親が借金を残したまま亡くなった場合、後からその事実を知ることがあります。
相続では資産だけでなく債務も親から引き継がなければならないため、状況によっては相続放棄をした方がよい場合があります。
そこで本記事では、亡くなった親に借金があった場合の責任の所在や対処法、相続放棄のメリット・デメリットについて詳しく解説します。
▼この記事でわかること
- 亡くなった親に債務があった場合の相続について知ることができます
- 債務の責任や対処法について知ることができます
- 相続放棄について知ることができます
▼こんな方におすすめ
- 債務を残して亡くなった親がいる方
- 親に債務があるため相続するか悩んでいる方
- 相続放棄のメリット・デメリットを知りたい方
親に債務があった場合、相続はどうなる?
亡くなった人に債務があった場合、例えば亡くなった父親に借金があった場合、相続人である子供に債務は引き継がれるのでしょうか。
相続はプラスの財産だけでなく債務も引き継ぐ
子にとって「相続」と言うと、価値のある財産を親から引き継ぐ、というイメージを持つ方が多いでしょう。
しかし、現金や不動産などのプラスの財産だけでなく、消費者金融からの借入などの債務(借金)も相続の対象となります。
そのため、何も考えずに相続したり、親の債務状況を調べないまま相続してしまうと、後になって借入先から思わぬ請求が来ることがあります。
債務を相続したくない場合は、特別な手続きが必要です。
債務の承継をプラスの財産の範囲内に留める手続きをしたり、相続を放棄することで子供が親の債務を返済する義務を負わずに済みます。
相続の種類
相続には①単純承認、②限定承認、③相続放棄の3種類が存在します。
単純承認では、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含めて、全て被相続人から引き継ぐ相続です。
単純承認するには、特別な手続きは必要ありません。
何もしなければ、単純承認となります。つまり、自動的に相続人が被相続人の財産を相続することになります。
限定承認は、プラスとマイナスの財産両方が存在する場合や、プラスの財産があるけれども借金がいくらあるかわからない、というときに考えうる相続です。
限定承認では相続財産の範囲内で相続をするため、マイナスの財産の方が大きくても債務はプラスの財産の範囲内までで済みます。
そのため、「相続のせいで莫大な借金を背負ってしまった」という事態を避けられます。
相続放棄は、全ての財産を放棄することを言います。
被相続人の債務がプラスの財産より明らかに大きい場合に、是非検討したい選択肢です。
相続放棄のメリット・デメリット
親が借金を残して亡くなったとき、検討したい相続放棄。
どんなメリット、あるいはデメリットがあるのでしょうか。
相続放棄するメリット
前にも述べた通り、相続放棄の最大のメリットは「親が作った借金の返済義務から逃れることができる」点です。
親から債務を相続した場合、子であるあなたは債権者に対して、自ら親の借金の返済をする義務があります。
もし返済に行き詰まれば、督促や一括請求などに悩まされることもあるでしょう。場合によっては債務整理をしなければならなくなることもあります。
相続放棄をすれば、これらの将来的なリスクから逃れることができます。
もう一つのメリットは、「相続放棄は比較的簡単にできる」ことです。
上でも少し触れた「限定承認」の場合は、相続人全員が合意の上、全員で限定承認をする必要があるなど、相続人間の調整や手続きが厄介です。
一方、相続放棄は自分の意志だけでできます。家庭裁判所への申立も、それほど複雑ではありません。
そのため、亡くなった親が財産に比して多額の借金を負っていた場合に、まず検討したい選択肢です。
相続放棄するデメリット
では、相続放棄のデメリットは何でしょうか。
1つ目は、相続放棄をすると「初めから相続はなかったものとされる」という点です。
そのため、仮に相続財産にプラスの財産があった場合でも、相続することはできません。
特に注意したいのは「相続放棄は撤回ができない」点です。
親が借金を背負って亡くなったが、後になって借金の額を上回る財産があることが判明した。この時点で「それなら相続放棄を撤回したい!」と思っても、一度相続放棄をした場合は撤回することができません。
そのため、プラスの財産がマイナスの財産よりも多い可能性がある場合は、本当に相続放棄するかどうか慎重に考えましょう。
もう一つは「相続人である他の親族に影響が出ることがある」点です。
自分が相続放棄をすると、他の相続放棄していない相続人が、その分の債務を引き継ぐことになります。
例えば、
「父親はすでに他界。母親が300万円の借金を残して亡くなった。兄弟は自分を含めて3人」
という場合、
だれも相続放棄をしなければ、相続する借金の額は100万円ずつ
自分だけ相続放棄をすれば、他の兄弟が相続する借金の額はそれぞれ150万円ずつ
となります。
つまり、負の財産のしわ寄せが他の相続人へ行く可能性があります。
自分だけがひっそりと相続放棄をした場合、そこから他の相続人との関係が悪化する可能性があることは、頭の隅に留めておいてもよいかもしれません。
補足ですが、自分が相続放棄したからと言って、その子供(つまり孫)に借金が引き継がれることはありません。
そのため、「借金が子供に行ってしまったら困るから」という理由で相続放棄をためらう必要はありません。
相続放棄を検討中なら弁護士に相談しよう
相続放棄を検討中の方は、一度弁護士に相談してみましょう。
経験豊富な弁護士なら、相続放棄を含めたより良い手段がないかアドバイスをもらえたり、相続放棄手続きの代行などをしてくれます。
弁護士なら他の手続きも含めてアドバイスしてくれる
相続問題に関する経験が豊富な弁護士であれば、相続放棄の手続きについて、メリットやデメリットを詳しく教えてくれます。
相続問題は親族とのトラブルに発展することもあるため、状況に応じて適切な判断をすることが大切です。
弁護士に相談しながら手続きをすることで、相続人同士のトラブルや大きな間違いをするリスクを減らすことができます。
相続放棄の手続きを代行してくれる
弁護士であれば、戸籍謄本や住民票などの必要書類を取得すると、相続放棄申述書などの必要書類を作成してくれます。
申述書は弁護士が家庭裁判所に提出し、その後の書類に関するやり取りも全て代行してくれます。そのため、本人が裁判所に出向いたり、裁判所とのやり取りや確認作業を担う必要はありません。
相続時は親族とのやり取りなど、相続手続き以外にも多くのやるべきことが発生するため、弁護士に依頼してできるだけ手続きの負担を減らしたいところです。
まとめ
親が亡くなったときは、子供などの相続人が財産を相続します。
この際、単純承認であれば相続人は被相続人からプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続することになります。
その点、子供が相続放棄をすると、親の借金の返済義務から逃れられます。
一方で、相続放棄は初めから相続はなかったものとして扱われるため、いかなるプラスの相続財産も引き継ぐことはできません。また、被相続人の債務が大きい場合などは他の相続人に影響が出る恐れもあります。
相続放棄にはメリットとデメリットの両方があります。
不安なときは、相続問題の経験が豊富な弁護士に相談してみましょう。弁護士であれば、適切なアドバイスをしてくれるはずです。