離婚後の養育費の相場とは?子どもの数や年収別に解説

離婚・男女問題

この記事の監修

東京都 / 豊島区
弁護士法人若井綜合法律事務所
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「元夫から養育費の金額が高すぎると言われた」
「養育費の相場が知りたいが、調べ方がわからない」
離婚に伴い、このような養育費のお悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。

養育費の金額はこれからの生活に大きく関わるため、おおよその相場を理解したうえで、適切な条件を決めていくことが大切です。

本記事では子どもの人数や収入ごとの養育費の相場や、実際のシミュレーション方法を紹介しています。
養育費について正しい知識をつけ、納得のいく金額で合意を目指しましょう。

▼この記事でわかること

  • 子どもの人数別の養育費相場がわかります
  • 養育費を増額できるケースがわかります
  • 養育費の詳細シミュレーション方法がわかります

▼こんな方におすすめ

  • 離婚をしたいけれど養育費がどの程度もらえるか不安な方
  • 詳しく養育費をシミュレーションしてみたい方
  • 離婚相手と養育費の金額について揉めている・揉めそうな方

養育費とは


たとえ夫婦が離婚しても、二人が子どもの親である事実は変わりません。
そのため未成年の子どもがいる夫婦が離婚をする場合は、子どもを育てるための「養育費」について取り決める必要があります。

法律上の「養育費」とは「子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用」とされています。
衣食住や教育、医療など子どもの成長のために必要なすべての費用が該当しますが、明確に項目が決められているわけではありません。
養育費は、請求した時点から子どもが自立するまでの期間中、子どもを育てる親が毎月受け取ることができます。

養育費の金額は、お互いの合意があれば自由に設定できます。
ただし話し合いで合意に至らない場合は、養育費の相場をもとに判断する形になるため、この先の解説で正しい知識をつけましょう。

養育費の相場とシュミレーション方法

ここでは、養育費の相場金額と実際のシミュレーション方法を紹介します。
1か月あたりの養育費の平均相場は、母子家庭で43,707円、父子家庭で32,550円とされています。(参考:「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」厚生労働省

養育費相場は、養育費算定表(2019年12月改定)にあてはめて取り決めるのが一般的です。
養育費算定表とは、養育費の複雑な計算を簡単にするため、裁判所が養育費の目安をまとめた表のことです。
なお、日本弁護士連合会が掲載している「養育費・婚姻費用の新算定表」というものがありますが、裁判実務では使用されていません。

子どもの数に応じた養育費の平均額

全体の養育費相場は先ほど示しましたが、子どもの人数によっても平均額は異なります。
当然ながら子どもが増えるほどお金がかかるため、養育費算定表においても子どもが多い世帯の方が平均額が高い傾向にあります。

【子どもの人数別の平均養育費】

子ども1人の世帯
38,207円
子ども2人の世帯
48,909円
子ども3人の世帯
57,739円

※参考:「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」厚生労働省

養育費算定表の見方

それでは自分が実際にどのくらい養育費をもらえるのか、算定表を見ながらシミュレーションしてみましょう。
算定表は裁判所のHPに掲載されている「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」を参考にしてみるとよいでしょう。

【算定表を見る際の注意ポイント】

  • 表1~表9のなかから、自分の子どもの人数と年齢に合った表を参照する
  • 親の雇用形態が「給与」と「自営」に分かれている
  • 義務者=養育費を支払う側、権利者=養育費を受け取る側

まず、上記の注意ポイントに気をつけながら自身の家族構成に合った表を閲覧します。
表の中で、両親の年収が交わるところに書かれている金額が養育費の目安です。

収入の調べ方

算定表を使って養育費をシミュレーションするためには、両親の年収を知っておく必要があります。

収入額によっては養育費が大きく変わるため、次のような書類を参照して正確に把握しましょう。

  • 給与所得者(会社員):源泉徴収票の「支払金額」欄
  • 自営業者:確定申告書の「課税される所得金額」欄

もし給与所得と事業所得がある場合は、算定表に従い一方の所得をもう一方の所得に変換して収入を確定させます。
例えば給与収入600万円、事業所得200万円の場合は、給与収入600万円を事業所得453万円に変換し、事業所得合計653万円として収入を認定することになります。

なお、生活保護費や児童手当・児童扶養手当、親族からの援助は、養育費算定の基礎となる収入に含まれません。
公的年金は収入に含まれますが,職業費がかからないため,特別の考慮が必要になります。

子どもの人数・収入別の養育費の例

ここでは、実際に算定表を使ってシミュレーションした養育費の例を紹介します。
夫と妻の収入が変わると養育費がどのくらい変わるのか見ていきましょう。
※今回は夫が養育費を支払う側・妻が受け取る側とし、子どもの年齢は固定で考えます。

【夫:会社員 500万円、妻:自営業 150万円の場合】

子ども1人(3歳)
4~6万円
子ども1人(15歳)
子ども2人(1歳・5歳)
6~8万円
子ども2人(10歳・16歳)

【夫:会社員 400万円、妻:会社員 400万円の場合】

子ども1人(3歳)
2~4万円
子ども1人(15歳)
4~6万円
子ども2人(1歳・5歳)
子ども2人(10歳・16歳)

【夫:会社員 700万円、妻:収入なしの場合】

子ども1人(3歳)
8~10万円
子ども1人(15歳)
10~12万円
子ども2人(1歳・5歳)
12~14万円
子ども2人(10歳・16歳)
14~16万円

上記の例から見てわかるように、子どもの人数が多い・年齢が高いほど養育費は高くなる傾向にあります。
また支払う側の親の収入が高く、受け取る側の収入が低いほど養育費が高くなります。

標準的算定方式による養育費の計算方法


ここまでは算定表を使った養育費のシミュレーション方法を紹介してきましたが、算定表で出した養育費はあくまでも想定額で、全てのケースに妥当な金額とは限りません。

具体的には以下のようなケースにおいて、算定表を使って養育費を算定することができません。

【算定表を使って養育費を算定できないケース】

  1. 子が2人おり、上の子の親権を父親、下の子の親権を母親が持っている場合など、養育費の被請求側も子を養育している場合
  2. 養育費を請求されている側の親が再婚し、再婚相手との間に新たに子を設けた場合など、養育費の被請求者側に扶養家族が増えた場合
  3. 養育費を請求されている側の親が前妻との間に子がおり、前妻との間の子に対する養育費を支払っている場合
  4. 子が4人以上いる場合

そこで、より詳しく養育費を算出したい方は「標準的算定方式」を使う方法もあります。
ただし標準的算定方式の場合は、事前に「基礎収入」や「子の生活費指数」を把握しておく必要があるため、それらの数字をどのように調べるかも含めて見ていきましょう。

(1)親の基礎収入を算出する

まずは、親の「基礎収入」を調べましょう。
基礎収入とは養育費算出のために使われる収入で、総収入のことではありません。

【基礎収入の計算式】

総収入×〇%=基礎収入

〇の中に入る割合は、雇用形態(給与所得者か自営業者か)や収入額によって異なります。
下記表で自分の基礎収入割合を調べた後、上記計算式にあてはめてください。

【給与所得者】

収入額(単位:万円) 基礎収入の割合
0~75
54%
~100
50%
~125
46%
~175
44%
~275
43%
~525
42%
~725
41%
~1325
40%
~1475
39%
~2000
38%

【自営業者】

収入額(単位:万円 基礎収入の割合
0~66
61%
~82
60%
~98
59%
~256
58%
~349
57%
~392
56%
~496
55%
~563
54%
~784
53%
~942
52%
~1046
51%
~1179
50%
~1482
49%
~1567
48%

(2)子の生活費を算出する

親の基礎収入がわかったら、次に子の生活費を算出しましょう。
子の生活費を計算するためには「子どもの生活費指数」という数値を使います。
「子どもの生活費指数」とは、子どもに必要な生活費を年齢ごとに数値化したもので、養育義務者である大人を100としています。

【子どもの生活費指数】※成人(義務者)を100とする

0~14歳の子
62
15歳以上の子
85

例えば3歳の子どもは62、18歳の子どもは85、自分は100となります。
この数値を使い、下記の式に当てはめて子の生活費を算出してみましょう。

【子の生活費の計算式】

義務者の基礎収入×(子の生活費指数÷(義務者の生活費指数+子の生活費指数))

例えば子どもが3人いる場合は、3人分合算した数値を子の生活費指数としてください。
また前述した【算定表を使って養育費を算定できないケース】の①〜③の場合、分母の「子の生活費指数」に養育費の対象となっている子に加え、義務者が養育している子の人数と年齢に応じた生活費指数を加算することが多いです。

(3)養育費を算出する

最後に、先ほど算出した「親の基礎収入」と「子の生活費」を使って負担するべき養育費を算出しましょう。

【養育費の計算式】

子の生活費×(義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入))

ここで導き出された金額を12カ月で割った金額が、1カ月ごとの養育費の目安になります。

養育費の増額が見込める状況

一度取り決めた養育費でも、後々事情が変わった場合は増額できる可能性があります。
まずは「事情が変わったので養育費を増やしてほしい」と相手に相談しましょう。
相手が増額に納得してくれさえすれば、養育費はいつでも変更できます。

ただし、相手から増額を断られた場合は「養育費増額請求調停」に進み、それでも合意できなければ裁判に進む流れとなります。
その際は、増額が本当にやむを得ない事情であるかを以下の条件にのっとって厳格に判断されることになります。

  1. 客観的な事情変更があったこと
  2. その事情変更を予測できなかったこと
  3. 事情の変更が当事者の責任により生じたものではないこと
  4. 当初合意した内容を維持するのが公平に反すること

ここからは上記条件を満たす可能性が高く、養育費の増額が見込めるケースをいくつか紹介します。

学校の授業料や習い事の費用がかかる

成長に伴って高校や大学などに進学することは自然な流れです。
その際にかかる私立校の学費などを請求したい場合は、増額が認められる可能性があります。
ただし学費の高い私立校の場合は、親自身の社会的地位や収入などを考慮して決定される傾向にあります。

子どもの病気やケガで医療費がかかる

子どもが大きな病気やケガをしてしまった場合、入院費・通院費・薬代などで多額の医療費がかかります。
病気やケガは予測不可能な事情なので、増額が認められる可能性があるでしょう。

受け取る側の収入が減った

子どもの養育者が病気やケガにより十分に働けなくなってしまった場合や、突然のリストラや倒産などで職を失った場合などは、増額が認められることもあります。
ただし不景気による収入減の場合は、支払う側も同様に収入が減っている場合があるため、認められない可能性があります。

支払う側の収入が増えた

養育費算定表では、収入が増えるほど養育費の金額も高くなります。
それに伴い、もし支払う側が昇格・昇進などで収入が大幅に増えた場合はその分養育費も増えるのが妥当と考えられ、増額が認められる場合があります。

養育費の取り決めを弁護士に依頼すべきケース


前述した通り、養育費の金額は夫婦の合意さえあればよいので、当事者のみで決めることもできます。
しかしなかには、養育費の取り決めを弁護士に依頼するメリットが大きい方もいます。
初めて養育費を算出する場合も、取り決め後に再度養育費を決め直したい場合も、以下のケースに当てはまる方はぜひ弁護士への依頼を検討してみてください。

相手が養育費の支払いに消極的な場合

実際は、相手が養育費を払いたがらないケースも多く存在します。
その場合は話し合いで解決するよりも、法的根拠に基づいた養育費の算出から交渉までを弁護士に任せた方がスムーズに進みやすいです。
もし調停や裁判に発展しても弁護士が代理人として対応してくれるため、納得いく解決へ導きやすくなります。

自分もしくは相手に副収入がある場合

本職の他に副業をしている・株の配当や不動産の所得があるという方は、それら全てを含めて総収入を算出する必要があります。
自分で計算するのが難しいのはもちろんですが、相手が養育費を減らすために副収入を故意に隠そうとするケースも考えられます。

収入が変動する仕事に就いている場合

収入に多少の増減があるのは当然ですが、歩合制の方や景気に大きく左右される仕事に就いている方は、適正な総収入を判断するのが難しいです。
これから長期間にわたって養育費を支払う上でも、適正額を弁護士の視点から判断してもらうことは大きなメリットとなるでしょう。

子どもの人数が多い・家庭環境が複雑な場合

現時点で養育費算定表を使ってシミュレーションできるのは子ども3人までなので、子どもが4人以上いる方は標準的算定方式を使って自分で計算する必要があります。
また、再婚後に子どもを認知したなど家庭環境が変わって養育費を増額・減額したい場合も、算定表にそのまま当てはめるのが難しいケースが多々あります。
そのほか、前述した【算定表を使って養育費を算定できないケース】の①〜③に当てはまる状況においても同様です。

そんな時は、各家庭環境を考慮して適正額を算出してくれる弁護士を頼りましょう。

まとめ


いかがでしたでしょうか。
本記事では、養育費の平均相場やシミュレーション方法、増額が見込めるケースなどを解説しました。

養育費は夫婦同士の話し合いで決めることもできますが、お互いの正しい収入を把握したり、子どもの人数や年齢に応じた適正額を踏まえた上で冷静に話し合うのは大変な労力です。
特に、相手と揉めそうな方や正しい収入の算出が難しい方、子どもが多い方、家庭環境が複雑な方は当事者同士での取り決めが難しいといえます。

養育費の金額によっては今後の生活レベルが変わる場合もあるため、お悩みの方は一度離婚について詳しい弁護士への相談を検討しましょう!

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