弁護士の仕事内容│依頼すると何をしてくれる?頼めないこととは?

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東京都 / 豊島区
弁護士法人若井綜合法律事務所
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弁護士とは依頼者の代理人として、依頼者の利益を第一に考えて提案し、行動する存在です。
依頼者が弁護士に「依頼」すると、離婚・借金問題・労務トラブルなど、法律に関わる様々なトラブルの解決やリスクの回避に協力してもらえます。
一方、「代理人」と聞いても、それが具体的にどういった立場なのか分からず、つい相談すること自体に尻込みをしてしまう方もいるのではないでしょうか。
こちらでは、弁護士の仕事内容や依頼者との関係性を踏まえつつ、弁護士に依頼すべき相談内容についてご紹介します。

▼この記事で分かること

  • 弁護士とはどんな職業なのか知ることができます
  • 「依頼」や「代理人」の解説で弁護士と依頼者との関係性が分かります
  • 弁護士に相談できること・相談できないことが分かります

▼こんな方におすすめ

  • 法律相談を申し込みたいが、弁護士は怖そうだから行きづらいという人
  • 弁護士にどこまで頼んで良いか分からない人
  • 弁護士に頼んだ結果、どのように見通しが開けるのか知りたい人
  • 相手方の弁護士から手紙をもらったけれど、どうしたら良いかわからなくて困っている人

弁護士とは?

弁護士とは?
こちらでは弁護士が掲げる使命と、それに基づく仕事内容についてご紹介します。
弁護士の仕事について知ることで、「弁護士に頼むべきこと・そうでないこと」の区別がどんなものか、ある程度イメージすることができるでしょう。

人権擁護・社会正義の実現が弁護士の使命

やや堅苦しく思えるかもしれませんが、「弁護士の使命」は弁護士法の第一条に定められています。

弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
(弁護士法第一条)

例えば世間を騒がせている刑事事件、世論が既に罪人扱いしているような容疑者がいたとします。
そのような容疑者も、裁判で有罪判決が出るまでは「推定無罪の原則」により、無罪です。
これは、世論に任せて量刑を判断した結果、多くの冤罪を生んでしまった歴史の反省に基づきます。

ですから、有罪かどうか、あるいは有罪なら量刑を判断するために裁判を行いますが、社会正義を実現するためには、あらゆる立場の主張を精査する必要があります。

弁護士の存在意義はここにあります。

弁護士は依頼者に代わって法的に正しい主張をしたり、依頼者にとって最善の提案をしたりします。
このように弁護士とは、社会正義の実現のために依頼人の利益を最優先する存在なのです。

弁護士の仕事とは

弁護士は自らの使命に基づき、大きく2つの責務(=仕事)を抱えています。
一つが法的トラブルの解決。
そしてもう一つが法的リスクの回避です。
どちらも耳慣れない言葉かと思いますので、以下で順に見ていきましょう。

民事事件・刑事事件の代理人【法的トラブルの解決】

法的なトラブルは、文字通り「法律上の問題となるトラブル」です。
法的なトラブルはもう少し詳しく言うと、主に「民事事件」「刑事事件」のように分けられます。

民事事件とは、

  • 過去の交際相手が個人情報をネットで拡散すると脅迫してくる/拡散している
  • 債務が大きすぎて自己破産を考えている
  • 祖父が亡くなってから「相続放棄しろ」と親族に脅された

など、私人間の間で起こるトラブルを指します。

対して刑事事件とは、

  • 殺人事件
  • 窃盗
  • 詐欺

など、被疑者の犯罪(=法律で禁じられている行為)によるトラブルを指します。

このようなトラブルの解決に向けて、弁護士は依頼を受けた場合、依頼者の「代理人」として行動します。(なお、「代理人」については後で説明します。)

法人・個人への法律サポート【法的リスクの回避】

「法的リスクの回避」とは、法的なトラブルが発生することを未然に防ぐ対応を取ることを言います。これも弁護士の仕事として大きな割合を占めます。

よくあるのが、企業法務などのビジネスの世界における「予防法務」的なものです。
具体的には、契約書の作成を考えるとわかりやすいでしょう。
弁護士は法人や個人事業主に対して契約書の作成などを行うことがあります。その際、どういった条項を入れておけば、将来的に取引先とビジネス上の紛争を防ぐことができるか、といった観点を含めて内容を作成すること、こうした観点を持って法律上の文章を作成することは、まさに「予防法務」と言えます。

法的リスクの回避の例は法人だけでなく、個人にも当てはまるケースがあります。
例えば、相続問題のケースです。
相続が発生した。まだもめ事は始まっていないが、そもそも親族同士親しくないのでもめるのが必至の予感・・・
このように、もめることがかなりの確率で予想される場合、事前にリスク回避ができるのであればやっておきたいものです。その際、弁護士に相談・依頼することで、もめ事を避けるための助言を受けることができます。また、必要に応じて、相手方との交渉も代理してもらえます。

「法的トラブルの解決」「法的リスクの回避」はどちらも弁護士が活躍できる内容ですが、一つ注意したい点があります。これらはあくまで

  • 法律問題であること
  • すでに法律トラブルが起きた、あるいはかなりの確率で法律トラブルが起こると予想される

のどちらも満たすことが前提です。

その点、例えば「浮気されているかもしれない」という状況でのご相談は、あまり有益な結果を生まないかもしれません。この例は法律問題と言えなくもないですが、すでにトラブルが目に見える形で発生しているわけではなく、かなりの確率で起こるとも判断しきれないため、弁護士に相談しても解決できない可能性が高いのが現実です。

弁護士と依頼者との関係

弁護士と依頼者との関係
こちらでは、

  • 弁護士に相談しに行く際の最初の段階、「依頼」について
  • 依頼後に弁護士が果たす役割、「代理人」について

ご紹介します。
弁護士と依頼者の関係性を知っておくことで、相談前に気になる不安を払拭することができるでしょう。

「依頼」とは

依頼とは、委任契約を交わすことです。
通常、それは委任契約書を介して行われますが、そこで記入するものは大きく3つあります。

  • 件名
  • 相手方
  • 委任の範囲

件名には、「損害賠償請求」や「不倫解消に際しての不当要求」など、今回委任する事件の名前を記入します。
相手方には相手の名前を、そして委任の範囲には「任意交渉」「訴訟(一審)」「調停」などの項目から選択をするのが一般的とされています。

「損害賠償請求」や「任意交渉」など、普段聞き馴染みのない言葉がたくさん並んでいる書類は、作成段階で不安を感じることもあるかもしれません。
しかし、委任契約書はあらかじめ様式が決まっているため、難しそう、と心配する必要はありません。作成された内容について分からない部分があれば、弁護士に聞いてみるとよいでしょう。

どの時点で「依頼」となりますか?

委任契約書にサインした段階です。

相談したら必ず依頼しなければいけませんか?

そんなことはありません。

もしかすると、話していて「フィーリングが合わない」と感じる弁護士もいるかもしれません。
繰り返しになりますが、弁護士とは本人の代理人として行動することになります。
その点で、弁護士との相性の良さは、より良い解決を見込む上でとても大切です。
ときには他の弁護士とお話をしながら、信頼関係を築いた上で依頼するのが良いでしょう。

弁護士は依頼者の「代理人」

「代理人」とはどのような性質のものですか?

代理人とは、トラブルを抱えている本人に代わり、相手方との連絡や交渉、意思決定など、解決に向けた行動を自ら行う権限を持った人のことです。
ただし、行動するにあたってはトラブルを抱えている本人の意向確認が必要となります。
要するに、「本人が意図していない行動を弁護士が取ることはない」ということです。

一方で、弁護士がとった行動の影響や効果は本人に帰属します。
だからこそ、弁護士を「全くの他人」と思わずに、適切な自己開示をすることは非常に大切です。

頼んだら私の主張は認められますか?

個別具体的な事案に応じて必要な証拠や法的根拠が異なるので断定することはできません。
それでも、弁護士の使命にかけて、依頼者にとっての最善の解決方法を提案させていただきます。

もちろん、依頼(=委任契約書へのサイン)していただく前には、詳細な事案の概要をお伺いするので、法的主張が成り立つ・成り立たないの判断や見通し等をしっかりとご説明します。

弁護士の言うことは必ず聞かなければならないのですか?

必ず聞かなければいけないわけではありません。また、聞かなかったことで、例えば法律や契約に反するようなことはありません(和解などの判決には法的拘束力は発生する)。

それでも、弁護士の立場としては、アドバイスを聞いておくことをおすすめします。
例えば、あなたが結婚相手に不倫をされたケースでは、相手方への憎悪からつい誰かに言いふらしたい衝動に駆られるかもしれません。しかし、それをしてしまうと逆にあなたが名誉毀損で訴えられてしまうリスクがあります。こうしたリスクを避けるためにも、弁護士は前もってアドバイスをすることがあります。
要するに、弁護士のアドバイスは「法律的に正しいと思われる行為」ですので、それに従うことは結果的に依頼者であるあなたのためになる、と言えると思います。

 

弁護士は怖い?

弁護士は怖い?
「弁護士」というと、何らかの堅苦しさ、敷居の高さを感じるかもしれません。
その印象は、どこからやってくるのでしょうか。

相手方には毅然と対応

弁護士は、依頼者の利益を最優先に考えて行動します。
依頼者の利益を最大化するため、安易な妥協はしません。もちろん、相手方との交渉では本人に代わって毅然とした態度で臨みます。
このような存在、つまり、トラブルを抱えた人にとって、代理人として全面的に味方となってくれる存在は弁護士だけです。
依頼者にとって弁護士はまさに「最後の砦」と言ってもいいかもしれません。

頼んだら私の主張は認められますか?

絶対に勝訴できるとは言えません。
これは、医者が「絶対にこの病気は治りますよ」と言えないことと同様です。

繰り返しにはなりますが、依頼(=委任契約書へのサイン)していただく前には、詳細な事案の概要をお伺いするので、法的主張が成り立つ・成り立たないの判断や見通し等はしっかりとご説明します。
そして、依頼者にとっての最善の解決方法を提案する立場であることもご理解いただきたいです。

結局,被った損害が回復しなかった場合,その分弁護士費用は差し引いてもらえますか?

交渉や裁判等で「主張が認められる事」と「損害が回復する事」とは必ずしもイコールにはなりません。
相手方の資力が無かった場合・連絡がつかなかった場合など様々な事情によって状況は異なります。

 

▼弁護士費用についてもっと詳しく
弁護士費用は高い?安い?料金相場と依頼方法

「相手方の弁護士」への対応方法

もし、相手方の弁護士から連絡がきた場合、普通であれば驚き、そして不安になる方が多いでしょう。
このような状況では、どうすれば良いのでしょうか。

まずは相手方の弁護士の素性を確認しましょう。
「弁護士による債権回収」という名目の詐欺も横行しているので、この段階を抜かすことはできません。

本当に弁護士かどうかはどうやって調べられますか?

日本弁護士連合会の公式HPにて、検索することができます。(右上「弁護士検索」をクリック)

 

あるいは、各都道府県の弁護士会から、所属している弁護士名や場所等を検索することもできます。

 

▼参考サイト
東京弁護士会
第一東京弁護士会
第二東京弁護士会

 

取扱分野などのより詳しい情報をご覧いただく場合は、「弁護士情報提供サービス ひまわりサーチ」もあるので、こちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

▼参考サイト
日本弁護士連合会:弁護士情報提供サービス ひまわりサーチ

確認が取れたら、連絡の内容について精査しましょう。
なかには自分で対応できるものもありますが、対応次第でのちに不利に交渉が進んでしまう可能性を考えると、自分で対応する前に弁護士に相談する方が安心です。

相手方の弁護士から損害賠償を支払うように言われています。支払わなければいけませんか?

損害賠償と一口に言っても、個別具体的な状況によって法的根拠も変わってきますから一概にには判断できません。
もちろん、相手方の弁護士は法的根拠があって連絡をしてきていますから、何かしらの法的根拠に基づく連絡である可能性は極めて高いです。

しかし、一方の当事者からの意見しか聞いていない主張には偏りがあることも考えられます。
もし、あなたも弁護士に依頼した場合は、その後の交渉は双方の代理人同士で進めることになります。その場合、あなたの弁護士はあなたの立場、利益を最優先に行動しますので、相手の弁護士に一方的に事案を処理されてしまう心配はありません。

弁護士からの手紙が来たが、無視してもいいですか?

無視をするのはおすすめしません。
訴訟になって、相手に有利に交渉が進んでしまう可能性があるからです。

もちろん、「不利になる可能性がある」だけで、その可能性が高いわけではありません。
ですが、事態が大きくなるのを避けるのであれば、基本無視しないほうが良いでしょう。

弁護士に頼めること、頼めないこと

弁護士に頼めること、頼めないこと
こちらでは、弁護士に頼めること・頼めないことをご紹介します。

抱えているトラブルの性質によっては、弁護士に相談することが望ましい場合もあれば、そうでない場合もあります。以下で一緒に確認していきましょう。

弁護士に依頼を断られる場合はありますか?

以下のようなご相談は、依頼を断られる可能性があります。

  • 友達が浮気をされているっぽいのでどうにかして欲しい
  • 同僚がパワハラを受けて悩んでる
  • オークショントラブルがあった
  • 自分の名前、相手の名前は言いたくない

「友達の浮気」や「同僚のパワハラ」といったご相談は、あくまで第三者からのご相談です。ご本人からの依頼でなければ、依頼を受けること自体が難しくなります。

 

オークショントラブルについては、適切な相談窓口は国民消費生活センターです。法律トラブルに限った話ではありませんが、正しい窓口に相談することが、より良い解決のポイントです。

 

「身分証の提示を拒む」など弁護士への自己開示が適切に行われなかった場合、弁護士は依頼者の「代理人」としての法的な立場を得ることが難しくなります。そのため、依頼をお断りせざるを得なくなります。

 

▼お近くの消費者センターを探す
全国の消費生活センター等_国民生活センター

弁護士に頼めること・頼めないことの具体例

弁護士に頼めること、頼めないこととは、具体的にどういったことでしょうか。
以下の表に例をまとめました。

依頼することが難しい 依頼することが望ましい
婚約破棄の例 一緒に住んでいたときのゲーム機を返して欲しい 破棄した前後で、子供ができたことがわかった
不倫の例 パートナーが不倫してるっぽいのでやめさせたい 不倫の相手方に慰謝料を請求したい
借金の例 今月の支払いを待つように債権者に言って欲しい 代理人を立てて任意整理の交渉をしたい
クレジットカードの例 クレジットカードが持てない 自己破産したい、任意整理したい

(補足)
ちなみに、クレジットカードやオートローンの審査が通らない事例は弁護士ではなく、CICという指定情報機関の情報をチェックするのが近道です。
金融機関などでの借入をしている方は、こちらにその情報が載っているのですが、クレジットカードやオートローンの審査は、その情報によって行われます。
他にも、JICCや全銀といった指定情報機関もありますが、まずはCICから取得してみてはいかがでしょうか。
▼携帯電話の割賦契約やクレジットカード契約について気になる方はこちら
指定信用情報機関のCIC

▼日本信用情報機構(JICC)の公式サイト
日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関| HOME

▼銀行などのキャッシングについて気になる方はこちら
全国銀行個人信用情報センター | 全銀協の活動を知りたい方 | 一般社団法人 全国銀行協会

まとめ

まとめ
弁護士とは、依頼者の代理人として、依頼者の利益を第一に考えて行動する存在です。
弁護士に依頼することで、自力で対応するよりも円滑かつ適切に、法的なトラブルを解決できる可能性が高まります。また、まだ表面化していない法律問題についても、弁護士のアドバイスの下、事前に適切な方策を取ることでリスクを回避できる可能性があります。

弁護士は法律の専門家であるとともに、依頼者にとって一番の味方です。法律トラブルで悩まれている方は、一度弁護士に相談してみると良いかもしれません。

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