交通死亡事故の慰謝料の金額・相場とは?増額見込みのあるケースについて解説

交通事故

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株式会社ココナラに在籍する弁護士が監修しています
株式会社ココナラ

突然の交通事故で大切な人を亡くした遺族が負う悲しみは、とても大きなものになります。
被害者が負ったそのような精神的な苦痛に対する慰謝料として、加害者に損害賠償請求することが可能です。

そこでこの記事では、交通事故の加害者に対して損害賠償請求を検討している被害者遺族のために、交通死亡事故時に請求できる慰謝料の種類や計算方法、遺族間での慰謝料の分配方法、慰謝料以外にも請求できる賠償金などを紹介します。
適切な金額の損害賠償を受け取るために、ぜひ参考にしてください。

▼この記事でわかること

  • 死亡事故の慰謝料の種類や計算方法がわかります
  • 慰謝料が増額できるケースがわかります
  • 慰謝料以外にも請求できる賠償金がわかります

▼こんな方におすすめ

  • 死亡事故の加害者に対し慰謝料の請求を検討している方
  • 死亡事故の慰謝料の金額の目安を知りたい方
  • 加害者から適切な賠償金を受け取りたい方

死亡事故の慰謝料の計算方法と金額

交通事故により被害者が死亡した場合に発生する慰謝料は、被害者本人と遺族に対する精神的な苦痛に対する賠償金として支払われます。
慰謝料の金額は、計算する際の基準により、ある程度想定ができます。

死亡事故の被害者に支払われる慰謝料の計算基準は、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準の3つがあります。
どの基準で慰謝料を算定するかにより、金額は大きく変わります。
明確な基準が明らかにされていない任意保険基準以外は、金額の目安が示されていますので、それぞれの計算の考え方を紹介します。

自賠責保険基準

自賠責保険基準とは、自賠責保険が定めている基準です。
加害者が加入している自賠責保険から支払われる慰謝料に適用されます。

被害者本人と遺族に対する慰謝料は、以下のように定められています。

本人に対する慰謝料 400万円
遺族に対する慰謝料(請求権者1名) 550万円
遺族に対する慰謝料(請求権者2名) 650万円
遺族に対する慰謝料(請求権者3名以上) 750万円
遺族に対する慰謝料(被扶養者がいる場合) 上記に加え200万円

遺族に対する慰謝料は、請求権者数や被扶養者の有無により決定します。
請求権者とは、被害者の両親や配偶者、子どもです。

これらの合計額が自賠責保険基準の慰謝料となります。
例えば、慰謝料を請求する遺族が配偶者と子供1名だった場合、以下のように計算します。

【本人分(400万円)】+【請求権者2名(650万円)】+【被扶養者1名(200万円)】=1250万円

任意保険基準

任意保険基準とは、加害者が加入している任意保険会社が定めている基準です。
基準が会社により異なることと、また基準が明らかにされていないため、明確な慰謝料の金額を知ることはできません。
一般的に自賠責保険による慰謝料に比べると、高額になる傾向があります。

弁護士基準

弁護士基準とは、弁護士が介入し裁判になった場合に採用される基準で、過去の裁判事例をもとに判断された金額となります。
金額の目安がまとめられた「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故センター東京支部編)という書籍に記載された金額が、弁護士基準として採用されています。

被害者本人と遺族に対する慰謝料は、被害者の立場によって以下のように定められています。

一家の支柱 2800万円
一家の支柱に準ずる場合(母親、配偶者) 2500万円
その他(独身男女、子どもなど) 2000~2500万円

慰謝料を受け取る相続人とは

慰謝料は被害者本人に対するものと遺族に対するものの2種類があります。
死亡事故の場合、被害者本人は死亡しているため、遺族の中から相続人を選定し、本人に代わり請求や受け取りを行うこととなります。

慰謝料を受け取る相続人は、「配偶者」「子」「両親(祖父母、曾祖父母)」「兄弟姉妹」の中から選定されます。
また、選定される優先順位も決められており、以下のリストの(1)と(2)からそれぞれ一組ずつ選定されます。
配偶者がいる場合、配偶者は必ず「相続人」に選定され、さらに追加で(2)のうち最も上位のグループが選定されます。

(1) 配偶者
(2) 1:子
2:父母
3:父母が死亡している場合は祖父母
4:祖父母も死亡している場合は曾祖父母
5:兄弟姉妹

相続人が受け取る慰謝料の分配率

被害者本人に対する慰謝料につきましては、法律で相続人の間での分配率が定められており、相続人の組み合わせによって、以下のように決定されます。

相続人 分配率
配偶者:子ども 1:1
配偶者:両親 2:1
配偶者:兄弟姉妹 3:1
子どものみ、両親のみ、兄弟姉妹のみ 均等に分配

両親や兄弟姉妹などが複数人になる場合は、分配率に従い分配した後で、さらにその人数で分割します。
例えば、配偶者と子ども二人の場合は、以下のように計算します。

  1. 配偶者と子どもに50%ずつ分配する
  2. 子どもに分配された50%をさらに子ども2人で均等に分配する
  3. 最終的な分配率は、配偶者50%、子ども1人目25%、子ども2人目25%となる

法律ではこのように決定されていますが、被害者の遺言書に従ったり、相続人同士の話し合いを行って分配率を決定することも可能です。
この場合の話し合いを「遺産分割協議」といい、決定するためには相続人全員から同意を得ることが必要です。
被害者本人の慰謝料の請求権を相続する人物についての基準です。

被害者本人の慰謝料請求権とは別に、遺族固有の慰謝料請求権についても、法律に定められており、「両親」「配偶者」「子」のみとなっています。
しかし、これらに該当しない場合でも、例外的に「長期にわたり被害者が実際の子のように保護してきた弟」など、これらの遺族と同等の関係があると判断された場合には、兄弟姉妹や内縁の妻・夫などにも支払われることがあります。

死亡事故の慰謝料増額が見込めるケース


ここまでの紹介したように死亡事故の慰謝料には一定の基準があり、被害者や遺族の立場などにより金額が決定します。
さらに状況によっては慰謝料が増額でき、基準を超える金額を請求できるケースがあります。
死亡事故の慰謝料が精神的な苦痛に対して支払われる賠償金という性質上、精神的苦痛を大きくさせるような事情がある場合が該当します。
死亡事故の慰謝料の増額見込みがあるケースを紹介します。

加害者に故意や重過失がある

加害者に「故意がある事故」もしくは「重過失がある事故」である場合です。
故意がある事故とは、加害者が事故を起こすことを目的としていた場合が該当します。
重過失がある事故は、無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、信号無視などの違反行為が原因で発生した場合が該当します。

加害者に著しく不誠実な態度がある

加害者が全く反省が見られない態度をしている場合、事故後の説明や裁判で嘘の事実を述べたりしている場合などが不誠実な態度に該当します。
また加害者だけなく、加害者の親族の態度が不誠実な場合にも増額になる可能性があります。

被害者に特別な事情がある

被害者の家庭における立場など、その他の特別な事情によっても増額される場合があります。
「遺族の健康面や学業への悪影響がある」、「社会的地位や資産」、「業務などへの影響」などが考慮されます。

死亡慰謝料以外で遺族が請求できる損害賠償金


ここまでに説明してきた「死亡慰謝料」は、被害者本人や遺族の精神的な苦痛に対して支払われる金額です。
これ以外にも、事故が起こったことにより発生した財産的損害について、その損害の賠償を請求することができます。
損害賠償金は起こした事故により遺族に発生した出費が広く損害として認められ、次のようなものがあります。

死亡逸失利益

死亡遺失利益とは、被害者が将来得られるはずであった利益です。
被害者が交通事故で亡くなることなく生存していた場合に、将来得られるはずであった利益を収入等から推計して算定します。
死亡遺失利益を算定するための具体的な計算式が決まっています。

【基礎収入額】×(1-【生活費控除率】)×【就労可能年数に対応するライプニッツ係数】

計算式に使用される項目の意味はそれぞれ以下の通りです。

基礎収入額 事故前の時点で被害者が得ている収入の金額です。給与所得者であれば事故前の収入、学生であれば全年齢平均賃金額という形で、本人の実績や統計データなどを元に決定されます。
生活費控除率 被害者が生存していれば必要であった生活費を計算するための数値です。亡くなったことにより不要となった費用であるため相当する金額を控除します。
就労可能年数に対応するライプニッツ係数 死亡しなかったら得られたはずの将来の賃金の合計金額を現在の賠償金額として算定する際に、中間利息を控除して現在価値を算出する数値です。67歳まで働くという前提のもと、67から事故当時の年齢を引いた年数等、被害者の年齢や立場によって計算方法が決定されます。

葬儀費用

被害者が事故後入院や通院した場合に、発生した交通費の実費を請求できます。
本人が支払ったものだけではなく、付き添いを行った遺族の交通費も請求することができます。
公共交通機関の料金だけではなく、自家用車のガソリン代や駐車場代も請求可能です。

まとめ


本記事では慰謝料の種類や計算方法、遺族間での慰謝料の分配方法、慰謝料以外にも請求できる費用などをまとめました。
支払われる慰謝料はある程度基準が定められており、被害者や遺族の立場などに合わせた金額が支払われることとなっています。
また、弁護士を通して慰謝料を算定すると、自賠責保険や任意保険基準で算定する場合に比べてより高額な慰謝料を請求することができます。
よくわからず言われるがままに示談してしまうと、支払われる可能性があった慰謝料を受け取り損ねてしまうことも考えられます。
今回紹介したポイントを参考にして、適切な金額を受け取ることができるように慰謝料の仕組みを理解しておくようにしましょう。

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