執行猶予つきの判決で前科はつく?生活への影響は?再犯の場合はどうなる?

刑事事件

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刑事事件で起訴され、裁判をすることになった場合、加害者側は執行猶予つき判決などの減刑を目指すこととなります。
この記事では執行猶予と前科との関係、執行猶予の条件、執行猶予となった場合の影響などについて解説します。
また、執行猶予となった場合でも刑務所に服役される可能性は残されていますので、どんな場合に服役しなければならなくなるのかについてもお伝えいたします。

▼この記事でわかること

  • 執行猶予の意味、条件がわかります
  • 執行猶予と前科との関係、海外旅行・就職への影響がわかります
  • 執行猶予になった後、服役しなければならないケースがわかります

▼こんな方におすすめ

  • 執行猶予の意味、条件についてお知りになりたい方
  • 執行猶予と前科との関係、海外旅行・就職への影響についてお知りになりたい方
  • 執行猶予が取り消されるケースについてお知りになりたい方

執行猶予とは


執行猶予とは、判決で有罪を言い渡されるにあたって、被告人に有利な情状が認められるために、刑罰(懲役、禁錮など)の執行を一定期間猶予(※)し、その期間中、法律に規定されている執行猶予の取り消し事由に該当することなく無事に過ごせば、刑罰の言い渡しを失効させる制度のことをいいます。

裁判官から執行猶予付きの判決を言い渡されるときは、

「主文。被告人を懲役2年に処する。この裁判の確定の日から4年間、その刑の執行を猶予する。」

などと言われます。

つまりこの判決では、

「あなたは検察官に起訴された罪で有罪ですから、懲役2年の刑罰を科します。本来なら2年間、刑務所に行ってもらいますが、今回は執行猶予付きの判決ですから、直ちに刑務所に行ってもらう必要はありません。これから4年間、何事もなく無事に経過すれば、「2年間、刑務所に行かなければいけない」という効力は消滅します」

ということを言われているのです。

(※)執行猶予の期間は、法律で「1年~5年」とされていますが、1年となるのは稀で、最低でも2年以上となることが多いです。

執行猶予になれば前科はつく

前科は裁判で有罪認定を受け、その裁判が確定した場合につきます。
それは執行猶予であっても変わらず、裁判が確定すれば前科がつきます。
そして一度ついた前科が消えることはありません。
再度罪を犯した場合は、捜査機関や裁判所に前科の内容を把握されてしまいます。

ただし前科は検察庁で厳重に管理され、一定の公的機関のみに情報が提供されますから、一般人にバレることは通常ありません。
ただし報道等がなされた場合は、バレる可能性はあります。

執行猶予の種類

執行猶予は「全部執行猶予」と「一部執行猶予」があります。
全部執行猶予は、全部の期間、刑の執行を猶予する執行猶予、一部執行猶予は、一部の期間は実刑、残りの期間を執行猶予とするものです(※)。
全部執行猶予はさらに「最初の執行猶予」と「再度の執行猶予」にわけられます。
後述しますが、最初の執行猶予に比べて再度の執行猶予の条件は厳しいです。

(※)したがって、厳密にいえば、一部執行猶予は執行猶予ではなく実刑の一部です。
一部執行猶予の判決では、たとえば、「主文。被告人を懲役2年に処する。その刑の一部である懲役10月の執行を2年間猶予する。」などと言い渡されます。

執行猶予をつけるための条件


それでは、いかなる場合に執行猶予となるのか、全部執行猶予の条件について、最初の執行猶予と再度の執行猶予にわけてみていきましょう。

最初の執行猶予の条件

最初の執行猶予の条件は以下のとおりです。

  1. 判決で「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」の言い渡しを受けること
  2. 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない、あるいは、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の執行が終わった日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと
  3. 情状に酌むべき事情があること

1つ目の条件により、殺人罪(死刑、無期若しくは5年以上の懲役)、強盗罪(5年以上有期懲役)など、そもそも法定刑に3年以下の懲役若しくは禁錮の罪が規定されていない罪では執行猶予を獲得することは難しいです(ただし、未遂の場合や法律上の減刑事由(心神耗弱など)がある場合を除く)。

2つ目の条件の「前に」とは今回の判決より前に、という意味です。
「刑に処せられたことがない」とは、前科を有していない初犯の場合はもちろん、執行猶予付きの前科を有しているものの、執行猶予期間を経過している場合も含まれます。
また、刑務所に服役した前科を有していても、刑の執行が終わった日から5年以上経過した、5年以内に再犯したものの罰金以下の刑罰だったという場合も、全部執行猶予の対象です。

再度の執行猶予の条件

再度の執行猶予の条件は以下のとおりです。

  1. 今回の判決時に執行猶予中であること
  2. 今回の罪の判決で1年以下の懲役又は禁錮の言い渡しを受けること
  3. 情状に特に酌量すべきものがあること
  4. 前の罪の執行猶予で保護観察に付されていなかったこと

まず、1つ目の条件より、今回の犯行時に執行猶予中でも判決時に執行猶予中でない場合は、執行猶予になるとすれば、再度の執行猶予ではなく最初の執行猶予が適用されます。

2つ目の条件の「1年以下の懲役又は禁錮」、3つ目の条件の「特に」という条件から、再度の執行猶予の条件は、最初の執行猶予の条件に比べて厳しくなっていることがおわかりいただけると思います。
これは前回の判決で社会内更生の機会を与えられながら、今回再び罪を犯しているためです。
前回の執行猶予に保護観察がついている場合は再度の執行猶予を受けることはできません。

執行猶予となった場合の影響


執行猶予は「ひとまず刑務所に行かなくて済む」という点ではメリットですが、犯した罪について有罪認定を受けたことは間違いありません。
以下では有罪認定を受けたことによって、いかなる影響が出てくるのかみていきましょう。

海外旅行できなくなる可能性がある

パスポートの発給等について規定している旅券法では、「禁錮以上の刑に処せられた者」についてはパスポートを発給しないことができる、と定めています。
そして、「刑に処せられた」には、実刑はもちろん執行猶予の場合も含みますから、執行猶予であってもパスポートが発給されず海外旅行できなくなる可能性はあります。
また、すでに発給を受けている場合はパスポートが失効し、同じく海外旅行できなくなる可能性があります。
なお、「禁錮以上の刑」とは禁錮・懲役・死刑のことを指し、罰金・拘留・科料は含まれません。

就職活動に影響が出る可能性がある

履歴書に賞罰欄を記入する欄が設けられている場合は、隠さず記入しなければいけません。
また、面接で問われた場合も隠さず回答する必要があります。
警備会社や金融系の会社など、個人の信用度が重要視される会社では前科の有無を尋ねられる可能性があります。

一方、履歴書に賞罰欄が設けられていない場合や面接で問われない場合は、自ら回答する必要はありません。
また、前述のとおり、前科の情報が公的機関以外に漏れることはありませんから、前科を有することによる就職活動への影響は小さいものと考えます。
ただし、逮捕歴がネット上に掲載されている場合、就職活動への影響を完全に排斥できるものではありません。
なお、逮捕歴は前科ではなく前歴にあたります。

執行猶予を獲得するためにやるべきこと


執行猶予を獲得するには、いかに被告人にとって有利な情状を主張できるかにかかっています。
被告人にとって有利な情状とは、たとえば、被害弁償や示談成立、更生可能性があること、などがあげられます。

弁護士に被害弁償、示談交渉を任せる

被害弁償や示談交渉は弁護士に任せましょう。
自分で行うことも不可能ではありませんが、そもそも被害弁償を受けてくれない、示談交渉のテーブルについてくれないケースが多いです。
また、身柄拘束されている、被害者と面識がなく被害者の名前や連絡先などの個人情報を知らない場合は自分で被害弁償や示談交渉することができません。
後者の場合は、捜査機関に個人情報を教えてくれるよう働きかけを行う必要がありますが、捜査機関が加害者に被害者の個人情報を教えることはありません。

専門の治療機関で治療を受ける

薬物依存症、窃盗症などの病的諸症状が疑われる場合は、専門の治療機関に定期的に通院して治療を受けることも有効な手段です。
再犯可能性がどの程度あるかによって実刑か執行猶予かの判断が分かれるところ、依存症等の病的諸症状が疑われる場合は再犯可能性が高いとして実刑にされてしまうおそれがあります。
そのため、専門の治療機関に定期的に通院し再犯可能性がない(あるいは低い)ことを主張することが必要となるのです。

執行猶予期間中に再犯したらどうなる?


執行猶予期間中に再び罪を犯したら、執行猶予が必ず取り消される場合と取り消される可能性のある場合があります。
執行猶予が取り消されると、判決で言い渡された刑の刑期について、刑務所で服役しなければならなくなります。

必ず執行猶予が取り消される場合

執行猶予が必ず取り消される場合は、刑法26条の1号から3号に規定されています。
なかでも実務で最も適用されることが多いのが刑法26条1号で、同号では以下のように規定されています。

「猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言い渡しがないとき」

つまり、以下の条件を満たす場合は必ず執行猶予が取り消されてしまいます。

  • 執行猶予中であり、その期間内に(新たな)罪を犯したこと
  • 期間内に新たな罪で禁錮以上の刑の判決が確定したこと
  • その判決で全部執行猶予の言い渡しを受けていないこと

なお「禁錮以上の刑」に罰金・拘留・科料は含まれませんから、たとえば、執行猶予期間中に罰金に処せられても、必ず執行猶予が取り消されるわけではありません。

執行猶予が取り消される可能性がある場合

一方、執行猶予が取り消されることがある場合は刑法26条の2に規定されています。
このうち刑法26条の2第1号には

「猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき」

と規定されており、執行猶予期間中に罰金に処せられた場合には、執行猶予が取り消されることがあることを規定しています。
その他、保護観察に付されていて遵守事項を遵守しなかった場合、取り消されることがある点にも注意が必要です。

まとめ


執行猶予は直ちに刑務所に服役せずに社会内での更生をはかれるという点でメリットですが、前科がつくことはもちろん、海外旅行や就職活動などの日常生活にも影響が出る可能性があります。
また、執行猶予は刑務所で服役することを猶予されたにすぎません。
つまり、執行猶予期間中に一定の条件を満たせば取り消され、刑務所に服役しなければならなくなる点にも注意が必要です。

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