販売価格とは別の価格を併記し、購買行動を促す「二重価格表示」。
販売価格をお得に見せるために使われる方法ですが、このような二重価格表示には一定のルールがあります。
もしそれを理解せずに不当表示にあたる二重価格表示をしてしまえば、罰則を科される可能性もあるので注意が必要です。
そこで今回は二重価格とは何かということから、二重価格の不当表示を防ぐための方法など、わかりやすく説明しますので、ぜひ参考にしてください。
▼この記事でわかること
- 二重価格表示とはなにかということについて説明します
- 不当表示を防ぐための記載のルール・条件について説明します
- 二重価格が不当表示にあたる場合の罰則について説明します
▼こんな方におすすめ
- 二重価格表示について知りたい方
- 二重価格表示違反を防ぐ方法
- 二重価格表示の違反事例を知りたい方
二重価格表示とは
二重価格表示とは販売価格に対し比較対照価格を併記する広告手法で、景品表示法で禁止されている有利誤認表示に関する規制に該当します。
二重価格表示は、内容が正しければ問題ありませんが、内容に不正があると違法になるので注意が必要です。
二重価格表示に違反しないために、消費者庁の「価格表示ガイドライン」を確認したうえで、違反事例についてしっかり理解しておきましょう。
また、従業員がいる場合は社内教育をしっかり行うのも非常に重要なポイントです。
不当な二重価格表示を防ぐための記載のルール・条件
二重価格表示について気をつけていても、細かい記載のルールや条件について知らなければ、不当表示にあたる表現をしてしまう可能性があります。
不当な二重価格表示をし続けていると、是正措置によりメディア等に報道されてしまう可能性もあり、お店の信頼を一気に損なうことにもなりかねません。
二重価格表示による不当表示を防ぐための記載のルールや条件について、しっかり確認しておきましょう。
過去の販売価格を併記する場合
特売などを行う場合、通常販売価格と特売価格を併記して販売を行うケースはよくあります。
過去の販売価格を併記する際の注意点は、大きく3つあります。
同一商品の通常販売価格である
適切な二重価格表示は、同じ商品との価格を比較しなければなりません。
別の商品の価格と比較すると、違法な二重価格表示となるおそれがあります。
最近相当期間にわたり販売された価格である
併記する販売価格については、相当期間にわたって販売された価格でなければなりません。
相当期間とは、以下3つの基準によって判断されます。
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1は必須で、2と3についてはどちらか一方を満たしていれば適切な二重価格表示になります。
仮に相当期間価格とは言えない価格を比較対象とする場合には、その比較対象となる価格がいつからいつまでに用いていた価格か等の詳細を広告表示に明記しなければなりません。
販売価格を偽っていない
特売を行う場合、通常販売価格を普段販売している価格よりも高く記載することは、違法な二重価格表示になります。
通常販売価格を普段販売している価格よりも高くすると、特売価格がより一層安く感じられ、消費者が惑わされることになるからです。
将来の販売価格を併記する場合
将来の販売価格を併記する例としては、例えば「来月からは〇〇円」などと表記したうえで、現在の販売価格を「セール価格」「お試し価格」などと表記することなどです。
将来の販売価格との二重価格表示も適切に実施しなければ景表法に違反するため、消費者に対して誤解を与えないように実施する必要があります。
いつからいくらに金額が上がるのかは明確に記載すべきです。
景表法に違反する例としては、将来の販売価格として比較対照価格を併記する際、今後販売する予定がない、または販売する際もごく短期間しか販売する予定がない場合、などがあげられます。
将来ごく短期間しか販売する予定がない金額というのは、販売期間のうちセール価格で販売された期間、価格変動の状況などから個別に判断されます。
希望小売価格、オープン価格を併記する場合
製造業者などが価格を公表している希望小売価格を併記するのは問題ありません。
例えば、「メーカー希望小売価格〇〇円 販売価格◯◯円」というケースです。
ただし、メーカーなどの希望小売価格を併記する際は、メーカーが希望価格を出していない場合や希望価格よりも高い値段での表記は違法になります。
あくまでメーカーが設定している希望価格を表示するようにしてください。
競合他社の販売価格を併記する場合
競合他社の販売価格を併記して、販売促進させるケースもあるでしょう。
競合他社の販売価格を併記した場合、消費者は、その商品について代わりに購入されるような同一の商品を販売する事業者における最近時の販売価格と認識することが通常であると考えられるため、そうではない二重価格表示は不当表示に該当する可能性があります。
その商品について代わりに購入されるような同一の商品を販売する事業者というのは、自分が販売している地域で競争関係にある事業者をいいます。
また、最近時の価格というのは、競争関係にある事業者の最新の価格をいいます。
競争相手の価格も変化する可能性もあるため、常に調査を行い真実と異なる価格を記載しないようにすべきです。
条件に基づいた販売価格を併記する場合
会員価格や宿泊料金など、時期や条件によって料金が違うケースはよくあります。
この場合は消費者が混同しないように、条件の詳細についてわかりやすく明記しておきましょう。
不当な二重価格を掲載した際の罰則
不当な二重価格表示をしてしまうと行政処分を受けたり、課徴金が課せられる可能性があります。
二重価格の不当表示を行わないためにもその内容について確認しておきましょう。
是正措置命令
二重価格表示は消費者庁や都道府県の調査の対象です。
不当な二重価格表示を行っている場合、「不当な二重価格表示をやめなさい」という措置命令が下されます。
措置命令は、事業者に罰金を課すものではありませんが、消費者庁や各都道府県のホームページなどで公表され、マスコミに報道されてしまう可能性もあります。
もし世間に広く知れ渡ってしまうと、顧客からの信頼をなくし事業に重大なダメージを受けてしまうことにもなりかねませんので、注意しましょう。
軽微な違反の場合には、いきなり措置命令を受けるのではなく、まずは行政指導を受ける場合が多いです。
この場合に行政指導に従った対応を行った場合には措置命令の処分を逃れることができる場合があります。
課徴金納付命令
不当な二重価格表示によって利益を得た場合、課徴金が課される可能性があります。
課徴金納付命令は3年間で5,000万円以上の売上がある場合に限り発令されます。
そのため、違法な二重価格表示を行った商品の売上が低い場合には、課徴金納付命令の対象外となります。
仮に命令に従わなかった場合は、追加の罰則が科される可能性があります。
実際にあった二重価格表示の事例
実際にあった不当な二重価格表示の事例について3つ紹介します。
参考にしていただければ幸いです。
楽天
楽天では、特売の価格をより強調させるために、通常販売価格を不当に釣り上げる二重価格表示が行われていました。
この事例では事業者はもちろんですが、楽天市場を運営する楽天にも是正措置が要請され話題になりました。
Amazon
Amazonは、消費者向けの価格ではなく社内の商品管理上定めていた価格を通常価格として表示し、消費者を惑わしたとして是正措置を出されました。
直接商品を販売していないプラットフォーム側にも、二重価格表示の管理義務があることが示された事例です。
ジャパネットたかた
ジャパネットたかたでは、最近相当期間によって販売されていない価格を通常価格として表示し、特売価格を際立たせていました。
結果として再発防止の是正措置と、5,180万円の課徴金が課せられました。
不当な二重価格表示により大きな代償を支払うことになってしまった事例です。
家電量販店
家電製品の店頭価格について、競合店の平均価格から値引すると表示しながら、その平均価格を実際よりも高い価格に設定し、そこから値引きを行われていました。
メガネ店
フレーム+レンズ一式で「メーカー希望価格の半額」と表示したが、実際には、メーカー希望価格は設定されていませんでした。
まとめ
今回は、二重価格表示について説明をしました。
小売業や広告制作等を行うにあたり、二重価格表示に関する知識は、身につけておくべきでしょう。
複雑な条件のものもありますので、しっかり確認しておいてください。
不当な二重価格表示を防ぐために今回の記事を参考にしていただき、ビジネスへ重大な影響を及ぼさないように、当該分野に精通した弁護士に相談しながら、健全な組織運営に役立てていただけますと幸いです。