勝手に借金の連帯保証人にされた場合の対処法

借金・債務整理

この記事の監修

株式会社ココナラに在籍する弁護士が監修しています
株式会社ココナラ

借金をするときは連帯保証人が必要な場合があります。
連帯保証人は家族や知人などに頼むことが一般的で、通常は契約書に本人が押印などをすることで契約が成立します。
しかし、中には勝手に借金の連帯保証人にされ、請求を求められることがあります。このような場合、借金の返済義務はないため、支払いに応じないことが重要です。
本記事では、勝手に連帯保証人にされるケースや、その対処法について解説します。

▼この記事でわかること

  • 勝手に連帯保証人にされた場合、保証契約は有効か知ることができます
  • 勝手に連帯保証人にされた場合の対処法を知ることができます
  • 勝手に連帯保証人にされて、債権者から請求が来た場合に注意すべきことがわかります

▼こんな方におすすめ

  • 勝手に連帯保証人にされて請求が来た方
  • 勝手に連帯保証人にされて支払いをしてしまった方
  • 口頭で「いいよ」と言ったら勝手に書類を作られてしまった方

勝手に借金の連帯保証人にされた?

気がついたら、勝手に借金の連帯保証人にされていた。
この連帯保証人としての契約は本当に有効なのでしょうか。

口約束だけで連帯保証人になることはあるのか

口約束で連帯保証人にされた場合、契約は有効なのでしょうか。
通常であれば、大きな金額が発生する契約ほど、双方が後から契約を証明できるように契約書を作成します。
しかし、契約書は契約事項を証明するものに過ぎず、契約書がなければ契約がなかったことになるわけではありません。
法律の観点から言うと、民法では、多くの契約は書類だけでなく口約束によるものも認められています。契約は契約書類に押印しなければ成立しないということは必ずしも正しくありません。

しかし、「連帯保証」に関する契約は、民法で言う一般的な契約とは異なります。
連帯保証に関する契約は、保証契約の一種です。
保証契約とは、債務者が借金の返済をしなかった場合に、 本人に代わって返済の義務を負うことを第三者に約束させる契約です。

以前は口約束でも保証契約は成立するとされていましたが、口約束では保証人のリスクが大きすぎることから民法が改正されました。
平成17年4月1日以後の保証契約では、保証契約書が作成されていなければ保証契約は成立しない扱いとなっています。
従って、口約束だけで連帯保証人になることはないと覚えておきましょう。

勝手に印鑑を押された

偽造された印鑑を使って勝手に連帯保証人としての契約を結ばされていた場合、連帯保証人として責任を負う必要はあるのでしょうか。

基本的には、書面上、連帯保証人になっている人に連帯保証人となる意図がなければ、契約は無効となります。

ただし、裁判になった際は「保証人になる意図はなかった」という点を、裁判官になんとかして認めてもらう必要があります。ここは結構難しいポイントです。

すべてのケースについて考えるのは難しいため、以下ではいくつかの事例を紹介するにとどめます。

ここでは「うちによく出入りしている甥っ子が、勝手に自分を連帯保証人にした」と仮定しましょう。
※以下のケースはあくまで一般論であり、個別の事情によって結果は変わる可能性があります。

ケース1

  • 甥っ子が、自分の実印を勝手に持ち出し、署名押印して保証契約を結んだ
  • 借入先は消費者金融
  • 消費者金融業者等からの連絡は一切なく、自分は全く知らなかった

この場合、裁判では連帯保証人としての契約は無効と判断される可能性が高いと考えられます。
消費者金融業者は、連帯保証人に対して本人確認を行う義務があります。
本人確認を行う義務を怠っていることから、本人が何も知らず、従って保証人となる意図は当初からなかったものと推定することは難しくありません。
従って、裁判でも保証契約は無効、とされる可能性が高そうです。

ケース2

  • 甥っ子が、100均で買った三文判を勝手に持ち出し、署名押印して保証契約を結んだ
  • 借入先は甥っ子の知人
  • 借入した相手からは連絡は一切なく、自分は全く知らなかった

この場合も、裁判では連帯保証人としての契約は無効と判断される可能性が高いでしょう。
一般的には、100均で買った三文判は実印でないと想定することは、それほど難しくないと思われるからです。

ケース3

  • 甥っ子が、自分の実印を使い、署名押印して保証契約を結んだ
  • 甥っ子からは「簡単な手術が必要なんだけど、保証人になってほしいから印鑑証明と実印貸して」と言われ、そのつもりで実印と印鑑証明を渡した。内容をよく読まなかったが、委任状にもサインした。
  • 借入先は甥っ子の知人
  • 借入した相手からは連絡は一切なく、自分は全く知らなかった

この場合、裁判では連帯保証人としての契約が有効と判断される可能性があります。

知人にしてみれば、印鑑証明と実印、さらに委任状を持ってきた甥っ子に対して、疑う余地はないと考えられます。(法律的な用語でいうと「『表見代理』が成立する」と言います。)
また、連帯保証人であるとされた本人については、実印に加えて印鑑証明まで渡した無防備さ、さらに内容をよく確認せずに委任状にサインをしたことについて、落ち度があると考えられなくもありません。
そのため、どんなに保証人になる意図はなかった、と言っても、貸した相手は悪くない・自分にそれなりの落ち度がある、とみなされた結果、連帯保証人としての地位は有効であると裁判で判断される可能性があります。

勝手に借金の連帯保証人にさせられたら気を付けること

家族や知り合いに勝手に借金の連帯保証人にさせられた場合、連帯保証人として督促が来るケースもありますが、落ち着いて対処することが大切です。

契約書がなければ連帯保証人の義務はない

これから保証契約を結ぶ場合、保証契約は契約書を作成しなければ成立しません。
従って、契約書がないにも関わらず、連帯保証人として本人の代わりに返済しろと言われても、返済する義務は負いません。

後で説明するように、返済してしまうと自分に返済の義務が生じてしまいます。家族や知人から強く頼まれたとしても、決して返済しないようにしてください。
また、債務者の借入先から返済を求められても、契約書がない場合は応じる必要はありません。

意思がない場合は連帯保証人にはならない

契約書が作成されていても、本人に連帯保証人になる意思がなければ契約は成立したと見なされません。
ただし、契約書に自分で書類に署名や押印をした場合は、「知らなかった」、「よく読んでいなかった」では裁判で認められない場合が多いため、注意が必要です。

自分の署名や押印の無効を主張する際には、契約書作成時に騙された場合、高齢者や障害者で判断能力がなかった場合などに認められる可能性があります。

なお、自分に身に覚えがない契約書の場合は、契約書や署名、押印などが自分の意思に基づかずに作成されたということを証明しなければなりません。
押印された契約書が存在する場合には、印鑑が偽造されていることなどを証明する必要があります。
また、保証契約の際は、貸金業者などが連帯保証人に意思があるか確認する義務が発生します。貸金業者が連帯保証人についての意思確認をしていなかった場合、押印された契約書が存在しても保証契約が無効になる可能性があります。

借金の督促が来ても返済しないこと

身に覚えのない借金の請求が来たとしても、絶対に返済してはいけません。

本人の意思に基づかず保証契約がなされた場合であっても、請求に応じて実際に返済をしてしまうと、「追認」があったものとされてしまいます。
追認とは、「本来は無効の契約を契約時に遡って有効と認める」ことです。
身に覚えのない借金を返済してしまうと、連帯保証人の立場を追認したものとして契約が当初から有効であったことになり、連帯保証人として返済義務を負うことになってしまうのです。

また、借金の返済以外にも、契約書作成後に連帯保証人の立場を認める言動をしてしまうと、当初の保証契約を追認したと判断されてしまい、大きな不利益が発生することがあるため、注意が必要です。

勝手に借金の連帯保証人にされた場合の対処法

連帯保証人として借金の返済を要求された場合は、内容証明を送付したり、弁護士に相談することが大切です。

内容証明郵便を送る

まずは、債権者である貸金業者などに対して、自分は連帯保証人になった覚えはないこと、自分の意思で保証契約をしていないこと、契約を追認するつもりはないことなどを文書にし、内容証明郵便で伝えることが大切です。
同時に、自分が連帯保証人となっている証拠の契約書などもを提示してもらうようにしましょう。
契約書が偽造されたものかどうかは、契約書の筆跡が本人のものと一致するか、実印が押されているかなどが裁判上の争点となります。
この時点で、相手から実印が押印された契約書、印鑑証明書などが揃えられている場合、反論を認めてもらうことは非常に困難です。
ただし、保証契約時に債権者からの意思確認の連絡がなかったなどの事情があれば、反論が認められる余地はあります。

勝手に借金の連帯保証人にされたら弁護士に相談してみよう

勝手に借金の連帯保証人にされた場合、ひとりで悩んでいても貸金業者からの督促は止まりません。
また、督促を無視し続けると、債務者本人と同様に差し押さえ処分を受ける恐れもあります。

連帯保証人は借金に関する大きな責任が伴うため、「身に覚えがないから」という理由だけで問題を放置していると、思わぬ事態に発展してしまいます。
連帯保証人に関する問題は、印鑑の偽造などを証明しなければならなかったり、相手の貸金業者から書類と取り寄せる必要があります。場合によっては、経験豊富な弁護士の知恵を借りることを考えてもよいかもしれません。

まとめ

勝手に保証契約書に自分の名前で署名押印をされ、知らぬ間に連帯保証人とされた場合、身に覚えのない借金の請求書が届くことがあります。
連帯保証人とはいえ、身に覚えのない借金を返済してしまった場合、「追認」と見なされ返済義務が生じてしまうことになります。まずは事実の確認をしましょう。慌てて請求書に対して支払いを行ってはいけません。
また、勝手に連帯保証人にされた場合、内容証明郵便を送付するなどして、相手の貸金業者に追認をしないことを伝えましょう。その際、保証契約書を見せてもらうことも大切です。
書類の偽造などは反論するために証拠を集める必要があります。困ったときは、ひとりで悩まずに弁護士などの専門家に相談するのも良いかもしれません。

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