奨学金は借金?返せない場合の対処法や自己破産する際の注意点を解説

借金・債務整理

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株式会社ココナラに在籍する弁護士が監修しています
株式会社ココナラ

奨学金は、学生が学業に専念できるよう、家計を支える目的で設けられています。
しかし、日本の奨学金の多くは返済義務がある貸与型の奨学金であり、決められた日に支払いを行う必要がある学資ローンとなっています。
奨学金は学生時代に貸与されるため、当時は予想もしなかった原因によって支払いが困難になることがあります。では、奨学金を返せない場合、どのように対処をすれば良いのでしょうか。
本記事では、奨学金の制度や実態をご紹介するとともに、奨学金が支払えなくなる原因や支払えなかった場合の対処法、自己破産をする際の注意点などについても解説していきます。

▼この記事でわかること

  • 奨学金の返還に関する実態を知ることができます
  • 奨学金を返せない場合の対処法について知ることができます
  • 奨学金が返せず自己破産する場合の注意点を知ることができます

▼こんな方におすすめ

  • 軽い気持ちで奨学金を借りたがその後行き詰まった方
  • ブラック企業、整理解雇などの理由で職を失い奨学金を返せなくなった方
  • コロナで奨学金を返せなくなった方

奨学金は借金?

「奨学金」という言葉に、真面目なイメージ、未来に向かう前向きなイメージを感じる方は少なくないのでしょうか。
しかし奨学金は、種類によっては明確に債務の性質を持ちます。以下で内容を確認していきましょう。

奨学金は誰の借金?

どんな奨学金が、誰の「借金」に当たるのでしょうか。
奨学金の中でも最も利用されている独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)では、以下の3種類の奨学金が用意されています。

  1. 返済義務のない給付型の奨学金
  2. 返済義務はあるが無利息の貸与型第一種奨学金
  3. 返済義務があり利息が発生する貸与型第二種奨学金

給付型の奨学金は返済する必要がないため、そのまま学業資金として活用できます。つまり、給付型の奨学金は債務にはあたりません。
その一方、貸与型の奨学金(第一種・第二種奨学金)は、高校や大学を卒業して社会人になったら返済をしていかなければなりません。
特に、第二種奨学金は毎月返済をする際に利息部分も含めた返済をしなければならないため、一般的な借金とだいぶ似たようなもの、と言えそうです。

ところで、貸与型奨学金は誰の借金なのでしょうか。
一般的に奨学金は、学校に通う学生本人が借入者となります。
つまり、返済の義務を追うのも借入者である学生本人、というわけです。

親が主導して奨学金を借りて大学に行きました。この場合、親の借金ではないのですか?

仮に親御さんが主導して奨学金を借りたとしても、契約当事者が学生本人である場合には、債務を返済する義務を第一次的に追うのは契約当事者である学生本人です。

奨学金の延滞や自己破産は多い

奨学金の返済に苦しんでいる人は意外に多いようです。
例えば平成29年度のデータでは、新たに3か月以上、返済を延滞した件数は全体の4.5%超発生しています。
また、自己破産により奨学金の支払いを免除された件数は、平成28年度で2,009件にのぼっています。

奨学金は社会人になってから返済に苦しむケースが多々あります。返済が開始してからの家計の管理には十分に注意した方が良さそうです。

奨学金を返せないとどうなる?

奨学金の返済を滞納すると、日本学生支援機構から本人に返済の督促が行きます。
督促は電話や郵送で行われることが一般的です。この時点で返済に応じれば事態の悪化を防ぐことができます。

本人が督促に応じない場合は、返済責任が連帯保証人に移行することになります。
多くは連帯保証人となっている、親や親戚へと直接催促が行きます。ちなみに、連帯保証人となっている個人がいる場合の保証の形態を「人的保証」と言います。
一方で、奨学金の借入の段階で連帯保証人が存在せず、保証機関に保証料を払ってほしょうしてもらっているケースがあります。これを「機関保証」と言います。
機関保証の場合は、保証機関が借り入れした本人に代わり、借入先に対して一括で返済を行います。その後、保証機関が借入した本人に対して返済の請求を行います。
いずれの場合においても、連帯保証人、あるいは保証機関が一括返済をしたからといって、借入した人はその時点で債務から逃れられるわけではありません。

人的保証の場合で、本人も連帯保証人も返済に応じなかった場合は、債権回収会社に回収が移行される場合があります。その場合、本人あるいは連帯保証人、あるいはその両方に対して、一括返済の請求や財産の差し押さえが行われる可能性が高まります。
ちなみに債権者は、債務の返済は債務を追う本人(主債務者)と連帯保証人のどちらに請求しても良いことになっています。つまり、連帯保証人には本人と同じ支払い義務を負っていることになります。

奨学金が返せなくなる原因

当初は返済できると思っていた奨学金でも、様々な原因で返済が滞ることがあります。ここでは、奨学金が返せなくなる原因を3つご紹介します。

奨学金を借金だと認識していなかった

結構多いのが「奨学金=借金」という認識をしていなかったケースです。
貸与型の奨学金は借金の性質を持ちますが、「奨学金」という名称から借金をすると感じづらいようです。そのため、返済が始まってから「こんなはずじゃなかった」と感じるケースがあります。
特に利息が発生する奨学金の場合は、奨学金の額が大きいほど利息の負担も大きくなり、返済も長期間に及びます。学生時代はお金に関する知識が少ないことが多いため、社会人になってから後悔する方も多いようです。

他の借金が原因で奨学金が返せない

奨学金以外にも借金を抱えている場合、奨学金の返済が苦しくなり滞納してしまうケースがあります。
社会人になると、住宅ローンや車のローン、はたまたキャッシングなど、日常的に借入を行うこともありえます。奨学金以外の借金が増えると、家計の支出が増えるため、奨学金の支払いができなくなることがあります。
場合によっては、奨学金の返済による負担が大きいことを背景に、めぐりめぐって新たに借金をして、多重債務に陥ってしまうケースもあるようです。

経済状況の変化で奨学金が返せない

借入している人をとりまく経済状況の変化により、奨学金が返せなくなるケースもあります。
例えば、当初見込んでいたよりも昇給が遅かった、転職によって収入が減ってしまった、会社の経営状況の悪化により給料が減ってしまった、病気や怪我で退職し収入がなくなった、などのケースが考えられます。
また、最近では新型コロナウィルス感染症の影響により解雇や休職を余儀なくされる方も増えています。経済的基盤が不安定になると、その分毎月の奨学金の返済も苦しくなります。

奨学金が返せない場合の対処法

奨学金が返せない場合、何をしたらよいのでしょうか。ここでは具体的な対処法について説明します。

奨学金の減額や猶予を申請する

奨学金には、一定の要件を満たせば減額や猶予してもらえる制度が設けられています。
「減額返還制度」では、月々の返済金額を2分の1あるいは3分の1に減額することができます。
1回の申請で1年間奨学金を減額することができ、最長で15年間利用できます。
一方、「返還期限猶予制度」では、1回の申請で1年間奨学金の返済を猶予したもらうことができ、通算10年間まで期限を延長できます。
すでに延滞金が発生している方でも、病気や怪我、生活保護受給中などにより返済が困難な場合は、返還期限猶予が適用されることがあります。

自己破産して奨学金債務をゼロに

もっとも、減額してもらったり、猶予してもらっても返せない、という場合もあります。その場合は自己破産も選択肢の一つとなります。
自己破産は債務整理の一種です。
自己破産をすると財産の大半は手放さなければなりませんが、一方でほとんどの借金がチャラになります。奨学金も対象となります。
つまり裁判所に対して自己破産を申し立て、支払不能と認められれば、本人が奨学金を返済する義務はなくなります。

奨学金が返せなくて自己破産する際の注意点

自己破産をする際、一つ注意しておくべき点があります。
自己破産をすると本人に奨学金の返済義務はなくなりますが、連帯保証人にはその効力は及びません。つまり、連帯保証人には引き続き、債務を支払う義務があります。

奨学金債務の保証の形態を「人的保証」としている場合は、連帯保証人である親などが本人の代わりに返済をしなければならなくなります。
また、連帯保証人も返済能力がない場合、本人と同様に債務整理をしなければならないケースもありえます。親子で自己破産、といった具合です。

奨学金が返せない場合は弁護士に相談しよう

奨学金の減額や猶予を検討しても奨学金を返せない場合は、自己破産も含めた債務整理を検討する必要があります。
また、奨学金以外の借金が家計を大きく圧迫している場合、任意整理や個人再生など自己破産以外の手続きによって借金全体を減らすことが最適なケースもあります。
借金問題に困ったら、ひとりで悩まず、まずは弁護士に相談してみましょう。
弁護士を探す上で、その助けになるものの一つに「ココナラ法律相談」のような弁護士ポータルサイトが挙げられますです。
ココナラ法律相談では、「分野」「エリア」「各種条件」を指定した上で、あなたに合いそうな弁護士の選択肢を与えてくれます。弁護士を探す際のご参考として、ぜひご活用下さい。

まとめ

奨学金の中でも貸与型奨学金は返済の義務があり、月々返済を行う必要がある借金です。
延滞や自己破産に発展するケースもあるため、他の借金と同じようにリスクがあると考えたほうが良いでしょう。他の借金があったり、不況や失業などにより奨学金を返せなくなる場合もありえます。
奨学金制度には減額や猶予制度が設けられていますが、それでも返済が苦しい場合は自己破産を含めた債務整理を検討しましょう。
自己破産を含めて、債務整理にはメリットもデメリットもあります。また、その人にとって最適と思われる選択肢は一つではありません。より良い選択ができるよう、奨学金の返済で行き詰まったら早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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