ネットに会社の誹謗中傷が!取るべき手段とその手順を解説

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株式会社ココナラに在籍する弁護士が監修しています
株式会社ココナラ

SNSの普及などを背景に、深刻な社会問題になっているネット上の誹謗中傷。
個人ばかりではなく、企業でも、いわれのない誹謗中傷をネット上に書き込まれるケースが相次いでいます。
本コラムでは、誹謗中傷拡散による被害を最小限に止めるため、するべきことをまとめました。

▼この記事でわかること

  • ネット上の会社の誹謗中傷が書き込まれたとき、まず着手するべきことをお伝えします
  • ネット上の会社の誹謗中傷を削除する方法がわかります
  • ネット上に会社の誹謗中傷を書き込んだ人物を特定する方法がわかります

▼こんな方におすすめ

  • ネット上に会社の誹謗中傷を見つけ、削除したいと考えている方
  • ネット上に会社の誹謗中傷を見つけ、誰が書いたか特定したいと考えている方
  • ネット上に会社の誹謗中傷が書き込まれた場合に備え、対応策について知りたいと考えている方

ネットで会社の誹謗中傷を見つけたら、するべきことは?

最近は、有名人をターゲットとしたSNS上の誹謗中傷の問題などをよく耳にします。
ネット上の誹謗中傷は個人だけでなく、企業にも大きな打撃になる可能性があります。
この記事では、ネットで会社の誹謗中傷を発見したとき、するべきことについて解説します。

「迅速な対応」がカギ

ネット上での誹謗中傷に関する対応として重要なことは「迅速な対応」です。
会社の場合、製品や顧客対応、経営者や従業員の個人履歴、労務管理上の事案など、さまざまなことが誹謗中傷のターゲットになる可能性があります。
ネット上の誹謗中傷が問題なのは、予測や防止が難しい点です。

会社の誹謗中傷についてよくある例が、就職や転職希望者のための口コミサイトです。
退職者や会社に不満を持つ方が会社の悪評を書き込んでしまい、採用活動や営利活動に影響が出てしまうことがあります。
対応が遅くなるほど、誹謗中傷の口コミは会社のイメージを損なっていき、深刻化すれば売上低下や従業員のモチベーション低下などさまざまな悪影響を及ぼしかねません。

さらにSNSなど情報発信の手段が多様化し、ネット上での情報拡散のスピードも増していることから、ネット上の誹謗中傷から会社を守るため、まずは「迅速な対応」が必要でしょう。

投稿の削除に関連する「プロバイダ責任法」とは


投稿の削除は、書き込まれた本人だけではなく、サイト管理者などコンテンツプロバイダ・サーバー管理会社等に請求することが有効な場合もあります。
しかしコンテンツプロバイダ等にただ「削除してください」と伝えただけでは、すぐに書き込みを削除してくれないことが多いです。

その理由はいくつかありますが、

  • コンテンツプロバイダ等がユーザーの投稿を勝手に削除した際に、そのユーザーの表現の自由の侵害その他の理由で、そのユーザーから損害賠償請求をされる恐れがあること
  • コンテンツプロバイダ等がそのサイトを運営する上で、様々な投稿があることがサイトの価値となること

などが考えられます。

しかし、適切に事業を営む多くのコンテンツプロバイダ等からしても、決して他人の権利を侵害するような投稿を保持すべきとは考えていません。

ここで、知っておきたい法律が「プロバイダ責任法」です。
プロバイダ責任法は、名誉毀損に当たる投稿やプライバシーを侵害している投稿など、他人の権利を侵害していることについて相当の理由がある場合には、コンテンツプロバイダ等が責任を負う必要がないことなどを定めています。

そのため、コンテンツプロバイダ等が、他人の権利を侵害していることについて相当の理由があると判断できる場合には、投稿の削除をしてくれる場合が多いです。
コンテンツプロバイダ等は、その投稿が本当に他人の権利を侵害しているかどうかを確かめる必要があります。

しかし十分な情報がなれけばこれを判断することはできず、結果的に投稿の削除はできません。
問い合わせフォームからの削除依頼など、簡易な請求では提供できる情報に限界がありますので、結果的に削除に応じてくれないケースが多くなるのです。

誹謗中傷への対応の手順


それでは、ネット上で自社の誹謗中傷を発見した際の具体的な対応の手順について説明していきます。

誹謗中傷を発見し、まずすべきことは、ネット上に書き込まれていることが事実なのかどうか、確認することです。
ネット上の書き込みに対し、「事実無根」と対外的に説明した後に、会社にも問題があったことが発覚すれば、会社の評判を落とす結果になります。

迅速かつ慎重に調査し、いわれのない誹謗中傷ということになれば、取るべき手段は2つです。
書き込みを「削除」するか、書き込みをした「相手の特定」をして、損害賠償請求・差止請求等するかになります。

誹謗中傷の書き込みを「削除」する

誹謗中傷の書き込みを削除する方法は以下の通りです。

  • 書き込みをした本人に直接削除を求める
  • コンテンツプロバイダ・サーバー会社に直接削除を求める
  • コンテンツプロバイダ・サーバー会社に送信防止措置依頼をする
  • 裁判所に投稿削除の仮処分の申立てをする

投稿者に削除を求める

誹謗中傷の投稿者が判明している場合、その人に直接削除を求めるのが一番シンプルなやり方です。
ただ、投稿者に削除を求めると、「会社が削除を求めてきた」とSNS等で公表されてしまい、会社のイメージ悪化につながるリスクもあります。
また、ネット上ではだれが投稿したのかわからないため、本人に削除を求めることが困難な場合が多いです。

コンテンツプロバイダ・サーバー会社に削除を求める

投稿者が判明していない場合、または投稿者が判明していても直接削除依頼することがためらわれる場合には、書き込みに使われたサイトのサービス提供会社(コンテンツプロバイダ)やサーバーの会社に、削除を依頼することが可能です。

コンテンツプロバイダ等に対する請求の方法は主につぎの3種類です。

  • お問合せフォームなどからの削除のお願いをする
  • 一般社団法人テレコムサービス協会の雛形を用いた送信防止措置依頼を行う
  • 投稿記事の削除について、裁判所に仮処分を申し立てる

サイト運営会社によっては、サイト内に設けられている問い合わせフォームなどで、削除依頼に対応するケースもありますが、これを受け付けていない会社も多いです。
そのためまずはお問合せフォームから削除のお願いをします。

コンテンツプロバイダ・サーバー会社に送信防止措置依頼をする

コンテンツプロバイダ・サーバー会社に削除を求めても応じてくれない場合には、送信防止措置依頼をします。
送信防止措置とは、誹謗中傷や個人情報などの書き込みをされた個人・会社から依頼に基づき、サイト運営会社やサーバー会社が書き込みを削除することを意味します。

送信防止措置依頼をする際は、一般社団法人テレコムサービス協会の送信防止措置依頼書を用いることがおすすめです。
適切に記載事項を埋めていくと、コンテンツプロバイダ等が判断するために十分な情報を提供することができ、結果的に削除してもらえる可能性が高くなります。

送信防止措置依頼書を作成しコンテンツプロバイダなどに郵送したら、コンテンツプロバイダは投稿者に意見照会したうえで、反論がなければ削除してよいことになっています。
しかしコンテンツプロバイダも、投稿者が誰か分からないケースは多いので、他人の権利を侵害していることが明らかである場合には、意見照会なしで削除されることもあります。

ただ、この「送信防止措置依頼」でも、依頼すれば何でも削除できるというものではありません。
コンテンツプロバイダ等にもよりますが、削除できるのは名誉棄損やプライバシー権の侵害など一定の権利侵害があるとコンテンツプロバイダが判断できる場合のみに限られる場合が多いので、注意が必要です。

裁判所に投稿削除の仮処分の申立てをする

送信防止措置依頼書記載の他人の権利の侵害の有無は、コンテンツプロバイダ等が判断することになります。
自己の判断になるので、それが本当に正しいかどうか、損害賠償請求されるリスクが消滅したかどうかを判断するのは難しいです。

そこで、コンテンツプロバイダ等によっては、裁判所の仮処分命令が出ない限り削除しない、という社内方針を取っている会社も少なくありません。
遅くともこの段階では、弁護士に依頼して対応を相談するのが良いかもしれません。

裁判所で仮処分の手続きをすれば、通常1、2ヶ月程度で判断が下ります。
仮処分は時間のかかる裁判手続きを行う前に、迅速な判断により仮に権利侵害状態をなくすという意味合いがあるのです。

投稿した人本人に対して損害賠償請求を行う

これまでコンテンツプロバイダ等に投稿を削除する話をまとめましたが、本人に責任を追及したいと考える方もいるかもしれません。
ただ、投稿した人が特定できていない場合には、少し複雑で面倒な手続きですが下記のステップで行うことができる場合があります。

1.投稿者を特定する

ネット上で誹謗中傷を受けた被害者は、名誉棄損やプライバシー権の侵害などがあったとして、つぎのような流れで投稿者を特定する手続きを行います。

  1. プロバイダー責任制限法に基づき、コンテンツプロバイダやサーバ会社に対し、投稿者のネット上の住所に当たる「IPアドレス」の開示を求めます
  2. 名誉棄損や権利侵害があったと認められた場合、IPアドレスが公開されます
  3. IPアドレスをもとに、インターネットサービスプロバイダに対し、投稿者を特定する氏名などの情報の開示を求めます

2.請求手続きをする

投稿者が特定できれば、投稿者に損害賠償を請求したり、警告をしたりすることが可能になるでしょう。
ただ投稿者を特定するためには、2度の請求手続きが必要で、情報開示に1年以上掛かるケースも多くなっています。
一方で、IPアドレスの保存期間は3ヶ月程度と短く、本人特定には難しい面もあります。

こうした状況を受け、政府は2021年1月からの通常国会に、プロバイダー制限責任法の改正案を提出しました。
改正案には、2回の手続きを経なくても、被害者の申し立てにより、裁判所が投稿者の情報開示をコンテンツプロバイダやサーバ会社に命じることができるとの内容が盛り込まれました。
この改正案が同国会で成立すれば、22年末までに施行され、情報開示までの期間が短縮される見込みです。

3.損害賠償請求をする

上記を経て、ようやく損害賠償請求をすることができます。
投稿者を相手方として、訴えを提起します。
かかる期間は1年〜2年程度の場合が多いです。

損害賠償請求では「どんな損害が発生していて、その損害額はいくら相当か」ということを丁寧に裁判所に説明する必要があります。
実損がない場合には精神的損害に対する慰謝料程度しか請求できず、大した金額にならない可能性も少なくありません。

悪質な場合は刑事告訴の検討を


ネット上の誹謗中傷は、内容によって犯罪とみなされる可能性があります。
誹謗中傷が悪質で、被害が大きいような場合は、刑事告訴も視野に入れるべきでしょう。
刑事告訴の方法などについて解説します。

刑事告訴の条件

ネット上の誹謗中傷は、態様によっては、以下の罪に問われる可能性があります。

名誉棄損罪 ネット上の誹謗中傷ではもっとも多くみられるケースです。不特定多数が見ることができる掲示板等に、その人に関する事実を摘示することで、人の社会的評価を低下させることなどが該当します。
侮辱罪 不特定多数が見ることができるような状況で、事実を摘示せずに人の人格を貶めるようなことを書き込むことなどが該当します。
信用棄損罪・業務妨害罪 風説を流布し、うそを用いて、多くの人からの信用を失墜させるような書き込みをすることなどが該当します。
脅迫罪 例えば「殺す」といった言葉を使って、脅すような書き込みをすることなどが該当します。

刑事告訴は、犯罪の事実を申告し、加害者への処罰を求める意思表示をすることです。
近くの警察署にアポイントメントを取って、書面で作成した告訴状を持っていくケースが多くなっています。
なお、名誉棄損罪や侮辱罪は、告訴がなければ検察官が裁判所に起訴できない「親告罪」なので、捜査をしてもらうためには、告訴することが前提条件になります。

弁護士への相談も検討を

警察には告訴を受理する義務があるのですが、実際には「情報が少なく加害者の特定が難しい」「告訴状の内容だけでは警察が扱う事件になるか判断ができない」ようなケースでは、受理してもらえないことがあります。

ネット上の誹謗中傷の書き込みから、犯罪の構成要件を満たした告訴状を作成するのは、法律の知識がなければ簡単ではありません。
告訴をスムースに行うには、弁護士に相談することをお勧めします。

告訴以外に関しても、誹謗中傷の書き込みを削除する「送信防止措置依頼」やプロバイダ責任制限法に基づく情報開示を迅速に進めるためには、弁護士に相談できれば安心です。
書き込みが削除されなかった場合、削除の仮処分を申し立ててもらうことなども可能です。

まとめ


ネット上に会社の誹謗中傷が書き込まれた場合、コンテンツプロバイダなどを通じ、書き込みの削除要請や、書き込んだ人物の特定が可能です。
誹謗中傷で深刻な被害を受けたのならば、犯罪として刑事告訴することもできます。
ただ、いずれの対応策にも、専門的な知識が必要で、手間や時間も掛かります。
迅速、確実に対策を講じるためには、ネット関連のトラブル解決の経験が豊富な弁護士に相談することをお勧めします。

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