誇大広告とは│規制するための法律や景表法違反の罰則など詳しく解説

企業法務

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株式会社ココナラ

サービスの提供側が実際以上の利点を強調している「誇大広告」。
誇大広告は景品表示法によって規制されていますが、巧みな文言で消費者を騙そうとする事業者は後を絶ちません。
そうした中で、誇大広告に関する知識を深めることは、事業者が適正な取引を推進していくうえで、大きなメリットになります。

そこで本記事では、誇大広告を規制する法律の筆頭格である景品表示法の内容のほか、景品表示法に基づく不当表示の種類を紹介します。
誇大広告に当たる分野別のNG例についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

▼この記事でわかること

  • 誇大広告を規制する景品表示法の内容について解説します
  • 景品表示法に基づく不当表示の種類について解説します
  • 誇大広告にあたるNGな記載例について解説します

▼こんな方におすすめ

  • 事業運営にあたり、何が誇大広告に当たるか知りたい方
  • 誇大広告を見極める消費者リテラシーを身につけたい方
  • 分野ごとのNGな記載例について知りたい方

誇大広告とは


誇大広告とは、事実を大きく異なる形で自社の商品やサービスを優良、有利であるとアピールすることで、消費者に誤認を与えてしまう広告のことをいいます。
誇大広告を掲載している事業者の数は増加の傾向にあり、2020年度の東京都における誇大広告に関する通報件数は、前年度と比較して約3割増の170件となっています。
(参考:「悪質事業者通報サイトの通報概要(令和2年度)」東京都生活文化局

この誇大広告は、主に「不当景品類及び不当表示防止法」(以下、景品表示法)で規制されます。
ここからは、景品表示法はどういった広告を規制するのか、内容を解説していきます。

誇大広告を規制する景品表示法

景品表示法は、消費者の選択を誤らせるような不当な表示や、過大な景品類の提供を制限、禁止することで、消費者の利益を保護することを目的とした法律です。
誇大広告などの違法な広告表示を不当表示と定義し、規制しています。

1976年に制定されて以来、行政措置制度をもとに食品広告や営業広告など、多様な分野で嘘や大げさな表示から消費者を守り、購買判断を誤らせる不当な景品の問題に対処してきました。
近年は、2016年に不当な表示を行った事業者に対する課徴金制度が導入されるなど、景品表示を巡る法的規制はますます強まっています。

景品表示法が規制対象とする広告

景品表示法の定める表示の対象は、範囲が広く、ありとあらゆる全ての商品やサービスで、顧客を誘引する手段と定義されています。
規制対象は実際、CMやインターネット広告といった、明白な商業広告だけではありません。
口頭でのセールストークなどの無形の広告についても対象となる場合があります。

景品表示法が規制対象とする表示は下記の通りです。

  1. 商品や容器、包装による広告、その他の表示のほか、これらに添付したものによる広告
  2. 見本やチラシ、パンフレット、説明書面のほか、ダイレクトメールやファクシミリなど、その他これらに類似する物による広告その他表示と、口頭による広告(電話営業を含む)
  3. プラカードや建物、電車に掲示する看板のほか、ポスターやアドバルーン、その他これらに類似する物による広告や陳列物、実演による広告
  4. 新聞紙や雑誌その他出版物、拡張機による放送を含む放送、映写、演劇、電光による広告
  5. インターネットやパソコン通信など、情報処理の用に供する広告その他表示

景品表示法に基づく不当表示の種類

景品表示法では、第五条(不当な表示の禁止)で、不当の種類を3つ定義しています。
それは、優良誤認表示と有利誤認表示、その他誤認される恐れのある表示の3つです。

優良誤認表示(不実証広告規制)

優良誤認表示は、商品・サービスの品質や規格などの内容が、実際よりも著しく優良であると一般消費者に誤認させる表示です。
例えば次のような表示が、優良誤認表示に該当します。

  • 「ブランド牛」「有機野菜」と表示しているにも関わらず、実際は異なる場合
  • 「運動しなくても飲むだけで必ず痩せる」と強力なダイエット効果があるように表示する一方で、食品に合理的な根拠が存在しなかった場合

有利誤認表示は、実際はそうでもないのに、自社の商品やサービスの品質や規格などが競争業者よりも、「お得ですよ」と思わせて、著しく有利であると誤認させる表示です。
例えば次のような表示が、有利誤認表示に該当します。

  • 「今月だけの半額特価キャンペーン実施中」と表示していたが、本当は期間限定価格ではなかった事例
  • 合理的な根拠なく、「どこよりも安い」と表示した場合

これらの有利誤認表示は、ウェブサイトなどの不当表示事例で見られることが少なくありません。

その他誤認される恐れのある表示

優良誤認表示と有利誤認表示のほかに、誤認する恐れのある紛らわしい表示として下記の表示が禁止されています。

  • 無果汁の清涼飲料水などについての不当な表示
  • 商品の原産国に関する不当な表示
  • 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
  • おとり広告に関する不当な表示
  • 不動産のおとり広告に関する不当な表示
  • 有料老人ホームに関する不当な表示

景品表示法以外の誇大広告を規制するための法律


景品表示法は、基本的にあらゆる商品やサービスの取引についての誇大広告を規制していますが、それぞれの法目的に応じ、表示規制を行っている法令もあります。
ここからは、商品やサービスの表示規制をしている6つの法令について紹介します。

健康増進法

厚生労働省が所管の健康増進法は、国民の栄養の改善を通じた健康増進を目的とした法律です。
表示の対象は、トクホと呼ばれる特定保健用食品などの特別用途食品と、熱量・たんぱく質・脂質などの栄養表示基準があり、健康の保持増進効果などについての虚偽・誇大な表示などを禁止しています。

なお、栄養表示基準については、2015年4月に施行された食品表示法に統合、統合を機に全ての加工食品に栄養表示が義務付けられるようになりました。

【NGな表現例】

  • これを食べれば、医者に行かなくてもガンが治ります
  • 絶対に痩せるダイエット食品です
  • この食品は体脂肪を下げる効果があると言われています

薬機法

薬機法は、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品の品質と有効性、安全性を確保するために、製造や販売、広告といったサプライチェーン全般における規制を定めた法律です。
対象となる商品の名称・製造方法・効能・効果または性能に関して、虚偽または誇大な内容や、医師などが保証したものと誤解されるおそれがある内容などを記載することは禁じられています。

【NGな表現例】

  • これを使うと髪質が変わり、芯から元気になります
  • お肌のシミ、そばかすなどに有効です
  • 疲れのサインを和らげる。バリア機能と代謝のリズムを整える。

不当競争防止法

事業者同士の適正な競争行為を阻害する行為を規制する不当競争防止法は、不正競争を助長する誇大広告などの不正表示を、誤認惹起行為と定義しています。
同法では、不正競争行為に対する行政的処分はありません。
しかし、不当競争行為をし、営業上の利益を侵害した事業者や個人は、差止請求訴訟を提起される恐れがあります。

独占禁止法

独占禁止法は、業者同士の適正な競争行為を阻害する法律です。
主に特定の業者によって市場が寡占状態になるのを防止する目的を設けていますが、メーカーへの法的規制を通じて、不当表示も禁止しています。

具体的な禁止事項は、メーカーが、店頭・チラシなどで表示する価格を制限したり、価格を明示した広告を行ったりする越権行為を禁止することなどです。
これらの禁止事項は、メーカーが小売業者などに自社商品の販売価格を指示し、遵守させる再販売維持行為を禁じるとの考えに基づいており、価格維持効果を抑止する手段となっています。

特商法取引法

特商法取引法は、消費者と事業者との間で特にトラブルが頻発しやすい、訪問販売や通信販売といった特定商取引について規制する法律です。
同法においても、虚偽・誇大な広告が禁止されています。

同法を所管する消費者庁は、これまでも違法業者に対し、罰則や社名公表を行うなどし、不当表示を取り締まってきましたが、2022年6月の改正法の施行を機にさらなる厳罰化を図る予定です。
一般化した定期購入サービスが主な規制対象であり、定期購入ではないと誤認させる表示などに対する厳罰化を見込んでいます。

JAS法

農林物資の規格化と品質表示に関する法律(JAS法)は、不当表示の防止策として、品質表示基準制度とJAS規格制度を設けています。

品質表示基準制度 飲食料品の品質に関する表示のほか、名称や原料、原産地などの表示事項の遵守事項について、製造業者や販売業者に基準に従った表示をすることを義務付ける制度です。
JAS規格制度 日本農林規格(JAS規格)による格付け審査に合格した製品にJASマークの貼付を認めるもので、2019年1月現在で72品目214規格が認められています。

JAS法は一般消費者向けに販売される全ての飲食料品が対象なため、上記の2制度からなる同法は消費者保護を優先する法律と言えるでしょう。

誇大広告による罰則


最後に誇大広告を意図的、非意図的問わず、掲載してしまった場合の罰則について紹介します。
誇大広告を掲載、喧伝するリスクについて理解を深めるため、ぜひ参考にしてみてください。

景品表示法違反による措置命令、罰則

まず景品表示法違反に対する措置命令、罰則について解説します。

措置命令

景品表示法に基づく適正な広告表示をせず、不正表示を掲載したとみなされた場合、まず消費者庁が、違反事業者に対し、不正表示により一般消費者に与えた誤認の排除や再発防止策を講じるよう、措置命令を下します。

その命令の行使権は、不正表示がなくなっている場合でも例外ではありません。
同法第7条によれば、消費者庁は、不正表示を犯した業者より事業承継した事業者も、措置命令の対象としています。

課徴金制度

同じく不正表示を掲載してしまった場合、消費者庁は、売上額に100分の3を乗じた課徴金の納付を対象事業者に命じます。

ただし、この課徴金制度は、不当表示の行為が故意ではないと消費者庁が認めた場合や、売上額が150万円未満の場合は、適用されません。

健康増進法違反に対する措置命令、罰則

続いて健康増進法違反に対する措置命令、罰則について紹介します。

是正勧告

健康食品の広告規定に反するとともに、違法広告が国民の健康を害する懸念がある場合、消費者庁は、景品表示法と同じように、対象事業者に措置命令を下します。

ここでいう国民の健康を害する懸念とは、表示されている健康保持増進効果などに苦情が寄せられている場合や、誇大、虚偽表示がされることにより、疾病を抱える人が、医療機関で診療を受ける機会を逸する場合などが挙げられます。

懲役または課徴金制度

勧告を受けた人が正当な理由なく、措置を講じなかった場合、消費者庁は、命令違反として、対象事業者に、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の課徴金を課せます。

薬機法違反に対する措置命令、罰則

最後に薬機法違反に対する措置命令、罰則について説明します。

措置命令

医薬広告で違反行為をすると、厚生労働省から、違反行為の中止・排除、再発防止策の実施などの措置命令が取られます。

この医薬広告における虚偽・誇大な表現は、2021年8月1日から改正法が施行されたのを機に措置命令の対象になりました。
思わぬ形で措置命令が下される可能性がありますので、日頃から自社広告をチェックしておきましょう。

懲役・課徴金制度

薬機法66条1項の虚偽広告や誇大広告に抵触すると、2年以下の懲役もしくは200万円以下の課徴金が課される可能性があります。

課徴金額は景品表示法上が売上額の3%に対し、薬機法違反の場合は売上額の4.5%が課されます。
人体への影響が大きい医薬品ならではの厳しい規制であり、事業者は、十分に気を付ける必要があるでしょう。

誇大広告を防ぎ、消費者からの信頼を得よう


誇大広告を規制する景品表示法は、高度化する消費社会の変化に合わせ、制定当初の運用の中心であった不動産の表示から、食品の表示や二重価格表示、おとり広告、健康食品に至るまで、多様な面で運用強化が図られてきました。

昨今は、新型コロナウイルス感染症の感染爆発に伴う社会のデジタル化や巣篭もり需要を背景に、EC(電子商)取引が増えているため、それに応じた法規制の強化も想定されます。

事業者の方々はこうした社会変化を見越し、デジタル広告などに誇大広告を掲載させないよう、一層注意を払い、消費者からの信頼獲得に力を入れましょう。

参考:
森田満樹『食品偽装 メニュー表示のグレーゾーン〜景品表示の正しい理解のために』ぎょうせい(2014年)、pp35-38、137-140
消費者庁『事例でわかる 景品表示法』
消費者庁『健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について』

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