覚書の書き方│ひな形をもとに基本構成・作成ポイントを解説

企業法務

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株式会社ココナラに在籍する弁護士が監修しています
株式会社ココナラ

ビジネスで用いられる「契約書」「念書」「覚書」などの文書。
目にする機会は少なくありませんが、それぞれの文書の適切な利用方法や作成の仕方については、知らないことも多いものです。
本コラムでは、契約の一部変更などで使える「覚書」について、他の文書との違いや作成のポイントを詳しく解説します。

▼この記事でわかること

  • 覚書とはどんな文書なのか、覚書が用いられるケースなどがわかります
  • 覚書と契約書・念書の違いについて理解することができます
  • 覚書の書き方について、ひな形をもとに解説します

▼こんな方におすすめ

  • ビジネスで使われる文書について、きちんと理解しておきたいと考えている方
  • どのようなケースで「覚書」を利用することができるのか知りたい方
  • 実際に「覚書」を用いるため、作成方法を知りたいと考えている方

「覚書」ってどんな文書?その法的効力とは

覚書とは、覚書を締結する当事者間の合意内容が記載された書面のことをいいます。

口約束であっても、その当事者は、約束を守らなければなりません。しかし、口約束ですと、どのような約束をしたのかあとから振り返ることができません。そのため、約束の内容が不明確になり、約束の内容自体の争いが生じてしまうかもしれません。
そこで、覚書のように書面にして合意内容を記載することで、トラブルを防止することができます。

また、作成の際に署名又は押印をすることがポイントです。
署名・捺印がされた覚書は、契約書と同様の法的効力を持ちます。
覚書を作成すれば、変更した内容について当事者間の合意があったことを証明することが可能になるのです。
覚書に記載されている内容を遵守せず万が一相手方に損害を発生させた場合は、契約不履行に基づく損害賠償を請求される可能性もあるので、注意が必要です。

「契約書」や「念書」との違い

覚書と同じようなシーンで用いられる、「契約書」「念書」「誓約書」との違いについて整理します。

まず契約書については、前項で覚書は契約書と同様の法的効力を持つと説明した通り、内容的な違いはありません。基本的には名前が違うだけです。
もっとも実務上は、覚書は、契約書の補足や変更をするものとして使われることが多いです。
その他、約束の内容を書面にしたい場合にも広く用いられる事が多いです。

次に念書、誓約書については、当事者間の合意を証明する覚書とは違い、どちらか一方が作成し、相手方に提出する文書として用いられることが多いです。

覚書が作成される具体的ケース(業務委託契約)

業務委託契約は、会社の業務の一部を外部の企業や個人に委託する契約です。
業務の委託者は受託者に対して外注する業務内容や報酬、権利関係などについて詳細に取り決め、業務委託契約書に記載する必要があります。
一般的に業務委託契約書に盛り込まれる内容は、次の通りです。

  • 委託業務の目的、内容、遂行方法
  • 委託料(報酬)、支払条件、支払時期
  • 成果物の権利、知的財産の帰属
  • 第三者への再委託の可否、再委託の条件
  • 秘密保持
  • 反社会的勢力の排除
  • 禁止事項
  • 契約解除
  • 損害賠償
  • 契約期間

覚書が用いられるのは、契約書記載の内容に修正や変更、追加があったときです。
例えば、委託業務の遂行方法が変わったとき、委託料が変更されたときなど、それぞれのタイミングで覚書を作成します。

一般的な覚書の書き方

実際に覚書は、どのように作成すればよいのでしょうか。
一般的な覚書の書き方、注意点などについて解説します。

【覚書のひな型】基本構成

覚書を作成するにあたり、参考のため覚書のひな型を用意したので、ご確認ください。

覚  書
株式会社〇〇(以下、甲)と株式会社△△(以下、乙)は、令和〇年〇月〇日付で締結した「〇〇契約書」(以下、「原契約」)について、下記のとおり変更することに合意した。

第1条(〇〇の変更)
現契約第〇条の〇〇について、「〇〇」を「〇〇」に変更する。







第〇条(原契約の適用)
この覚書に定めのない事項については、原契約書のとおりとする。

第〇条(効力発生日)
この契約の効力は令和〇年〇月〇日より発生する。

以上を合意した証とするため、本書2通を作成し甲乙両者が記名押印の上、各1通ずつ保有するものとする。

令和○年○月○日
甲 住 所

会社名
役職
氏名          印
(自署又は記名/捺印)
乙 住 所

会社名
役職
氏名         印
(自署又は記名/捺印)

覚書の基本構成は、以下のような内容になっています。

表題 覚書の表題は「覚書」「〇〇についての覚書」「○○契約書に付随する覚書」など、シンプルに記載すれば問題ありません。
前文 当事者間で同意、確認、承認したことを明記します。
「誰と誰を当事者にするか」を特定し、「甲」「乙」など当事者の略称も設定します。
合意内容の詳細 本文となります。
契約書を変更する覚書であれば、具体的な変更箇所、変更内容、効力発生日などを列記します。
日付 覚書の締結日を記載します。
署名捺印 当事者すべてが署名、捺印をします。

覚書作成時には収入印紙の貼付が必要な場合がある

作成した覚書が「課税文書」に当たる場合は、収入印紙を貼付する必要があります。

「課税文書」の対象になるのは、覚書に記載された契約金が1万円以上の覚書です。
さらに印紙税法の別表で定められる20種類の文書のいずれかに該当する場合、収入印紙が必要になります。
詳しくは国税庁のホームページなどで確認できますが、一例を挙げると以下のような契約書です。

  • 不動産・鉱業権・無体財産権・船舶・航空機また営業の譲渡に関する契約書
  • 地上権・土地の貸借権の設定や譲渡に関する契約
  • 消費貸借に関する契約書
  • 運送に関する契約書
  • 請負に関する契約書

覚書が課税文書にあたるかどうかは、文書の実質的な内容で判断されます。
必要な印紙を貼付しなかった場合は、「過怠税」として印紙税額の2倍のペナルティが課されます。

まとめ


覚書によって複雑な契約内容を変更したり、長期間の契約の契約条件の変遷を確認することもできます。
一方で、契約書と同様の法的効力をもつため、覚書の扱いに対しては慎重になる必要もあります。
覚書によって法的不備が生じたり、自社に不利な条件を加えてしまえば、思わぬトラブルが発生しかねません。
契約書などと同様、覚書の作成にあたっては弁護士に相談し、入念なリーガルチェックを行うことをおすすめします。

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