不倫やDVなど、離婚原因を作ってしまった側のことを有責配偶者といいます。
「離婚して不倫相手と再婚したいが、配偶者が認めてくれない」
「自分が原因で離婚することになってしまったが、子どもの親権は欲しい」
このような思いを抱いている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
本記事では、有責配偶者とはなにかを解説した上で、有責配偶者から離婚請求できるのか、また有責配偶者となったことが親権者や養育費の取り決めに影響するのかという点まで、有責配偶者から離婚したいと思った時に気になる情報をまとめました。
▼この記事でわかること
- どのようなことをすると有責配偶者と判断されるのかがわかります
- どんな条件だと有責配偶者からの離婚請求が認められるかがわかります
- 有責配偶者の親権や財産分与への影響がわかります
▼こんな方におすすめ
- 不倫をしてしまったけれど離婚したいと考えている方
- 有責配偶者だけれども子どもの養育費がもらえるのか知りたい方
- 配偶者に浮気された上に離婚も求められたが別れたくない方
有責配偶者とは?
有責配偶者とは、離婚原因をつくった配偶者のことをいいます。
例えば、あなたが不倫・浮気などの不貞行為をしたことにより離婚することになった場合は、あなたが有責配偶者となります。
他方で、離婚の原因が「価値観の相違」「性格の不一致」など、どちらの責任とも言えない場合、有責配偶者は存在しないことになります。
有責配偶者からの離婚請求が争われた事例のほとんどが、不貞をした配偶者からの離婚請求ですが、不貞でないケースも想定できないわけではありません。
次の章で有責配偶者と判断される可能性のあるケースについてみていきましょう。
有責配偶者と判断されるケース
有責配偶者にあたるかどうかは、基本的に民法第770条で定められた離婚事由を作ったかどうかで判断されます。
民法第770条で定められている離婚事由のうち、有責配偶者と判断される一般的なケースはつぎの通りです。
- 不貞行為(浮気・不倫)をした
- 悪意の遺棄をした
- その他婚姻を継続し難い重大な事由がある(DVやモラハラなど)
具体的にどんなケースが該当するのか、詳しくみていきましょう。
不貞行為(不倫・浮気)をした
夫婦は配偶者以外の人と性交渉をしてはいけないという貞操義務を負っています。
そのため、夫婦のどちらかが不倫をした場合、法的には「不貞行為があった」として不倫した側を有責配偶者と判断します。
悪意の遺棄をした
悪意の遺棄とは、正当な理由なく一方的に別居をしたり、生活費を渡さないなど、夫婦としての同居義務や協力扶助義務を放棄することです。
どんな夫婦関係なのか・別居したあとの経済状況が困窮しているか・子供がいるかなど、さまざまな事情を個別的に考慮しながら判断されます。
その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、夫婦関係が修復できないほど深刻な状態に陥っている場合に認められ、その状態を引き起こした側が有責配偶者となります。
DVやモラハラなどは、民法上で「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたります。
ただし婚姻を継続し難いという状態は人によって感覚が違うため、明確な基準は設けられておらず、夫婦の関係性や生活環境などによって個別に判断されます。
その他、長期間にわたる性交拒否・行き過ぎた宗教活動・重度のギャンブル依存による借金問題など、婚姻を継続し難い重大な事由として有責配偶者と判断されるケースは多岐にわたります。
有責配偶者から離婚請求はできる?
まず初めに前置きしたいのは、有責配偶者であっても「離婚を求めること」は自由だということです。
有責配偶者から離婚を求めたとしても、相手が同意すれば離婚を成立させることができます。
問題となるのは、離婚協議・調停を重ねても解決せず訴訟になったときです。
あなたが有責配偶者で、配偶者が離婚を拒否している場合、基本的に裁判所はあなたからの離婚請求を認めません。
有責配偶者が離婚原因を作ったのにもかかわらず、配偶者が望まない離婚まで受け入れなくてはならないとなれば、道理に反していることになります。
裁判所の判断は当然といえるでしょう。
有責配偶者から離婚請求をするための条件
訴訟では基本的に有責配偶者からの離婚請求は認められないというお話をしましたが、なかには例外的に離婚請求が認められるケースもあります。
訴訟で有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、以下のような条件に該当しなければなりません。
- 夫婦が長期間にわたって別居していること
- 子が経済的に自立していること
- 離婚によって相手の生活が苦しめられないなど、離婚の実現が著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がないこと
以下で項目ごとに詳しい条件をみていきましょう。
夫婦が長期間にわたって別居していること
「長期間」かどうかは、単純に期間だけでなく、同居期間の長さや双方の年齢等を考慮して個別的に判断され、目安を示すことは難しいです。
ただし、同居の期間が短い場合や、夫婦の双方または他方の年齢が高齢である場合には、6~8年程度で離婚請求が認められたケースもあります。
このように、別居期間の長さははっきりとした基準があるわけではなく、様々な事情を総合的に考慮して判断されています。
子が経済的に自立していること
親の扶養が必要な子どものことは「未成熟子」と呼ばれ、夫婦の間に未成熟子がいる場合は、原則離婚請求は認められません。
未成熟子は未成年と捉えられることもありますが、成人しているかどうかは必ずしも関係がなく、「大学卒業まで」とすることもあります。
就職して既に自身で生計を立てている場合など、親の扶養を必要としていなく、子どもが経済的に自立しているかどうかが総合的に判断されます。
離婚によって相手が極めて苛酷な状況にならないこと
離婚原因を作っていない配偶者が、離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれてしまうことは、社会正義の観点から許されるべきではありません。
そのため、有責配偶者から離婚を請求する場合は「相手が困らない状況を作る」ことが有責配偶者に求められます。
慰謝料や財産分与などを支払い、配偶者の経済的な負担を軽減するなどの対応が重要です。
離婚条件の取り決めに関する有責配偶者への影響
離婚する際は、親権や養育費、財産分与などを取り決める必要がありますが、有責配偶者であることによって不利になることはあるのでしょうか。
離婚することになった場合の有責配偶者への影響についてみてみましょう。
親権者の判断には直接影響しない
離婚後の親権を決めるにあたり、有責配偶者であるかどうかは直接関係しません。
親権を決めるとき考慮されるのは「父親と母親のどちらと暮らすのが子どもにとって良いか」ということです。
一般的に母親が育児を担うケースが多いため、子どもにとっては母親と暮らした方が良いと判断され、有責配偶者であるかどうかにかかわらず妻側が親権を得るケースが多いです。
ただし不貞行為が原因で育児放棄をしたりすると、子どもとの接し方に問題があるという理由で不利になる可能性もあります。
養育費の金額決定には関係がない
前述のとおり、有責配偶者が親権を得るケースもあるため、当然相手から養育費をもらうこともできます。
また有責配偶者だからといって支払う養育費を減らされるようなこともなく、養育費の金額決定はあくまでも公平に行われます。
財産分与は慰謝料的要素を含む場合、減額の可能性がある
法律上では、どのような理由で離婚に至ったかは財産分与に関係ないとされていますが、間接的に有責配偶者かどうかが関係する場合もあります。
有責配偶者の多くは、相手から離婚に伴う慰謝料を請求された場合にこれを支払う義務が生じます。
財産分与を分配する際この慰謝料を考慮して、慰謝料としては支払わないが、その代わりに財産分与を多く分配するという処理がされるケースがあります。
基本的に財産分与は2分の1ずつ分けることになっていますが、慰謝料を考慮した結果、有責配偶者の金額が慰謝料分減ることもあるのです。
例えば、不倫をした有責配偶者は相手に慰謝料を支払う可能性が高いため、通常もらえるはずの財産分与額から慰謝料を引いた金額が最終的な取り分になるということもあります。
まとめ
この記事では、有責配偶者について詳しく解説しました。
もし有責配偶者であっても離婚を請求することはできますし、条件を満たせば訴訟で離婚が認められる可能性もあります。
しかし離婚の原因をつくった立場であることは間違いありませんので、不利な状況からの話し合いになることが考えられます。
なるべく穏便に解決するためにも、離婚問題の経験豊富な弁護士に相談して交渉してもらうことをおすすめします。