業務委託契約書に収入印紙は必要?判断方法や金額など詳しく解説

企業法務

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福岡県 / 福岡市博多区
弁護士法人リベルタ総合法律事務所 福岡事務所
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「業務委託契約書に収入印紙は貼らないといけないの?」
「収入印紙を貼っていないと、契約書は無効になる?」
「業務委託契約書には、何円分の収入印紙を貼ればいいの?」

業務委託契約書を作成する際に、収入印紙についてこのようなことで迷ったりしませんか。

この記事では、業務委託契約書に貼るべき収入印紙についてよくわからないという方に向けて、業務委託契約書と収入印紙の関係について解説いたします。

▼この記事でわかること

  • 契約書と収入印紙のことについてわかります。
  • 自社の業務委託契約書に収入印紙が必要かどうかを判断できるようになります。
  • 収入印紙を貼るべき契約書と貼らなくていい契約書の違いがわかります。
  • どのくらいの金額の収入印紙を貼ればいいのかがわかります。

▼こんな方におすすめ

  • 業務委託契約書に収入印紙を貼るべきかで悩んでいる方
  • 業務委託契約書が2号文書と7号文書のどちらに該当するのか迷っている方
  • いくらの金額の収入印紙を貼るべきなのかがわからず迷っている方

業務委託契約書に収入印紙は必要か


業務委託契約書に収入印紙が必要かどうかは、契約書の個々の内容によります。
一般的に業務委託契約書といっても、その内容は、個別の契約書ごとに異なっています。

契約書に収入印紙を貼るべきなのかどうかについては、実際の契約書の内容によって判断することになります。
そこでこの項では、業務委託契約書と収入印紙の関係性ついて、詳しく解説します。

収入印紙を貼り付けなければならないのは「課税文書」

収入印紙を張り付けなければならない書面を課税文書といいます。
契約書などの書面は、課税文書、非課税文書、不課税文書に分かれ、このうち課税文書に該当するものだけが収入印紙を貼る必要があります。

収入印紙を課税文書に張り付けることによって、印紙税という税金を国に納めるシステムになっています。
契約書などの書面のうち、法律で印紙税の課税が義務付けられている書面は課税文書となります。
ただし、課税文書の中でも国の機関等一定の者が作成した文書や一定の条件に基づいた文書は「非課税文書」に該当し、収入印紙を貼る必要はありません。
どの書面が課税文書に該当するかというのは、法律によって明確に規定されています。

業務委託契約書は課税文書に該当する・しない?

では、実際に業務委託契約書は課税文書になるのかというと、実際のところ、個々の業務委託契約書の内容を見なければ判断できません。
業務委託契約書の中には、課税文書に該当する場合もあれば、該当しない場合もあります。

業務委託契約書が課税文書に該当するのは、大きく分けて「請負に関する契約書(2号文書)」と「継続的取引の基本となる契約書(7号文書)」に当たる場合です。
では、どのような業務委託契約書が印紙を求められるのでしょうか。

請負契約の場合、原則収入印紙が必要

請負契約とは、法律上は、次のように定義されています。

「当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して、その報酬を支払うことを約束すること」

請負契約で重要なことは、「仕事の完成」に主眼が置かれている点です。
そして発注者は、その仕事の完成という結果に対して報酬を支払うという約束をします。
成果物が発生する契約は名称を問わず、この類型に該当する可能性が高いです。

そのため「業務委託契約書」という名称であっても、工事を請け負う工事請負契約や下請契約など仕事の完成を発注する契約内容の場合は、請負契約に該当します。
重要なことは、名称ではなく実際の契約内容に何が書かれているかで、その内容が請負契約であれば、収入印紙が必要となるのです。

他方で、コンサルティング等を内容とする業務委託契約書は、成果物を完成してその他成果物に対してお金を払っているわけではないケースが多いので、この類型には該当しません。

委任契約の場合、収入印紙は不要な場合がある

委任契約とは、法律上の定義では、以下のようになっています。

「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾すること」

なお、多くの業務委託契約における委任は法律行為以外のものを委託するものですが、法律行為以外の事実行為を委託する契約を準委任契約といいます。
たとえば、コンサルティング・アドバイザリー契約等は準委任契約にあたります。

準委任委任契約は、請負契約と異なり、基本的には成果物は発生せず、受託者は仕事の完成義務を負いません。
役務の提供行為そのものに対価を支払う契約です。

準委任契約の場合には、請負に関する契約書(2号文書)には該当しませんので、継続的取引の基本となる契約書(7号文書)に該当する場合にのみ、収入印紙を貼る必要があります。
準委任を内容とする業務委託契約書は、継続的な取引をすることを念頭に置いたものも多くありますので、収入印紙を貼る必要があるかどうか注意してください。

2号文書(請負契約書)と7号文書(継続的取引基本契約書)の違い


収入印紙を貼るべき課税文書は、文書の種類によってそれぞれ番号が付与されており、1号から20号までが存在します。
このうち、特に契約書に関係する文書としては、2号の課税文書(2号文書)と、7号の課税文書(7号文書)です。

2号文書は請負に関する契約書で、7号文書は継続的取引の基本となる契約書です。
では収入印紙を貼らなければならない2号文書と7号文書について、詳しく解説いたします。

2号文書(請負契約書)とは

2号文書とは、建設工事の工事請負契約書や、物品加工注文契約書など、一般的な請負契約書をさします。
請負契約に該当する場合は原則収入印紙を貼る必要がありますが、契約金額が1万円未満であれば非課税文書となり、収入印紙は必要ありません。

契約金額が1万円以上になる場合、その金額に応じて収入印紙の金額が決定します。

なお、契約金額が記載されていない契約書の場合、収入印紙は200円となります。
契約金額と収入印紙の金額は、以下の表で確認してください。

契約金額 収入印紙
50万円以下 200円
50万円以上100万円以下 500円
100万円以上500万円以下 1,000円
500万円以上1千万円以下 5,000円
1千万円以上5千万円以下 10,000円
5千万円以上1億円以下 30,000円
1億円以上5億円以下 60,000円
5億円以上10億円以下 160,000円
10億円以上50億円以下 320,000円
50億円以上 480,000円

平成26年4月1日~令和4年3月31日時点

7号文書(継続的取引基本契約書)とは

7号文書は、一般的な売買取引基本契約や、特約店契約書、代理店契約書などの継続的な取引の基本となる契約書が該当します。
ただし「契約期間が3ヶ月以内で、かつ、更新の定めがないもの」の場合は、7号文書には該当しません。
契約期間が1ヶ月程度であっても、更新の定めがある場合は7号文書に該当し、収入印紙が必要です。

一般的な業務委託契約書は、一定の期間で自動更新される規定が定められることが多く、その場合7号文書に該当します。
7号文書に該当する場合、収入印紙は内容に関わらず一律で4,000円となります。

2号文書と7号文書が混在している場合は?

2号文書と7号文書の判断方法を解説してきましたが、契約書のなかには、請負契約に該当するし、また継続的に取引をする契約書でもある、というような場合はよくあります。
このような場合にも、明確にルールが決められています。

2号文書と7号文書が混在する場合は、次のような方法でその所属先を決定します。

  • 2号文書に請負金額の記載がある場合⇒2号文書
  • 2号文書に請負金額の記載がない場合⇒7号文書

もし、2号文書と7号文書が混在されていて、貼り付ける収入印紙の金額に迷ったら、上記の条件に照らし合わせてご判断ください。

業務委託契約書の収入印紙の貼り方


では実際に、業務委託契約書が課税文書に該当した場合、収入印紙はどのようにして貼るのでしょうか。
貼り方について、その方法、また気を付けるべき点などについて、解説します。

実際に収入印紙を貼る前に確認しておくこと

収入印紙を貼る場合、次のような手順ですすめていきます。

  1. 契約書が課税文書に該当するかどうか確認する
    (単発の委任契約、請負契約の金額が1万円以下であれば該当しない)
  2. 課税文書に該当する場合、2号文書か7号文書のどちらに該当するか判断する
  3. 収入印紙として貼る金額を確認する

実際に契約書に収入印紙を貼るときは、契約書の枚数分、収入印紙が必要になります。
2社で交わす業務委託契約書の場合、双方が保有する2通分の契約書に収入印紙を貼る必要があります。

また契約書の1通を正本とし、もう片方を副本とする場合でも、契約当事者の署名や押印、または契約当事者の証明がある場合は、課税文書に該当し、収入印紙を貼らなければなりません。
単純に複写機などのコピー機でコピーしただけのものであれば、課税文書とはなりません。

また、契約書に貼る収入印紙は、契約書の作成者の負担となります。
課税文書における契約書の作成者とは、原則として課税文書に記載された作成名義人となります。

もし2社間で契約書を共同で作成した場合は、2社が連帯して印紙税を納める義務があります。
実務的には、契約書を2通作成し、双方で保有する場合は、それぞれが1通ずつ分の収入印紙を負担する形が一般的に行われています。

収入印紙の貼るときのルール

収入印紙は、契約書の頭の部分に貼ることが一般的です。
ひな形として売っている契約書の場合、収入印紙が貼るスペースがあらかじめ記載されているものもあります。

貼るスペースが記載されていない場合は、表題の横あたりに貼ります。
表題の右側でも左側でもどちらでも構いません。

収入印紙を貼ったあとは、必ず消印を押す必要があります。
消印は、契約書の作成者、またはその代理人、使用人、その他従業員の印章または署名で契約書自体と印紙の彩文とにかけて鮮明に印紙を消す必要があります。

このとき、印章ではなく署名をする場合は、きちんと署名する必要があり、斜線を引いただけのようなものでは、印紙を消したことにはなりません。
また、鉛筆のような簡単に消せるもので署名することもNGとなっています。

もし収入印紙を貼らなかったらどうなる?


もし、収入印紙を貼らなかったらどうなるのでしょうか。
収入印紙を貼らなかった場合、印紙税を納付していないことになりますので、過怠税が徴収されます。

過怠税は、本来納付しなければならなかったはずの印紙税の額の3倍の金額となります。
このとき、自主的に印紙を貼っていないことを自ら申告した場合は、過怠税は1.1倍まで減額されます。
また、収入印紙を貼ったあと消印をしなかった場合も、消印をしなかった収入印紙の金額と同額の過怠税が徴収されますので、注意が必要です。

なお、本来貼らなければいけない収入印紙を貼っていなかったからといって、契約書自体が無効となることはありません。
契約書は、双方の合意のもと成立したのであれば、その契約書には、法的な効力が発生します。
契約書としては、きちんと成立したものであり、効力ももちろんありますが、印紙税を納付していないという点において、過怠税が科されるというものになるのです。

電子契約書であれば収入印紙は不要

近年、契約書を紙ベースのもので作成するのではなく、電子契約として締結するケースが多くなっています。
電子契約の場合は、文書そのものが存在しませんので、令和6年11月時点では電子契約に収入印紙は必要ありません。

ただし、電子契約に収入印紙が必要ないというのは、法律で明確に定義されているわけではなく、税務当局の見解や国会答弁において、電子契約には収入印紙を貼る必要がないと確認が取れているものです。
今後、法律の改正などによっては状況が変わる可能性もありますので、その点は注意が必要です。

まとめ


業務委託契約書に収入印紙を貼る場合、まずその業務委託契約書が請負契約なのか、委任契約なのかを確認する必要があります。
もし、業務委託契約書が請負契約に該当するのであれば、次に請負金額が記載されているかを確認し、記載されていれば、その金額に応じた収入印紙を貼ります。

また、その業務委託契約書が委任契約に該当する場合、継続的な取引の契約書か、そうでないのかを確認します。
委任契約で、継続的な取引の基本契約となる場合は4,000円の収入印紙が必要で、継続的ではない1回限りの契約書の場合は、収入印紙は必要ありません。
課税文書に収入印紙を貼っていない場合、過怠税が科されますので、契約書に応じて適切な収入印紙を貼るように心がけましょう。

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