退職後、未払いの残業代を取り戻したい!請求のためのポイント

労働・雇用

この記事の監修

株式会社ココナラに在籍する弁護士が監修しています
株式会社ココナラ

「ブラックすぎる職場環境に嫌気がさし、勤めていた会社を辞めてしまいました。しかし退職後に落ち着いて考えてみたら、退職金どころか残業代すらまったくもらっていませんでした。こんな場合、辞めてしまった会社に対し、できることはあるのでしょうか」―。

残業代については、法律に細かな規程があり、会社がそれに基づいて支払いを行っていなければ、違法となる可能性があります。未払いの残業代があれば、会社は支払う義務がありますし、辞めてしまった後でも請求は可能です。今回は退職後に未払いの残業を請求するため、知っておくべきことを解説します。

▼この記事で分かること

  • 残業代がどのように計算されるのか大枠が分かります。
  • 未払いの残業代を請求するために、どんな証拠が必要になるかお答えします。
  • 退職後に残業代を請求するため、どんな手段があるか分かります。

▼こんな方にお勧め

  • 退職後、辞めた会社に未払い残業代を請求したいと考えている人
  • 退職後、未払い残業代があったかどうか知りたいと考えている人
  • 会社を辞めてからかなり時間が経っていて、未払い残業代を請求できるどうか知りたい人

そもそも「残業代」ってどういう仕組み?

在職中であろうと退職後であろうと、「未払い残業代を請求する」と言って、自分の未払い残業代がどのくらいあるのか分からなければ、請求のしようがありませんね。まずは、残業代がどのような仕組みで計算されるのか、簡単に説明します。

1日8時間、週40時間を超えると残業

1日何時から何時まで、週何時間働くかは人によってそれぞれ違いますが、労働基準法では労働時間を原則「1日8時間、週40時間(業種によっては週44時間)」までと定めています。そして、会社が1日8時間、週40(44)時間を超えて働かせた場合には、時間外手当として割増賃金を労働者に支払うことを義務付けており、これが主に残業代と呼ばれているのです。

ただ、例えば会社の就業規則で1日の所定労働時間(定時)が「午前9時から午後5時(休憩時間1時間)」と決められている人が「午後9時から午後6時」まで働いた場合など、注意が必要です。定時からは1時間の残業になりますが、労働時間は8時間を超えていないので、会社には割増賃金を支払う義務は生じません。あくまでも割増賃金の支払い義務が発生するのは、8時間以上働いたときだけです。

次に週単位で労働時間を見てみます。1日の労働時間が8時間で、1日だけでは割増賃金が発生しない場合でも、週休1日・週6で働くと「8時×6」で1週間の労働時間が計48時間になります。この場合も会社には、週40(44)時間を超えた時間分の時間外手当を支払う義務が生じます。

「休日」「深夜」「60時間以上」で割増率アップ

残業代は具体的にどのように計算するのでしょうか。

まず残業代の基本となる割増賃金は、「1時間当たりの通常の賃金」の「1.25倍以上」と労働基準法で決められています。8時間を超えて残業すると、超えた分の時給は通常の1.25倍以上高くなるという計算です

割増賃金は法律上、「過重な労働に対する労働者への補償」という趣旨で設定されているので、労働状況が厳しくなるのに応じて、割増率はアップします。具体的には「休日」の割増率は「1.35倍以上」、「残業+深夜」は「1.5倍以上」などとなります。ちなみにここでいう「深夜」は、午後10時から午前5時の間の時間帯です。

さらに大企業などで残業時間が月60時間を超える場合、割増率を「1.5倍以上」にしなければならないと決められています。残業時間が月60時間以上で深夜に残業をした場合などは、「1.75倍以上」の割増賃金が支払われることになるのです。
なお、現在適用されているのは大企業だけですが、2023年からは中小企業でも割増率を1.5倍以上にするよう、法改正された内容が施行される見込みです。

残業の「証拠」を集めよう

法律で決められた通りに支払いが行われているならば、連日連夜、長時間労働をしているような人の残業代は、かなりの額に上るはずです。本来支払われるべき残業代について、在職中にはなかなか言い出せなかった人が、退職したのを機に請求しようと考えるケースは多いといいます。ここでは、未払い残業代請求の一歩となる、「残業の証拠」について説明します。

パソコン、メールなども証拠に

未払い残業代を請求するに当たっては、「残業をしていた」ことを証明しなければならず、その立証責任は会社ではなく、労働者側にあります。残業の「証拠」として認められやすいものを以下にまとめました。

①労働時間に関する証拠

  • タイムカード
  • 出勤簿
  • 業務用パソコンのログイン・ログオフの記録
  • IDカードによる入退室の記録   など

②残業内容に関する証拠

  • メールによる上司からの指示
  • メールでの取引先とのやり取り
  • 業務日報・日誌   など

③残業額に関する証拠

  • 雇用契約書
  • 就業規則
  • 給与明細
  • 源泉徴収票   など

そのほか、およその通勤時間が確認できる交通系ICカードや、LINEでの上司との日常的なやり取りなども証拠として認められる可能性があります。

証拠が手元にない場合は?

「残業をしていたことを示す責任は、労働者側にある」とは言いますが、実際には残業をしていたことの証拠が(見た目上)ない場合もあるでしょう。特に退職後であればさらにハードルが高いでしょう。
すでに会社を辞めてしまっていて、しかも残業をしたという証拠も手元にない。そういった場合、残業代の請求は諦めるしかないのでしょうか。

辞めた会社に未払いの残業代を請求しようと考えていますが、会社に関連したものは退職後に全部捨ててしまって手元にはなく、残業の証明ができません。未払い残業代の請求はあきらめるべきでしょうか。

会社を辞める予定があり、辞めた後になるかもしれないが、いずれ未払い残業代を請求したいと考えるなら、在職中に必要な書類のコピーを取ったり、パソコン画面のスクリーンショットを保管したりして、証拠を押さえておくべきですが、手元にないからと言って、あきらめることはありません。

2019年からは、働き方改革の一環で労働安全衛生法が改正されて、会社は「労働時間の客観的な把握」をしなければならないことになりました。例えばタイムカードや業務用パソコンのログイン・ログオフなど「客観的な方法」で労働者の労働時間を把握・記録して、それを3年間保存することが義務付けられたのです。

手元に証拠がない場合、こうした会社が保管している記録の開示を求めることが可能です。個人で交渉し、会社に拒否された場合は、弁護士に依頼し、開示請求をすることができます。過去には、会社が労働者に対し、タイムカードなどの記録を開示する義務があると認めた判例もあります。

退職後の請求、どんな手段がある?

残業代の仕組みや、残業を証明するのに必要な証拠について説明してきましたが、それでは実際に未払い残業代を辞めた会社に請求するため、どんな手段があるのでしょうか。

請求の時効は「2年」、弁護士などに相談を

未払い残業代を請求するに当たって、まず注意しなければならないのは、残業代請求権の時効が給料日の翌日から起算して「2年」であるということです。すなわち、残業代は2年しか遡って請求できないため、時間との勝負になります。

限られた時間の中で、手続きを進めなければいけないことを考えると、自分1人で対応するのは避け、まずは労働問題に詳しい弁護士などに相談するべきでしょう。弁護士ならば、必要な証拠集めや、証拠が手元にない場合の開示請求をスムースに進められます。複雑な未払い残業代の請求額の計算も、弁護士に依頼できます。

弁護士以外の相談先としては、労働基準監督署や労働局など地域の機関があります。労働基準監督署は、会社に労働法上の違反行為がないか監督している機関で、悪質なケースであれば、会社に対し未払い残業の支払いを指導、勧告することもあります。労働局は、会社と労働者のトラブルで間に入って、問題解決に向けた調停を行います。

労働審判、裁判に訴える

会社との直接交渉や関係機関への相談で問題解決ができない場合は、労働審判を活用することができます。労働審判は、給料の不払や解雇など労働者と会社の個別紛争を解決するための制度で、通常の裁判に比べて期日が短く、迅速な解決が期待できます。

労働審判の他では、通常の裁判に訴える手段があります。在職中であれば、会社と法廷で争うのは精神的に苦しい面もありますが、退職後であればハードルは少し下がるでしょう。
また裁判で勝訴すれば、「付加金」や「遅延損害金」の請求が認められることがあるのもメリットです。「付加金」は、残業代を支払わなかったペナルティとして、裁判所が会社に対し追加的に支払いを命じるもので、「遅延損害金」は支払いが遅れた分の利息です。

裁判に勝訴しても会社が支払いに応じない場合には、会社の財産を差し押さえて強制的に支払わせる「強制執行」を行うことになります。

まとめ

仮差押さえ 仮処分

残業代の支払いは会社に課せられた義務です。法律で決められた通りの残業代が支払われていない場合、辞めてしまった会社でも未払い残業代を請求することができます。ただ残業代の計算は複雑で、退職後の証拠集めも難航が予想され、1人で対応するには限界がありそうです。残業代請求権も2年で消滅してしまうことから、悩んで時間を無駄にせず、弁護士などに相談することをお勧めします。

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