熟年離婚のよくある原因とは?離婚する前に準備・検討するべきこと

離婚・男女問題

この記事の監修

東京都 / 港区
青山北町法律事務所
事務所HP

「子どもが自立したし、そろそろ離婚して自由になりたい」
「夫の過去の浮気を子どもが自立した今だから清算したい」

このように、熟年離婚を検討する人は近年増えています。特に、子どもの自立をきっかけに動きだす人が多いようです。
しかしいざ行動に移すとなると、離婚後の生活に不安を感じて足踏みしている方も多くいらっしゃいます。特に専業主婦や長年パート勤務のみだった女性の方はそのような不安を感じる方が多いです。

そこで本記事では熟年離婚のよくある原因から、老後資金にそなえて熟年離婚をする前に準備すべきことなど、熟年離婚の検討材料になることについて解説しています。
後悔のない人生を送るため、第二の人生について検討してみましょう。

▼この記事でわかること

  • 熟年離婚の原因となる状況について解説しています
  • 熟年離婚に伴う年金分割や財産分与など金銭面の問題について解説しています
  • 熟年離婚するための流れや手続きがわかります

▼こんな方におすすめ

  • 子どもが手を離れたので離婚したいが、離婚後の生活に不安がある方
  • 離婚時にどの程度財産がもらえるのか知りたい方
  • 配偶者のモラハラなどで生活にストレスを抱え、離婚を考えている方
  • 配偶者の浮気癖を子どもの自立まで我慢していた方
  • 離婚のためにどれくらいの手間がかかるか知りたい方

熟年離婚とは


「熟年離婚」とは、おおむね20年以上結婚生活を継続した夫婦が離婚することを指す場合が多いです。
法律上明確な定義はありませんが、本記事でもこれを前提として話を進めていきます。

厚生労働省の「人口動態統計月報年計の概況」をもとに算出されたデータ(※2019年まで)によると、日本の全年代における離婚件数自体は2002年をピークに少しずつ減少しています。
しかし婚姻期間が25年以上の夫婦の離婚件数は増えてきており、熟年離婚は増加傾向にあるといえます。

熟年離婚のよくある原因

在宅期間が増えた

配偶者が定年退職後、毎日家にいることで負担する家事も増えた、それが原因で口論が増えた、一人の時間が取れなくなったなどの不満がストレスになり離婚を考える方も多くいます。
また近年では、コロナ禍で在宅期間が増えたことで、配偶者が家にいる時間が増えて同じように家事負担や一人の時間ができないという不満を抱える方も増えて、離婚を検討される方も多くいらっしゃいます。
明確な定義はありませんが、このような状況をコロナ離婚と呼ぶことが多いです。
夫婦で生活スタイルが重ならないことで程よい距離感を保っていることで、良好な関係を築けていた夫婦は意外に多いのです。

子どもが手を離れ、離婚しやすくなった

子どもが産まれてから、配偶者の浮気やモラハラ、育児に対する考え方の違いなどで夫婦関係が悪化したが、子どもの学費や心理的影響などを考慮して子どもが自立(成人・結婚・就職など)するまで離婚を我慢していたというケースは非常に多いです。
また、長年子どもを介して夫婦で会話していたような場合は、子どもが自立して夫婦二人きりになると途端に会話がなくなり、一緒にいる意味を感じられなくなり離婚するケースもあります。

老後の生活について考え直した

インターネットやソーシャルネットワークサービスが充実した現代において、新しい趣味を見つけて自分らしく輝いて生活をしているシニアの方を見て、自身の老後の生活を考え、自分も新たなチャレンジをして充実した人生を構築していくために離婚を検討される方もいらっしゃいます。
現在は健康寿命ものびており、老後に新しいチャレンジをする人も増えています。
何十年も平穏に結婚生活を送り、子どもを無事育て上げたことで、「これからは一人で自由に生活してみたい」「第二の人生として新たなチャレンジをしたい」と考える人もいるのです。

相手の親族との関係がうまくいかない

相手の親族との関係性は、結婚生活と切り離せない話です。
とくに義両親と同居している場合は、嫁姑問題を長年我慢しているケースもあります。
また義親の介護が必要な場合は、関係性が悪いと「もう介護はしたくない」と離婚を考える人もいます。

長年、相手に不満を抱えていた

熟年離婚の理由として非常に多いのが、浪費癖がある、モラハラやDV、家事や子育てに全く協力してくれない、浮気癖など「長年不満を抱えていたが我慢していた」というケースです。
離婚後の生活のことを考えて計画的に貯金を続け、満を持して離婚する人もいま
現代は3組に1組が離婚するとも言われており、離婚が悪いことというネガティブな意識が薄れてきています。
離婚に対する心理的ハードルが低くなったことも、要因のひとつといえるかもしれません。

熟年離婚をする前に準備・検討すべきこと


次に、熟年離婚に踏み切る前に準備しておくことについてお話します。
離婚後は生活がガラッと変わるため、金銭面や子どものことなど生活していく上で重要な事項については事前にしっかり調べておきましょう。

年金分割の制度を利用する

まずは「年金分割制度」について説明します。
年金分割制度とは、婚姻中の年金保険料の支払実績を多い方から少ない方へ分け合う制度のことです。
2007年(平成19年)より、支払実績が少ない方が最大半分の年金分割を受けられるようになりました。

【年金分割制度のポイント】

  • 夫婦が厚生年金・共済年金に加入していない場合は利用できない
  • 対象は報酬比例部分のみで、基礎年金部分は対象外
  • 年金分割の請求期間は離婚日の翌日から原則2年以内
  • 年金分割には「合意分割」と「3号分割」がある

具体的に年金分割の種類である「合意分割」と「3号分割」について、双方の違いや請求ケース例について紹介します。

合意分割と3号分割の違い

年金分割は、婚姻期間の長い夫婦の場合「合意分割」、婚姻期間の短い場合は「3号分割」というケースが多くなります。

合意分割 3号分割
対象期間 婚姻期間中全体 2008年4月以降に被扶養者だった婚姻期間中
相手の同意 必要 不要(一方的請求で可)
請求ケース例
  • 婚姻期間中ずっと共働きだった
  • 2007年以前は専業主婦だったがその後共働きになった
2008年以降に結婚して以来、ずっと専業主婦だった

熟年離婚の場合はほぼ「合意分割」の方が得ということになるかと思いますが、合意分割と3号分割のどちらの方が得になるかは、婚姻時期や被扶養者となった時期などによっても変わるため、最終的には年金事務所で調べてもらうと間違いないでしょう。

遺族年金も検討しておく

もし熟年離婚をせずに配偶者が亡くなった場合は「遺族年金」を受け取ることができます。
厚生年金に加入していれば受け取れる「遺族厚生年金」の他、夫婦の間に子どもがいる場合は「遺族基礎年金」も受給対象となります。

年金分割と遺族年金を比べたとき、どちらが高額になるかは様々な条件によって変わるため、老後の生活が不安な方は、場合によっては離婚をしないという選択肢も考慮しても良いかもしれません。

財産分与の対象になる財産を調査する

「財産分与」とは、婚姻期間中に二人が協力して築いた財産(贈与や遺産は対象外)が半分ずつ夫婦に分けられる制度のことで、全ての夫婦が持っている権利です。
基本的に「2分の1ルール」が適用され、財産は半分ずつに分けられることが多いです。

【財産分与の対象となるものの例】

  • 不動産
  • 家具・家財
  • 株などの有価証券
  • 保険解約返戻金
  • 退職金・財形貯蓄
  • 預貯金
  • 暗号資産(仮想通貨) など

財産分与の対象となるのは「同居中」に築いた財産のみで、別居期間中の財産は含まれないため、財産調査の際は念頭に置いておきましょう。

2分の1ルールが適用されないケース

基本的に財産分与の際は「2分の1ルール」が適用されますが、不動産のようにローンが絡んで2分の1ルールで処理がそもそもできない場合やどちらか一方が自身の能力で高額の財産を築いていた場合は、2分の1ルールが適用されないこともあります。
不動産について妻としては子どもと今住んでいる不動産で生活を続けたいがローンの名義変更ができないというようなケースは多々あり、実務上統一的な処理ルールがあるわけでもなく、個別の事案に応じた処理が求められることがほとんどです。

そのため、ローンが残っている不動産がある場合には弁護士に相談する必要性が高いです。
また、医師として病院を経営している夫から妻への財産分与が5分の1にとどまった裁判例や、会社経営者が経営手腕により財産を構築したことと家庭内別居で妻の協力がなかったことから妻への財産分与を4割とした裁判例もあります。

財産分与の割合に関しては、個別事情によって分与額が変わる場合もあるので弁護士に相談するのがおすすめです。

慰謝料請求のための証拠を集める

パートナーの不貞行為や相手からのDVが離婚原因の場合、離婚時に精神的苦痛の代償として慰謝料を請求できます。
ただし慰謝料が法的に認められるためには、それらの行為の証拠が必要です。

不貞行為やDVなどを証明する写真や動画、メール、詳細を記録した日記など、証拠となり得るものをできるだけ多く集め、相手に否定された場合でも自分の主張が正しいことを証明できるようにしておきましょう。
証拠の収集については探偵に依頼することも有効な手段の一つです。
一概に写真やメモと言っても、裁判上有効な形で残さないと意味がないため、できる限り多くの慰謝料を獲得するためには、離婚を決断する段階でなく、離婚を検討する早い段階から経験豊富な弁護士に依頼するのがおすすめです。

子どもと事前に話し合う

熟年離婚の場合、子どもが大きくなっていることも多いですが、すでに成人している子どもには親権や養育費は発生しません。
しかし、離婚後の良好な親子関係のためにも「離婚理由を説明する」「離婚後のそれぞれの住所や連絡先を教えておく」など必要に応じた誠実な対応をとりましょう。

離婚後の仕事について考えておく

離婚後の定期的な生活費の支払い(扶養的財産分与)は基本的に認められない
熟年離婚において、主に女性の方で心配されるのが、離婚まで専業主婦だった、あるいはパートが長かったため、仕事が見つかるかわからないというなかで、夫から生活費をもらい続けられないかという点です。
このような請求を扶養的財産分与といいますが、これについては基本的には認められません。
そのため、離婚後にする仕事と財産分与の内容を踏まえて離婚後の生活の見通しをたてる必要があります。

前述したように、離婚の際には年金分割や財産分与で金銭を受け取ることができます。
しかし、離婚後は自身の生活費だけでなく将来的な介護費用なども準備する必要があります。

再就職は年齢が高ければ高いほど難しくなる傾向にあるため、現在仕事をしている方は会社の再雇用(継続雇用)制度について確認しましょう。
また専業主婦の方は、下記のような方法で事前に仕事を探しておきましょう。

  • ハローワーク
  • シルバー人材センター
  • 人材紹介会社の転職サービス
  • 知人の紹介

生活保護の受給対象か調べる

離婚後になかなか仕事が見つからず、年金分割や財産分与でも思うような金銭が得られなかった場合は、最低限の生活も苦しくなる状況が考えられます。

生活保護は「困窮のため最低限度の生活を維持することができない」場合に受給対象となる可能性があるため、預貯金や売却できる財産がないかどうか確認した上で、どうしても再就職が難しい場合は、生活保護を受けられるかどうか福祉事務所に相談してみましょう。

熟年離婚の流れと手続き

ここでは、熟年離婚の手続きについて詳しく解説していきます。
熟年離婚の流れは通常の離婚と変わらず、「協議離婚」→「離婚調停」→「離婚訴訟」の順番で進んでいきます。
それぞれのステップに分けて、簡単にご紹介します。

協議離婚

まずは、夫婦同士の話し合いで円満な離婚を試みます。
熟年離婚の場合は一緒にいた期間も長いため、冷静に落ち着いて話し合いの場を持てることも多いです。
協議離婚で解決する場合は、金銭の支払いが絡むときは必ず口約束ではなく「離婚協議書」を作成しておきましょう。
さらに離婚協議書を公正証書にしておけば、もし金銭の不払いがあった場合に裁判をすることなく強制的に金銭を回収することができるので、トラブル防止のためにもおすすめです。
ただし、自身で書類を作成すると誤りが多いため、弁護士と一緒に作成すると安心です。

離婚調停

夫婦同士の話し合いで離婚できなかった場合は、離婚したい側が「離婚調停(夫婦関係調整調停)」の申立てをして調停が始まります。
離婚調停は、家庭裁判所の調停委員が夫婦を仲介して、話し合いを試みる手続きのことです。
調停は家庭裁判所内で第三者を介して行われますが、あくまでも”話し合い”というスタンスのため、調停委員が離婚を強制することはできません。
しかし、近年、調停員が感情的になり一方に味方をして手続きを進めて、不利な合意を事実上強いてくるという事案が増えてきているため、調停を成立させる場合もいったん持ち帰り、内容を弁護士に相談すべきです。
複数回の調停を重ねても合意に至らない場合は、調停不成立となります。

離婚訴訟

調停でも離婚に合意してもらえなかった場合、最後の手段として裁判に進みます。
早く決着をつけたいからといって、調停を経ずに訴訟を起こすことはできません(家事事件手続法257条1項より)。

裁判では、裁判所が離婚の判決を下せば強制的に離婚が成立しますが、離婚を認めてもらうためには「法定離婚事由」に該当することを証明する必要があります。

【民法上の法定離婚事由】

  1. 相手の不貞行為がある
  2. 相手からの悪意の遺棄がある
  3. 相手が3年以上生死不明である
  4. 相手が治る見込みのない精神病にかかっている
  5. その他、婚姻を継続し難い重大な理由がある(DV、モラハラ、暴力、借金など)

「性格の不一致」が離婚理由の場合、長期間別居していることを主張・証明すれば、夫婦関係が破綻している=婚姻を継続し難いと認められて離婚できる可能性があります。
なお、この別居について家庭内別居は基本的に含まれません。
いずれにしても、裁判においては主張を裏付ける証拠が必要なので、弁護士に相談した上で十分な証拠を準備してから臨みましょう。

熟年離婚は弁護士に任せるのがおすすめ

離婚は合意しているけれど、条件が定まっていないだけだから大丈夫という方が多くいらっしゃいますが、上記の通り、離婚協議は決めるべきことが多々ありその条件を整えることがメインです。
そのため、離婚自体はしてもいいと言われていても、実際には離婚できずに何年の期間が経過してしまう方が多々いらっしゃいます。
自分たちで解決しようと考える方もいらっしゃいますが、熟年離婚は弁護士に任せた方が良い場合もあります。
最後に、熟年離婚を弁護士に任せるべき理由を紹介します。

最大額の財産分与を受けられる

熟年離婚は長い期間を共に過ごした夫婦が多いため、それに伴って婚姻期間中に築かれた財産も高額になるケースが多いです。
婚姻期間中に築いた財産の2分の1を受け取ることができる「財産分与」は当事者たちで行うことも可能ですが、全財産を漏れなく調査するのは大変な作業です。
また対象財産が多ければ多いほど、計算方法も複雑化します。

一人で動いた場合には数百万円だった財産分与が、弁護士に依頼したことで数千万円に増えるようなケースも存在します。
また、前述の通り、ローンの残っている不動産はその処理について当事者の感情と現実の折り合いがつかずに話し合いが平行線に終わるケースがほとんどです。
最大額の財産を受け取って離婚後に安心して生活するためにも、弁護士に依頼するのがおすすめです。

調停や裁判に発展しても任せられる

夫婦同士の話し合いで円満に離婚できれば問題ないですが、相手が離婚を強固に拒否してくる可能性も考えられます。
弁護士に依頼していれば、もし離婚協議で解決しなかった場合でもスムーズに調停に移れますし、調停不成立となっても裁判の手続きを全てを任せられます。
離婚の話し合いがこじれて諦めてしまう人もいるなかで、常に近くでサポートしてくれる弁護士の存在はとても心強いものです。

まとめ


いかがでしたでしょうか。
本記事では、熟年離婚の主な原因や事前に準備すること、離婚の流れを解説しました。
熟年離婚においては、とくに財産分与について若年層の離婚とは比べものにならないほど高額になるケースも多く、全財産を正しく分けるだけでも大変な作業です。
また、熟年離婚は、お互いの感情が、激しくぶつかることも多々あります。
離婚後の楽しい人生を少しでも長く過ごすためにも、離婚問題に強い弁護士に相談して複雑な手続きを任せることをおすすめします。

この記事の監修

東京都 / 港区
青山北町法律事務所
事務所HP
タイトルとURLをコピーしました