取引先と契約を交わすとき、契約書に不備があれば、大きな損害やトラブルの元になりかねません。
本コラムでは、契約書に法的な問題点がないかをチェックする、いわゆる「リーガルチェック」について、契約締結前に知っておきたい基礎知識や、弁護士に依頼する方法について解説します。
▼この記事でわかること
- 「リーガルチェック」が必要な理由を知ることができます
- 「リーガルチェック」を弁護士に依頼するメリットが分かります
- 「リーガルチェック」を弁護士に依頼する流れを知ることができます
▼こんな方におすすめ
- 取引先から契約の締結依頼があり、契約内容に問題がないか確認したい方
- 自社で作成した契約書について、法的リスクがないか確認したい方
- 弁護士にリーガルチェックを依頼するため、依頼の流れを知りたいと考えている方
契約書作成の意義
契約書とは、契約当事者間の合意の内容を書面にしたものです。
契約書を作成する意義は様々ですが、主に次の3点です。
【1】契約内容を明確にして後の紛争を防止するため
【2】紛争があったときに証拠として解決方法を事前に明らかにしておくため
【3】その取引に関して法令で求められる事項を規定するため
契約書のリーガルチェックとは?
契約書のリーガルチェックとは、上記の契約書作成の意義に記載した各事項について、契約当事者の利益に合致したものであるかどうかを、法律の専門家が確認することです。
法律の専門家の目を通さずに契約書を作成すると、【1】取引内容が明確になっていないこと等に起因する後の紛争を招いたり、【2】自社に不利な法律解釈を前提とした条項が入っていることに気付かず、紛争になった際に不利な解決を受け容れざるを得なくなったり、【3】法令で求められる条項の記載がないことで、その取引について法令違反が生じてしまう、などの恐れがあります。
契約書を作成する際、インターネット上で入手可能なテンプレートを利用するケースもありますが、紛争の種になるリスク及びこれを踏まえて契約書で定める事項は、個々の取引目的や取引内容、契約当事者の事業等によって異なりますので、上記【1】から【3】の点について、テンプレートだと十分にリスクに応じた対応がされていないことも少なくないのです。
こうした契約書の不備を見つけ出し、問題の発生を未然に防ぐことに、リーガルチェックの意義があります。
自社の契約書については、事前に弁護士や法務部が作成した雛形等を用いるケースが多いと思いますが、取引先が作成した契約書については、自社のリスクについて検討された契約書ではありませんので、リーガルチェックを行う必要があります。
取引先と契約を交わす前に、法律的な問題がないか、自社にとって不利になる条項がないかなど、リーガルチェックで取引先の契約書を精査することは、リスク管理の面からも重要です。
契約書の種類
契約書には、会社の形態や取引の内容によって、さまざまなものがあります。
会社間の取引で使われることが多い契約書は次の通りです。
- 秘密保持契約書
- 取引基本契約書
- 業務委託契約書
- 工事請負契約書
- 売買契約書
- 供給契約書
- 代理店契約書
- 賃貸契約書
- リース契約書
- ライセンス契約書
会社間以外では、社内のスタッフに関する「雇用契約書」「派遣契約書」などもあります。
契約書のリーガルチェックが必要な理由
コンプライアンス・危機管理の面から、契約書のリーガルチェックの重要度は高まっています。
ここでは会社にとって契約書のリーガルチェックが必要な理由について、詳しく説明します。
不利な契約条項を指摘してくれる
会社間の取引では、自社にとって、民法や商法の規定、業界の慣習などに照らし合わせて著しく不利な契約は排除するべきです。
法律の専門家にリーガルチェックを依頼すれば、不当に不利な契約条項を指摘してもらうことができます。
また、一見して不利ではないように思えても、契約書上の文章の言い回しや、表現の仕方によって、不利な事態を招きかねないということもあります。
そうした問題点も、リーガルチェックによって改めることができます。
法的に問題がある契約書の作成を防げる
法律の知識が十分にない場合、法律違反にあたる内容を契約書に記載してしまうことも考えられます。
契約書の条項に法律違反があれば、契約の一部、または全部が無効になる可能性もあります。
さらに場合によっては、法律違反の契約書により、会社が行政からペナルティを受けるという事態も起こり得るでしょう。
例えば、法律で記載しなければならないと定められている条項が、契約書に記載されていないため、行政指導を受けるといったケースです。
リーガルチェックでは、こうした法的に問題がある契約書の作成を防ぎ、法律違反による制裁などのリスクを回避することができます。
トラブルを未然に防ぐ
「将来的なリスク」の視点からリーガルチェックを行うことによって、トラブルを未然に防ぐこともできます。
法律の専門家が、法令や同種事例も踏まえて今後起こりうる法的トラブルを想定し、その対応策について契約書に盛り込むのです。
実際にトラブルが発生してもその条項に守られ、将来的なリスクを軽減することができます。
取引目的に合致しない条項の精査をしてくれる
リーガルチェックでは、「問題点」という面だけではなく、「取引の目的」という観点からも、契約書を精査します。
ビジネス上の取引の目的を改めて確認した上でリーガルチェックすることにより、目的に合致していない契約内容の洗い出しが可能になります。
目的に合致しない契約を精査したうえで修正案などを提示し、希望する契約内容に導くことができます。
また、民法の解釈において契約(取引)の趣旨・目的は非常に重要な考慮要素になりうるため、契約書で契約の趣旨・目的を明確にしたうえで、これに整合する条項を定めることが肝要といえます。
弁護士にリーガルチェックを依頼する流れ
実際にリーガルチェックを適切に行うには、どのように対応すればよいのでしょうか。
法務部がある会社では自社で行うことも可能ですが、自社に専門家がいない場合は、弁護士に依頼するという選択肢があります。
ここでは弁護士にリーガルチェックを依頼する流れについて解説します。
事前準備
契約内容について整理し、内容を弁護士に伝えるための事前準備を行います。
事前に資料を作成しておけば、相談はスムーズです。
相談資料には、具体的な取引内容に加え、契約の目的、回避したいリスクなどの要望もあれば、詳しく書き出しておきましょう。
さらに、会社の業態や規模などによって、適用される法令が変わることもあるので、自社や取引先の会社について正確な情報を集め、まとめておくことが必要です。
弁護士に相談
事前に準備した内容を基に、弁護士に相談します。
リーガルチェックの相談ができる弁護士は、インターネット上で検索して探すことも可能です。
ココナラ法律相談なら、会社個別の事情に合わせた弁護士の検索が可能です。
依頼先は、契約をはじめとした企業法務に詳しく、関連する業界の事情にも精通した弁護士が望ましいでしょう。
費用相場
スポットでリーガルチェックを依頼する場合は、契約内容が定型的なものか、複雑なものかなどで、かなり費用も変わりますが、相場としては1件3〜20万程度です。
顧問弁護士がいる場合は、リーガルチェックが顧問料に含まれているケースもあります。
弁護士からレビューを受ける
弁護士は、作成した契約書の原案、または取引先の契約書をチェックし、修正が必要な個所や問題になりそうな点を示します。
弁護士の指摘や説明を踏まえ、修正対応をしたうえで、契約書を完成させます。
契約に難しい交渉が必要であれば、別途、弁護士に代理交渉を依頼することも可能です。
まとめ
契約書の不備でトラブルが発生すれば、損害を取り戻すために多大な費用、労力がかかります。
弁護士に契約書のリーガルチェックを依頼するのはハードルが高いと感じる方も、チェックしないことのリスクに比べれば、リーガルチェックの必要性をご理解いただけるかもしれません。
ココナラ法律相談などで、信頼できる弁護士を探し、将来的なリスクの軽減に向け、積極的にリーガルチェックを行うことをお勧めします。