近年、強要罪によって有罪判決となる判例がたびたび報道されています。
強要罪とは、他人を脅してさまざまな行為を無理やりさせる犯罪です。
強要罪に問われると、どのような刑罰が課せられるのでしょうか。
強要罪について正しく知っておくことで、うっかり強要罪にあたる行動をしてしまうリスクを下げられるでしょう。
▼この記事でわかること
- 強要罪の要件や刑罰について解説しています
- 強要罪と脅迫罪・恐喝罪の違いがわかります
- 強要罪で逮捕された際の対処法を把握できます
▼こんな方におすすめ
- どのような行為が強要罪となるのか知りたい方
- 強要罪に当てはまるかもしれないとお悩みの方
- 強要罪で逮捕されるおそれがあり不安な方
強要罪とは
強要罪とは、他者の「生命・身体・自由・名誉・財産」への危害を加えると伝え、本来する必要がない行為を他人に無理強いする犯罪行為です。
例として、「土下座して謝らなければクビにする」といった発言によって土下座をして謝らせると、強要罪にあたります。
また、親族の「生命・身体・自由・名誉・財産」に危害を加えると伝えた場合も、強要罪が適用されます。
たとえば、「この書面にサインしないとお前の母親を殴る」と他者に伝えた上でサインさせる行為も、強要罪に該当するわけです。
逆に言えば、親族以外の友人や知人への危害を告知した場合は、強要罪と見なされません。
また、強要罪は親告罪ではないため、被害者からの訴えがなくとも起訴されることがあります。
強要罪の成立要件
強要罪は、刑法第223条にて以下のように定められています。
『第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する』 『2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする』 『3 前二項の罪の未遂は、罰する』 (e-Gov:刑法第223条より引用) |
つまり、強要罪の成立には、以下2つの要件を満たす必要があります。
- 本人またはその親族へ生命・身体・自由・名誉・財産へ危害を加えると告知し脅迫する(もしくは暴行する)
- 本来は義務のない行為をさせる(もしくは正当な権利を行使させない)
こうした行為は強要罪と見なされ、逮捕・起訴される可能性があります。
強要罪にあたる行為
強要罪の要件である「危害を加える告知による脅迫」と「義務のない行為の強要」とは、以下のような行為を指します。
危害を加えることの告知 | 義務のない行為の強要 |
---|---|
生命への危害「殺すぞ」 身体への危害「殴るぞ」「骨折させるぞ」 自由への危害「部屋に閉じ込めるぞ」 名誉への危害「SNSに晒すぞ」「不正をばらすぞ」 財産への危害「家を燃やすぞ」 |
土下座させる 退職させる 被害届を出させない・取り下げさせる 契約書や念書にサインさせる 飲酒させる パワハラ・セクハラなどの各種ハラスメント |
強要罪の刑罰と公訴時効
続いて、強要罪の刑罰と公訴時効について説明します。
罰則は3年以下の懲役
強要罪の罰則は、3年以下の懲役のみです。
罰金刑が設けられていないため、比較的重い罪と言えるでしょう。
強要罪によって有罪判決を受けた場合、執行猶予がつかなければ刑務所に収容されてしまいます。
また、強要罪は未遂であっても処罰の対象になります。
被害者に強要させようとしたものの、相手が応じなかった場合は強要未遂罪が適用される仕組みです。
余罪があると実刑判決の可能性が高まる
強要行為の程度や前科の状況にもよりますが、罪状が強要罪のみで、単発の強要あれば執行猶予がつきやすいものの、余罪がある場合は実刑判決の可能性が高まります。
例として、「万引きしないと秘密をばらす」と被害者を強要し、実際に被害者が万引きをしたと仮定します。
万引きを強要された被害者は、刑法第235条の窃盗罪で処罰を受けるでしょう。
一方、被害者に万引きを強要した加害者は、刑法第61条に規定される「教唆犯」として扱われます。
教唆犯は、犯行におよんだ「正犯」と同じ刑罰が適用されます。
つまり、万引き行為を強要した加害者は、強要罪だけでなく窃盗罪でも処罰を受けることになってしまいます。
このように、強要罪は、強要する内容によっては、逮捕・起訴される罪が増えやすい傾向にあり、そのような事態になった場合には、実刑判決に至ってしまう可能性が高くなってしまいます。
前科があると逮捕・起訴のリスクが高い
前科があるのにもかかわらず強要罪にあたる行為をすると、初犯よりも逮捕・起訴されるリスクが高いです。
強要罪に限った話ではありませんが、前科がある場合には、捜査機関による逮捕の可能性や、実刑判決になってしまう可能性はより高まると言えます。
過去の事件例からしてみても、初犯で規模の小さい強要罪の場合は、逮捕にまで至らないケースも多く、最終的な処分としても不起訴処分の可能性が比較的多い印象です。
反対に、前科が多ければ多いほど、前科からの期間が短ければ短いほど処罰は重くなる傾向にあります。
公訴時効の期間は3年
強要罪の公訴時効の期間は、事件が起きた日から3年です。
公訴時効とは、特定の期間が経過すると検察官が起訴できなくなる刑事事件としての時効のことです。
強要罪を起こしたとしても、3年経過後は起訴される心配がなくなります。
裏を返せば、強要罪によりただちに逮捕されずとも、事件当日から3年間は罪に問われる可能性が残り続けることになります。
強要罪と脅迫罪・恐喝罪の違い
強要罪と似ている犯罪に「脅迫罪」と「恐喝罪」の2つがあります。
それぞれ、強要罪との違いを説明します。
脅迫罪との違い
脅迫罪とは、本人や親族の生命・身体・自由・名誉・財産へ危害を加えると被害者に伝える犯罪です。
刑法第222条によって規定されており、「本人と親族への危害を被害者へ伝える」という点が強要罪と共通しています。
一方で、脅迫罪には「本来義務のない行為を無理強いする(または正当な権利を行使させない)」という行為が含まれていません。
強要罪と異なり相手への脅迫のみで犯罪が成立するため、法定刑も強要罪より軽い2年以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
恐喝罪との違い
恐喝罪とは、脅迫や暴行などの手段により相手に恐怖心を与え、財産または利益を渡させる犯罪です。
たとえば、お金を巻き上げるいわゆる「カツアゲ」や、脅して借金を帳消しにさせる行為は恐喝罪が当てはまります。
例えば、貸したお金を返してもらうときに脅してお金を出させるようなことをした場合にも恐喝罪とされる可能性があります。
恐喝罪の罰則は刑法第249条で規定されており、加害者には10年以下の懲役が科せられます。
恐喝罪と強要罪のもっとも大きな違いは、恐喝罪には相手から財産を奪うという目的があることです。
強要罪による逮捕後の流れ
強要罪で逮捕されるとはじめに警察官から取調べを受けます。
逮捕されてしまうと、自由な連絡や移動が出来なくなってしまいます。
逮捕後48時間以内に、警察は被疑者や証拠を検察庁に引き継ぐ「検察官送致」または「釈放」を行います。
検察官送致後、検察官は24時間以内に「被疑者の釈放」もしくは「裁判官への勾留請求」を実施します。
裁判官によって勾留の決定が出てしまうと、被疑者は留置場内で最大20日間拘束されることになります。
原則として、その勾留期間中に、検察官は被疑者を起訴するのか、不起訴にするのかの決定をします。
したがって、逮捕から刑事処分決まるまでの拘束期間は、最大で23日間におよびます。
起訴された場合は裁判所で刑事裁判が行われますが、強要罪には懲役刑しかありません。
執行猶予がつかなければ実刑判決となるため、実刑を回避するには相応の対処が必要になります。
強要罪で逮捕されたときの対処法
強要罪の加害者になってしまうと、警察官に逮捕されるおそれがあります。
万一の逮捕に備えて、あらかじめ3つの対処法を把握しておきましょう。
弁護士に相談し解決方針を決める
まずは弁護士に事件について相談し、迅速に解決方針を決めることが重要です。
逮捕されて留置場に連行された場合、起訴または不起訴の決定まで最大23日間も拘束されてしまいます。
逮捕直後から弁護士に依頼すれば、弁護士は事件の詳細や依頼者の希望を考慮し、すみやかに解決方針を決定してくれます。
スムーズに弁護活動を始めてもらうことで、早期釈放や不起訴が期待できるでしょう。
早急に被害者との示談成立を目指す
弁護士と相談の上で、強要行為自体に争いが無いのであれば、被害者との示談を検討する必要があります。
逮捕後の勾留請求や起訴・不起訴の判断にあたって、被害者との示談の有無は大きな考慮要素になります。
被害者と示談が成立していれば、逮捕されてしまったとしても、最終的には不起訴処分で釈放ということもありえるところです。
逮捕されてしまっている場合は被害者と話すことは出来ませんし、被害者の多くは加害者との直接交渉を望みませんので、示談に関しては弁護士に任せるのが最良です。
強い反省の意思を示す
逮捕後の早期釈放や不起訴を獲得するためには、示談成立だけでなく反省の意思表示も大切です。
警察からの呼び出しや取調べには真摯な態度で応じ、被害者への謝罪文も作成しましょう。
謝罪文の書き方や取調べの対応方法がわからない場合は、弁護士に相談してアドバイスをもらってみてください。
強要罪の実績豊富な弁護士を探すならココナラ法律相談へ
強要罪による逮捕自体を回避したい場合、逮捕されてしまったけれども不起訴処分を目指したい場合には弁護士への迅速な相談が必要です。
弁護士を探す際は、刑事事件に強い弁護士から絞り込みましょう。
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まとめ
強要罪とは、相手やその親族の「生命・身体・自由・名誉・財産」に危害を加える旨を告知し、土下座などの行為を強いる犯罪です。
強要罪で有罪になると、3年以下の懲役が科せられる可能性があります。
強要罪にあたる行為をしたからといって、必ずしもすぐに逮捕されるわけではありません。
現時点では逮捕されていなくとも、公訴時効の3年間が過ぎるまでは突然逮捕されるリスクがあります。
突然の逮捕や実刑判決を回避したいのであれば、できる限り早く弁護士に相談して解決方針を立ててもらいましょう。