新しく事業を始める際や独立時にロゴの作成を検討することがあります。
ロゴを作成するには、クラウドソーシングなどで外注する、自社内のデザイナーに依頼するといった方法がありますが、いずれにしても考えなければいけないのは著作権の問題です。
著作権は複雑であるため、しっかりと理解しておかなければ、後々大きなトラブルになるリスクもあります。
そこで、本記事ではロゴ作成時における著作権や商標権の概要、また作成を依頼する際の注意点についても解説していきます。
▼この記事でわかること
- ロゴに著作権が発生するケースや著作権の概要を知ることができます
- 外部のデザイナーにロゴ制作を依頼する時の注意点を知ることができます
- 社内の従業員にロゴ制作を頼む時の注意点を知ることができます
▼こんな方におすすめ
- ロゴの作成を依頼したいが、著作権についてよく分からない方
- 著作権が発生する要因や譲渡の仕方について知りたい方
- ロゴの商標登録について検討している方
著作権とは?ロゴにも発生する?
それでは、まず著作権の概要について説明します。
著作権とは、著作物(作者の思想や感情を創作的に表現したもの)に対する権利です。
身近なものでは小説・映画・写真・音楽などがあり、ロゴもその対象になり得ます。
ただし、ロゴの種類によっては著作物ではないとされ、著作権が認められないケースも存在します。
そこで、ここでは著作物の条件について具体的に解説し、どのような場合だとロゴに著作権が発生するか確認していきます。
ロゴに著作権が発生する条件
まずは著作権が発生する条件についてご紹介します。
著作権は著作物に対する権利ですので、制作したものが「著作物」と認められることが、著作権が発生する条件となります。
著作物の条件は具体的に下記のようになっています。
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この4つの条件を全て満たせば、ロゴにも著作権が発生します。
著作権が発生しないロゴとは
では著作権が発生しないロゴとはどのようなものなのでしょうか。
ロゴの種類には大きく分けて下記の3種類があります。
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端的にいえば、このうち「著作物の4つ条件」を満たしていないものが著作権の発生しないロゴとなります。
とくに1のロゴタイプのみの場合は、著作物の要件である「個性」や「思想又は感情」を表現することは難しく、著作物からは除外されてしまうケースが2.3.と比較すると多いです。
実際に平成8年1月25日に判決が出た「Asahiロゴマーク事件」の裁判では、「Asahi」のロゴタイプはデザイン性があるものの、美的創作性が感じられないとされ、著作物とは認められませんでした。
ロゴ作成時には商標登録すべき?
「商標登録」とは、事業者が自社商品やサービスを他社のものと区別し、財産として守るものになります。
そのためロゴを商標登録しておくと、たとえ著作権が認められないロゴであったとしても、独占的に利用できるようになります。
もし無断使用が発覚した場合は、利用の差し止めや損害賠償を請求することも可能です。
一方で著作権の発生しないロゴについては、商標登録しなければ法的措置をとることも難しくなるでしょう。
さらに他者が模倣したロゴを先に商標登録してしまったら、自社で使うこともできなくなります。
従って、著作権の主張が難しいロゴについては、商標登録を行っておくと安心でしょう。
外部のデザイナーにロゴ作成を依頼するときの注意事項
次は実際にロゴ作成を外部デザイナーに依頼する際の注意点を確認します。
主な注意点としては下記の様な点があります。
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それぞれ順番に確認していきます。
(1)ロゴ作成の著作権譲渡に関する譲渡契約書を締結する
外部デザイナー作成のロゴを使用する場合は、まず著作物の譲渡に関して定めた契約書を作成しておくことが重要です。
特に注意したい契約内容の記載事項として、下記の3つがありますので、必ず確認しておくことが大事です。
著作財産権を譲渡してもらう旨の記載
ロゴを作成した外部デザイナーが著作権を放棄しなければ、ロゴを使用するたびに著作権を侵害してしまうことになりますので、まずは著作権を譲渡する旨の記載が必要になります。
ただし、注意点として著作権は一つの権利だけではなく、著作権には数多くの種類が存在する点があります。
具体的には経済的利益を保護するための「著作財産権」の種類として、下記の様な権利があります。
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したがって、使用用途にあわせてどの著作財産権を譲渡してもらうのか検討した上で、必要な権利の譲渡契約を行うことが大事です。
著作者人格権を行使しない旨の記載
著作権には著作者の人格を保護する目的である「著作者人格権」があります。
そして、著作者人格権は主に下記のような種類があります。
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注意すべきなのは、この著作者人格権については他者に譲渡ができない点です。
そのため、著作権譲渡契約書には必ず「著作者人格権については行使しない」という旨の記載をして、外部デザイナーと契約を結ぶことが重要です。
他者の知的財産を侵害していない旨の記載
外部デザイナーにロゴ作成を依頼した場合には、そのロゴが他社の知的財産を侵害していないことを保証してもらうことが大事です。
これは、作成されたロゴが他社の著作物を参考に作られ類似していた場合に、著作権侵害とされてロゴの譲受人に責任が及ぶ可能性をなくすためです。
また、もしロゴに関して第三者から権利侵害で訴えられた場合に備え、損害賠償時の費用負担はデザイナーが行う旨の記載もしておくのも有効です。
(2)著作権譲渡を拒否されてしまった場合の対策を知っておく
デザイナーによっては、作成したロゴの著作権の譲渡を拒否されてしまう場合もあります。
そんな場合に備えて、作成してもらったロゴを定められた範囲でも使用できるよう、下記の様な対策をとりましょう。
複製権、翻案権など限定的に譲渡してもらう
前述したように、著作財産権には細かくさまざまな権利が存在します。
そのため、すべての著作財産権ついての譲渡は難しくても、権利のいくつかを限定的に譲渡してもらう方法があります。
ロゴ制作時においては、コピーができる権利である「複製権」、変更や加工ができる権利である「翻案権」などを譲渡してもらうことが重要です。
ライセンス契約を締結する
一定の利用料を支払うことで、著作権を譲渡してもらわなくても利用できるライセンス契約という形にすることも可能です。
ただし、ロゴの場合には長期で使用することが前提となりますので、費用負担が増えてしまう点には注意が必要です。
(3)納品後も必ず類似したロゴがないか確認しておく
上記の注意点にしっかりと備えておくことが重要ですが、契約締結後には念のため類似したロゴがないか自ら確認しておくことも大事です。
GoogleやYahoo!などの検索サイトで、作成したロゴを画像検索してチェックをすると効率的です。
従業員がロゴ作成する場合は職務著作の要件を確認
続いて社内の従業員がロゴ作成をする場合についてもご説明します。
著作権は基本的に制作した著作者に発生しますが、社内の従業員のケースで「職務著作」に該当していれば、例外的に法人や使用者に著作権・著作者人格権が帰属することになります。
職務著作に該当する要件については下記の様になっています。
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従業員にロゴ作成を頼む場合には、上記要件を満たしていることを確認しておくことが大事です。
まとめ
以上、ロゴの作成とロゴに関わる著作権や商標権についての解説、ロゴ作成依頼時における注意点に関しての説明でした。
ロゴ作成時には、著作権だけでなく商標権も含めて対応を考えることが重要です。
そして外部デザイナーに依頼するケースと、従業員に頼むケースでは、それぞれ考慮すべき点が異なる点があるので注意しましょう。
ロゴ作成時の著作権を保護するための契約書のリーガルチェック、社内規程や就業規則の見直しなどを検討している場合は、ココナラ法律相談にて弁護士を探し、相談してみて下さい。