慰謝料請求は、弁護士に依頼せずに自分で行うことも可能です。
しかし不貞の慰謝料請求の場合、不倫相手と交渉をせねばならず、自身のみで行うのはストレスがかかりますし、気持ちが高ぶり冷静に話し合いができないケースも多いです。
法的知識があり、交渉ごとに慣れている方ならば、自身で慰謝料請求を行うことを検討されてもいいかもしれません。
そこでこの記事では、弁護士に依頼せず慰謝料請求を行う方法と成功率を高めるためのポイント、慰謝料の相場、注意点などを解説します。
慰謝料請求を弁護士に依頼せず自分で行う方法
不貞の慰謝料請求の多くは弁護士が依頼人に代わり、不貞行為をした配偶者や不倫相手と直接交渉し金額等を決めています。
交渉が決裂し、最終的に本格的な裁判に発展した場合は、法律の専門家である弁護士に依頼しなければ希望する慰謝料の獲得は難しいです。
交渉が得意な方であれば、弁護士に頼らず相手方と直接交渉し、慰謝料を獲得できることもあるでしょう。
そこで、ここでは慰謝料請求を弁護士に依頼せずに自身で行う方法を紹介します。
話し合いにより慰謝料請求する
相手方との話し合いで和解の条件がまとまれば、最も双方に金銭的・時間的負担が少なく解決ができます。
相手と直接会うことが難しければ、オンライン、LINE、メールなど対面によらない方法でも話し合いは可能です。
話し合いの場では、慰謝料の金額はもちろんですが、配偶者との接触を禁止したり、いやがらせ行為をしないよう警告したり、約束事を破ったら違約金を支払ってもらうといった取り決めも行うと良いでしょう。
ただし個人間でやり取りをすると、相手方とのやり取りで感情的になりやすいことや、慰謝料等を支払う約束をしても守られない可能性があります。
確実性のある交渉をしたい場合は、弁護士をつけて条件を細かく取り決めることをおすすめします。
内容証明郵便により慰謝料請求する
内容証明郵便とは、送付する文書の文面、差出人と送付先、差出日を郵便局が確認し証明してくれる制度です。
法律や契約に基づく請求や通知、とりわけ、クーリングオフの通知でよく利用されており、送付相手に対して強いメッセージを伝える効果があります。
慰謝料請求の場面で内容証明郵便を用いるケースは、4通り考えられます。
- 相手方との話し合いに入る前に、慰謝料請求を含むこちら側の要求を相手に通告する
- 相手方との話し合いにより、ある程度方向性が固まった段階で、証拠を残す意味と相手方への慰謝料請求を兼ねて送付する
- 相手方との話し合いが決裂した場合に最終通告の意味合いで送付する
- 慰謝料を支払う約束を相手が守らなかった場合に改めて請求する
内容証明郵便を送るだけで解決を目指すのではなく、相手方との話し合いを行いつつ、タイミングを見計らって送付するのが効果的です。
一方で、内容証明郵便には執行力があるわけではないため、相手が受け取っても、慰謝料を支払ってもらえないこともあります。
自分で訴訟を提起して慰謝料請求する
話し合いや内容証明郵便の送付によっても相手方が慰謝料を支払わない場合は、自身で訴訟を提起する方法もあります。
訴訟を提起し、慰謝料の支払いを命じる確定判決を得れば、相手方が支払いに応じなかったとしても、強制執行手続きにより、相手方の財産を差し押さえて、慰謝料額を受け取ることができます。
ただし、民事訴訟に慣れていない人にとっては敷居が高く、個人で行うのはとても難しいです。
また相手が弁護士を立てた場合は、こちらも弁護士を立てなければ敗訴してしまう可能性が高まるでしょう。
一般的な慰謝料の金額相場
不倫の慰謝料の額は、50万円~300万円が相場と言われています。
具体的には、以下のような金額になります。
不倫発覚後も離婚をしないケース | 50万円~150万円 |
---|---|
不倫が原因で離婚に至ったケース | 100万円~300万円 |
もちろん、この金額内で納めなければならないというルールはなく、納得できない場合はより多額の請求も可能です。
しかし、あまりに相場とかけ離れた額を請求すると交渉決裂の原因になり、話し合いが長期化してしまう可能性があります。
慰謝料請求の金額が増減する条件
上記で紹介したように、不倫の慰謝料額の幅は大きいですが、金額は様々な条件により増減します。
金額が増減する要素としては次のようなものが挙げられます。
- 婚姻期間の長さ
- 不貞行為の頻度や期間
- 不貞行為の場所・態様・内容
- 離婚に至ったかどうか
- 不貞行為が夫婦関係に与えた影響の程度
- 配偶者が受けた精神的苦痛の程度
- 子供に与えた影響の程度
例えば、不貞行為を1回しただけの場合と、数年にわたり不貞行為を繰り返していた場合とでは、後者の方が当然、慰謝料の金額が高くなります。
自分で慰謝料請求をする際のポイント
慰謝料請求を自分で行う際は、事前の情報収集や、和解条件の検討、話し合いの場での対応など意識すべき点があります。
それぞれ見ていきましょう。
事前に証拠をつかんでおく
相手方に対して不倫の慰謝料請求をする場合は、事前に不倫の証拠をつかんでおくことが大切です。
不倫の証拠があいまいだったり、そもそも証拠がなかったりする状態で相手方に慰謝料請求しても、応じてくれないこともありますし、請求された後で相手方が証拠隠滅を図ることもあります。
証拠を隠滅されてしまうと、他の証拠を探り出すことが困難になってしまうため、不倫の証拠を集めていることを相手に感づかれる前に、明確な証拠を押さえておくことが非常に重要です。
請求相手の身元確認をする
不倫相手の本名、住所が分からないこともあります。
相手方の確実な情報が携帯電話の番号、メール、LINEだけという状況ですと、相手方が慰謝料を支払うと約束しても、連絡手段を絶って姿をくらましてしまうこともあるでしょう。
そのため、相手方と話し合いをする前提として、相手方の本名、住所を押さえることが重要です。
納得できる慰謝料のボーダーラインを決めておく
自分で慰謝料請求する場合は、納得できる慰謝料の金額を決めておくことが大切です。
金額は、感覚ではなく、離婚する場合は引っ越し費用、生活費、様々な諸費用などの用途を一覧にして、それぞれの金額を合算するという形で決めておけば、少なすぎたと後悔しないはずです。
また、慰謝料の相場から逸脱しない範囲で決めることも大切です。
弁護士に相談したり、ネットで調べたりすれば、慰謝料の相場を知ることができます。
あまりにかけ離れた請求をしてしまうと、交渉が難航し、自身で解決することが難しくなるでしょう。
相手方への要求を明確にしておく
慰謝料請求以外にも相手方に求めたいこともあると思います。
夫婦の婚姻関係を維持するつもりなら、配偶者と不倫相手に対しては以後接触することを止めるよう求めるべきですし、その旨の念書にサインさせて、約束を守らなかった場合の違約金を決めておくことも考えられます。
この場合、慰謝料の請求と接触禁止のどちらを優先するのかも決めておくべきです。
例えば、不倫相手に経済力がない場合、多額の慰謝料を求めることは難しいため、慰謝料の額は妥協しても、接触禁止だけは絶対に守らせるといったことが考えられます。
接触禁止以外にも要求したいことはたくさんあるかもしれませんが、現実的でない要求や過度の要求は交渉決裂するリスクがあるため注意が必要です。
話し合いの場では冷静に対応する
自分で配偶者の不倫相手と対面することは大変なストレスになりますし、いざ顔を合わせると罵詈雑言を吐きたくなるかもしれません。
しかし自分の行動次第で、相手方に有利な状況になりうることを意識し、冷静に対処することが重要です。
例えば、対面の場で、相手方がボイスレコーダーを潜ませて、あなたの言動を記録しているかもしれません。
この場合、あなたの言動によっては、恐喝や脅迫だとして逆に訴えられてしまうリスクがあるので注意が必要です。
話し合いの内容は文書化する
相手方と話し合った内容は文書として残すことが重要です。
文書を残しておけば仮に裁判に発展した場合でも、相手方が不倫した事実や相手方への請求内容の有力な証拠になります。
文書は、相手方の誠意を信じられるなら、双方で示談書を交わす形で構いません。
書面作成時は一度対面し、文面を確認しあって、署名押印してもらうのが確実です。
最も有効なのは、公正証書を作成することです。
相手方が慰謝料を支払う旨と、支払いを怠った場合は強制執行に服する旨の「強制執行認諾文言付公正証書」の形で作成しておけば、相手方が慰謝料を支払わない場合は、執行分の付与を受けて直ちに、裁判手続きにより強制執行を行うことができます。
公正証書は、弁護士に依頼せずとも、公証役場に連絡し、公証人に作成したい文面の概要を伝えれば、有効な公正証書を作成してもらうことができます。
慰謝料請求を自分で行うリスクとは
慰謝料請求を自分で行えば、うまくいけば弁護士費用がかからず、早期に解決できることもあります。
一方で、相手方の出方次第では、慰謝料請求が難しくなることや、思ったほどの金額を受け取れないこともあります。
具体的にどのようなリスクがあるのか、次で解説します。
相手に弁護士がつくと不利になる
相手方に弁護士がついた場合、「慰謝料請求の額が不当」、「そもそも不貞行為の証拠がなく慰謝料請求自体、的外れである」などの主張がなされて、慰謝料請求が難しくなってしまうこともあります。
相手方が弁護士を立てる場合としては、慰謝料請求額が高額すぎて納得できない場合や要求が過度で困惑している場合などが考えられます。
法律知識のない一般の方が法律のプロである弁護士に対抗するのは難しいことですので、相手方が弁護士を立てた場合はこちら側も弁護士を立てることがベターでしょう。
合意内容を明確に書面にするのが難しい
自分で慰謝料請求する場合でも最終的には話し合った内容を書面化すべきなのは、上記までに説明したとおりです。
しかし、当事者同士だけで話し合い、合意書の作成を試みると、内容が慰謝料請求を求める文書としては曖昧な記載になり、法的効力を持たないものになりかねません。
何をどのように記載しておくべきなのかは、専門家の目を通した方が確実です。
相手から請求を受ける可能性がある
不倫の相手方から金銭の支払いを求められるケースとしてよくあるのが、相手方が不倫慰謝料の求償権をあなたの配偶者に対して行使するケースです。
不倫は、配偶者と不倫相手の共同不法行為に当たり、あなたへの慰謝料の支払いは、本来、配偶者と不倫相手の連帯債務になります。
そして、不倫相手が慰謝料を全額支払った場合は、不倫相手はあなたの配偶者に対して、責任の割合に応じて、多くの場合は50対50の割合になるため、支払った額の半分を求償できることになります。
このような場合、実質的に受け取った慰謝料の額の半分を相手に返さなければならず、困惑してしまうこともあると思います。
慰謝料請求を弁護士に依頼するべき人の特徴
慰謝料請求を弁護士に依頼するべきなのは次のような方です。
- 慰謝料を請求したが相手から完全に無視されている方
- 相手と顔を合わせて冷静に話し合うのが難しいと自覚している方
- 適切な慰謝料の額を自分で判断できない方
- どのような証拠を示せば慰謝料請求できるのか分からない方
- 相手に確実に慰謝料を支払わせたいと思っている方
- 裁判沙汰にせず迅速に解決を目指したいと思う方
特に、裁判沙汰にしたくないと考えている方は、早めに弁護士に依頼した方が良いでしょう。
弁護士を立てれば、あなたの本気度が相手にも伝わり、裁判に発展する前に解決できることが多いものです。
弁護士を探すならココナラへ
ココナラ法律相談ならば、あなたが抱えている悩み事を無料で相談することもできるので、弁護士に依頼すべきか、自分で慰謝料請求した方が良いかといった点も含めてアドバイスを受けられます。
弁護士費用が心配という方は、初回面談無料の弁護士を探すこともできますので、弁護士保険が使えるのかどうかや費用倒れにならないかといった点も含めて、まずは、電話やメールで相談してみることをおすすめします。
対応エリアや得意ジャンルなどを細かく設定して適任の弁護士を探すことができるので、ぜひ利用してみてください。
関連リンク ココナラ法律相談でできることとは
まとめ
慰謝料請求を弁護士を立てずに自分で行えば、弁護士費用がかからないためお得なように感じますが、自分で不倫相手と顔を合わせて交渉することは、非常にストレスのたまることですし、様々なリスクを伴います。
最初から弁護士を立てれば、弁護士費用は差し引かれても、自身で交渉するより多くの慰謝料を獲得できる可能性が高まります。
何より、あなたの本気度を相手に伝えやすくなり、今後の不貞行為への大きな抑止力になりますし、不倫関係の復縁を防ぐ効果も期待できます。
慰謝料請求を自分で行うべきか、弁護士を立てるべきなのかよく検討し、適切な問題解決を目指しましょう。