内縁関係と法律婚の違いとは?認められる条件、関係の証明に必要なこととは

離婚・男女問題

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株式会社ココナラに在籍する弁護士が監修しています
株式会社ココナラ

近年は婚姻届を出さずに内縁関係(事実婚)を選択する方もいますが、トラブル時や法的手続きが必要な時の対応方法は法律婚と異なることがあります。

「内縁関係の相手との子どもができた」
「内縁関係の相手に浮気されたので慰謝料を請求したい」
「内縁関係の相手が亡くなったので、遺産相続の手続きをしたい」

など有事の際に慌てないためにも、内縁関係が得られる権利や証明方法について正しい知識をつけましょう。

▼この記事でわかること

  • 内縁関係で受けられる権利と受けられない権利がわかります
  • 内縁関係だと認められる条件や証明方法がわかります
  • 内縁関係を解消するときにするべきことがわかります

▼こんな方におすすめ

  • 不倫をした内縁関係の相手から慰謝料がとれるか知りたい方
  • 内縁関係の証明にはどんなものが証拠になるか知りたい方
  • 内縁関係を解消したら二人の財産がどうなるか気になる方

内縁関係とは


内縁関係(事実婚)とは、婚姻届を出さず夫婦同様に共同生活を送る男女のことです。
一方、役所に婚姻届を出して法律上の夫婦になることを法律婚と言います。
内縁関係は法律婚とほぼ変わらない関係性ですが、法律上の婚姻ではありませんので、法律上、法律上の婚姻関係と全く同じ効果を得ることができるわけではありません。
内縁関係の場合、子どもができたとき・相手が亡くなったとき・内縁関係を解消して金銭トラブルになったときなどに法律婚との差が出る場合があるので注意が必要です。

内縁関係と法律婚の違い

では、内縁関係と法律婚には具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
比較表をもとに、それぞれの項目の詳細を見ていきましょう。

【内縁関係と法律婚の違い】

   内縁関係 法律婚
法定相続人 ×
子どもとの父子関係 ×
戸籍・住民票 ×
各種税金の控除 ×
社会保険の扶養
遺族年金 〇(条件あり)

法定相続人にはなれない

内縁関係では法定相続人にはなれないため、内縁の妻(夫)が亡くなっても遺産は相続できません。
ただし遺言書に「【内縁の妻(夫)の名前】へ相続する」という旨の記載がある場合は、遺言書通りに相続が可能です。
また、生きているうちに相手に財産を渡す「生前贈与」や、「特別縁故者」の申請を出すなど、手続きによって財産を受け取ることができる場合もあります。

子どもと父子関係は生じない

内縁関係の男女間に生まれた子どもは「非嫡出子」となるため、法律上で父子関係を結びたい場合は男性側が子どもを認知する必要があります。
男性が認知すれば、親子としての相続権や扶養義務が発生し、内縁関係を解消した際も子どもとの面会交流権を得られます。
ただし、認知した場合であっても親権は母の単独親権のままとなります。

同一の戸籍には入れないが、住民票には記載可

内縁関係は同一の戸籍に入ることはありませんが、住民票には「夫(未届)」「妻(未届)」と内縁関係だとわかるような表示ができます。

各種税金の控除が受けられない

所得税・相続税・贈与税などの配偶者控除や配偶者特別控除は、正式に届けを出した法律上の夫婦でなければ受けられません。

社会保険の扶養に入ることは可能

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の扶養は内縁関係にも適用されるため、年収130万円未満であれば被保険者の扶養に入ることができます。

要件を満たせば遺族年金を受け取れる

厚生年金保険法では、生計を維持していた内縁関係の妻(夫)であれば遺族年金を請求できると定めています。
ただし遺族年金を実際に受給するには、一定の収入要件を満たし、生計を維持していた証拠資料を提出する必要があります。

内縁関係が認められるための条件


次に、内縁関係が認めらるための条件についてお話します。
何の証拠もなく単に「内縁の妻(夫)です」と申告しただけでは、法律上の内縁関係と認めてもらうことはできません。
内縁関係が認められるためには、次の2つの条件を満たしている必要があります。

【内縁関係だと認められるための条件】

  1. 当事者双方に婚姻意思があること
  2. 婚姻意思に基づき、婚姻しているも同然の共同生活を送っていること

1つ目の条件については、「あくまで籍を入れていないだけで実際は夫婦同然」ということを、公的資料などから示すことが大切です。(詳細は後述します)
2つ目の条件については、同じ住居で長期間(一般的に3年以上)生計を共にしていることを証明できるとよいでしょう。
別居状態の場合、よほどの事情がない限り内縁関係とは認められません。

それでは具体的にどのように内縁関係だと証明すればよいのか、次項で説明します。

内縁関係を証明する方法

内縁関係を証明する方法は一つではなく、また「これを提出すれば必ず内縁関係が認められる」という決定打も存在しません。
そのため、自分が持っている証拠をなるべく多く提出することが大切です。

公的書類

内縁関係を証明できる証拠の中で最も有力なのは、公的書類の提出です。
具体例としては、続柄に「妻(未届)」「夫(未届)」と記入された住民票、内縁の妻(夫)が被扶養者となっている健康保険証などがあります。
その他にも、一緒に暮らしている住居の賃貸借契約書、扶養手当や住宅手当が記載された給与明細書なども有力とされています。

子どもの認知

内縁関係の二人の間に子ども(非嫡出子)が生まれており、さらにその子どもを男性が認知している場合、内縁関係だと認められる可能性が高くなります。

結婚式場の証明書の提出

もし結婚式を行っていれば、結婚の意思がある有力な証拠となる場合があります。
式場の証明書や誓約書、招待状、挙式の写真・動画などを用意できると良いでしょう。

親族・友人の証言やLINEなど

二人の関係性を良く知る親族や友人に、現在の二人が夫婦同然であることを証言してもらう方法もあります。
ただし第三者の証言は証拠として弱いケースが多いため、あくまでもその他の証明を補填するためのものと考えておきましょう。

メール・LINE等の履歴

内縁関係の相手とのLINEやメールの履歴の中に、結婚の意思を明確に読み取れる文面が残っている場合は、有力な証拠になる可能性があります。
普段文面でやり取りをしていない方は、会話を録音しておくのも良いでしょう。

内縁関係が法律婚と同等に扱われること


内縁関係の2人に男女トラブルが生じた場合、法的に内縁関係だと証明できれば、法律婚と同等に扱われる可能性があります。
具体的にどのような権利が得られるのか、見ていきましょう。

不貞行為による慰謝料請求

法律婚には「配偶者以外と性的関係を持ってはいけない」という貞操義務がありますが、内縁関係にも同様に貞操義務が適用されます。
そのため、内縁の妻(夫)による不貞行為に対し、慰謝料を請求することも可能です。
さらに不貞相手にも慰謝料請求したいという場合は、以下の条件を満たす必要があります。

【不貞相手に慰謝料請求できる条件】

  1. 法的な内縁関係であること
    →二人の間に内縁関係の証明ができることが前提
  2. 不貞相手に故意または過失があること
    →内縁の相手がいると知った上で(または知り得るのに)関係をもった
  3. 不貞行為によって権利が侵害されたこと
    →不倫によって関係を解消したり不仲になったりした

内縁関係の相手がいることは法律婚に比べると周知しにくく、不倫相手が内縁関係のことを本当に知らないケースも少なくありません。
日ごろから交流のある相手には知らせておくなど、対策がとれると良いでしょう。

一方的な関係解消による慰謝料請求

内縁関係の相手から一方的に関係を解消された場合は、法律婚と同様に慰謝料を請求できる可能性があります。
ただし関係解消に正当な理由がある場合は、慰謝料を請求できないので注意が必要です。
関係解消の正当な理由とは、民法上認められる離婚理由と同様の項目です。

【民法で認められている離婚理由】

  1. 配偶者の不貞行為
  2. 配偶者からの悪意の遺棄(同居義務違反、扶助義務違反など)
  3. 配偶者が生死が3年以上不明
  4. 配偶者が強度の精神病にかかって回復見込みがない
  5. その他婚姻を継続しがたい重大な理由(モラハラ、DVなど)

上記のような理由がないにも関わらず、「他の人を好きになった」「一人になりたくなった」などの理由で一方的に内縁関係を解消された場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。

関係解消時の財産分与

法律婚と同様に、内縁関係を解消する際も二人で築いた共同財産は分け合う権利があります。
財産分与の方法は離婚と一緒で、共有財産を二分の一ずつ分けるのが一般的です。

どのように分けるかは、当事者同士で話し合って決めます。
不動産や年金分割など複雑な財産がある場合は、トラブルを避けるためにも弁護士に相談するのがおすすめです。

なお内縁関係を継続中に相手が亡くなった場合は相続財産となりますので、そのままだと財産を受け取れません。
万が一のときにそなえて、事前に遺言書を作成しておくと良いでしょう。

内縁関係を解消する方法

ここでは、内縁関係を解消する際にどのようなことをすれば良いかお話します。
法律婚の夫婦の場合は役所に離婚届を提出することで一つの区切りをつけますが、内縁関係の男女の場合は特別な手続きは必要ありません。
一般的には、内縁関係の条件である同居を解消した時点で、内縁関係が終了したと見なされます。

解消方法についても離婚と同様で、二人で話し合った上で納得して円満に解消できれば問題ありません。
しかし、当事者間では解決できないという場合は「内縁関係調整調停」に進みます。

内縁関係調整調停とは?

内縁関係調整調停は、内縁関係の2人の話し合いに調停委員会に入ってもらうことで、円満に関係を解消することを目的に進められます。
慰謝料や財産分与などの金銭面について、話し合うことができます。
また、内縁関係を解消すると決めた場合だけでなく、解消するべきかどうか悩んでいる場合でも調停を利用できます。

重婚的内縁の解消では原則法律上の保護を受けられない

重婚的内縁とは婚姻関係の相手がいるなかで他の人とも内縁関係を結んでいることを指し、愛人とは区別されます。
そもそも重婚が法律で禁止されていますので、重婚的内縁についても同様に、通常の内縁関係のような法的保護を受けられません。
つまり、重婚的内縁の関係を解消する場合は基本的に財産分与が認められませんし、不倫や一方的な関係解消に対しても慰謝料を請求できない可能性が高いのです。

まとめ


本記事では、内縁関係に関して法律婚との違いや関係の証明方法などをまとめました。
内縁関係は、法律婚と事実上は変わらない関係性であっても受けられる権利に大きな違いがあることがおわかり頂けたと思います。

内縁関係でトラブルが起きた際に何より大変なのは、法的に内縁関係が成立するかどうかを初めに証明しなければならない点です。
法律婚であれば婚姻届一枚で証明できることを、さまざまな証拠を揃えて証明するのは時間も労力もかかり、大きな負担となります。
弁護士に依頼すれば、複雑な問題の解決だけでなく内縁関係の証明も任せることができるため、お困りの際は一度相談してみることをおすすめします。

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