不同意わいせつ罪(強制わいせつ罪)とは|改正後の違いや刑罰、逮捕されないための対処法など解説

刑事事件

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従来の「強制わいせつ罪」は、2023年7月13日から改正刑法が施行され「不同意わいせつ罪」と改められています。
不同意わいせつ罪への切り替えにより、成立要件や刑罰等が少し変わっています。
具体的な変更点を把握しておくことで、不同意わいせつ罪にあたる行為なのかを判断しやすくなるだけでなく、不同意わいせつ罪を犯してしまった場合、すみやかに対処ができ逮捕・起訴を回避しやすくなるでしょう。
不同意わいせつ罪についての理解を深め、今後対応すべきことなどを把握しておきましょう。

この記事でわかること

  • 不同意わいせつ罪について詳しく解説します
  • 不同意わいせつ罪と強制わいせつ罪の違いがわかります
  • 不同意わいせつ罪で逮捕されないための対処法を紹介します

こんな方におすすめ

  • 改正後の不同意わいせつ罪について知りたい方
  • 不同意わいせつ罪となる具体的な行為を知りたい方
  • 不同意わいせつ罪で逮捕されるかもしれないとお悩みの方

不同意わいせつ罪(旧:強制わいせつ罪)とは


刑法第176条で規定される「不同意わいせつ罪(旧:強制わいせつ罪)」とは、被害者の同意なくわいせつな行為を行う犯罪です。
「わいせつな行為」について、 過去の判例(最高裁判所昭和26年5月10日)では、いたずらに性欲を刺激興奮させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するような行為であると定義しています。

例えば、「キスする」「突然抱きつく」「陰部に触れる」などの行動はわいせつな行為に該当し、相手の同意がなければ不同意わいせつ罪に該当します。
また、不同意わいせつ罪は、非親告罪です。
被害者が告訴しなくとも、捜査機関が加害者を逮捕・起訴する可能性があります。

参照:最高裁判所昭和26年5月10日

不同意わいせつ罪の成立要件

不同意わいせつ罪は、以下4つのパターンのいずれかの状況でわいせつな行為をした場合に成立します。

  • わいせつ行為に同意をしない意思の「形成」「表明」「全う」をできない状態にする(もしくは、その状態を利用する)
  • わいせつ行為ではないと騙したり、人違いさせたりする(もしくは、その状況を利用する)
  • 被害者が13歳未満の子どもである
  • 被害者が13歳以上16歳未満の子どもであって、加害者が被害者よりも5歳以上年長である

上記のパターン1の状態に陥れる行為や事由については、刑法第176条にて8つの行為が示されています。

行為・事由 具体例
1.暴行や脅迫 殴る・蹴る、殺すと脅す
2.心身の障害 身体障害や知的障害、体調不良
3.アルコール・薬物 飲酒、薬物の投与・服用
4.睡眠・意識不明瞭 睡眠中や意識がもうろうとしている状態
5.同意しない意思を形成・表明・全うするいとまを与えない いわゆる不意打ちの状態
6.恐怖・驚愕 想定外の状況に直面した際のフリーズ状態や身がすくんだ状態
7.虐待に起因する心理状態 性的虐待を当たり前の出来事と思わせる、抵抗を無駄と思わせる
8.経済的・社会的な地位の悪用 職場・学校・家庭における関係を悪用し、わいせつ行為を拒否すれば不利益を被ると思わせる

不同意わいせつ罪にあたる行為

相手の同意がない状況での次の行為は、不同意わいせつ罪にあたります。

  • キスする
  • 抱きつく
  • 服を脱がす
  • 胸や臀部、陰部に触る
  • 下着の中に手を入れる
  • 加害者の性器を触らせる

なお、相手の同意なく上記の行為を実行した場合、夫婦間でも不同意わいせつ罪が成立します。

強制わいせつ罪から改正された経緯

令和5年(西暦2023年)7月13日に施行された改正法により、従来の「強制わいせつ罪」は不同意わいせつ罪へと変更されました。
また、不同意わいせつ罪には従来の「準強制わいせつ罪」も統合されています。
これまでの強制わいせつ罪の成立要件には、わいせつ行為の際に「暴行または脅迫」を用いることが成立要件とされていました。
しかし、明確に暴行・脅迫されていない状況でも、恐怖心などの理由から抵抗できない被害者は決して少なくありません。
こうした実情から性犯罪関連の法律が見直され、「同意していない状況でのわいせつ行為」自体が不同意わいせつ罪の対象となりました。

不同意わいせつ罪の刑罰と公訴時効


続いて、不同意わいせつ罪の刑罰と公訴時効について説明します。

刑罰は6ヶ月以上10年以下の拘禁刑

不同意わいせつ罪の刑罰は、6ヶ月以上10年以下の拘禁刑です。
罰金刑は定められていないため、罰金刑が対象になる「略式裁判(略式起訴)」は適用されません。
略式裁判とは、書面上で裁判を進めて処分を決定する手続きです。
不同意わいせつ罪で起訴されると必ず「正式裁判(正式起訴)」になり、裁判所にて刑事裁判が開かれます。
執行猶予なしの有罪判決になれば、初犯であっても刑務所に収容されます。
なお、令和4年(西暦2022年)6月13日の法改正により、これまでの懲役刑と禁錮刑は「拘禁刑」への統合が決定されています。

公訴時効は12年

不同意わいせつ罪の公訴時効は、被害が生じた日から12年となります。
被害者が18歳未満の場合、被害者が18歳になる日までの期間がさらに加算される仕組みです。
心身が未熟な子どもは、性犯罪の被害を受けても保護者や周囲の人へ相談しづらいと考えられます。
こうした事情を考慮しているため、18歳未満が被害者の場合、公訴時効は延長されるシステムが採用されています。

強制わいせつ罪から不同意わいせつ罪への変更点


令和5年(西暦2023年)7月13日より、従来の強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪へと切り替わりました。
具体的にはどのような変更点があるのでしょうか。
成立要件や刑罰、性交同意年齢などの違いを確認しましょう。

成立要件の違い

強制わいせつ罪は、13歳以上の人物に対して暴行または脅迫し、わいせつな行為をした場合(または、13歳未満の人物に対してわいせつ行為を行った場合)に成立するとされていました。
一方、改正後の不同意わいせつ罪では、「相手の同意がないわいせつ行為」についても成立します。
暴行や脅迫を用いないわいせつ行為にも対応したことで、適用範囲が大きく広がりました。
法改正により、2023年7月12日以前の事件は強制わいせつ罪として処罰され、2023年7月13日以降の事件は不同意わいせつ罪の対象になります。

刑罰と公訴時効の違い

強制わいせつ罪と不同意わいせつ罪の刑罰は、次の通りです。

  • 強制わいせつ罪:6ヶ月以上10年以下の「懲役刑」
  • 不同意わいせつ罪:6ヶ月以上10年以下の「拘禁刑」

刑罰の種類が違いますが、期間は共通しています。
また、強制わいせつ罪の公訴時効は7年であるのに対し、不同意わいせつ罪の公訴時効は12年です。

性交同意年齢の違い

不同意わいせつ罪は、性交同意年齢が13歳未満から16歳未満に引き上げられました。
従来の強制わいせつ罪の場合、13歳未満の子どもに対するわいせつ行為は、脅迫・暴行や同意の有無にかかわらず犯罪が成立するとされていました。
改正後の不同意わいせつ罪は、同意の有無にかかわらず16歳未満の子どもであれば処罰の対象になります。
注意点として、13歳以上16歳未満の子どもに限り、「加害者が5歳以上年上であること」も要件に追加されます。

不同意わいせつ罪で逮捕される可能性


不同意わいせつ罪は、逮捕される可能性がどのくらいあるのでしょうか。
ここでは、不同意わいせつ罪の検挙率や逮捕によるリスク、量刑の決まり方を解説します。

検挙率は86.3%

令和5年版犯罪白書によると、強制わいせつ罪の検挙率は86.3%です(※1)。
改正法施行前のため強制わいせつ罪の検挙率しか記載がされていませんが、不同意わいせつ罪も同程度の検挙率であると想定すると、窃盗犯の検挙率が36.3%、窃盗犯を除く刑法犯全体の検挙率が52.9%と、平均を上回っているといえるでしょう。
ただし、検挙に厳密な定義はなく、逮捕のほか「捜査機関による被疑者の特定」や「在宅事件」も含まれます。

逮捕によるリスク

不同意わいせつ罪によって逮捕された場合、職場や学校、家族に知られるリスクがあります。
逮捕・勾留されると、最大で23日間警察署の留置場に拘束され、さらに接見禁止の処分がされると、その間弁護士以外との接見や連絡ができません。
無断欠勤・欠席や帰宅しない状態が続くことで、職場や家族といった関係者に逮捕がばれる危険性が高まります。
事件が実名報道されるケースもあるため、報道によって知られるパターンもあるでしょう。
自身の社会的信用が大きく傷つくだけでなく、会社や学校からの解雇・退学も考えられます。
家族関係の悪化を招く可能性もあり、不同意わいせつ罪の逮捕による影響は計り知れません。

逮捕後の量刑の決まり方

不同意わいせつ罪によって逮捕・起訴されると、以下の要素が量刑に大きく影響します。

量刑が重くなりやすい要素 量刑が軽くなりやすい要素
犯行手段や態様が悪質
計画性がある
犯行動機が身勝手
前科や余罪がある
被害者の処罰感情が強い
再犯のおそれがある
深く反省している
計画性がない
前科や余罪がない
すでに社会的制裁を受けている
被害者と示談が成立している
社会復帰できる環境がある

※1参照:法務省「犯令和5年版罪白書」

不同意わいせつで逮捕されないための対処法


不同意わいせつによる逮捕を免れるためには、どのように行動するべきでしょうか。
ここでは、具体的な対処法を4つ紹介します。

弁護士に相談し、サポートしてもらう

まずはできる限り早く、弁護士に相談しましょう。
逮捕されるかもしれないと不安な状態では、冷静な判断ができません。
法律の専門家である弁護士に依頼することで、自身の状況に見合った対応を考えてもらえます。
仮に逮捕された後であっても、弁護士への依頼は可能です。
弁護士は、警察官や検察官、裁判官に対して早期釈放や不起訴の正当性を論理的に主張してくれます。
起訴された後も、刑事裁判による弁護活動を引き続き依頼できます。
万一、冤罪である場合は、無罪獲得に向けた弁護を展開してもらえるでしょう。

逮捕の要件を満たさないようにする

警察はむやみに逮捕できるわけではなく、以下の逮捕の要件を満たす必要があります。

  • 罪を犯したと十分に疑う理由や証拠がある
  • 逃亡や証拠隠滅を図るおそれがある

たとえば、逮捕が不安だからといって知人の家に匿ってもらうと、逃亡するおそれがあるとして、逮捕される可能性が高まってしまいます。
警察から呼び出された場合は、むやみに拒否せず真摯な態度で事情聴取に応じましょう。
事前に弁護士に依頼していれば、弁護士が逮捕の必要性がない旨を伝えてくれます。

示談交渉や被害弁償を行う

被害者との示談成立は、逮捕回避のために非常に重要です。
「慰謝料を支払う代わりに被害届を提出しない・取り下げる」といった内容で合意できれば、捜査機関による逮捕の必要性が薄くなります。
しかし、多くの性犯罪被害者は、加害者に対して強烈な処罰感情や恐怖心を抱いています。
加害者による示談交渉は困難なため、弁護士が代行するケースが一般的です。
それでも示談成立が見込めないのであれば、被害回復のために金銭を支払う「被害弁償」を申し出ましょう。
被害弁償により、不起訴や執行猶予つき判決を獲得できる場合があります。

警察署へ自首する

逮捕の回避手段として、警察署への自首も効果的です。
逮捕の要件のひとつに「逃亡や証拠隠滅のおそれ」があることから、自首することで逮捕の必要性を下げられます。ただし、自首をすれば必ず逮捕されないというわけではないため、自首の判断は慎重に行いましょう。
たとえ自首後に逮捕されたとしても、自首による刑罰の軽減が期待できます。
また、弁護士に自首へ同行してもらえば、弁護士が身元引受人となることが可能です。
身元引受人とは、被疑者または被告人が釈放・保釈される際に身柄を引き取る人です。
家族や職場へ逮捕された事実が伝わりづらくなるため、日常生活への悪影響を最小限に抑えられます。

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不同意わいせつ罪にあたる行為をした場合、逮捕前からの弁護士への依頼が大切です。
弁護士によって得意分野は異なるため、不同意わいせつ事件の経験が豊富な弁護士を探しましょう。
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まとめ


不同意わいせつ罪とは、相手の同意なくわいせつ行為をはたらく犯罪です。
2023年7月13日から改正刑法が施行され、従来の強制わいせつ罪よりも適用範囲が拡大されました。
刑罰は6ヶ月以上10年以下の拘禁刑のみなため、執行猶予がなければ刑務所で服役しなくてはいけません。
不同意わいせつ罪に改正される前の強制わいせつ罪の検挙率は86.3%と非常に高い上、公訴時効は12年と長い設定です。
ある日突然逮捕される可能性があるため、逮捕される前から弁護士に相談して対策することが大切です。

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