逮捕状とは|逮捕状請求を回避する方法や、逮捕前にすべき対策

刑事事件

この記事の監修

大阪府 / 大阪市中央区
射場法律事務所
事務所HP

刑事事件にあたる行為をしてしまった、または家族や友人等から犯罪を犯してしまったという話を聞くと、「もしかしたら逮捕されるかもしれない」と不安を抱えることになります。
捜査機関に逮捕されれば、長期間勾留され日常生活に悪影響がおよぶおそれがあります。
会社や学校から解雇・退学されるばかりか、事件の報道により社会的信用を失うかもしれません。

日本の捜査機関が逮捕する際には、「逮捕状」が必要です。
逮捕状が発行される要件を知ることで、逮捕されるまでに対処すべきことなどが冷静に判断しやすくなります。
適切に罪を償ったうえで、できる限り早期解決するために、逮捕状についての知識を深めておきましょう。

この記事でわかること

  • 逮捕状の要件や有効期限がわかります
  • 逮捕の種類と流れを理解できます
  • 逮捕されないための対処方法を把握できます

こんな方におすすめ

  • 逮捕されるかもしれない不安がある方
  • 逮捕状について詳しく知りたい方
  • 逮捕されないように弁護士に依頼したい方

逮捕状とは


逮捕状とは、捜査機関により犯行を疑われている「被疑者」の逮捕を裁判所が許可する書類です。
逮捕状を請求する捜査機関は、主に警察官や検察官で構成されています。
逮捕状の発行は、「令状主義」に基づいて行われています。
令状主義とは、捜査機関による強制捜査や処分は、裁判官による令状に沿って執行するという考えです。
そもそも、逮捕状の対象となった被疑者は、逮捕されると留置場に入れられて身体的自由が一時的に制限されます。
家族や会社へ自由に連絡できず、留置場から勝手には出られません。
つまり、逮捕は、人間が自由に行動し生きられる権利の「人権」を一部制限する強い権限と言えます。
そのため、捜査機関がみだりに逮捕しないよう、逮捕の根拠として逮捕状を請求しなければならないと憲法で定められています。

『第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。』
『第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。』

(e-Gov:日本国憲法より引用)

このように逮捕時は令状による手続きを憲法が求めていることから、日本の捜査機関は令状主義に沿っています。

逮捕状の記載内容

逮捕状には、主に次の内容が記載されています。

  • 被疑者の氏名や年齢、住所
  • 罪名
  • 被疑事実の要旨
  • 逮捕後に被疑者を連行する警察署等
  • 逮捕状の発布年月日
  • 逮捕状の有効期限

逮捕状発行の要件と期間

どのような被疑者であっても逮捕状を発行できるわけではありません。
逮捕状を発行するためには、被疑者が以下2つの要件をどちらも満たす必要があります。

  • 事件の犯人と思われる相応な嫌疑がある
  • 逃亡または証拠隠滅のリスクが高い

上記の要件を満たした上で、逮捕状を請求できるのは次の3者です。

  • 警察官(警部以上の階級)
  • 検察官
  • 検察事務官

裁判官による逮捕状の発行にかかる期間は、警察官などの請求後数時間〜半日程度が一般的です。

逮捕状の有効期限は原則7日間

発行された逮捕状の有効期限は、逮捕状発行の翌日から7日間が原則です。
ただし、被疑者や事件によっては、7日間よりも長く有効期限を設定できる場合があります。
期限を過ぎた逮捕状は効力を失うため、裁判所へ返却しなくてはいけません。
同じ被疑者を逮捕したい場合、捜査機関は裁判所へ逮捕状を再請求します。

令状との違いは?

逮捕状は、捜査機関が請求・執行する「令状」の1つです。
刑事事件における令状には、逮捕状のほかに主に以下の2種類があります。

  • 身体検査令状:身体の状態を確認する
  • 捜索差押許可状:建物に立ち入り、犯罪関連の物品を捜索し差し押さえる

いずれの令状も、逮捕状と同じく裁判官が請求内容を審査して令状を発行します。

逮捕の種類


逮捕には3つのタイプがあり、中には逮捕状を発行しない種類もあります。
3種類の逮捕について、それぞれの具体的な特徴を説明します。

通常逮捕(後日逮捕)

通常逮捕とは、名前の通り通常の手続きで執行される逮捕です。
はじめに捜査機関が裁判所へ逮捕状を請求し、逮捕状を受け取ってから被疑者を逮捕します。
逮捕する際は逮捕状の提示義務がありますが、被疑者を発見しても逮捕状を持参していないといった状況では「逮捕状の緊急執行」が行われるケースがあります。
逮捕状の緊急執行を行使すると、捜査機関は逮捕状の提示や読み上げをしなくとも被疑者の逮捕が可能です。

緊急逮捕

緊急逮捕とは、逮捕状なしで被疑者を逮捕できる例外的な方法です。
被疑者が重大な犯罪事案に関わった十分な嫌疑があっても、逮捕状の発行を待っていては被疑者が逃亡・証拠隠滅するリスクが高まる場合に用いられます。
緊急逮捕のあと、捜査機関はすみやかに逮捕状を請求します。
逮捕状の請求が却下された場合、被疑者の釈放が必要です。

現行犯逮捕

現行犯逮捕とは、犯人が明白な際に犯行現場で行う逮捕方法です。
例として、万引きやひったくり、覚せい剤の所持といった犯行では現行犯逮捕がされやすいでしょう。
現行犯逮捕は、逮捕状の請求・発行が不要です。
また、他2つの逮捕方法と異なり、現行犯逮捕に限り一般人による逮捕「私人逮捕」が認められています。
私人逮捕をした一般人は、迅速に捜査機関へ被疑者を引き渡す必要があります。

逮捕の流れ|前科がつくタイミングは?


捜査機関が逮捕状を請求すると、被疑者には前科がつく可能性があります。
「通常逮捕」における逮捕状の請求から刑罰の確定まで、5つの手順に分けて流れを確認しましょう。

1.逮捕状が請求・発行される

はじめに捜査機関によって被疑者に逮捕状が請求されます。
逮捕状の請求先は、捜査機関が所属する警察署などの官公署を管轄する地方裁判所(もしくは簡易裁判所)です。
地方裁判所や簡易裁判所の裁判官は請求内容を精査し、逮捕の正当性を認めた場合に逮捕状を発行します。

2.捜査機関が被疑者を逮捕する

通常逮捕であれば、捜査機関は逮捕状を提示して被疑者を逮捕します。
逮捕された被疑者の行き先は、警察署内に設けられた留置場となる場合が多いでしょう。
警察官等は被疑者を取調べ、逮捕後48時間以内に次のどちらかを選択します。

  • 検察官に事件を引き渡す「検察官送致」を行う
  • 検察官送致を行わず、被疑者を釈放する

なお、検察官送致をされただけでは、被疑者に前科はつきません。

3.検察官が被疑者の勾留を判断する

検察官送致された被疑者は、検察官によって勾留請求、または釈放の判断がされます。
通常、勾留がなされる場合は逮捕後72時間以内に裁判所による勾留決定があります。
勾留決定が出た際には、多くの場合で被疑者は10日間留置場で身体を拘束されることになります。
そしてこの勾留期間は10日間延長できるため、状況によっては最大で20日間も勾留される可能性があります。

4.検察官が被疑者の起訴を判断する

検察官は被疑者の勾留期間中に、起訴または不起訴を決定します。
証拠不十分や起訴猶予などの理由で不起訴処分になれば前科はつかず、ただちに釈放されます。
ただし、不起訴でも前歴はつく点に注意しましょう。
前歴とは、刑事事件の被疑者として捜査された経歴です。
とはいえ、前科と異なり、前歴があっても就職やローン審査で不利になったり、海外旅行の制限がかかったりする心配はありません。

5.刑事裁判で被告人の刑罰を確定する

勾留期間中に起訴された被疑者は、「被告人」へ名称が変わります。
被告人の刑罰は、「略式裁判」と「通常裁判(正式裁判)」のどちらかの手続きで確定します。
略式裁判とは、裁判所に出廷せずに書面上で裁判が行われる方法です。
以下の要件を満たす場合、略式裁判が採用されます。

  • 簡易裁判所が管轄する事件
  • 100万円以下の罰金や科料に相当する事件
  • 被告人が略式裁判に同意している

対する通常裁判は、被告人や検察官、弁護士が裁判所に出廷して審理がなされ、判決が言い渡される方法です。
略式裁判と通常裁判のどちらも、有罪が確定すれば前科がつきます。

逮捕状の発行要件を満たさないための行動


もしかしたら自分や家族・友達が犯罪行為で逮捕されてしまうかもしれないと不安であれば、逮捕状の発行要件を満たさないための3つの行動を実践しましょう。

警察の捜査に協力する

捜査機関から事情聴取の呼び出しを受けた際は、協力的な態度を示しましょう。
多くの捜査機関は、被疑者を絞り込む前や逮捕する前に事件の関係者に事情聴取を実施します。
逮捕されたくないからといって事情聴取をむやみに拒否しても、逃げ切れる可能性は低いことが多いです。
事情聴取を拒否していること自体が逮捕状請求の理由にされてしまい、より逮捕の可能性を上げてしまうことにもなりかねません。
本当に日時の都合が合わないのであれば、同行可能な日時を伝えましょう。
呼び出しの直後から弁護士に相談することで、警察への対応方法をアドバイスしてもらえます。

被害者や共犯者への接触を避ける

暴行罪などの被害者がいる事件の場合、被害者へ連絡したり、会いに行ったりする行為は避けましょう。
捜査機関からは被害者への口封じのための行動と判断されやすい上、さらなる危害を加える危険性があると誤解されるかもしれません。
また、共犯者がいる場合も、同じく共犯者への接触は厳禁です。
口裏合わせや証拠隠滅のおそれがあると判断され、逮捕状の要件を満たす可能性が高まります。

逃亡を疑われる行動をしない

逃亡の恐れがある場合も逮捕状の要件を満たしてしまうため、逃げると疑われる行動もしてはいけません。
たとえば、次の行動は逃亡を疑われるリスクがあります。

  • 海外旅行へ行く
  • 自宅へ何日も帰宅しない
  • 友人や知人の家に匿ってもらう
  • 事情聴取で虚偽の住所や連絡先を伝える

こうした行動は取らず、いつも通りの生活を送ることが大切です。

逮捕回避のため弁護士をつけるメリット


逮捕を回避するためには、逮捕状が発行されるまでの対応が重要になります。
早い段階で弁護士に依頼する4つのメリットを解説します。

取調べのアドバイスを受けられる

できる限り早く弁護士に相談すれば、警察からの取調べのアドバイスがもらえます。
弁護士は法律の専門家であるため、事件や状況、相談者の希望に沿って適切な対応方法の判断が可能です。
「被疑事実を認める / 認めない」「どういった内容を話すのか」など、弁護士が状況に応じたアドバイスをしてくれます。
自身が不利にならないための供述の仕方を打ち合わせすることで、逮捕を回避しやすくなるでしょう。

被害者との示談成立を目指せる

弁護士に依頼すると、被害者との示談交渉を成功させやすくなります。
通常、捜査機関は被疑者に被害者の情報を教えないため、被害者との直接交渉は困難です。
仮に被害者の連絡先を知っていても、ほとんどの被害者は被疑者との接触を拒否するでしょう。
さらに、被害者と直接交渉しようとすると、口封じと捜査機関に受け取られかねません。
弁護士が捜査機関や被害者の間に入ることで、スムーズな示談成立が期待できます。
被害者との示談成立等が見込まれる状況になれば、逮捕状が発行される危険性を下げることに繋がります。

自首に同行してもらえる

弁護士は、自首の同行にも対応しています。
自首とは、捜査機関が事件の被疑者を特定する前に自ら犯行を申し出る行為です。
自首によって刑罰を軽減される可能性が高まるため、自首せずに逮捕されるよりも軽い処分が見込めます。
加えて、弁護士が同行することで、釈放までスムーズにサポートしてもらえます。
なお、指名手配や被疑者の特定後の場合は自主ではなく「出頭」となり、刑罰の軽減効果は限定的なものとなります。

不起訴・早期釈放を目指せる

万一、逮捕状が発行されてしまっても、弁護士へ相談することで不起訴や早期釈放を目指せます。
弁護士は被疑者の勾留阻止のため、検察官・裁判官に対して「身元引受書」や「意見書」などの書類を提出します。
たとえ勾留されても、弁護活動によって勾留期間中に不起訴を獲得すれば前科がつきません。
自分だけで早期釈放や不起訴を目指すことは難しいことも多いため、逮捕が不安な人は迅速に弁護士へ相談しましょう。

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まとめ


日本の捜査機関は令状主義を採用しており、原則として逮捕には逮捕状が必要です。
しかし、「緊急逮捕」や「現行犯逮捕」では逮捕状が不要です。
逮捕状の発行後はいつでも逮捕される可能性がある上、「逮捕状が発行された」といった通知はされません。
逮捕状が出ているかわからず不安な方は、まずは弁護士に相談して逮捕されないようにサポートしてもらいましょう。

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