後遺障害等級認定の流れ|申請手続きや認定獲得の条件とは

交通事故

この記事の監修

栃木県 / 宇都宮市
弁護士法人みずき 栃木支部宇都宮大通り法律事務所
事務所HP

「交通事故のケガの治療をしたが、首の痛みがある」
「頭部外傷の治療をした後、認知機能が低下した」
このような後遺症障害が残ってしまうと、場合によっては一生涯付き合っていかなければならなくなることもあります。
ただその症状が後遺障害等級がとして認められると、より多くの賠償金を受け取れる可能性が高くなりますので、症状に応じた適切な補償を受けられるよう、後遺障害等級認定の手続きをすることをおすすめします。

そこで本記事では、後遺障害等級認定の流れや認定条件について詳しく解説しています。
正しい知識をつけて、適切な後遺障害等級の獲得を目指しましょう。

▼この記事でわかること

  • 後遺障害等級認定の申請方法や流れがわかります
  • 後遺障害等級別に該当する症状がわかります
  • 後遺障害等級認定されるための条件がわかります

▼こんな方におすすめ

  • 交通事故でけがをしたので自分が金銭を受け取れるか知りたい
  • 後遺障害等級認定の申請をしたいが、誰に何の書類を提出すれば良いかわからない方
  • 自分の後遺症が後遺障害等級の何級に当てはまるか知りたい方

後遺障害等級認定の申請方法

交通事故によって後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級認定の申請をすることで賠償金の上乗せを得られる可能性があります。

ただし後遺障害等級を認定されるためには、後遺障害を証明する書類を揃えて相手方の保険会社に申請する必要があります。
後遺障害等級認定の申請方法には「事前認定」と「被害者請求」がありますが、それぞれメリット・デメリットがあるため、ご自身にはどちらが合っているか考えながら見てみてください。

事前認定

「事前認定」は、基本的に加害者側の任意保険会社が全ての手続きを行います。
以下に事前認定のメリットとデメリットをまとめました。

メリット
  • 申請の手間が省ける→医師から後遺障害診断書をもらって相手方の任意保険会社に提出するだけなので、手続きの手間が大幅に省ける
デメリット
  • 適切な認定を受けられない可能性がある→相手方の任意保険会社の提出書類によっては、実際の症状より低い等級で認定されてしまう可能性もある
  • 賠償金が先払いされない→事前認定で手続きした場合は示談成立後に一括で賠償金が支払われるため、賠償金を先に受け取ることができない(※被害者請求は認定とほぼ同時に賠償金の一部が払われる)

仕事などで忙しい方にとって、申請の手間が省けるのは事前認定の大きなメリットです。
一方で「自分の納得のいく内容で申請したい」という方には事前認定は向きません。

また、後遺障害等級によって賠償金額が大きく変わるため、重度の後遺障害症が残ってしまった方やわかりづらい後遺障害を証明する必要がある方は、適正な等級認定を受けるためにも、資料を自分で選定できる被害者請求がおすすめです。

被害者請求

「被害者請求」は、相手側の任意保険会社を通さず、自らが申請書類を収集して、相手側の自賠責保険会社に後遺障害等級認定を申請する手続き方法です。
以下に被害者請求のメリットとデメリットをまとめました。

メリット
  • 適正な後遺障害等級を得られる可能性が高い→自ら提出する書類を選定したり追加作成したりできるため、納得できる内容で申請した結果、適正な後遺障害等級を得られる可能性がある
  • 賠償金の一部を早く受け取れる→認定を受けたのとほぼ同時に賠償金の一部(自賠責保険の限度額)を受け取ることができる
デメリット
  • 手間がかかる→申請に必要な書類を全て自分で用意する必要があるため、調べる手間や時間がかかる

被害者請求で申請する場合は、以下の書類を準備する必要があります。

  • 支払請求書兼支払指図書
  • 診断書・診療報酬明細書
  • 後遺障害診断書
  • 交通事故証明書
  • 保険金・損害賠償の請求書
  • 請求者の印鑑登録証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 休業損害証明書
  • 源泉徴収票等、事故前年度の収入を証明する書類

一人で後遺障害等級認定手続きを行う場合、「どの書類を誰からもらえば良いのか」「資料はこれで十分なのか」など不安や疑問が出てくる可能性があるため、交通事故に詳しい弁護士に依頼してサポートを受けながら準備すると安心です。

後遺障害等級認定を受けるまでの流れ


ここでは、交通事故が起こってから後遺障害等級認定を受けるまでの流れを紹介します。
後遺障害等級認定の申請は、事故が起こった後すぐに行うことはできません。
最短で賠償金を得るためにも、以下の流れを守って後遺障害等級認定を申請しましょう。

(1)医師から症状固定の診断を受ける

後遺障害等級認定にまず必要なことは、必要な治療を十分に受けたうえで、担当医師から「症状固定」の診断をしてもらうことです。
「症状固定」とは、これ以上治療を続けてもそれによる症状の回復が見込めない状態のことです。
これは、主治医の見解を基礎として、最終的には裁判所等で判断がなされます。
つまり、治療を続けることで、症状の回復が具体的に期待できる場合は、未だに症状固定には至っておらず、後遺障害等級認定の申請をするタイミングではないのです。

もし治療中にも関わらず相手方の任意保険会社から「治療費を打ち切るため症状固定にしてほしい」などと打診された場合は要注意です。
症状固定は上記のとおり、それ以上治療を続けても症状が回復しないことを意味するため、一定期間必要な治療をしていることが前提となります。
症状固定に至っていないのに治療をやめてしまうと、本来治るはずのけがが治らなくなったり、適正な後遺障害等級が認定されなかったりする可能性があります。

【治療費打ち切りを打診された時の対処法】

  • 医師に意見書を書いてもらい、保険会社に治療費打ち切りの延長を求める
  • 自費で治療を継続する

ここで重要なことは、保険会社から何と言われてもとにかく必要な治療は最後まで続けることです。
症状固定時期の判断は、過去の裁判所の考え方等も勘案して行う必要があるため、交通事故に精通している弁護士にご相談のうえで行ったほうが安心です。

(2)医師に後遺障害診断書の作成を依頼

症状固定の診断を受けたら、医師に後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。
後遺障害診断書は、事前認定・被害者請求のどちらで手続きする場合も自分で用意しなければならない書類です。
ただし、医師の視点だけでは審査に有利になる可能性がある検査が抜けていることもあるため、不安な方は弁護士に依頼して後遺障害等級認定の観点から診断書をチェックしてもらうと良いでしょう。

(3)事前認定または被害者請求にて申請手続きを行う

次に、「事前認定」もしくは「被害者請求」のどちらかで申請手続きを行います。
前述したそれぞれのメリットとデメリットを比較して、自分に適した方を選択しましょう。

事前認定の手続き 加害者側の任意保険会社に「後遺障害診断書」を提出して結果通知を待つ
被害者請求の手続き 必要書類を全て準備し、加害者側の自賠責保険会社に提出する

(4)後遺障害等級の認定結果が通知される

後遺障害等級認定の申請を受けた保険会社は、損害保険料率算出機構に書類を提出します。
その後、後遺障害等級の審査が行われ、等級認定の結果が通知されます。

後遺障害等級認定の申請手続きから結果通知までにかかる期間の目安は1〜4ヶ月程度とされていますが、認定が難しい症例の場合は半年以上かかることもあります。

(5)自賠責保険金の受取(被害者請求の場合)

被害者請求の場合は、認定結果の通知とほぼ同時に後遺障害賠償金の一部が支払われます。
支払われるのは自賠責保険の限度額の範囲内ですが、事前認定の場合は先払いされないので被害者請求だけのメリットと言えるでしょう。

【等級別】後遺障害等級の症状と認定基準


ここでは、後遺障害等級について解説していきます。

後遺障害の等級は、労災保険の障害認定の基準と同様の内容となっています。
等級は1級~14級まであり、1級が最も重い障害で14級に近づくほど軽くなっていきます。
それぞれ認定基準(症状)が細かく定められているため、自身の後遺症がどの等級に当てはまるのか見てみましょう。

※1級と2級のみ「要介護」の分類(別表第1)がありますが、1級は常に介護が必要・2級は随時介護が必要という違いのみになります。

第1級
  • 両眼が失明したもの
  • 咀嚼及び言語の機能を廃したもの
  • 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
  • 両上肢の用を全廃したもの
  • 両下肢をひざ関節以上で失ったもの
  • 両下肢の用を全廃したもの
第1級(要介護:別表第1)
  • 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
  • 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第2級
  • 一眼が失明し、他眼の視力が〇.〇二以下になったもの
  • 両眼の視力が〇.〇二以下になったもの
  • 両上肢を手関節以上で失ったもの
  • 両下肢を足関節以上で失ったもの
第2級(要介護:別表第1)
  • 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
  • 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
第3級
  • 一眼が失明し、他眼の視力が〇.〇六以下になったもの
  • 咀嚼又は言語の機能を廃したもの
  • 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
  • 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
  • 両手の手指の全部を失ったもの
第4級
  • 両眼の視力が〇.〇六以下になったもの
  • 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
  • 両耳の聴力を全く失ったもの
  • 一上肢をひじ関節以上で失ったもの
  • 一下肢をひざ関節以上で失ったもの
  • 両手の手指の全部の用を廃したもの
  • 両足をリスフラン関節(足の甲の骨の間にある関節)以上で失ったもの
第5級
  • 一眼が失明し、他眼の視力が〇.一以下になったもの
  • 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  • 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  • 一上肢を手関節以上で失ったもの
  • 一下肢を足関節以上で失ったもの
  • 一上肢の用を全廃したもの
  • 一下肢の用を全廃したもの
  • 両足の足指の全部を失ったもの
第6級
  • 両眼の視力が〇.一以下になったもの
  • 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
  • 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
  • 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
  • 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
  • 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
  • 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
  • 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失ったもの
第7級
  • 一眼が失明し、他眼の視力が〇.六以下になったもの
  • 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
  • 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
  • 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  • 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  • 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失ったもの
  • 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
  • 一足をリスフラン関節以上で失ったもの
  • 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
  • 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
  • 両足の足指の全部の用を廃したもの
  • 外貌に著しい醜状を残すもの
  • 両側の睾丸を失ったもの
第8級
  • 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇.〇二以下になったもの
  • 脊柱に運動障害を残すもの
  • 一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失ったもの
  • 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
  • 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
  • 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
  • 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
  • 一上肢に偽関節を残すもの
  • 一下肢に偽関節を残すもの
  • 一足の足指の全部を失ったもの
第9級
  • 両眼の視力が〇.六以下になったもの
  • 一眼の視力が〇.〇六以下になったもの
  • 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
  • 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
  • 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
  • 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
  • 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
  • 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
  • 一耳の聴力を全く失ったもの
  • 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
  • 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
  • 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失ったもの
  • 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
  • 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失ったもの
  • 一足の足指の全部の用を廃したもの
  • 外貌に相当程度の醜状を残すもの
  • 生殖器に著しい障害を残すもの
第10級
  • 一眼の視力が〇.一以下になったもの
  • 正面を見た場合に複視の症状を残すもの
  • 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
  • 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  • 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
  • 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
  • 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
  • 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
  • 一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの
  • 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
  • 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
第11級
  • 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
  • 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
  • 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
  • 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  • 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
  • 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
  • 脊柱に変形を残すもの
  • 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
  • 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
  • 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
第12級
  • 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
  • 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
  • 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  • 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
  • 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
  • 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
  • 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
  • 長管骨に変形を残すもの
  • 一手のこ指を失ったもの
  • 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
  • 一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
  • 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
  • 局部に頑固な神経症状を残すもの
  • 外貌に醜状を残すもの
第13級
  • 一眼の視力が〇・六以下になったもの
  • 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
  • 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
  • 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
  • 五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  • 一手のこ指の用を廃したもの
  • 一手のおや指の指骨の一部を失ったもの
  • 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
  • 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失ったもの
  • 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
  • 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
第14級
  • 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
  • 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  • 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
  • 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
  • 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
  • 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
  • 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの
  • 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
  • 局部に神経症状を残すもの

複数の後遺障害がある場合の認定基準

後遺障害の等級は上記表の通り明確に基準が決められていますが、もし複数の後遺障害が残っている場合は、下記ルールにのっとって併合して認定されます。

【併合の認定ルール】

  1. 第5級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を3つあげる
  2. 第8級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を2つあげる
  3. 第13級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を1つあげる
  4. 第14級の後遺障害が2つ以上ある場合でも、第14級の等級認定にとどまる

つまり、重い後遺障害が多ければ多いほど等級の上がり幅も大きいということです。
もし「等級項目が難しくて自己判断が難しい」「症状が多すぎてよくわからない」という場合は、交通事故の実績が豊富な弁護士であれば、どの等級に当てはまる可能性があるのかについて見通しを説明できるため、弁護士への相談、依頼も検討してみてください。

後遺障害等級が認定されるための条件

後遺障害等級認定は、申請すれば誰でも等級が認められるわけではありません。
場合によっては「非該当(後遺障害とは認められない)」と判断されることもあります。
ここでは、後遺障害等級が認定されるための条件を詳しく紹介し、それぞれのチェックポイントをまとめました。

交通事故と症状の間に因果関係が認められる

後遺障害等級認定のためには「交通事故が原因で症状が出た」と認められる必要があります。
交通事故が起こる前から症状が出ていた場合や、別の出来事によって発症した場合は、事故による損害とはいえないからです。
因果関係を証明するためには、事故発生後に時間を空けず診察を受け、負傷箇所と症状が出ている箇所が一致していることがポイントです。

後遺障害の存在を医学的に認められる

後遺障害は痛みや動かしづらさなど目に見えない症状も多くあります。
このような症状があるときは、まずは、自覚している症状を漏れなく医師に伝えて、継続的に苦痛や不自由が生じていることをわかってもらう必要があります。
そして、可能であれば、CTやMRI画像診断などできるだけ詳しい検査をしてもらいましょう。なぜなら、後遺障害等級認定において、検査結果などに基づく医師からの他覚的所見は有力な証拠になるからです。

症状の回復が見込めない

後遺障害の申請をする際、症状固定に至っている必要があるということは説明しました。
つまり、これ以上良くならないと言える必要があります。
この時のポイントが2つあります。
1つめは、適切な治療を一定期間行っていることです。
一般的には、多くの外傷は半年間程度で症状の改善が見込めると考えられているため、半年以上の通院治療が必要となります。
もっとも、傷害の内容によっては、半年よりも早く症状固定になる場合や、1年以上治療を要することもあります。
また治療頻度が少なすぎる、必要な手術を行っていない、等の場合は不利な事実となってしまうため注意が必要です。
2つめは、事故後の一貫した症状です。
時々によって症状の部位や内容が変わっていると、「今はこの症状が出ているが、また変わるかもしれない」と判断されてしまいかねません。
そのため、症状のある部位やその内容をきちんと適切に意思に伝える必要があります。
また、転院を繰り返すなどしてしまうと、症状固定を判断する医師が事故直後の状況を分からず、一貫性の判断ができない場合があるため要注意です。

症状が後遺障害等級の認定基準に該当する

最後の条件は、前述した後遺障害等級別の認定基準に自身の症状が当てはまっていることです。
後遺障害等級認定の場合、一人ひとりの症状に合わせて個別に損害額を算出するのは困難なため、提出された書類と等級基準を照らし合わせて審査されます。

また、認定基準を満たしているかどうかの自己判断はとても難しいため、交通事故分野に強い弁護士に相談するのがおすすめです。

本人の対応が難しい場合は成年後見制度を活用


最後に、本人の対応が難しい場合の等級認定手続きについて紹介します。
本人の対応が難しい場合とは、以下のようなケースを指します。

  • 遷延性意識障害などで意識が戻らない場合(植物状態)
  • 高次脳機能障害などで意識はあるものの判断能力が低下した場合

損害賠償の請求を行えるのは、損害を受けた被害者本人です。
後遺障害等級認定の申請も、同様に被害者本人に申請権が認められています。
弁護士は、その本人と委任契約を締結することで、代理人として申請をすることができるようになります。
しかし、上記のような状況の場合、本人が自分で申請することはできませんし、契約を結ぶこともできません。
本人が未成年であれば、親権者が代理権を持っていますが、成人の場合には手続きを進めることができなくなってしまいます。

そのような時に利用すべきなのが「成年後見制度」です。

成年後見制度とは、障害などにより判断能力を欠く常況にある人を保護するための制度です。
事故の後遺障害認定の場合、被害者本人に代わって成年後見人が諸手続きを行えるようになります。
また、成年後見人が弁護士に依頼をすることも可能です。

制度を利用する場合は、家庭裁判所に後見開始の審判の申し立てをし、家庭裁判所が成年後見人を選任して手続きが開始されます。
成年後見人は親族が選ばれることもあれば、親族内に適任者がいない場合は弁護士などの第三者が選ばれることもあります。
申立てに必要な書類や詳しい手続きの流れなどについては、お近くの家庭裁判所にお問い合わせいただくか、弁護士に相談してみましょう。
ご家族が上記のような状態になってしまった場合には、治療のことや賠償金のことなど不安が尽きないと思います。
まずは、正常な判断ができる後見人が被害者の代理人となり、加害者側からの不当な提案や示談の成立を阻止できるようにしましょう。
本来得られるはずの権利を守るためにも、ご家族等が該当する方はぜひ利用を検討してみてください。

まとめ


いかがでしたでしょうか。
本記事では、事故による「後遺障害等級認定」の申請方法や流れ、等級の詳しい認定基準、後遺障害等級認定されるための条件などを解説しました。

後遺障害等級が認められれば、場合により非常に高額な賠償金を得ることができます。
ただし、後遺障害等級認定は提出された書類の内容のみで審査されるため、お一人で審査に有利な書類を準備するのは困難なケースが多々あります。

そんなとき、交通事故の後遺障害等級認定を数多く担当してきた弁護士に依頼すれば、過去の経験や判例に基づいて適切なアドバイスを受けることができます。
また、事故の後遺症で心身ともに疲弊している状況下で、煩雑な書類集めや適切な書類作成まで全てを任せることができるのも心強いですね。

交通事故の後遺症で悩んでいる方は、今後の対応について弁護士に相談してみることをおすすめします。

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