あなたは今、離婚した相手から「子どもと会わせて欲しい。」と言われた、または「子どもと会いたくても会わせてもらえない」とお悩みではありませんか?
面会交流については、まずは親同士で話し合ってきめるべきですが、難しい場合は調停を申し立てる方法もあります。
今回は、面会交流を拒否できるケースや面会交流調停について詳しく解説します。
▼この記事でわかること
- 面会交流を拒否、制限できるケースがわかります
- 話し合いで決めるべき面会交流の内容がわかります
- 面会交流調停の申立て方法や流れがわかります
▼こんな方におすすめ
- 面会交流について知りたい方
- どんなときに面会交流を拒否できるのか知りたい方
- 離婚前の別居時、離婚後に面会交流をめぐって元配偶者と揉めている方
面会交流とは
面会交流とは、子どもと離れて暮らす親(非監護親)が子どもと直接会ったり、電話などで連絡を取り合って子どもと交流をはかることです。
面会交流は、子どもの利益のために認められた非監護親の法律上の権利です。
子どもは面会交流によって一緒に暮らしている親(監護親)のみならず、非監護親からも愛されているのだという充足感、安心感を得ることができるのです。
愛情を感じることによって子どもの自己肯定感がはぐくまれ、子どもの健全な成長へとつながります。
面会交流はあくまでも親の監護により、子どもの健全な発育環境を整えるための権利です。
そのため、基本的に特別な事情がない限り面会交流は認められ、拒否することもできません。
裁判所(東京高等裁判所 平成25年7月3日)は「未成年者の福祉を阻害する等面会交流を制限すべき特段の事情がない限り、面会交流を実施していくのが相当」と述べています。
取り決めるべき面会交流の内容
面会交流について取り決めるべき内容は、以下のとおりです。
- 面会交流を行う子ども
- 面会交流の頻度
- 面会交流の日時・場所
- 子どもの受け渡し場所・方法
- 立会人(監護親など)の立ち合いの制限
- 生活環境が変化した場合の再協議の有無
- 第三者機関の利用の有無、利用する場合の援助の方法
- 第三者機関を利用する場合の費用負担
まずは、親同士で話し合って決めます。
あとで意見の食い違いが出ないよう、具体的に取り決めておくことが大切です。
ただし子どもの体調悪化などで急に面会交流を実施できない場合に備えて、柔軟性のある内容としておくことも必要です。
親同士で話し合いができない場合は、自分で調停を申し立てるか、弁護士に依頼するかを検討します。
話がまとまったら、あとで言った言わないのトラブルを防止するために内容を書面化して形に残しておきます。
離婚する場合は、ほかの離婚条件(養育費など)とあわせて離婚協議書または公正証書に取り決めた内容を残します。
第三者機関を使って面会交流をすることも可能
面会交流の第三者機関の利用によって面会交流が実現可能な場合は、面会交流を実施させる方向で話を進めていきます。
親同士の葛藤から、親同士では面会交流を実現させることが難しい場合に、面会交流がスムーズにいくよう、当事者の間に入って面会交流を援助してくれる第三者機関があります。
援助の形態としては、支援員が面会交流の場に付き添う「付き添い型」、子どもの受け渡しを行う「受け渡し型」、面会交流の日程調整のための連絡を行う「連絡調整型」があります。
それぞれの状況に合わせて、適切な方法を検討しましょう。
面会交流を拒否または制限できるケース
前述のとおり、面会交流を拒否または制限できるケースはかなり限定的です。
ではどのようなケースであれば面会交流を拒否または制限できるのか、みていきましょう。
連れ去りや暴力を振るわれるおそれが高い
子どもが連れ去られるおそれが高い場合、暴力を振るわれるおそれが高い場合は、基本的に面会交流を拒否または制限してもよいとされています。
連れ去りや暴力のリスクについては、非監護親の言動や性格・粗暴歴、過去の連れ去り・虐待の有無などを総合的に勘案して慎重に判断されます。
子どもが面会交流を拒否している
面会交流は子どもの健全な成長のためにありますから、子どもの意思も一定程度考慮すべきです。
ただ、子どもは監護親の意見に同調する傾向があります。
「面会交流を拒否する監護親から嫌われたくない」との思いから面会交流を拒否しているだけかもしれません。
子どもの判断能力に個人差はありますが、一般的には14歳前後が子どもの意思を尊重すべきかどうかの目安といえます。
子どもが14歳未満の場合は、子どもの本心はどうなのか慎重に見極める必要があります。
あなた自身が非監護親からDVを受けていた
子どもではなく非監護親に対するDVが子どもの面前で行われることを「面前DV」といいます。
面前DVも子どもに対するDVにあたる可能性があり、面会交流を実施することで子どもに悪影響を及ぼすおそれが大きい場合は、面会交流を拒否または制限できる可能性が高いです。
子どものための面会交流が実現できない
子どものための面会交流が実現できない場合とは、具体的には以下のケースのような場合です。
- 非監護親が子どもを連れ去るおそれがある
- 子どもに暴力を振るうおそれがある
- 子どもを犯罪に巻き込むおそれがある
- 子どもにふさわしくないことを体験させるおそれがある
- 今後の生活に影響を及ぼすような言動(子どもに多額の金品を渡す、監護親の悪口を吹き込むなど)が行われるおそれがある
こうした言動が行われるおそれがあるかどうかも慎重に判断する必要があります。
面会交流調停の進め方
面会交流の方法・条件については、まず親同士で話し合って決めますが、そもそも話し合いができない、話し合っても話がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てて取り決めることも可能です。
調停には、つぎの2種類の形があります。
- 夫婦関係調整調停(離婚):離婚を含めた話し合いを希望する場合
- 面会交流調停:離婚前の別居時や離婚後に面会交流の調停を希望する場合
調停でも話がまとまらず調停が不成立となった場合は、自動的に審判という手続きに移行します。
調停は当事者の合意で成立しますが、審判は裁判官が一方的に面会交流の方法・条件を決めます(当事者は審判結果に対して異議を申し立てることが可能です)。
なお親同士の話し合いを行わず、いきなり調停を申し立てることも不可能ではありません。
ただ、面会交流は親同士の協力があってはじめて実現可能となります。
相手が少しでも話し合いに応じてくれそうな場合は、まずは話し合いを試み、それでも難しい場合に調停を申し立てるべきでしょう。
面会交流調停の申立て方法
それでは、面会交流調停の具体的な申立て方法について解説します。
面会交流調停を申し立てるのは、離婚前の別居時または離婚後です。
離婚前に面会交流の取り決めを行っていたものの、離婚後に再度、話し合いを行う必要が出てきた場合でも面会交流調停を申し立てることができます。
申立人は、離婚前は夫か妻、離婚後は元夫か元妻のいずれでもかまいません。
いずれが申立てなければならないという決まりはなく、面会交流調停が必要と判断した方が申立てを行います。
申立てをする家庭裁判所(申立先)
基本的に申立てを行うのは、相手方(申立てを受ける方)の住所地を管轄する家庭裁判所です。
住所地を管轄する家庭裁判所は、家庭裁判所のホームページで調べることができます。
なお、当事者が合意した家庭裁判所を申立先とすることも可能です。
申立てに必要な費用
申立てに必要な費用は収入印紙代と郵便切手代で、弁護士へ依頼する場合は別途費用がかかります。
収入印紙代は子ども1人に付き1,200円で、下記の申立書に貼り付けます。
郵便切手代は各家庭裁判所によって異なりますが、概ね1,000円前後です。
申立て・調停の際に必要な書類
申立て・調停の際に必要な基本となる書類は次のとおりです。
<申立て時に必要な書類>
- 申立書及びその写し
- 子どもの戸籍謄本
<調停を進めていく上で必要な書類>
- 連絡先等の届出書
- 事情説明書
- 進行に関する照会回答書
- 非開示の希望に関する申出書(必要があれば)
必要な書類の書式は家庭裁判所のホームページからダウンロードすることができます。
ホームページに掲載されていない場合は家庭裁判所に問い合わせましょう。
不足なく説明したい場合は陳述書を準備しましょう
なお必要書類ではありませんが、陳述書をあわせて提出することも検討しましょう。
陳述書とは、調停委員から尋ねられそうな事項(監護の実績など)について記載する書面のことです。
うまく言葉で説明することが苦手、自信がないという方は作っておくとよいです。
「面会交流 陳述書」と検索すれば、陳述書のサンプルを見ることができます。
面会交流調停の流れ
最後に、申立書が受理された後、調停がどのような流れで進んでいくのか簡単に解説します。
- 申立書が受理される
- 1週間前後で裁判所から調停期日に関する日程調整の連絡が入る
- 調整後、裁判所から1回目の調停期日通知書が届く
- 指定された日時に家庭裁判所へ行き、調停が行われる
- 次回の予定を調整し、だいたい月1で調停期日が入るペースで進める
- 調停委員から調停案を提示される
- 双方が合意すれば調停成立
調停では個別に、調停委員から聞き取りを受けます。
調停が開かれる回数は、話し合いの状況によって決まります。
また調停中に面会交流を実施できるかどうかのテスト(試行的面会交流)が実施されることもあります。
面会交流は制限すべき特段の事情がない限り、何らかの形で面会交流を実施させる方向で話がまとめられます。
もし調停不成立となった場合は自動的に審判に移行します。
まとめ
面会交流は子どもの健全な成長のためにあります。
面会交流を実施するかどうか、またどのような方法で実施するかについては、まずは親同士で話し合って決めましょう。
その際にも子どもの視点を忘れてはいけません。
状況の変化により面会交流について決めた内容に不都合が生じたり、子どもの成長に応じて考え方の変化があったりした場合は、都度面会交流について決めた内容の見直しを行うことも大切です。
離婚後も理想的な親子の形となるよう、子どもをはじめ両親も納得できる条件で面会交流の方法を決めましょう。