離婚慰謝料の相場は?原因別の目安や請求するための条件、やるべきことを解説

離婚・男女問題

この記事の監修

大阪府 / 大阪市中央区
難波みなみ法律事務所

今、あなたは「離婚を機にパートナーに慰謝料請求したい」とお考えではありませんか?
ただ、本当に請求できるのか不安な方も多いでしょう。
そこで、この記事では、離婚慰謝料の相場など、離婚慰謝料を請求するにあたって必要となる前提知識について解説します。

▼この記事でわかること

  • 離婚慰謝料の相場がわかります
  • 離婚慰謝料を請求できるケース、条件がわかります
  • 離婚慰謝料を請求するためにやるべきことがわかります

▼こんな方におすすめ

  • 離婚を機に慰謝料請求したいと考えている方
  • 離婚慰謝料の相場、増額・減額要因を知りたい方
  • 離婚慰謝料を請求するための条件、やるべきことを知りたい方

離婚の慰謝料の定義

離婚の慰謝料は離婚自体慰謝料と離婚原因慰謝料の2種類からなります。

離婚原因慰謝料 パートナーから離婚理由となる行為(※)を受け離婚に追い込まれたことによって受けた精神的苦痛に対する賠償金のことです。
(※)不貞、悪意の遺棄、DV・モラハラなど。
離婚自体慰謝料 離婚の事実そのものから受ける精神的苦痛に対する賠償金のことです。

実務上、両者は明確に区別されているわけではありませんが、慰謝料請求権の時効の起算点が変わる可能性がありますので注意が必要です。
この記事では、離婚原因慰謝料について解説いたします。

離婚慰謝料の相場は?

離婚 相場
離婚理由別の慰謝料の相場は以下のとおりです。

不貞(浮気・不倫) 100~500万円程度
悪意の遺棄(別居・家事放棄など) 50~300万円程度
DV・モラハラ 50~500万円程度
性行為の拒否 50〜300万円程度
性格の不一致 基本的に慰謝料は発生しない

ただし、上記の金額はあくまで「目安」ですから参考程度にとどめておきましょう。
実際の金額は、後記でご紹介する慰謝料の増減理由などを考慮して決めますので、ケースによっては相場以下、あるいは相場以上になることもあります。

ただ、慰謝料が認められる大前提として、慰謝料を請求する配偶者側において、パートナーの有責行為それ自体を事後的に証明することができなければなりません。

離婚の慰謝料請求ができる・できないケースとは?


離婚の慰謝料請求には請求できるケース、できないケースがあります。
その判断基準は、パートナーから不法行為を受けたかどうかです。
以下で詳しく解説いたします。

離婚の慰謝料を請求できるケース

離婚慰謝料を請求できるケースは、パートナーから法律上の不法行為を受けたケースです。
そもそも慰謝料は、法律上の不法行為を受け精神的苦痛を負ったからこそ請求できるということが民法で規定されています。(民法709条、710条)
法律上の不法行為とは、不貞、悪意の遺棄、DV・モラハラによって、夫婦の共同生活の平穏という権利又は法律上保護される利益を侵害する違法性の認められる行為にあたります。

離婚の慰謝料を請求できないケース

離婚慰謝料を請求できないケースは、パートナーから法律上の不法行為を受けたとは言えないケースです。
例えば「性格の不一致」による離婚の場合、これを法律上の不法行為と評価することは困難です。
そもそもどの行為によって精神的苦痛を受けたのかを特定することが難しいうえ、夫婦同士の考え方や価値観が違うことは往々にしてありますので、不法行為と評価することはできないのです。

ただし性格の不一致のなかには、パートナーによるDVやモラハラなど様々な要因が含まれているケースもあります。
要因によっては慰謝料請求が可能なケースもありますので、過去のパートナーの行為の中で法律上の不法行為と評価できる行為はないのかどうかよく考えてみることが大切です。

離婚慰謝料の決め方(増額・減額要因)とは?

離婚 慰謝料

それでは、離婚慰謝料の請求金額が増額・減額する要因は何なのでしょうか。
ここでは不貞の離婚慰謝料を決めるにあたってどのような要素を考慮し、どのような事情が離婚慰謝料を増額、あるいは減額させるのかについて解説いたします。

具体的には、以下の表にあるような項目から離婚慰謝料が決定されます。
なかでも、その不貞行為によって、夫婦関係がどのような状況に陥ったのかが重要なポイントとなります。

例えば、たとえ不貞行為があったとしても、その結果として、別居をすることもなく同居を継続させている場合、夫婦の共同生活の平穏は、離婚や別居するに至った場合と比較すると、それほど害されていないと評価できます。
そのため、この場合には、慰謝料額は低くなりがちです。
その他にも、不貞行為の態様・程度が、単なる性行為の繰り返しに留まらず、妊娠に至った場合やさらに出産にまで至っている場合には、慰謝料額が大きくなる傾向が強いと言えます。

婚姻期間 婚姻期間が長ければ長いほど増額要因となり、短いほど減額要因となります。
不貞が発覚するまでの生活状況 円満な婚姻生活を送っていた場合は増額要因となります。
一方で、婚姻関係は破綻していないものの、破綻寸前だったというような場合は減額要因となります。
不貞の回数、期間 不貞の回数が多いほど、期間が長いほど増額要因となります。
一方で、不貞の回数が少なく、期間が短いと減額要因となります。
不貞の主導者 パートナーが不貞の主導権を握っていた場合は増額要因となります。
一方で、不貞相手が積極的に配偶者を誘うなど、不貞相手が主導権を握っていた場合は減額要因となります
子供・妊娠の有無 夫婦間に子供がいる場合や妻が妊娠中に夫が不貞をした場合は増額要因となります。
離婚するかしないか 不貞を理由に離婚する場合は増額要因、離婚しない場合は減額要因となります。
不貞の認否、反省の程度 不貞が明らかであるにもかかわらず、否認する場合は増額要因となります。
一方で、不貞を素直に認め、やり直しを図っている場合などは減額要因となります。
社会的制裁の有無 会社の解雇、仕事の激減など不貞による社会的制裁を受けている場合は減額要因となります。
再度の不貞かどうか 不貞が発覚し、二度と不貞しないと誓ったにもかかわらず不貞に及んだ場合は増額要因となります。
被害の大きさ 不倫によって精神的な病を患った、そのために収入が減ったなどという場合は増額要因となります。
あなたの落ち度 たとえば、家事・育児放棄などによってパートナーを不貞に走らせてしまったと認められる場合は減額要因になりえます。

不貞を理由に離婚慰謝料を請求するための4つの条件


離婚の慰謝料は離婚するから必ず請求できる、というわけではありません。
では、いかなる条件が整えば離婚の慰謝料を請求できるのでしょうか。
以下では、「パートナーの不貞」を理由として離婚の慰謝料を請求する場合に必要な4つの条件について解説します。

不貞にあたること

不貞とはパートナーがあなた以外の第三者と肉体関係をもつことです。
手をつなぐ、ハグする、食事する、デートする、メールする、電話するなどは不貞とはいえません。

ただし、不貞以外の行為の積み重なりによって「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害した」として慰謝料請求を認めた裁判例はあります。

婚姻関係継続中の不貞であること

すでに婚姻関係が破綻している場合、守られるべき権利利益は消滅しており、精神的苦痛は負わないと判断されます。

そのため、婚姻関係が破綻した後の不倫は慰謝料請求の対象とはなりません。
婚姻関係が破綻しているかどうかの判断基準は「別居しているかどうか」がポイントになりますが、別居期間が短い場合や離婚に向けた話し合いをしていない場合は、婚姻関係の破綻を証明できない可能性があります。

不貞によって精神的苦痛を受けたといえること

慰謝料請求をするためには、不貞と精神的苦痛との間に因果関係が認められることが必要です。

たとえば、一度パートナーの不貞を許して再構築を図ろうとしたもののやはり難しく、過去の不貞に関して慰謝料請求するというようなケースには注意しなければなりません。
不貞から慰謝料請求までの間が空いているため、不貞と精神的苦痛との間の因果関係を疑われやすくなってしまいます。

時効が完成していないこと

離婚慰謝料の請求権は、時効が完成すると消滅します。
不貞を理由とした、パートナーに対する離婚慰謝料の時効期間は離婚をしたときから3年間です。
そのため、たとえば、今から5年前の不貞を理由とする離婚慰謝料を請求することも、離婚をしたときから3年が経過していなければ、可能です。

ただし、離婚の時点から見て、遠く昔の不貞の事実が、本当に離婚の原因になっていたか、などという、不貞と離婚による精神的苦痛との因果関係は要求されます。
大昔の不貞については因果関係を否定されて請求が認められないか、仮に認められたとしても慰謝料は低額となる可能性が高いです。

離婚慰謝料を請求する前にやるべきこと


離婚慰謝料を請求する前にやるべきことは、不貞の証拠を集めることです。
パートナーの不貞を証明できなければ、離婚慰謝料を請求することはできません。
そして、パートナーの不貞を証明するには、パートナーから「不貞をしました」という自白を得ることが一番の早道です。

その自白を得る際には、必ず録音をしたり、覚書等の書面の作成をしましょう。
ただ、パートナーから自白を得ることは簡単ではありません。
そのため、自白以外の証拠も集めておく必要があります。
自白以外の証拠とは、たとえば次のような証拠です。

  • 写真・動画:ラブホテルに出入りする場面を撮影したもの
  • スマフォ内の写真・動画:不倫相手との性交場面を撮影したもの
  • LINEメール、SNS上のメール:不貞を疑わせる内容のやり取り
  • 領収書、クレジットカードの利用明細:ラブホテルの使用履歴がわかるもの
  • 探偵の調査報告書

証拠単体では不貞を証明することにつながらなくても、パートナーに不貞を追及するための材料にはなりえます。
そして、不貞を追及した結果、パートナーから自白を得れば慰謝料請求できるのです。
また、仮に自白を得られない場合でも、自白以外の証拠を多く積み上げることで慰謝料請求が可能となることがあります。

ただ、当事者以外の第三者の証言については注意が必要です。
「客観的な証拠はありません。ただ。事情をよく知る友人や親族が証人として証言してくれます。」というお話を相談者から頻繁に伺いますが、第三者の証言については、その証言の信用性が認められないことが多いです。
そのため、証言や供述以外の客観的な資料を中心に収集するように心掛けてください。
証拠集めで困ったら、探偵や弁護士に相談するのもひとつの方法です。

なお、探偵の調査費用については、不貞行為の証明に必要な調査である場合には、不貞行為の証明に必要な調査に限って損害として請求することが可能と考えられています。
そのため、調査費用の全てを損害賠償として回収することは困難となることが多いため、これを踏まえて探偵社に対する調査の要否・程度を検討しましょう。

まとめ

離婚慰謝料の相場は離婚理由や状況にもよりますが、およそ50万円~500万円程度です。
ただ、一般的には100万円から、高くても200万円程で落ち着くことが多く、これを超える慰謝料額が認定される事例は、かなり極端なケースが多いでしょう。

実際の金額は婚姻期間などの増額・減額要因の有無およびその内容によって変動します。
不貞を理由とする離婚慰謝料を請求するためには前述した4つの条件をクリアすることが必要で、まずは不貞の証拠集めからはじめなければなりません。

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