有利な離婚のための準備事項は?法定離婚事由に則した証拠集めがカギ

離婚・男女問題

この記事の監修

東京都 / 豊島区
弁護士法人若井綜合法律事務所
事務所HP

離婚の意思を固めたものの、「離婚の準備って何をすればいいの?」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
とりあえず相手に離婚の意思を伝えなくては、と思いがちですが、まずは落ち着くことが大切です。

法定離婚事由に則した証拠を集めることで、有利に離婚を進められる可能性が高くなります。
そのため、実際に離婚を切り出すのはきちんと離婚準備を整えたタイミングがおすすめです。

有利に離婚を進めるために準備すべき事項は、さまざまあります。
詳しく解説しますので、離婚検討中の方はぜひご覧ください。

この記事でわかること

  • 離婚を切り出すタイミングとその理由がわかります
  • 有利に離婚できる5つの「法定離婚事由」と集めるべき証拠を紹介します
  • 離婚準備に必要な項目をまとめます

こんな方におすすめ

  • 離婚を切り出すタイミングを知りたい方
  • 相手が原因の離婚理由を抱えている方
  • 有利に離婚するための準備事項を把握したい方

離婚を切り出すタイミング


離婚を決意した方がもっとも悩むのが、離婚を切り出すタイミングではないでしょうか。
冒頭でもお伝えした通り、離婚を切り出すのは離婚準備を整えてからにしましょう。
離婚方法には「協議離婚」や「調停離婚」などの種類がありますが、いずれの離婚方法を選択するにせよ、離婚宣告前の準備が大切です。

準備前に離婚を切り出すべきではない理由

離婚準備を優先すべき理由のひとつが、そもそも離婚が最善の選択肢ではない可能性があるからです。
離婚後は、経済面と生活面のどちらも環境が一変します。
婚姻中に夫婦で築いた財産は分割するため、手元に残しておける資産は予想以上に少なくなるかもしれません。
こうした環境変化と離婚したい理由を比較し、離婚のメリット・デメリットを慎重に考えましょう。
万一、離婚宣言後に「やはり離婚したくない」と撤回しても、その後の夫婦関係にひびが入る恐れもあります。

離婚に不利にはたらく可能性もある

離婚準備前に離婚宣言をすることにより、離婚に不利にはたらく可能性もあります。
たとえば、配偶者の不貞行為による離婚であれば、不貞の証拠隠滅を図るかもしれません。
また財産分与を嫌がり、夫婦の共同財産を隠したり使い込んだりするケースも考えられます。
本来受け取るべき慰謝料や財産を受け取れないリスクが上がるため、離婚意思が固くても勢いで離婚を切り出すのはやめましょう。

DVや虐待などの緊急事態はすぐに行動しよう

もしDVや虐待などが理由で離婚を検討している場合は、すぐに行動しましょう。
身の危険があるため、避難シェルター等への一時避難を検討してみてください。
避難シェルターの所在地は非公表ですので、まずは各都道府県の「配偶者暴力相談支援センター」へ相談しましょう。
事件性が高い場合は、警察署や交番へ行くこともおすすめします。

離婚準備(1)法定離婚事由に則した証拠の収集


離婚成立には、原則として双方の合意が必要です。
しかし、民法770条で定める「法定離婚事由」が裁判で認められれば、相手の合意なしで離婚が成立します。
仮に相手が離婚に合意してくれそうでも、法定離婚事由に則した証拠があると、自分に有利な条件で離婚協議を進めやすくなります。
ここでは、法定離婚事由に該当する5項目を見ていきましょう。

不貞行為

不貞行為とは、配偶者以外の人と自分の意思によって性的関係を持つことを言います。
一般的に「不倫」や「浮気」と呼ばれる行為です。
なお、不貞行為は「異性」との性的関係のみと解釈されていましたが、2021年に同性間の性的関係も不貞行為と認める判決が言い渡されました。
性的関係を直接示すデータを集めるのは難しいため、下記の「状況証拠」となり得る資料をできる限り多く集めましょう。

  • 不倫相手とホテルに出入りする写真
  • 不倫相手とのメール・SNS・通話の履歴
  • 不倫を認める発言の録音・書面
  • 第三者による不倫の証言

注意点として、自分が不倫した場合は「有責配偶者」として扱われ、原則として自分からの離婚請求は裁判で認められません。
ただし、長年の別居状態などの理由により、不倫前からの婚姻関係の破綻が認められれば、離婚できる可能性があります。
なお有責配偶者は不貞行為に限らず、後述の他の法定離婚事由の原因を作った側である方も対象です。

悪意の遺棄

悪意の遺棄とは、民法752条で定める「夫婦の同居、およびお互いに協力・扶助する義務」に正当な理由なく違反する行為です。
具体的には、以下の行為が該当します。

  • 単身赴任などの正当な理由なく別居する
  • 家出を繰り返す
  • 収入があるにもかかわらず生活費や医療費を渡さない
  • 配偶者を家に入れない・追い出
  • 健康であるのに働かない、または全く家事をしない

悪意の遺棄の証拠には、生活費の送金が途絶えたとわかる通帳や、配偶者の行動を記録した日記が有効です。

3年以上の生死不明

3年以上も配偶者の居場所と生死が不明の状態であれば、法定離婚事由にあたります。
連絡は取れなくても居場所がわかるケース、反対に居場所はわからずとも生きていると判明しているケースは該当しません。
3年以上の生死不明に該当する場合、配偶者を捜索した事実を証拠として提示しましょう。
具体的には、警察への行方不明者届(旧:捜索願)の届出や、配偶者の親族や勤務先へ相談した旨の陳述書などが挙げられます。

回復の見込みのない強度の精神病

配偶者が回復の見込みがない強度の精神病を患っているケースも、法定離婚事由の1つです。
「回復の見込みがない」と示す通り、配偶者が精神病にかかっているだけでは認められません。
夫婦間には協力し助け合う義務がありますので、配偶者が精神病と診断された際はサポートするのが原則です。
「回復の見込みがない」病状の証拠には、医師による診断書が必要です。
しかし、診断書があっても、配偶者が離婚により療養や生活が困難になると判断されると離婚はできません。
ゆえに、回復の見込みのない強度の精神病を理由として離婚が認められた判例は少ないのが実情です。
ただ、あくまで「裁判で認められにくい」というだけですので、協議離婚や調停離婚ができないわけではありません。
また、病状によっては後述の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として扱える可能性もあります。

その他婚姻を継続し難い重大な事由

ここまで紹介した4つの法定離婚事由に該当しない理由でも、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められるケースがあります。
たとえば、以下の事例が挙げられます。

  • DV(身体的暴力)・暴言
  • モラハラ(モラルハラスメント)
  • 生活費を渡さないなどの経済的DV
  • セックスレスまたは性行為の強要
  • 服役している
  • ギャンブル・過剰な浪費
  • 薬物依存症・アルコール依存症

上記のような事実があると主張する場合は、それぞれの理由を証明する資料を集めましょう。
DVであれば、怪我の診断書や写真、治療費の領収書が証拠になり得ます。
暴言やモラハラなどの精神的苦痛を主張するなら、録音データや、配偶者の言動と日付を詳細に記録した日記を用意しましょう。
いずれも、主張する事実があると考えられる客観的な証拠が重要です。

離婚準備(2)離婚後の生活に向けた準備を始める


離婚を有利に進めるための証拠収集と並行し、離婚後の生活に向けた準備も行いましょう。
離婚後の生活環境を整えておくと、スムーズに新生活を始められます。
経済的に困窮するリスクも減らせるので、できる限り生活の準備は着手しておきましょう。
離婚後の生活に向け、準備すべき事項について解説します。

新居の確保

離婚後も現在の住居に住める確証はありませんので、引越し計画を立てておくことをおすすめします。
離婚の話し合い中に一時的に別居するケースや、自分名義の家でも財産分与によって相手に引き渡す可能性もあります。
新居の準備は物件探しに加え、引越し費用や別居時の生活費といった予算の確保も大切です。

仕事・生活の準備

婚姻費用や慰謝料、養育費、財産分与などにより、当面の生活資金を確保できる場合もありますが、資金が増えずに目減りしていく一方だと、心理的に大きな負担となり得ます。
不安な気持ちで新生活を過ごさないためにも、収入源の目処を立てて経済的自立を目指しましょう。

専業主婦やパート勤務の方は、離婚後の仕事探しが必要です。
ブランクが長いと就職活動が長引く可能性があるため、求人サイトや転職エージェントを活用して早めに取り組みましょう。
現在、短時間のパート勤務であれば、職場にフルタイム勤務できないか相談してみるのもおすすめです。
その他、クレジットカードの申込や印鑑登録など、社会生活に必要な手続きも行う必要があります。

離婚手続きに伴う出費についても考慮

協議離婚がスムーズに進み、離婚届を提出するだけなら離婚手続きの費用はかかりません。
ですが実際には、法定離婚事由の証拠収集や離婚協議書の作成など、さまざまなコストが生じる可能性があります。
弁護士へ依頼する場合は、着手金や成功報酬も支払わなければいけません。
協議離婚が成立せず調停や裁判に発展すれば、裁判費用もかかります。
離婚手続きに関してどのくらい費用がかかるのか試算したうえで、方針を決定することが大切です。

公的扶助制度などの確認

離婚後に適用できる公的扶助制度や支援施設も確認しましょう。
公的扶助は自ら申請しないと適用されない制度が多いので、自分で把握しておくことが大切です。
主な公的扶助制度は、以下の一覧をご確認ください。

  • ひとり親控除
  • 児童手当
  • 児童扶養手当
  • ひとり親家庭等医療費助成制度
  • 乳幼児医療費助成制
  • 母子生活支援施設
  • 生活保護

自治体によって支援制度の詳細は異なりますので、詳しくはお住まいの市役所のホームページをご覧ください。

有利な条件で離婚するための準備リスト


最後に、有利な条件で離婚するための準備リストをまとめます。
「慰謝料」や「財産分与」など、項目ごとに説明しますので参考にしてみてください。

慰謝料

  • 法定離婚事由に当たる相手の行為の証拠を集める
  • 話し合いがこじれている場合は、弁護士に依頼する
  • 別居している場合は慰謝料に加えて婚姻費用も請求する

慰謝料を請求するためには、不貞行為やDVなどの証拠集めが欠かせません。
また、離婚前に別居しているならば、別居から離婚成立までにかかった生活費を「婚姻費用」として請求できます。
ただし、収入が少ないほうの配偶者からしか請求できません。
離婚協議を調停・裁判に発展させたくない場合は、弁護士に仲介してもらい早期決着を試みましょう。

財産分与

  • 夫婦の共有財産を調べてリストアップする
  • 住宅の処理方法を考える(マイホームを所有している場合)

夫婦の共有財産を相手が隠したり使い込んだりしないよう、事前に全資産を調べて証拠を保全しましょう。
不動産がある場合には,不動産会社に依頼して査定書を取っておくと,財産分与額の目安となったり,不動産の処理方法の考慮材料になります。

親権

  • 監護実績の証拠をまとめる
  • 監護補助者を確保する
  • 離婚後の経済面をアピールするため仕事を確保する
  • 「離婚届不受理申出」を提出し勝手に親権者を決められるのを防ぐ

話し合いで親権者が決まらない場合、離婚調停で親権者を決めます。
調停委員を味方にするべく、これまで自分が子供の養育に関わってきた「監護実績」をまとめましょう。
監護補助者(育児を手伝ってくれる人)も親権者を決める上で重要な要素となりますので,事前に監護補助を期待できる親族等に協力をお願いしておくと良いでしょう。
また、離婚後に子どもを育てられる経済的余裕を示すためには、仕事の確保が欠かせません。
さらに、配偶者によっては、勝手に離婚届を提出して親権者を決めてしまう恐れもあります。
万一の事態に備えるなら、役所に「離婚届不受理申出」を提出しましょう。

面会交流

  • 自分が希望する面会交流の条件を決める
  • 親権者の都合で面会交流は拒否できない
  • 面会交流を拒否できるケースを把握する

養育費の相場は、裁判所の「養育費算定表」から分かります。
支払う側の収入によっても養育費の相場が変動するため、配偶者の収入を把握しましょう。
養育費の取り決めがまとまったら、「強制執行認諾文言」付きの公正証書で離婚協議書を作ることをおすすめします。
仮に相手が養育費を支払わなくなっても、強制的に相手の財産を差し押さえられるからです。

年金分割

  • 年金分割について把握する
  • 年金分割のための情報通知書を取得する
  • 離婚後2年以内に手続きする
  • 事実婚の場合は住民票などの証明書類を準備する

年金分割とは、婚姻期間中に相手が納めた厚生年金保険料を分割し、自分の年金額に反映する制度です。
話し合って分割割合を決める「合意分割」と、専業主婦(夫)が話し合い無しで2分の1ずつ分割できる「3号分割」があります。
年金分割の手続を行う場合,「年金分割のための情報通知書」が必要ですので,年金事務所に申請しましょう。
請求期間は離婚後2年以内です。
また、事実婚だった方は、事実婚の関係を証明する書類の提出も必要です。

まとめ


自分に有利な条件で離婚するためには、離婚を切り出す前の準備が重要です。
準備を整える前に相手に宣告してしまうと、不貞行為の証拠隠滅や財産隠しをされかねません。
本来受け取れる慰謝料や財産を受け取れないリスクがあるため、証拠集めを優先しましょう。
並行して、新生活や仕事の確保といった新生活の準備も大切です。
暴力などの緊急事態に直面していない場合は、今すぐ離婚したい気持ちをぐっとこらえて、離婚準備を着々と進めましょう。

この記事の監修

東京都 / 豊島区
弁護士法人若井綜合法律事務所
事務所HP
タイトルとURLをコピーしました