も軽減できるでしょう。
示談交渉が難しい場合の手段として、裁判を利用するのが賢明です。

弁護士に相談する

弁護士に不倫トラブルについて相談することで、段階に応じて、証拠集めに関するアドバイスから実際の交渉、裁判手続きまで、トータルでサポートしてもらえます。
弁護士を代理人として依頼した場合には、相手方との交渉業務や書面作成や期日対応などは、弁護士に任せ、ご自身の労力面・精神面の負担、仕事や日常生活への支障を軽減し、解決まで進めることが期待できます。

不倫した側も、弁護士に依頼することで、相手方からの過剰な請求、要求を排斥するなど、過大な不利益を被ることなく、法的に妥当な範囲内での解決が期待できます。

まとめ


不倫(不貞行為)は、民事上の不法行為として慰謝料を請求できます。
裁判手続外の交渉で慰謝料を請求することも可能ですが、相手が支払いを拒否する場合や相手が不誠実な対応を行う場合には裁判(訴訟)で決着をつけるのが得策です。
ただし、裁判の手続きは法律に詳しくない一般の方には手続きが簡単とはいえず、また、論理的な主張を行うためには法律の知識も欠かせません。

不倫問題でお悩みの方は、ぜひこの分野に詳しい弁護士への相談を検討してみてください。

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