「犯罪の被害にあったが、現在の捜査状況について知りたい」
「加害者側の弁護士から示談の申し入れがあったが、対応したくない」
「加害者にきちんと刑罰を受けてもらえるよう、裁判に関わりたい」
犯罪被害を受け、このようなお考えを抱いている方は、弁護士へのご相談がおすすめです。
刑事事件は一般的に加害者側が弁護士へ依頼することが多いですが、被害者も同様にいつでも弁護士に対応を依頼できます。
そこでこの記事では、刑事事件の被害者が弁護士に依頼した場合に弁護士が何をやってくれるのか、どんなメリットがあるかについて詳しく解説します。
加えて、被害者が利用できる各種制度についても解説しています。
ぜひこの機会に知っていただけると幸いです。
▼この記事でわかること
- 弁護士が被害者のために何をやってくれるのかがわかります
- 弁護士に依頼した場合のメリットがわかります
- 刑事事件の被害者が利用できる各種制度の内容がわかります
▼こんな方におすすめ
- 弁護士に依頼しようかどうか悩んでいる被害者及びご遺族の方
- 弁護士に依頼するメリットは何か知りたい被害者及びご遺族の方
- 刑事事件でどんな制度を利用できるのか知りたいと思っている被害者及びご遺族の方
目次
被害者が弁護士に依頼するメリットとは?
被害者が弁護士に依頼すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは被害者が依頼を検討すべき状況や、そのメリットについて解説します。
刑事事件の被害に遭われ、弁護士に依頼しようか迷っている方は必見です。
なお、一定の犯罪に関しては、被害者の方の資力が一定以下の場合、犯罪被害者援助制度という制度で弁護士費用の立替をしてもらえる場合がありますし、刑事裁判に被害者の方が参加できる被害者参加制度においても、資料が一定以下の場合には国選被害者参加代理人として国の費用で弁護士に依頼をすることができます。
警察に被害届を出すときに同行してもらえる
警察に被害を受けたことを申告しても、直ちに被害届を受理してくれるわけではありません。
警察は一度被害届を受理すると捜査を行い、何らかの処理をしなければいけないため、事件性の高い事件でなければ、簡単に被害届を受理してくれないのが実情です。
警察が被害届を受理してくれるかどうか不安な方は、一度弁護士に相談しましょう。
弁護士によっては警察に被害の届出を行う際、一緒に同行してくれる弁護士もいます。
弁護士がバックにいるだけでも、被害届の受理に向けてプラスに働く可能性があります。
被害者との示談交渉を適切に進められる
刑事事件では加害者側が自分に有利な結果となるよう、示談交渉を働きかけてくることがあります。
また加害者側についている代理人弁護士も、加害者の不利益を最小限にするためにサポートしているので、被害者の味方にはなってもらえないでしょう。
そのうえ、加害者側から提示された条件の、法的な部分や示談の条件の妥当性をご自身で判断することは難しい場合が多くあります。
そして、ご自身で加害者や代理人弁護士との交渉に応じるのは、心理的にも大きな負担です。
さらに、ご自身の要望を法的に妥当な形で加害者側に提示していくことも一筋縄ではいかない場合があります。
この点、弁護士に対応を依頼すれば加害者あるいは代理人弁護士と直接交渉に応じる必要がなくなります。
これにより、心理的な負担が軽減するのは間違いありません。
また弁護士は被害者の意向を汲みつつ、加害者側と対等に交渉ができます。
そのため、一方的に不利な条件で話をまとめられてしまう可能性を減らすことができます。
捜査の進捗状況をわかりやすく説明してもらえる
捜査開始後は事件の被害者として、
- 加害者の身柄拘束の期限はいつまでなのか
- 刑事処分はどうなるのか
- 加害者はいつ釈放され、社会復帰するのか
など、さまざま気になることが出てくるかと思います。
捜査機関は被害者の相談窓口や刑事処分や裁判の期日などを通知してくれる被害者通知制度を設けるなどして被害者の不安や疑問に応えていますが、法律の知識がなければわかりにくいことも多いです。
また捜査機関は必ずしも、被害者のために、手続の流れや今後被害者が取るべき対応を逐一アドバイスしてくれる立場にはいません。
この点、弁護士は捜査機関よりもより身近で、困ったときにいつでも相談できる存在です。
捜査機関から一方的に情報を受けるのではなく、弁護士自ら警察や検察に問い合わせるなどして、捜査に関してより深い情報を得るよう努めてくれます。
被害者を保護する法的手続き(保護命令)を取ってもらえる
保護命令とは、DV被害者及びその身近な人(子ども、親等の親族)とDV加害者との接触を禁止したり、現住居からの退去を命じる裁判所の命令です。
裁判所に保護命令を出してもらうには、裁判所に申立てを行う必要があります。
申立ては被害者ご自身で行うことも可能ですが、やり方がわからない、負担が大きい、という場合は弁護士に相談してみるとよいでしょう。
また、配偶者からDVを受けた場合は離婚を検討される方も多いと思いますので、弁護士に依頼しておけば、離婚の件も併せて弁護士に相談できます。
刑事裁判に参加する際にサポートしてもらえる
刑事裁判の被害者参加制度とは、一定の犯罪(※)の被害者が刑事裁判に参加し、被告人や情状証人に質問したり、被害者の心情に関して裁判官に意見を述べる、量刑(罪の重さ)に関して意見を述べるなどの活動ができる制度です。
被害者参加制度を利用するには、検察官にその旨を申し出たうえで、被告人や情状証人に質問する内容なども自ら考えなければいけません。
弁護士に依頼すれば、一緒に質問内容や意見を考えてくれます。
また、被害者の中には、被告人への質問や裁判官に心情に関して意見を述べたいが、法廷には行きたくないという方もいらっしゃいます。
この場合でも、実際の裁判では被害者の代理人として、被害者の代わりに被告人や情状証人に質問したり、意見を述べたりします。これによって、被害者ご自身は直接参加をしなくても済みます。
これらの方法で、被害者の負担は相当程度軽減されます。
※故意の犯罪行為により人を死傷させた罪(殺人罪、傷害罪、傷害致死罪、危険運転致死傷罪など)、強制わいせつ罪、強制性交等罪、強制わいせつ致死傷罪、強制性交等致死傷罪、過失運転致死傷罪、逮捕罪、監禁罪、逮捕・監禁致死傷罪など
被害者が弁護士に依頼したときの流れ
これまでは被害者が弁護士に依頼するメリットについて説明しましたが、実際に依頼した後は事件解決までどのよう流れで進められるのでしょうか。
以下では、捜査前/捜査後/起訴後の各段階にわけ、それぞれの段階で弁護士が何をサポートしてくれるのかについて解説します。
捜査前
捜査機関が捜査に着手する前に弁護士が行ってくれることは、おもに次のような内容です。
- 警察に被害届を提出する際の同行
- 告訴・告発状の作成及び捜査機関への提出・同行
- 刑事事件化する前の加害者側との示談交渉 など
捜査機関(警察・検察)に提出する告訴状・告発状には、告訴の趣旨・告訴事実など記載しなければいけない項目があり、内容も個別の事件によって異なります。
また告訴事実を疎明しうる証拠資料を添付して提出しなければならず、事前に証拠を集めておく必要もあります。
ただ、証拠の収集をしたうえで告訴状・告発状を作成し、捜査機関への提出するという工程を被害者自身が行うのは負担ですし、難しくて断念してしまうかもしれません。
弁護士は、これら一連の流れをすべて任せることができ、被害者の負担を減らすことができます。
また、告訴状等を出すかどうかは、加害者が示談をするかどうかによって判断する場合もあります。
この場合に、被害者が直接加害者と示談交渉をすることは心理的にも難しい場合が多いですが、弁護士が入れば代わりに対応をしてくれます。
捜査後
捜査機関が捜査に着手した後に弁護士が行ってくれることは、おもに次のような内容です。
- 刑事事件化後の加害者側との示談交渉
- 捜査機関に対する捜査の進捗状況の確認及び被害者への報告
- 刑事処分(起訴・不起訴)に関する意見書の提出
- 保護命令の申立て など
被害届や告訴状などを提出した後は、捜査機関が捜査をはじめます。
被疑者の最終的な刑事処分(起訴・不起訴)は検察官が決めますが、被害者はその検察官に対して、「被疑者を起訴して欲しい」などの意見を述べることができます(取調べで意見を聴かれます)。
弁護士に依頼していれば、被害者の意向を汲みつつ、検察官と同じ法律の専門家として的確な意見を述べることができます。
刑事処分については検察官に広い裁量権が認められていますが、弁護士から検察官に意見を申し入れることで、検察官の権利の濫用に対する一定の歯止めにはなりえます。
起訴後(刑事裁判)
刑事裁判が開かれる際に弁護士が行ってくれることは、おもに次のような内容です。
- 裁判への付き添い
- 被害者参加制度への参加
- 損害賠償命令制度の申立て、審理への支援 など
損害賠償命令制度とは、起訴状に記載された犯罪事実に関し、加害者に対して損害賠償請求する際に、刑事裁判で採用された証拠を活用し、審理を原則として4回以内で終わらせ、加害者に対して損害賠償命令を出す制度のことです。
損害賠償命令制度は、刑事裁判で採用された証拠をそのまま引用できる点、刑事裁判と同じ裁判所が担当する点、判決後すぐに審理が開始される点、原則として4回以内の審理で終わる点がメリットといえます。
一方、制度を利用するには申立てが必要ですし、審理にも応じなければいけませんから、一般の方々にとっては大きな負担です。
この点、弁護士に依頼すれば、弁護士が代理人として代わりに審理に応じてくれますから、被害者の負担は大きく軽減されます。
まとめ
犯罪の被害に遭われた場合、ご自身のケアで精一杯で、捜査機関や加害者、裁判への対応に気がまわらないという方も多いと思います。
被害者の方であっても捜査前、捜査後、起訴後いつでも弁護士を選ぶことは可能ですから、ご自分での対応に限界を感じた場合は、はやめに弁護士に相談するようにしましょう。