漫画やアニメのキャラクター、企業のイメージキャラクター、地方のご当地キャラ。
日本ではさまざまなキャラクターが人気を集め、知名度アップなどに一役買っています。
「キャラクターを活用したビジネスをしたい」と考えている企業も少なくないでしょう。
そこで当コラムでは、キャラクターの使用に当たって知っておきたい、著作権などに関する基礎知識について解説します。
▼この記事でわかること
- キャラクターの著作権について基本的なことがわかります
- キャラクターの著作権侵害になるのは、どんな場合なのかがわかります
- キャラクターを安全に利用する方法がわかります
▼こんな方におすすめ
- キャラクターを守る法制度などについて、幅広く知りたいと考えている方
- 会社の業務などでキャラクターの使用を検討している方
- 既に使用しているキャラクターを保護する方法について知りたい方
キャラクターの著作権
世の中には多種多様なキャラクターが世に溢れていますが、それらのキャラクターの著作権はどのように扱われるのかご存知でしょうか。
キャラクターと著作権について、詳しく解説します。
キャラクターの定義とは
ここでいうキャラクターとは、小説や漫画等に登場する架空の人物や動物等の名称や外見を組み合わせた抽象的なアイデアを意味します。
従って、キャラクターは、キャラクターを表現しているイラストや文章それ自体を意味するものではなく、イラストや文章から読み取れるイメージであるということになります。
キャラクターも著作物の一種と思われがちですが、キャラクター自体は、著作物に当たらないとされます。
キャラクターそのものはあくまでも抽象的な概念・アイデアで、「表現されたものではない」ため著作物とはいえないというのが理由です。
著作権とは
著作権とは、著作者が著作物を創作した際に発生する著作者を保護するための権利です。
公益社団法人著作権情報センターのホームページでは、著作権について次のように解説しています。
自分の考えや気持ちを作品として表現したものを「著作物」、著作物を創作した人を「著作者」、著作者に対して法律によって与えられる権利のことを「著作権」と言います。
著作権制度は、著作者の努力に報いることで、文化が発展することを目的としています。
引用:「みんなのための著作権教室」公益社団法人著作権情報センター
著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます。
いくつかの種類に分別されますが、主な種類は以下の通りです。
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その他、芸術的な建造物、テレビドラマ、ネット配信動画、ゲームソフト、写真・グラビア、コンピュータ・プログラムなども、著作物として著作権の保護の対象になります。著作物の範囲は、かなり広いものとなっています。
キャラクターに対する権利をどのように保護したら良いのか
それでは、キャラクター自体を守るにはどうしたらよいのでしょうか。
キャラクターのイラスト等の著作権
キャラクター自体に著作権は発生しません。もっとも、多くのキャラクターは、イラストやアニメ、動画等のコンテンツになっています。
そのため、このようにキャラクターを具体的に表現した「著作物」が著作権で保護される結果、キャラクター自体も間接的に保護されるとは言えるかもしれません。
例えば、漫画の紙面、アニメの一コマに描かれているキャラクターを表現したイラストを、そのまま使えば、著作権を侵害する恐れがあります。
商品などに描かれているキャラクターの場合も同様です。
また、描かれたイラスト等と全く同じように描かれたものでなく、細部まで一致していなくても、著作権を侵害すると判断される恐れがあります。
例えば同人誌等によってキャラクターの同一性を保ちつつ、オリジナルな絵を書いた場合であっても、その特徴から原作キャラクターを書いたものであると普通の人が見てわかるものであれば、複製権、翻案権の侵害となる可能性が高いです。
キャラクター名の商標登録
キャラクター自体を保護するための方法として、「商標登録」も考えられます。
商標とは、自社の商品・サービスを他社のものと区別するために使用する「標識」のひとつです。
具体的には、商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング(名前・名称)」のことで、キャラクターの絵柄なども、商標になり得ます。
商標としてキャラクターを登録できれば、「商標権」による保護を受けられるということです。
キャラクター名や、キャラクターの見た目を商標登録すると、そのキャラクター名や見た目を他の人が利用した場合に、商標権侵害となる結果、間接的にキャラクター自体も、その限りにおいて保護されることになります。
実際、一部の有名なポケモンなどは商標登録されています。
キャラクターの商標登録には、特許庁への出願が必要です。
特許庁は、出願されたキャラクターについて、類似の登録がないかなど所定の審査を実施します。
その審査にパスすると、商標登録は完了です。
商標登録されれば、キャラクターが無断で使用されたり、模倣されたりしたようなケースで、法的手段を取ることも可能になります。
有名なキャラクターであれば、不正競争防止法で保護されるケースもあります。
キャラクターの著作権侵害
「キャラクターそのもの」に著作権は発生しないので、例えば、「黄色いくて雷を出す小さくてかわいい小動物でしっぽが稲妻の形になっている、さとしくんのペットのキャラクター」というアイディアを用いて、まったく新たなキャラクターを創作することはできなくはないです。
とはいえ、他人のキャラクターを好き放題使って良いということではありません。
キャラクター使用が著作権侵害になるケース、著作権侵害のペナルティなどについて解説します。
どのような態様でキャラクターを使用すると著作権侵害になるのか
著作権、すなわち著作者の権利にはさまざまなものがあります。
具体的には次のようなものです。
複製権 | 著作物を印刷、写真、複写、録音、録画などの方法によって有形的に再製する権利 |
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翻訳権・翻案権 | 著作物を翻訳、編曲、変形、翻案などする権利(二次的著作物を創作する権利) |
二次的著作物の利用権 | 自分の著作物を原作品とする二次的著作物を利用することについて、二次的著作物の著作権者が持つ権利と同様の権利 |
例えば漫画で、作者とは別の人がキャラクターを描いてイラストサイトに投稿したり、コミックマーケットで販売したりした場合も、「複製権」や「翻案権」の観点から、著作権侵害となる可能性があります。
キャラクターのイラストをコピーした場合は、「複製権」を侵害する恐れがあります。
コピーを個人的に使うだけであれば複製権の侵害にはなりませんが、社内の資料として閲覧などするのは基本的にはNGです。
どのような態様だと著作権侵害にならないのか
実際にキャラクターを使用しても、著作権侵害に当たらないケースもあります。
キャラクターの「名前」だけの使用
キャラクターの名前だけを使う場合は、著作権侵害とならない可能性が高いといえます。
単なる文字の羅列で成り立っている「名前」であれば、著作物には当たらないと判断される場合もあるためです。
ただ注意が必要なのは、キャラクターの名前が商標登録されているケースです。
キャラクターの名前が商標登録されていれば、商標権を侵害する恐れがあります。
商標登録について確認したい場合は、独立行政法人「工業所有権情報・研修館」が運営する「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」を利用しましょう。
商標、特許、実用新案、意匠などについて、公表されている情報を無料で検索、照会することができます。
ちなみに、「ピカチュウ」は商標登録されていますので、前述の例で「黄色いくて雷を出す小さくてかわいい小動物でしっぽが稲妻の形になっている、さとしくんのペットのキャラクター」というアイディアを用いて、まったく新たなキャラクターを創作した場合にピカチュウという名前をつけることはできません。
「著作権フリー」のキャラクター
「著作権フリー」のキャラクターを利用すれば、著作権を侵害する恐れはありません。
インターネット上には、キャラクターイラストなどのフリー素材を提供するサイトがあります。
もっとも、フリーとはいえど、多くのサイトでは、使用目的や方法などについて規約を設けています。
この場合、規約の範囲で著作物の使用を許諾されているにすぎません。
そのため、これら規約を遵守して使用する必要があります。
規約に反して使用すれば、著作権を侵害する恐れもあるので注意が必要です。
著作権侵害のペナルティ
著作権の侵害は犯罪です。
著作権を侵害すると、10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金のいずれか、または両方を科される可能性があります。
なお、著作法違反は一部「親告罪」となっていますので、この場合には被害者である著作権者が告訴しなければ警察の捜査が開始されず処罰には至りません。
著作権の侵害に対しては、刑事罰とは別に、民事上の請求を受けることもあります
主な請求内容は以下の通りです。
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請求はひとつだけに限らず、複数の内容について受ける可能性もあります。
請求について争いがある場合は、最終的に裁判によって判断されることになります。
キャラクターの利用に関する契約
キャラクターを安全に使うための選択肢の一つが、著作権者に著作権の譲渡を依頼したり、ライセンス契約を結ぶことです。
ここでは、著作権者に対してできることをまとめました。
著作権の譲渡
例えば、会社でキャラクターデザインの作成を外部のデザイナーに依頼した場合、キャラクターのデザインとしてイラスト等で表現された表現物の著作権は、デザイナーのものになります。
会社は、業務でキャラクターデザインを使用するたびに、デザイナーの許諾を取らなければならないということです。
こうした場合、会社がデザイナーからすべての著作権を買い取ることで、許諾なしに使用することが可能になります。
もっとも、通常は外部のデザイナーとの契約で著作権の帰属をどうするかについて定められる事が多いです。
著作者から著作権の譲渡を受ける際には、「翻案権」や「二次的著作物の利用権」など、事業運営のため確保しておくべき権利が確保できているかなども含めて、確認して合意することにも注意しましょう。
ライセンス契約
著作権の譲渡に対し、著作権者が難色を示しているというケースでは、著作権者とライセンス契約を結ぶという選択肢もあります。
ライセンス契約を結べば、使用者、著作権者の間で合意した範囲内で、キャラクターを使用することが可能になります。
ただ一定の期間又は地域だけに限られたライセンス契約になってしまうと、キャラクターの活用の幅が狭められることになりかねません。
今後の展開を考え、契約内容を精査することが肝要です。
まとめ
日本は世界有数の「キャラクター大国」などとも言われます。
SNSの普及なども背景に、キャラクターをビジネスで活用する事例も増えていますが、キャラクターの使用には注意が必要な点が多くあります。
安全に効果的にキャラクターを使うためには、著作権法などへの理解が必要です。キャラクターの活用を検討しているのならば、まずは著作権関連の事案に実績がある弁護士などに相談してみることをおすすめします。