借金やクレジットカードを長期間滞納すると、裁判所が差し押さえを認め、手持ちの財産を差し押さえられてしまいます。
差し押さえ財産の中には車も含まれますが、生活のためにも手放したくないことがほとんどでしょう。
そこで、本記事では、車に関する差し押さえの基礎知識をご紹介します。また、債務整理をした場合、車の差し押さえはどうなるのかもあわせて解説します。
▼この記事でわかること
- 車が差し押さえの対象になるケースを知ることができます
- 車の差し押さえを免れられるケースを知ることができます
- 債務整理をした際の流れを知ることができます
▼こんな方におすすめ
- 差し押さえ通知が来た方
- 差し押さえで車を持っていかれるのか知りたい方
- 差し押さえの恐れがあるが、車がないと生活できない方
差し押さえの基礎知識
まずは、差し押さえの基礎知識として、差し押さえの定義や流れ、差し押さえ対象となる財産について解説します。
差し押さえの定義
差し押さえとは、貸金業者などから借りた借金を一定期間以上滞納してしまった場合、借金の強制的な回収をする手続きのことです。
「一定期間以上」というのは、およそ3ヶ月程度と言われています。
貸金業者が直接、債務者の財産を差し押さえることは法律上できません。
そのため、裁判所が貸金業者に代わって、財産などの差し押さえを行います。
差し押さえまでの流れ
まずは、一般的な差し押さえまでの流れを簡単に説明します。
- 借金を滞納すると、まずは債権者から督促状が送付されます。この時点では早めの返済を促す内容になっています。
- 電話や郵送物を無視し続けていると、債権者は借金の一括請求をしてきます。
- 一括請求も無視し続けると、債権者は裁判所に申し立てを行い、差し押さえの準備をはじめます。
- 債権者が裁判所に申し立てをすると、裁判所から差押予告通知が届きます。これに応じない場合は支払督促申立書という書類が送られてきます。
支払督促申立書が発送された後、2週間以内に異議申し立てをしなかった場合、債権者の言い分が全面的に認められ、差し押さえが可能な状態になります。
車は差し押さえ対象になる
差し押さえ対象とされる財産は、不動産、動産、債権の3つです。
動産は不動産以外の財産のことを言い、現金や貴金属、有価証券などが該当します。
また、給料や銀行口座の預金なども差し押さえ対象となります。
車も動産に含まれており、差し押さえの対象になりますが、状況により実際には差し押さえられないケースも多々あります。
どんな場合は差し押さえの対象外となるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
差し押さえの対象にならない車の条件
車は本来、差し押さえ対象となる財産に含まれますが、以下の場合は対象外となることも多くあります。
- 残余価値が低い車
- 自分の名義でない車(家族が持っている車)
- 生活上必要と認められたな車
それぞれの場合について、以下で詳しく見ていきましょう。
残余価値20万円以下の車は差し押さえ対象外のことも
差し押さえは、債権者が借金を回収できるように設けられている制度です。
そのため、差し押さえによってお金を回収できなければ意味がありません。
車は差し押さえの対象になりますが、撤去費用や車体番号の取得などに費用がかかるため、残余価値がおおむね20万円以下の車は差し押さえ対象外となる可能性が高くなります。
高級車でない場合、5年程度で査定額が20万円を下回ることも多いため、差し押さえ対象から外れることも珍しくありません。
家族の車は差し押さえ対象外
家族の車は差し押さえの対象になるのでしょうか。
実は、車の差し押さえは、差し押さえを受ける債務者と車の登録者名義(所有者欄)が一致している必要があります。
そのため、配偶者などの名義で車を所有している場合、その車は差し押さえ対象にはなりません。
生活上必要な車は差し押さえ対象外
人によっては、車は生活になくてはならない交通手段です。
査定の結果20万円以上の価値があることがわかっても、生活する上で車が必要な場合は差し押さえの対象外になることがあります。
例えば、親の介護のために車を利用している場合や、通院で日常的に車を利用している場合は、差し押さえの対象外とされる可能性があります。
「生活上必要」と認定されるかどうかはケースバイケースです。
例えば、職場への通勤手段として必要だという理由では差し押さえ対象外にならないこともあります。
車の差し押さえに関するよくある疑問
ここでは、車の差し押さえに関するよくある疑問について解説します。名義変更をした場合や債務整理した場合の取扱いについて知っておきましょう。
名義変更したら差し押さえ対象外になる?
車は債務者名義のものでなければ差し押さえられることはありません。
だとすれば、差し押さえ前に車の名義を変更してしまえば問題ないのでしょうか。
確かに名義を変更すれば自分以外の名義の車になります。
しかし、名義変更が差し押さえを逃れるための「財産隠し」と判断されれば、名義変更を取り消される場合もあります。
債務整理した場合、差し押さえは回避できる?
債務整理を行うと、車の差し押さえを回避できるのでしょうか。
一口に債務整理といっても、手段としては主に任意整理、個人再生、自己破産の3つがあります。順に見ていきましょう。
任意整理は、利息のカットや月々の返済額の見直しなどを債権者との間で交渉し、合意した場合に成立する債務整理の手段です。この手続きは後々の返済をも約束する意味を持っています。
任意整理については、差押予告通知が送付された後に手続きをしても、車を含めた財産の差し押さえを回避することができます。
個人再生は任意整理と異なり、裁判所に申し立てを行う必要があります。
申し立てを裁判所が認めれば財産の差し押さえは回避できますが、裁判所が個人再生を認めるまで差し押さえは中断されません。従って、手続き中に車を含めた財産について差し押さえられてしまうリスクがあることには注意が必要です。
自己破産はそもそも財産の処分を前提とした手続きのため、車を処分しなければならないケースが大半です。自己破産をして車を手元に残せるのは、基本的には前述した「差し押さえの対象外」に当たる場合のみです。
差し押さえされる前に債務整理を検討しよう
差し押さえされる前に任意整理や個人再生などの債務整理を行えば、車を持ち続けながら借金問題を解決できます。
車の差し押さえを回避するには債務整理が有効
車の差し押さえを回避したいなら、早めに債務整理をして借金問題を解決しておきましょう。
差し押さえは急に行われるものではなく、督促や一括請求などのプロセスを経て行われるものです。早めに対処すれば、大事になる前に家計を立て直すことができるでしょう。
また、支払督促申立書が裁判所から発送されると、およそ2週間から1か月程度で差し押さえが行われます。
そのため、支払督促申立書が届いたらすぐに債務整理の手続きをしなければ車が差し押さえられてしまいます。
できれば返済が難しいと感じた段階で、遅くても差し押さえリスクがあるとわかった段階で何らかの対策を取ったほうが良いでしょう。
車の差し押さえを回避したいなら弁護士に相談してみよう
車の差し押さえは任意整理や個人再生によって回避することができます。
これらの手続きをすれば、借金の利息や元金を減らすことができ、返済負担を大きく軽減することができます。
こうした債務整理を行う際、心強い味方になってくれるのが弁護士です。差し押さえで大変な事になりそう、という場合は、まずは弁護士に相談してみるのも良いかもしれません。
まとめ
借金の滞納が長期化すると、債権者は差し押さえの手続きに踏み切る場合があります。その際、車も差し押さえ対象になる場合が多々あります。
一方、車を含めた財産の差し押さえプロセスは、任意整理や個人再生によって中断できる場合があります。
また、これらの手続きはもっと根本的な要因である、借金問題も同時に解決してくれる場合があります。。
債務整理を考え始めたら、早めの行動が吉です。場合によっては弁護士に相談することを考えても良いかもしれませんね。