「SNSの投稿で個人情報が流出してしまった」
「お店の口コミに、頻繁に誹謗中傷が書き込まれている」
ネット社会の今、個人に向けた批判や誹謗中傷は誰にでも起こりうる問題です。
誹謗中傷は、被害の度合いによって罪に問える可能性もあります。
そこでこの記事では、いま受けている誹謗中傷がどのような罪に問えるのか、また実際に訴えるまでのプロセスなどについて解説いたします。
具体的な解決方法を知り、一歩前に進みましょう。
▼この記事でわかること
- 誹謗中傷でどのような罪に問えるかわかります
- 誹謗中傷で損害賠償を請求できるケースがわかります
- 法的措置の具体的な手順がわかります
▼こんな方におすすめ
- 誹謗中傷してくる相手へ法的手段をとりたいと考えている方
- 誹謗中傷被害を一人で解決できるのか知りたい方
- 自分が受けている誹謗中傷がどんな罪に問えるのか知りたい方
ネット上で誹謗中傷が多くみられるケース
いわゆる「誹謗中傷」とは、法律上名誉毀損や侮辱に該当する可能性が高く、刑事罰や損害賠償請求の対象となる可能性が高い行為です。
他方では、誹謗中傷をするつもりではない単なる相手方に対する批判等のコメントや投稿も、場合によっては名誉毀損や侮辱に該当する可能性があります。
まずは、ネット上で誹謗中傷被害に遭うことの多いケースをジャンル別に見ていきましょう。
SNSや掲示板の投稿
- ブログ
- 掲示板(爆サイ、5ちゃんねる、雑談たぬきなど)
- YouTube
- TikTok
近年ではさまざまなSNSが登場し、InstagramやYouTube、TikTokなどでは自ら容姿を明かして発信する人も増えています。
それに伴って投稿内容について批判する方も後を絶たず、ブロックしてアカウントを作り変えてもしつこく追いかけられるなど深刻な誹謗中傷に悩む人もいます。
また掲示板では「書き込んでいるのは自分だけではない」という集団心理がはたらきやすく、より過激な誹謗中傷を書きこみ合う現象も起こりやすい傾向があります。
各種ポータルサイトへの口コミ投稿
- サービス業の口コミサイト(飲食店・美容院・旅行・宿泊業など)
- 求人サイト(転職・新卒・アルバイトなど)
- マップ検索エンジン(Googleマップ、Yahoo!ロコ)のレビューなど
口コミ投稿はそもそも個人の意見や評価を書き込むもので、誹謗中傷と判断されないケースも多々あります。
しかし、明らかな嘘やただ侮辱するだけの内容を投稿されたために、客足が遠のいたり求職者からの応募が激減したりする深刻な被害も存在します。
ネットの誹謗中傷による刑事責任と罰則
ネットの誹謗中傷や批判等は、場合によっては書き込んだ相手を罪に問える可能性があります。
ここでは、ネットの誹謗中傷で該当する可能性のある刑事責任について、罪名・該当する要件・刑罰などを説明していきます。
相手を訴えたいと考えている方は、自分の被害内容に当てはまるか見てみてください。
名誉毀損罪(刑法230条)
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合 | |
3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金 |
「公然」とは不特定または多数人が認識できる状態のことをいいます。
また「事実」とは客観的で具体的な事実のことを指し、真実か虚偽かは問われません。
例えば「〇〇社の〇〇(名前)は上司と浮気している」という誹謗中傷をSNSに投稿した場合は、実際に浮気しているか否かに関わらず相手の社会的名誉を傷つけた時点で名誉棄損罪に問われる可能性があります。
ここで注意すべきなのは、評価は事実ではなく、投稿した人の主観的な意見ですので、名誉毀損には該当しない場合があります。
もっとも、評価か事実か、というのは突き詰めると区別するのは難しいため、しばしば裁判で論点になるところです。
名誉毀損にあたらないケース(刑法230条の2)
公然と社会的名誉を傷つけられた場合でも、下記の刑法230条の2の要件をすべて満たしている場合は罪に問われないケースもあります。
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例えば、会社の不祥事の告発や社会的に影響力のある人物の私生活暴露などは、明確な証拠があれば名誉毀損にあたらない場合もあるのです。
侮辱罪(刑法231条)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した場合 | |
拘留または科料 |
具体的な事実の摘示が要件だった名誉毀損罪と比べて、侮辱罪は「バカ」など具体性のない悪口を書き込んだだけでも該当する可能性があります。
今までは、懲役や禁錮が科せられる名誉毀損に対して侮辱罪は拘留か科料のみと軽く見られがちでしたが、ネット中傷抑止のため、侮辱罪に対する懲罰を「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」に引き上げる改正法案が決定されました。
信用毀損罪(刑法第233条)
虚偽の風説を流布、または偽計を用いて他人の経済的な信用能力を傷つけた場合 | |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
真実ではないことを不特定多数に広まるかもしれない場で発信すると、信用毀損罪に問われる可能性があります。
ただし、その内容が事実だった場合には信用毀損罪には問われません。
たとえば「この会社は倒産寸前で危ない」「このレストランの食材は腐っている」など経済的な信用や商品・サービスの品質に対する信用を傷つけるような嘘の投稿は、信用毀損罪に該当する可能性があります。
脅迫罪(刑法第222条)
本人や親族の生命、身体、自由、名誉または財産への害を与えることを告げて脅迫した場合 | |
2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
脅迫罪は誹謗中傷によって相手がどの程度恐怖を感じたかにもよるので判断が難しい場合もありますが、「覚えておけよ」「訴えてやる」などの投稿は脅迫罪に該当する可能性があります。
強要罪(刑法第223条)
脅迫や暴行によって義務のないことを行わせたり妨害した場合 | |
3年以下の懲役 |
強要罪は、相手を脅迫しただけでなく何かしらの行為を強要したり妨害すると罪に問われる可能性があります。
強要した行為を相手が実際に行わなくても、罪が成立するのがポイントです。
ネット上ではアカウントの閉鎖や謝罪を求めた場合などに強要罪が該当する可能性があります。
ネットの誹謗中傷による民事責任
ネットでの誹謗中傷には、先に述べた刑事責任とは別に民事責任も生じます。
民事責任の場合、誹謗中傷による権利侵害が民法上の不法行為にあたるため、民法第709条・第710条にもとづいて損害賠償請求(金銭)できます。
また、金銭で足りない場合は名誉回復措置(主に謝罪広告)が認められることもあります。
精神的苦痛に対する慰謝料や実際に生じた損害額などの金銭 | |
投稿の削除や謝罪文掲載など |
民事責任が生じるネット上の権利侵害
それでは、ネット上の誹謗中傷で民事責任が生じるのはどんな場合なのでしょうか。
民法上で損害賠償や名誉回復措置を求められる可能性のある権利侵害について一つずつ見ていきましょう。
プライバシー侵害
プライバシー侵害とは、私生活上の事柄のうち他人に公開されたくないであろう事実を公表することです。
例えばリベンジポルノや犯罪歴の公開など、秘密にしておきたかったことが公の場に出されてしまった場合はプライバシー侵害にあたります。
名誉権侵害
名誉権侵害とはいわゆる”名誉毀損”のことで、名声や信用など社会から見た評価を違法に低下させることを指します。
例えば、SNS上で「逮捕歴がある」「不倫している」など社会的評価が下がるような事実を書き込まれた場合は名誉権侵害を訴えることが可能です。
肖像権侵害
肖像権侵害とは、自分の顔や姿を撮影・公表されたりすることです。
もし、誹謗中傷の投稿とともに自分の顔写真が勝手に掲載された場合は肖像権が侵害されたと訴えることができます。
著作権侵害
著作権は、自身の創作物に対して生じるイメージがありますが、撮影した画像なども対象になります。
そのため、誹謗中傷とともに自分が撮った画像が許可なく転載された場合は、著作権侵害にあたる可能性があります。
誹謗中傷した投稿者に法的措置をとるには?
ここからは、誹謗中傷してきた相手に法的措置をとりたいときにとるべき具体的な行動について紹介していきます。
法的措置をとるための手順
ネット上で誹謗中傷された場合、一般的には書き込みの削除依頼→相手の特定→法的措置と進んでいきます。
【法的措置をとるプロセス】
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開示請求は「発信者情報開示請求書」を利用して自身で手続きもできますが、記載する内容には法律の知識が必要になってきます。
また、開示請求は高度な個人情報を扱っているため、上記のような多くのプロセスを踏む必要があり、時間も労力もかかります。
ただでさえ誹謗中傷で傷ついている中、これらを一人で対応するのはとても大変な作業になるため、ぜひ豊富な経験を持つ弁護士を頼りましょう。
「プロバイダー責任制限法」の改正について
今まで、誹謗中傷で相手を訴えたい場合は相手の特定のための開示請求手続きが2回必要だったため、法的措置をとるまでのハードルの高さが問題視されてきました。
それを受け、発信者情報開示の迅速化のために見直された「プロバイダー責任制限法」の改正法が2021年4月に国会で成立し、2022年秋ごろまでに施行される見通しです。
【何が改正されたのか】
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上記のように、開示請求に対する前向きな改正がなされたため、法的措置までに要する時間が短くなるだけでなく、相手を特定できる可能性が高くなったといえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、ネット上の誹謗中傷で問われる刑事責任と民事責任について・具体的な法的措置のとり方について解説しました。
誹謗中傷は、刑法上でも民法上でもさまざまな罪や権利侵害に該当する可能性があります。
法的措置をとり相手を特定したり訴えたりしたい場合は、弁護士からのアドバイスに基づき適切なプロセスを踏むことで円滑な問題解決が期待できます。
一人で悩まず、経験豊富な弁護士へ早めに相談することをおすすめします。