交通事故で家族が遷延性意識障害になったらやるべきこと

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株式会社ココナラに在籍する弁護士が監修しています
株式会社ココナラ

家族が交通事故で遷延性意識障害になると、被害者本人を介護する家族の精神的、肉体的負担は計り知れません。また、経済的にも多くの出費が伴います。
家族が遷延性意識障害になった場合は、被害の回復を金銭の賠償というかたちで加害者側に求めることができます。
賠償においては、保険会社が損害を低く計算したり、損害の一部について認めないことで、被害者側が十分な賠償を受けられないケースがあります。
そこで今回は、遷延性意識障害の損害賠償請求手続きや賠償額が減額される場合の対処法について解説していきます。

▼この記事でわかること

  • 遷延性意識障害について理解できます。
  • 遷延性意識障害の損害賠償請求方法について知ることができます。
  • 遷延性意識障害の賠償額が減額される場合とその対処法を知ることができます。

▼こんな方におすすめ

  • 家族が遷延性意識障害になった方
  • 家族が遷延性意識障害になって何から始めたら良いのか知りたい方
  • 遷延性意識障害について誰に相談したら良いのか知りたい方

遷延性意識障害とは

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遷延性意識障害は、一般的に「植物状態」と言われる状態のことを指します。日本脳神経外科学会では遷延性意識障害を次の状態が3カ月以上続いていることと定義しています。

  • 自力で移動できない
  • 自力で食べることができない
  • 大小便を失禁してしまう
  • 意味のある発言ができない
  • 簡単な命令に応じる以外の意思疎通ができない
  • 追視はできても認識することができない

このように、遷延性意識障害は交通事故が原因の後遺症の中でも特に重篤な後遺障害です。被害者本人だけではなく、介護する家族にも大きなストレスや様々な負担が伴うことになります。

交通事故による遷延性意識障害の損害賠償請求手順

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交通事故で被害者が遷移制意識障害と診断された場合、損害賠償請求はどのように行えばよいのでしょうか。
結論から言うと、遷延性意識障害の損害賠償請求は弁護士に依頼し、しっかり手続きをサポートしてもらうことがベストだと考えられます。というのも、被害者が遷移性意識障害となった場合、「示談金交渉をする」という、通常のプロセスに入る前に「成年後見人を選ぶ」必要があること、加えて、話の内容も複雑であることが多いためです。以下で詳しく見ていきましょう。

成年後見人を選任する

遷延性意識障害を患った場合の交通事故処理は、まずはじめに「成年後見人を選ぶ」というプロセスが必要な点が、通常の交通事故処理とは大きく異なります。
というのも、遷延性意識障害になった場合には心神喪失状態であるから、法的には意思能力がないと評価され、損害賠償請求等の法律行為を自分で行うことができません。そのため、被害者本人の代理人として加害者や保険会社へ損害賠償請求手続をしてくれる成年後見人を選任しなければなりません。
成年後見人を選任するには、家庭裁判所に申し立てをし、裁判所から成年後見人が選任されることになります。成年後見人は遷移性意識障害の賠償金請求のみならず、日常的な契約など、本人に代わって行う必要があるあらゆる場面で必要な存在です。できるだけ早めに申し立てをし、選任してもらうことが大切です。

なお、被害者本人が未成年者であって、親権のある父母がいる場合は、父母を法定代理人として遷延性意識障害の賠償金請求やそのほかの契約をすることができます。そのため、このようなケースでは成年後見人の選任を申し立てる必要はありません。

損害賠償請求をする

成年後見人が決まったら、ようやく示談金交渉に入ります。
示談金交渉を始める際は、前提として「後遺障害等級認定」を受ける必要があります。後遺障害等級の認定を受けるには、損害保険料率算出機構という団体に申請をする必要があります。その申請には、大きく分けて事前認定と被害者請求の2つの方法があります。

事前認定では、加害者側が契約している保険会社が申請を行うことになります。保険会社が必要な書類すべてを揃えて申請するため、被害者側の手間はかかりませんが、相手方保険会社がどのような申請をしたのか知ることができません。
一方、被害者請求は、被害者自身で損害賠償請求を行います。請求までには申請書類を用意する手間がかなりかかるため、交通事故に関する専門知識を持った弁護士に依頼するケースが一般的です。

あまり考えたくはない話ですが、事前請求を選択した結果「加害者側の保険会社が後遺障害等級認定を低くするように申請したのではないか?」と、被害者側の方が疑心暗鬼になるケースも現実にはあります。それであれば、はじめから被害者請求を選択するということも考えてもよいでしょう。
もし、ご自身の加入している自動車保険に弁護士費用特約が付加されている場合は、弁護士費用特約を使って弁護士に依頼することで、被害者側の手続き上の手間を大幅に減らすことができます。また、弁護士費用も実質ゼロ円となる場合も多くありますので、検討することをおすすめします。

遷延性意識障害の損害賠償請求をする際の注意点


遷延性意識障害の損害賠償請求では、保険会社の対応に注意が必要です。主に以下の2点から、保険会社は少ない損害賠償額を条件とした示談を持ち掛けてきます。

保険会社は余命を短く見積もる

遷延性意識障害になった被害者は、事故後も長い間生存する場合がありますが、保険会社は余命を数年とした逸失利益や将来に渡る介護料しか認めないケースがあります。もし実態より短い余命しか認めてもらえないのなら、逸失利益や介護料が少なく見積もられたことになり、被害者側から見れば金銭的に不利な条件を提示されていることになります。このような場合、自分だけで保険会社を説得して、ベストな賠償の条件を認めさせることは非常に困難です。
弁護士に依頼することでこれらの不利な示談を回避し、正当な賠償額を勝ち取るチャンスは高まります。

保険会社は自宅介護を認めたがらない

交通事故で遷延性意識障害になった被害者を家族が自宅で介護する場合、訪問介護による介護費だけでなく、家族が介護する介護費用が認められるケースがあります。
しかし、一般的には入院による介護の方が自宅介護より費用が安いため、保険会社は自宅介護を認めたがらず、安い介護費用を提示してきます。
現実的には、遷延性意識障害の人を長い間介護する病院はほとんどなく、一時的に受け入れられたとしても、入院してしばらくすると転院を催促され、次々と別の病院を渡り歩くケースもあります。
保険会社からのこれらの対応に対しては、適切な主張や証拠の提出、必要な反論を行い、現実に即した余命の認定や介護費用を得ることが大切です。交通事故に精通した弁護士に依頼すれば、保険会社からの主張に適切に応じてくれます。

遷延性意識障害への損害賠償請求は弁護士に依頼するべき


遷延性意識障害の損害賠償請求は慰謝料の額や受けられるサポートなどの観点から、自分ではなく弁護士に依頼することが最も現実的です。少しでも多くの示談金を勝ち取りたいなら、弁護士基準の示談金を請求するのが得策と考えられます。

遷延性意識障害の慰謝料の目安

先にも触れたとおり、示談金には①自賠責保険の基準、②任意保険の基準、③弁護士の基準の3つの基準が存在します。
3つの基準のうち自賠責保険は最も示談金の金額が低い基準であり、自賠責保険の趣旨から被害者には最低限の保障が行われます。
次に、任意保険の基準ですが、これは保険会社の内部で決められた基準です。任意保険の基準は会社によって異なりますが、自賠責保険の基準と同程度、もしくはやや高い程度と考えておきましょう。
最後に、弁護士の基準ですが、これは裁判をした場合に得られる金額を基準にしているため、3つの基準のうち最も高額になります。
遷延性意識障害になった場合該当する後遺障害等級は、1級1号の「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」または2級1号の「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」となります。

これらの等級に該当する場合、慰謝料や入院・通院治療費、逸失利益などをすべて含んだ「示談金」の総額は億単位になることも多くあります。とは言え、逸失利益などは年齢や職業により異なる場合も多いため、一概に比較することはできません。

それでも、示談金算出の「基準」の違いのイメージは知っておきたいものです。
そこでここでは、個別の事情によっても比較的金額に差がない「慰謝料」を例に、それぞれの基準ごとの金額をまとめてみます。

【遷移性意識障害で受け取れる慰謝料金額の例】

後遺障害等級 症状 自賠責基準 裁判基準
1級1号 常に介護を要する状態 1,600万円 2,800万円
2級1号 随時介護を要する状態 1,163万円 2,370万円

※上記はあくまで目安であり、個別の事情により異なります。

このように、「基準」の違いは、もらえる金額に大きな差を生むことがわかります。

弁護士などに依頼することなく、家族などが保険会社と交渉すると、任意の基準で金額が示されることになります。これを知らないと、「大手の保険会社なのだから間違いないだろう」と考えて示談書にサインをしてしまうのです。
弁護士に依頼すれば、自賠責保険の基準や任意保険の基準よりも多くの示談金を受け取ることができる可能性があります。今後の負担を考えれば、少しでも多くのお金を得られる弁護士基準の示談金を請求するべきでしょう。

弁護士に依頼すれば手続きをサポートしてくれる

交通事故に関する専門的な知識を持った弁護士なら、複雑な遷移性意識障害の損害賠償請求手続きを代行してくれるため、書類の作成や手続きの手間を大幅に省くことができます。遷延性意識障害は本人のみならず被害者の家族にとっても精神的、経済的な負担が生じるため、できるだけ手間を省いて請求を行いたいものです。まずは交通事故専門の弁護士に相談してみましょう。
弁護士を探す上で、その助けになるものの一つに「ココナラ法律相談」のような弁護士ポータルサイトが挙げられますです。
ココナラ法律相談では、「分野」、「エリア」、「各種条件」を指定した上で、あなたに合いそうな弁護士の選択肢を与えてくれます。弁護士を探す際のご参考として、ぜひご活用下さい。

まとめ


遷延性意識障害は、一般的に「植物状態」と言われる本人や家族に大きな負担を強いる後遺障害です。
交通事故で遷延性意識障害になった場合は、加害者に損害賠償請求を行うことができますが、手続きには成年後見人の選任や後遺障害等級を獲得するための請求手続きが必要です。
また、遷延性意識障害は保険会社が示談金を低く見積もってくることが多いため、専門知識を持った弁護士に依頼し、適切な申請や交渉を行うことが望まれます。

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