生前贈与された財産がある場合、遺産分割はどうなる?

相続・遺言

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株式会社ココナラ

「父が亡くなった。遺産、と思ったら、それなりにあると思っていた貯金がない!・・・そういえば、父が兄に生前、家を買うとかでお金を融通していたが・・・」
この場合、生前の父が兄に贈与した財産、すなわち、本来的には遺産の一部であるべき財産を相続することは、あきらめるしかないのでしょうか。

今回は、すでに被相続人が相続人の一部に生前贈与をしており、遺産の分け前を取り戻したい場合について、対処法を解説していきます。

▼この記事でわかること

  • 生前贈与とは何かわかります。
  • 生前贈与があった場合の、遺産分割の考え方を知ることができます
  • 特別受益とはなにか、わかります。

▼こんな方におすすめ

  • 生前贈与があったことが発端で、相続の際に揉めている方
  • 生前贈与、特別受益とは何か知りたい方
  • 特別受益にあたる生前贈与がある場合の、相続財産の分け方を知りたい方

生前贈与とは何か

「生前に贈られる財産」のほぼすべて

生前贈与は、財産を持っている人が生きている間に別の個人に対して財産を譲ることです。
「生前贈与」と言うと、何か特別な「決まり」の範囲内で行われるもの?とも思うかもしれません。
しかし、単に「生前贈与」と言う場合、特別な枠組みがあるわけではありません。すなわち

  • 相手が誰であっても
  • あげるものが何であっても
  • 渡す人が生きている間なら、いつ渡しても

生前贈与に当たることになります。
言い換えると

  • 親や子供などの相続人以外であっても
  • お金ではなく、動産、不動産、債権、借地権、有価証券など様々な形態のものであっても
  • 渡す人が亡くなる1年前でも、10年前でも

その贈与は生前贈与になります。

生前贈与は何のため?

比較的よく見られる「生前贈与」。これは何のために行われているのでしょうか。
個人的な思い入れ、というのももちろんあるでしょうが・・・多い理由としては「節税」が挙げられます。

通常、生前贈与は相続税を節税するために行われることが多いようです。
詳しい税金の話は割愛しますが、生前贈与によって、後に発生するであろう相続税の支払いをうまく減らせる場合があるからです。

つまり、生前贈与は後の相続を念頭において行われることが多くあります。
そのため、(実際には必ずしも当てはまらないケースも多々あるものの)「生前贈与は相続に関係するもの」などというイメージが、ついて回るのかもしれませんね。

ちなみに生前贈与で相続税回避!と思っても、生前贈与の際、贈与税がかかる場合もあります。
このあたりは税理士さんに相談するなり、慎重に行った方が良さそうです。

生前贈与があった場合の遺産分割の考え方

税金の話は置いておいて、この記事では「生前贈与があった場合の、財産の分け方」、すなわち相続分について考えてみます。
冒頭のケースのように、相続人の一部が被相続人から生前、財産の一部をもらっていたケースにおいて、遺産分割の考え方はどうなるのでしょうか。
以下で詳しく見ていきましょう。

生前贈与と遺産分割、基本的な考え方

「相続人の一部が被相続人から生前、財産の一部をもらっていた」場合、相続人の間で不公平が生じてしまうと思われる方もいるでしょう。

こうした不公平をなるべく和らげるために、相続人の中に、いわゆる「特別受益」に該当する生前贈与を受けた人がいる場合、贈与された財産の価額も相続財産に含めて考えた上で、各相続人の相続分を決定するようにするのが、基本的な法律の考え方です。

やや正確さを欠きますが、イメージとしては以下のような感じです。

相続財産 = 被相続人が死亡した時に有している財産 + 「特別受益」に当たる生前贈与
では特別受益とは何でしょうか。

では、この「特別受益」に当たる生前贈与とは何でしょうか。これについて、以下で少し説明します。

特別受益とは

特別受益とは、ある人が被相続人から特別に得た利益のことを言います。

「特別に得た利益」と言うと、何だか抽象的ですね。
しかし、何でもここで言う「特別に得た利益」とはなりません。

特別受益は、以下に該当するものを言います。

  • 婚姻のための贈与
  • 養子縁組のための贈与
  • 生計の資本としての贈与
  • 遺贈

生前贈与という意味では、この中では上の3つが当てはまります。

冒頭のケースは「兄が『家を買うためのお金』をもらった」、という話でした。家を買うというのは「生計の資本としての贈与」に該当する可能性が高いです。
したがって、この場合は特別受益にあたる可能性が高そうだと推測できます。

特別受益がある場合の相続財産の計算例

ここで、特別受益にあたる生前贈与がある場合、相続人がもらえる遺産の額を計算する方法を考えてみましょう。

例として、冒頭のケースについて考えます。

【状況】

      • 父が亡くなった。相続人は母、兄、姉、私の4人
      • 父の遺産は自宅(持家、評価額3000万円)と、現金2000万円のみ。
      • 父は生前、兄に1000万円、住宅購入用資金として兄に渡していた。

【私がもらえる法定相続分】

相続財産の6分の1
(2分の1が母、残りの2分の1を兄弟3人で分ける形)

【相続財産の計算】

自宅の価値3000万円+現金2000万円+兄が生前に父から受け取った1000万円=6000万円

【私がもらえる額の計算】

6000万円 ✕ 6分の1=1000万円

【(参考)生前贈与を考慮しない場合の、私の相続額】

(自宅の価値3000万円+現金2000万円+兄が生前に父から受け取った1000万円)✕ 6分の1 =約833万円

つまり、兄に生前贈与された分を考慮に入れた場合と入れない場合では、相続金額は  1000−833 = 167万円 の違いが生じます。

まとめ

相続の際、生前贈与を巡って相続人の間でもめることがあります。
法律では、生前贈与された財産が特別受益に当たる場合、その財産も相続財産に含めた上で、遺産分割を行うこととされています。
特別受益の対象となる財産は何かは、場合によって複雑で、法的な判断が求められることもあります。
こうした問題は、自分ひとりで抱えるよりも専門家に相談したほうがより良い解決が望める場合があります。行き詰まったな、と思ったら、弁護士等の専門家に相談することを考えても良いかもしれませんね。

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