「遅延損害金」について知ろう!未払い残業代があれば請求できる

労働・雇用

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福岡県 / 福岡市博多区
弁護士法人リベルタ総合法律事務所 福岡事務所
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「残業代が未払いになっている場合、遅延損害金が発生する可能性があります」と言われて、すぐに何のことか分かる方はあまり多くはないでしょう。
簡単に説明すれば、会社から残業代などがきちんと支払われていない場合、未払いになっている残業代に加え「遅延損害金」を得ることができるかもしれないということです。
このコラムでは「遅延損害金」とは何か、「遅延損害金」の請求方法や請求の流れについて、詳しく解説します。

▼この記事で分かること

  • 遅延損害金がどのようなものなのか分かります。
  • 遅延損害金の請求の仕方が分かります。
  • 未払い残業代の確認方法もお伝えします。

▼こんな方にお勧め

  • 未払い残業代があって、遅延損害金についても詳しく知りたいと考えている人
  • 未払い残業代、遅延損害金を請求する方法について知りたい人
  • 会社に未払い残業代を請求しても対応してもらえず、困っている人

「遅延損害金」って何?

新型コロナウイルスの感染拡大で会社の経営が厳しくなる中、賃金の未払いや雇止めなどのトラブルも多発していると言われています。
残業代を含む賃金の未払いは、違法となる可能性がありますが、さらに会社が払わないままにしておくと、未払い賃金に「遅延損害金」を付けて支払わなければならなくなります。
まずは、「遅延損害金」とはどのようなものか説明しましょう。

「遅延損害金」の定義

一般的に「遅延損害金」とは、支払うべきお金を期日通り支払わなかったことに対する損害賠償金を意味します。

残業代など賃金に関すること以外でも広く使われる言葉ですが、ここでは「未払い残業代に対して支払われるもの」を取り上げます。

要は、会社側が労働者の残業代の支払い日に遅れた結果、本来の残業代にペナルティの「遅延損害金」を付けて支払わなければならないということです。

たとえば、「残業代は当月末締め、翌月の給料日払い」と就業規則で定めている会社で、2024年10月分の残業代が、2024年12月末時点で支払われていないとします。
このケースでは、11月の給料日の翌日から12月末まで「債務不履行」の状態となります。
したがって、会社は、その日数分の遅延損害金を支払う必要があります。
遅延損害金の具体的な計算方法ですが、借金などに関しては、期日通りに返済しなかった時に「年利〇%の遅延損害金を支払う」と、貸し手と借り手で合意しているのが普通です。
しかし、残業代などの賃金は「支払われるのが当然」なものなので、労使間でこうした合意は基本的にありません。
そのため、民法の遅延損害金の規定に基づき決定されることが多いです。
ちなみに、民法・商法の規定によると、利率は以下となります。

  • 2020年4月より前に発生した遅延損害金は、未払い残業代に対して年利6%
  • 2020年4月より前に発生した遅延損害金は、未払い残業代に対して年利3%
    (2020年4月の民法改正により、利率が改定されました。)

退職した後は遅延損害金が大幅に増える

実は、遅延損害金の利率は退職前と退職後でかなり違います。
退職後の遅延損害金の利率は、賃金支払いの遅延がやむを得ない事由として定められている場合を除いて、14.6%に上がります。

退職前が3%〜6%程度ですから、結構な差になりますね。

例えば、2024年10月に支払われるべき残業代が未払いのまま2024年12月末で退職してしまった場合、

  • 退職日までの遅延損害金は、原則未払い残業代の3%
  • 退職の翌日の2025年1月1日から残業代が支払われるまでの遅延損害金は、例外規定の適用がなければ未払い残業代の14.6%

となります。

労働者が退職してしまえば、会社は交渉を中断しやすくなります。
そんな状況から労働者を保護し、会社に早期の支払いを促すため、「年14.6%」という高利率を課しているのです。

遅延損害金の前に!未払い残業代を確認しよう

遅延損害金は基本的に、未払い残業代と一緒に請求することになります。
そもそも未払い残業代がなければ、遅延損害金も発生しないのです。そこで、遅延損害金の計算方法の前に、未払い残業代の確認方法などについても、まとめておきます。

1日8時間を超えて働くと「残業」

労働基準法では、労働時間の上限を「1日8時間、週40時間」と定めていて、これを超えて働かせた場合、会社は労働者に残業代を支払う義務があります。
会社の「定時」が何時間になっていたとしても、通常、このルールは変わりません。
8時間を超えて働かせたのに、会社が残業代を支払っていない場合は、違法となる可能性があります。

残業代は、8時間を超えて働いた残業時間数に、1時間当たりの賃金の額と「割増率」を掛けて計算できます。
「割増率」は法律で決められていて、通常の残業だと1.25倍、午後10時から午前5時の深夜時間帯の残業だと1.5倍などとなっています。

この計算によって得られた額と、実際に支払われている残業代の差額が未払い残業代となるわけですが、実際に未払い残業代を請求するには、「残業した」ということを示す証拠が必要です。
証拠としては、以下が対象となります。

  • タイムカード
  • 出勤簿
  • 業務用パソコンのログイン情報
  • 上司や取引先などとのメール
  • 通話記録           など

なお、請求するにあたっては、自分の残業代の支払い方法がどうなっているのかの確認も必要です。
会社によっては、「みなし残業代」といった形で基本給や手当の中にあらかじめ一定時間分の残業代を含めているケースもあるからです。
雇用契約書や給与明細などで、すでに自分に支給されている残業代がいくらなのか把握した上で、未払い残業代を確認しましょう。

遅延損害金の計算方法

遅延損害金の額は、請求する未払い残業代に日割りの利率と遅延日数を掛けて計算します。

例えば、給料日の11月25日に支払われるはずだった残業代が5万円分あるとします。
この未払い残業代について、翌年2月1日に在職のまま請求する場合、以下の計算となります。

未払い残業代(5万円)×利率(3%)×遅延日数(11月26日~2月1日までの68日)÷日割り(365日)=279円

5万円の未払い残業代に対して、遅延損害金が数百円なのは「少ない」という印象を持つかもしれません。
しかし、残業代の未払いは長期間にわたって続くケースが多いと言われています。10年単位の話になる場合もあります。その場合、毎月の額を通算すれば、それなりの額になります。
また、金額の多少に拘らず、遅延損害金を請求することは会社に対して労働者の権利を行使することの意思表示になります。請求できるものは、しっかりと請求するべきでしょう。

なお、遅延損害金の利率は、2020年4月の民法改正で改定されたていることに注意が必要です。
2020年4月の民法改正では、未払い残業代の請求権の時効が2年から3年に延長された一方で、遅延損害金の利率が「5‐6%」から「3%」に引き下げられました。
2020年4月以前に発生した未払い残業代の遅延損害金に関しては、「5‐6%」の利率が適用されます。

「未払い残業代+遅延損害金」を請求、取るべき手段は

給与がきちんと支払われるかどうかは、労働者にとって死活問題です。
会社が残業代を期日通りに支給しないのは、労働者に損害を与える行為になります。
遅延損害金を付けて未払い残業をきちんと請求するため、取るべき手段について説明します。

「未払い残業代+遅延損害金」請求の流れ

遅延損害金を請求する場合、どのような流れになるのかまとめました。

小さな会社で経理の仕事をしています。
月に20時間ほど残業をしていて、これまでは残業代も支払ってもらえていましたが、コロナで会社経営が苦しいとかで、同じように働いているにもかかわらず、昨年夏ごろから残業代がカットされるようになりました。
会社には残業代を早く払ってくれるよう頼みましたが、真剣に取り合ってもらえず、非常に困っています。
どうしたらいいでしょうか。

1日8時間、週40時間を超えて働いているにもかかわらず、残業代が支払われていない場合、残業代を請求する権利があります。まずは、未払い残業代がいくらになっているのか計算し、上司や担当者に相談しましょう。

何回か「未払い残業代を払ってほしい」と言っても払われない場合には、労基署や弁護士に相談することをおすすめします。その際は、遅延損害金の支払いについても当然、考慮に入れてもらえます。

会社との交渉がうまくいかなかった場合は、労働基準監督署に相談することができます。
労働基準監督署は「労基」「労基署」と呼ばれる厚生労働省の出先機関で、全国に設置されており、未払い賃金はじめ個別の労働紛争について相談にのってくれます。
また、労基は相談に基づき調査を行うこともあります。もし労働基準法などの法律違反があった場合は、会社に対して是正勧告などの行政指導を行います。
ただ、行政指導には法的強制力はないため、確実に未払い残業が支払われるとは限りません。

それでも解決しないときは、労働審判や裁判に訴えることが可能です。

労働審判とは、給与の未払いや解雇等の労働トラブルについて裁判所に申し立てができる制度です。
労働審判を申し立てた場合はまず、3回以内の期日で審理を行う中で、調停での解決を試みます。その上で、万が一調停が成立しない場合は審判を行う制度です。
労働審判は裁判よりも迅速で、柔軟な解決が期待できます。費用も裁判より抑えられる傾向があります。

残業代が支払われなくなったら、弁護士に相談を!

ここまで、未払い残業代と遅延損害金の確認方法などについて説明してきました。
未払い残業代や遅延損害金があると確認したり、その金額を大まかに計算することは自分でもできるかもしれません。
とはいえ、残業した時間についての証拠を集めるのは結構たいへんです。これが年単位となれば、作業量も膨大になります。

また、会社との交渉や労働審判・裁判などは、手続きがややこしいだけでなく、相手と直接話し合うことによる心理的なストレスもあるでしょう。

さらに、未払い残業代の請求には「時効」があることに注意が必要です。
2020年4月以前に発生した未払い残業代の請求権は2年、20年4月以降は3年で消滅します。

こうしたことを考えると、残業代が支払われなくなったら、早めに弁護士に相談し対応することをお勧めします。
弁護士に依頼すれば、窓口となって会社と交渉してもらえます。
また、労働審判や裁判になったときも、依頼者の代理人として出席を依頼できるので安心です。

まとめ

賃金は、定められた額が確実に支払われていることはもちろん、定められた期日に支払われていることも重要です。
残業代の支払いが遅れている場合、遅延損害金を請求するの労働者の権利です。
残業代がなかなか支払われない、残業代を含めた給料の支払いが不安定で困っているときは、一人で悩まず、弁護士と相談するなどして、然るべき手段を取ることを考えてはいかがでしょうか。

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