整理解雇とは?判断基準となる4つの要件や正当に解雇するための手順

企業法務

この記事の監修

株式会社ココナラに在籍する弁護士が監修しています
株式会社ココナラ

新型コロナウイルス感染拡大の長期化によって、多くの企業が深刻なダメージを受けています。
経営悪化から、解雇や雇用止めなど雇用調整を余儀なくされている会社も増えているようです。
本コラムでは、整理解雇による人員削減が認められるケース、整理解雇に必要な手続きなどについて解説します。

▼この記事でわかること

  • 整理解雇が認められるための要件が分かります
  • 適切に解雇するための手続きについて知ることができます
  • 整理解雇に当たって配慮するべきことが分かります

▼こんな方におすすめ

  • 整理解雇が認められるケースについて知っておきたい方
  • 経営悪化で人員削減の必要に迫られている方
  • 整理解雇をめぐってトラブルを抱えている方

整理解雇とは


解雇は、その目的、内容によって「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の3種類に分類されます。
そのうち整理解雇は、会社の経営悪化により、人員整理を行うための解雇のことをいいます。
いわゆるリストラの一環としてやむなく人員削減することなどが、整理解雇に当たります。

「懲戒解雇」「普通解雇」との違い

「懲戒解雇」という言葉は、文字通り「懲戒」の一環として行われる解雇のことです。
従業員が極めて悪質な規律違反や非行を行ったとき懲戒処分として行うための解雇のことをいいます。

一方「普通解雇」とは、整理解雇、懲戒解雇以外の解雇を意味します。
労働者が就業規則や雇用契約に定められた契約内容を履行できないことを理由とした解雇である点がポイントで、具体的には、次のようなケースとなります。

  • 勤務成績が著しく悪く、指導を行っても改善しない
  • 健康上の理由で長期にわたり職場復帰が見込めない
  • 著しく協調性に欠け、業務に支障をきたし、改善の見込みもない

懲戒解雇と普通解雇は基本的に、「社員側の問題」が解雇の理由になりますが、整理解雇の場合はあくまで「会社側の事情」による解雇であるのがポイントです。
整理解雇と、懲戒解雇、普通解雇とは、解雇の理由が異なるため、解雇の要件、解雇が有効かどうかの判断基準もそれぞれ違います。

整理解雇が認められるための4つの要件


労働者保護の観点から解雇には厳しいルールが設けられています。
整理解雇が正当だと認められるためには、そのルールをクリアする必要があるのです。
ここでは、整理解雇が認められるための4つの要件について解説します。

要件(1)人員整理の必要性

整理解雇の要件の1つ目は整理解雇をすることに客観的な必要性があることです。
具体的には、不況や経営不振で会社が倒産寸前の状況にあるなど、人員削減措置の実施が会社経営上の十分な必要性に基づいているかどうかによって、整理解雇の妥当性が判断されます。
どの程度経営が悪化しているのか、どの程度の人員削減が必要なのか、データで示すことも必要です。

要件(2)解雇回避努力義務の履行

次の要件は、解雇を回避するために最大限の努力を行ったことです。
配置転換や出向、希望退職者の募集など、ほかの手段によって解雇回避のために努力していなければ、整理解雇は有効だと認められない可能性があります。

要件(3)解雇する従業員選定の合理性

要件の3つ目は、解雇の対象となる人選の基準、運用が合理的に行われていることです。
人員選定にあたり、女性ばかりを対象にする、代表のお気に入りの社員は対象にしない、といったことがあれば、合理性がないとみなされる可能性が高いです。
客観的に公平で、合理的な基準により対象者を選ばなければいけません。

要件(4)従業員への十分な説明

最後の要件は、労使間で十分に協議等を行ったことです。
整理解雇の必要性や時期、方法、規模、人選の基準などについて、従業員側に対して十分な説明を行い、それに基づきに協議を行うことが整理解雇の要件となります。
必ずしも合意・納得を得なければいけないということではありませんが、労働組合などと誠実に協議し、段階を踏んで慎重に検討することは最低限必要だということです。

整理解雇をするための適切な流れ


整理解雇の要件を満たすために、整理解雇のために会社としてするべきこと、適切な流れについて解説します。

「解雇以外の手段」を検討

整理解雇は、他の手段によって解雇を回避する努力をしたと判断されなければ、有効と認められない可能性があります。
解雇は避けられないということを示すためにも、まずは解雇以外で考えられる手段について、検討をしましょう。

具体的には、配置転換、早期退職や希望退職の募集など、人員削減回避のための方策について検討し、実行することが求められます。
特に配置転換や希望退職が行われていないと、解雇回避努力が不十分と判断される可能性があります。

加えて、経費削減や助成金の活用などについても検討が必要です。

解雇基準の決定

社員の中から誰を解雇するのか、解雇の基準を決定します。
合理的な基準なしに、解雇者を特定するのはNGです。

一般的に合理的と判断される基準としては次のような内容が考えられます。

  • 懲戒処分歴、欠勤率、会社への貢献度に基づく基準
  • 扶養家族の有無など社員の生活への打撃の程度

一方、これまでの裁判例などでは合理性が認められなかったものには、年齢や入社歴による基準がありました。

労働組合と協議

労働組合に関しては、労働協約などで解雇に関する協議の条項が定められていない場合でも、協議の場をもつことは必要とされます。
労働組合との協議の際は、会社の業績に関する書類などを開示して、整理解雇の必要性について十分に説明し、理解が得られるよう努力しなければなりません。
労働組合の組合員でない社員に対しても、整理解雇の必要性、具体的実施方法などについて、十分に協議、説明し、理解を求める努力が必要です。

解雇実施の発表

社員に対し、文書などで解雇実施の発表を行います。
発表の際は「整理解雇の実施理由」「解雇日」「退職金の取り扱い」などを明示します。

解雇者の人選

誰を実際に解雇するか具体的な人選に入ります。
具体的な人選は、会社で決めた解雇基準に基づき、合理的で公平に行われなければなりません。

会社の解雇基準に加え、労働基準法では、次のようなケースで解雇を禁止しています。

  • 業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇
  • 産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇

さらに、労働組合の組合員であることを理由にした解雇や、国籍、性別、信条、社会的身分などによる解雇も認められません。

解雇予告

人選が完了したら、各社員に対し「解雇予告」をします。
解雇しようとする社員に対しては、30日前までに解雇の予告をしなければならないと労働基準法で定められているのです。

予告を行わずに解雇をする場合には、平均賃金30日分以上の「解雇予告手当」を支払わなければなりません。
解雇予告をせず、解雇予告手当も支払わずに解雇をした場合、解雇は無効とされる可能性が高いです。

解雇辞令の交付

解雇実施日に、「解雇辞令」を交付します。
手渡すことができない場合は郵送し、確実に解雇者の手元に渡るようにしましょう。

まとめ


会社は簡単に社員を解雇することはできません。
厳格な基準、ルールにのっとって、慎重に判断することが求められます。
「経営が苦しい」ということだけで、安易に整理解雇を進めれば、トラブルの元になりかねず、損害賠償などにより会社が大きなダメージを受ける可能性もあるのです。
コロナ禍の影響で人員整理を余儀なくされている企業の方も、整理解雇に踏み切る前に十分な検討が必要です。
労働問題の経験が豊富な弁護士などに、相談することをおすすめします。

この記事の監修

株式会社ココナラに在籍する弁護士が監修しています
株式会社ココナラ
タイトルとURLをコピーしました