亡くなった親が連帯保証人だった。相続人が複数の場合、保証債務はどう引き継がれる?

相続・遺言

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相続が発生すると、「亡くなった親が連帯保証人だったが、相続したら自分も連帯保証人になるのだろうか」と悩む方がいます。
連帯保証人の立場は相続すると引き継がれるため、弁済が必要な場合は大きな負担を伴うことがあります。連帯保証人の立場を引き継ぎたくない場合どうすれば良いのでしょうか。
また、複数の相続人がいる場合はどうなるのでしょうか。
今回は、親が連帯保証人だった場合の相続対策について解説します。

▼この記事でわかること

  • 亡くなった親が連帯保証人だった場合、子供が連帯保証人の地位を引き継ぐのか、知ることができます
  • 相続人が複数いる場合の、連帯保証債務の取扱いについて知ることができます
  • 親の連帯保証債務を引き継がないためにはどうするべきか知ることができます

▼こんな方におすすめ

  • 亡くなった親が連帯保証人だった、という方
  • 被相続人が連帯保証人で、相続する人が複数いる方
  • 連帯保証人としての保証債務は分割できるのか知りたい方

亡くなった親が連帯保証人だった場合の相続時の取扱い

亡くなった親が連帯保証人だった場合、相続時の取扱いはどうなるのでしょうか。ここでは、連帯保証人や保証債務についての基本的なことを解説します。

連帯保証人は「債務」を負っている

そもそも、連帯保証人とは何なのでしょうか。
結論から言うと、「連帯保証人になるということは、借金を背負うということとほぼ同じ」です。

例えば、Aさんがお金を借りたいとします。
しかしお金を貸す側からすると、Aさんは収入が少なく財産もなく、貸したお金を本当に返してくれるのか不安です。
そんなとき、Aさんは「連帯保証人」をつけると、お金を借りることができる場合があります。
そこでAさんは、Bさんに連帯保証人になってくれるように頼みました。Bさんは快諾しました。

さてここで、Bさんが連帯保証人として負っている義務は何でしょうか。

Bさんは、債権者から「お金を払え」と言われたら、支払わなければなりません。

本来、お金を借りたのはAさんですが、法律では

「お金を貸した人、つまり債権者は、借りた本人 あるいは 連帯保証人のどちらに借金返済の請求をしても良い」

と決まっています。
しかも債権者は、貸している金額の範囲内で、好きな金額をBさんに支払うよう請求できます。Bさんに「全額返せ」と言うこともできます。

要は、借金をしたこととほぼ同じような意味を持つわけです。
なお、Bさんが連帯保証人として負っている義務は、法律用語では「保証債務」と呼ばれます。
「債務」ですから、明確に負の財産です。

連帯保証人の立場は相続時に相続人に引き継がれる

相続は、プラスの財産だけでなく、債務などのマイナスの債務も引き継ぎます。
そのため、相続される人が連帯保証人だった場合、その人が負っていた連帯保証債務も相続の対象になります。
つまり、被相続人である親が生前、借金の連帯保証人であった場合は、相続人も連帯保証人の立場を引き継ぎ、第三者の債務への責任を負うことになります。

連帯保証人の立場が引き継がれることを知らないと、後になって、債務を負っている本人が債務を返済できない場合、連帯保証人となったあなたに債権者から突然請求がある可能性も否定できません。
相続時は、被相続人が何らかの保証人になっていないか必ず確認しましょう。

複数の相続人が連帯保証人になる場合の「分け方」は?

複数の相続人が連帯保証債務を相続する場合、連帯保証債務は遺産分割の対象になるのでしょうか。
また、「誰がどのくらい支払う義務を負うか」を、何らかの合意によって変えることはできるのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。

連帯保証債務は遺産分割の対象になるのか

相続人が複数いる場合、連帯保証債務は、遺産分割の対象になるのでしょうか。

前にも述べたとおり、連帯保証債務は負の財産です。負の財産も相続の対象になります。
ただし、負の財産は相続の際、自動的に法定相続分に応じて分割されます。
「自動的に」分割されるので、話し合いなどによる遺産分割の対象にはなりません。

では、連帯保証債務は相続時にどのように分割されるのでしょうか。

連帯保証債務は、基本的に法定相続分で分割されます。
たとえば、配偶者と子供2人がいる場合、配偶者は2分の1、子供はそれぞれで4分の1ずつ相続します。

具体的に、被相続人が亡くなる前に1000万円の連帯保証債務をもっていたとします。この場合、

  • 母が500万円の連帯保証債務を
  • 子供二人がそれぞれ250万円の連帯保証債務を

それぞれ相続することになります。

相続人だけで連帯保証債務の「分け方」は決められるのか

「連帯保証債務は、基本的に法定相続分で分割」されると上で述べました。

「誰がどれだけ連帯保証債務を負担するか、その割合」のことを、連帯保証債務の「分割割合」と言います。
この分割割合は、相続人が話し合った上で、自由に変えることはできるのでしょうか。

例えば上の、母と子供二人のケースで、
「一番上の子供が全額、連帯保証債務を背負う」
などと、遺産分割協議などで決めることはできるのでしょうか。

結論を言うと
「債権者の合意がない限り、できない」
が答えです。

やや直感的な話になりますが、債権者の立場に立つと、相続人が勝手に連帯保証債務を変えてしまうことがなぜダメか、わかるかもしれません。
例えば、連帯保証債務を背負った一番上の子供に全く支払い能力がなかったら、あるいは、一番上の子供が「怖い人」だったら・・・債権者にとっては、勝手に変えられると不利なことも起こり得るからです。

つまり、相続人が債権者に対して連帯保証債務の分割割合を変更し、そのことを債権者に対して主張したい場合は、債権者の同意が必要です。

どうしても連帯保証債務の「分け方」を変えたい場合

連帯保証債務の分割割合を変更するには、債権者の同意が必要です。

債権者が「ダメ」と言ったら、どんなに相続人同士が納得していたとしても、分割割合を変更して債権者に対して主張することはできません。

とはいえ、法定相続分以外の割合で連帯保証債務を分けることを、相続人すべてが望んでいる場合もあるでしょう。
例えば「高齢の母に連帯保証債務のうち、半分も背負わせたくない」などと言った場合です。
こうした場合、何か良い手立てはないのでしょうか。

実は、相続人同士が内々に「誰がどれだけ、連帯保証債務を負担するか」を決めるのは、相続人同士の同意だけですみます。

例えば、複数の相続人のうち、誰かひとりだけ(Yさん)が連帯保証債務を負うことを相続人すべてが合意しているとします。
ただし、債権者は連帯保証債務の分割割合を変更することに合意していません。

この場合、遺産分割協議書などで、Yさんがすべての連帯保証債務について負担する旨を明記しておけば、以下のことが可能になります。

  • 債権者は相続人の誰に対しても、法定相続分に従って分割された連帯保証債務について弁済を求めることができます。
  • 仮にYさん以外の相続人が債権者の求めに応じて一度弁済した場合、その相続人はYさんに対して、後で弁済した分のお金を支払ってもらうよう、請求することができます。

つまり、債権者が連帯保証債務の分割割合を変えることに合意していなかったとしても、相続人同士が合意していれば、相続人同士で決定された自分の負担額を超える支払いをした場合、その分を他の相続人に対して請求できるということになります。

なお、この「合意」はどんな合意であっても構いません。
上の例で、Yさん以外の人(例えばZさん)がYさんに「請求する」というと、多くの人は「債権者に対してお金を支払った場合、後でその分を返してもらう」という事後的なものを想像するでしょう。そうした取り決めももちろんできます。

もしZさんに手持ちのお金がほとんどない場合などは、別のやり方もあります。
「Zさんが債権者から請求を受けた場合、YさんがZさんの口座に債権者から指定された支払い期日までに振り込む」という取り決めもできます。
そうすれば、Zさんは債権者への支払いのために、自分がお金を工面する必要はありません。

連帯保証債務を相続したくなければ、相続放棄か限定承認を

相続人が連帯保証人の地位を回避するためには、相続放棄、あるいは限定承認をする必要があります。
相続放棄した相続人がいる場合の保証債務の取扱いについても理解しておきましょう。

相続放棄か限定承認をすれば、連帯保証人にならない

被相続人に債務がある場合、相続人は相続放棄、あるいは限定承認をすることができます。
相続放棄や限定承認は相続を知ってから3か月以内に手続きが必要です。
相続放棄や限定承認については、こちらの記事が詳しいです。参考にしてみてください。

相続放棄をするとはじめから相続人ではないものとして取扱われます。
財産・債務の両方を一切相続しないことになるため、連帯保証人の地位も引き継ぎません。

また、限定承認の場合は、相続人から引き継いだプラスの財産の分までしか、マイナスの財産を引き継ぎません。
そのため、「相続してみたら、借金を背負ってしまった」ということはなくなります。
もちろん、相続財産が差し引きしてプラス、となった場合は、そのままもらえます。
ただし、限定承認は相続人全員で限定承認を選択しなければならないなど、手続き上のハードルが相続放棄よりも高い点には注意が必要です。

相続放棄した相続人がいる場合の取扱い

相続人の中に相続放棄をした人がいる場合、保証債務の取扱いはどうなるのでしょうか。

保証債務は相続人の間で分けられます。また、相続放棄をした人は、その相続ははじめから無かったものとされます。つまり、相続放棄した人がいる場合「相続人の数」そのものが減るということです。
結果として、連帯保証債務を相続する際、一部の相続人のみが相続放棄すると、他の相続人の保証債務は相続放棄がない場合に比べて増加することとなります。

例えば、子ども3人が相続人であったとして、そのうち1人が相続放棄したとします。
相続放棄がなければ、連帯保証債務はそれぞれが3分の1ずつ引き継ぐはずでした。
しかし、一人が相続放棄しているので、相続人は残り2人しかいません。
そのため、相続する連帯保証債務はそれぞれ2分の1ずつとなります。

連帯保証人の地位を相続してしまったら

相続放棄を申請できる期間の3か月を過ぎてしまい、連帯保証人の地位を相続してしまった場合、どのような対策ができるでしょうか。

一番単純なのは、債権者から支払いを請求された際、素直に全額債務を支払ってしまうことです。債務は返済を遅らせていると遅延損害金が発生するのが通例です。そのため、長い目で見ると早めに支払ったほうが良いと考えられます。とはいえ、保証債務が高額な場合などは、なかなか難しいかもしれません。

債権者から連帯保証債務について支払いの請求を受けたけれども払えない、といった場合、金融機関に利息分の支払いを減らしてもらうように交渉するという対策も考えられます。自分の財産の状況に合わせて減額や分割払いなどの交渉を行ってみましょう。

どうしても返済ができない場合は、債務整理を検討することが現実的です。債務整理には任意整理、個人再生、自己破産などがあり、債務の状態に応じて最適な手続きは変わります。その際、債務整理に詳しい弁護士に相談すれば、適切なアドバイスをもらうことができるでしょう。

まとめ

親が連帯保証人だった場合、相続すれば自分も連帯保証人として保証債務を負います。
連帯保証人が負うべき連帯保証債務の分割割合は、債権者から合意を得ない限り変更することはできません。
しかし、債権者から合意を得ない場合であっても、相続人同士の取り決めによっては「誰がどれだけの連帯保証債務を負担するか」実質的な負担額を、内々に変更することはできます。
つまり、債権者に対して表向きは法定相続分に応じた連帯保証債務を負っているが、相続人同士で取り決めた負担額を超えた場合は、その分について、相続人同士の合意に基づく然るべき相続人に請求することができます。。

連帯保証人の立場を相続したくない場合は、相続放棄か限定承認によって相続を回避することができます。ただし手続きできる期間はあまり長くないため、注意が必要です。
万が一連宅保証債務を相続してしまい、かつ、債権者からの支払い請求に応じることが難しい場合は、弁護士を交えて債務整理をすることも検討してみましょう。

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