夫婦関係が破綻し、家庭内別居の状態になると、大きな精神的ストレスがかかります。
何とか解決できないかとは思うものの、ついつい問題を先送りしてしまい、何年も同じ状態が続いている方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、家庭内別居のメリット・デメリットや対処法、離婚を考えている場合に準備すべきことなどについて解説します。
▼この記事でわかること
- 家庭内別居とはどのような状態なのかがわかります
- 家庭内別居のメリット・デメリットがわかります
- 家庭内別居による衝突を防ぐための対処法がわかります
- 家庭内別居から離婚をするためにすべきことがわかります
▼こんな方におすすめ
- 家庭内別居のストレスから解放されたい方
- 家庭内別居を続けるか離婚するか判断したい方
- 離婚を決めた場合に準備すべきことを知りたい方
家庭内別居とは
「家庭内別居」とは、一般的に「離婚をせず同じ家に住んではいるものの、夫婦関係が破綻している状態」を指します。
ただ同じ家に住んでいるだけで、夫婦としての愛情や気遣い、協力などはなく、スキンシップや性交渉もないことがほとんどです。
離婚について調停や裁判で争う際、夫婦関係が破綻していることの判断材料のひとつに、別居しているかどうかがあります。
家庭内別居の状態であっても、家事や家計が別々、長期間相手を無視していて会話や性交渉がないなどの場合は、家庭内別居でも夫婦関係が破綻していると判断される可能性があります。
家庭内別居の一例
家庭内別居に法律上の明確な定義はありませんが、下記のような状況であれば家庭内別居状態だといえるでしょう。
- 同じ部屋にいても会話をしない、または話す必要があるときしか話さない
- 家事を個別に行っており、相手のために料理・洗濯・掃除などはしない
- 寝室も含めて完全に部屋を分けており、同じ部屋で過ごすことがない
- 家計を分けていて相手の生活費を負担することがない
- 相手の存在をないものとしており、目を合わせることすらない
- 相手に関心がなく、長期間スキンシップや性交渉がない
各家庭によって状況は異なりますが、会話はないが生活費は負担している、子どもがいるときのみ子どもを介して会話するなどのパターンもあります。
家庭内別居と仮面夫婦は何が違う?
仮面夫婦も家庭内別居と同じく法的な定義はありません。
仮面夫婦とは一般的には人目があるときは仲の良い夫婦として過ごすものの、2人きりになると一切会話をしない、別々に過ごすなど夫婦関係が破綻している状態になる夫婦を指します。
外に出ているときだけとはいえ、一応夫婦として過ごす時間があるため、完全に夫婦関係が破綻しているとは認められない可能性があります。
家庭内別居のメリット
夫婦関係が破綻している状態でありながら、別居したり離婚したりせずに家庭内別居を続ける方がいるのは、家庭内別居に下記のようなメリットがあるからです。
- 離婚より経済面の負担が少ない
- 世間体を気にする必要がない
- 子どもの両親として一緒に過ごせる
各メリットの詳細について解説します。
離婚より経済面の負担が少ない
家庭内別居の大きなメリットは、経済的な負担が少ないことです。
別居や離婚をすると、夫婦それぞれが個別に生活費を支払うことになります。
また、これまで専業主婦・主夫だったり、パート勤務で収入が少なかったりしたことで扶養に入っていた場合、離婚後は扶養から外れるため各種税金や保険料も負担しなくてはなりません。
扶養の状態から生活費プラス税金や保険料も支払うことになると、経済的な負担が増えることになります。
また、扶養者側も被扶養者がいなくなったことで各種控除がなくなり、税金や保険料が上がって手取りが大きく下がる可能性があります。
家庭内別居状態でも、離婚しなければこうした経済的負担を負うリスクはなくなるのです。
世間体を気にする必要がない
世間体が気になり、別居や離婚はせず家庭内別居をしている方もいるでしょう。
別居や離婚をすると何らかの手続きが必要になる場合が多いため、職場や子どもが通う保育園・幼稚園、学校などに隠し通すのは困難です。
これまでと違うルートで出勤しているのを目撃され、別居や離婚をしたことが広まるケースもあります。
家庭内別居であれば、とくに人目のつくところでは生活スタイルが大きく変化しないので、世間体を気にする必要がなくなります。
子どもの両親として一緒に過ごせる
別居や離婚によって住居を分ける場合、夫婦のどちらかが子どもから離れて暮らすことになります。
面会日を設けたとしても、一緒に暮らすよりもコミュニケーションを取りづらく、子どもの成長を感じられる機会も少なくなります。
また、別居や離婚によってどちらかの親が離れてしまうと、子どもはショックを受けてしまいます。
さらに引っ越しが必要になり保育園・幼稚園や学校を変えることになれば、環境が大きく変わって友達とも離れるため、より大きなストレスを与えることになるでしょう。
家庭内別居を選べば両親ともに子どもと過ごせるだけでなく、子どもの生活環境を維持できるので余計な負担をかけずに済みます。
家庭内別居のデメリット
経済的な負担を軽減できる、これまで通り子どもと過ごせるなどのメリットがある家庭内別居ですが、下記のようなさまざまなデメリットもあります。
- 精神的なストレスを感じる
- 夫婦関係の修復が難しい
- 裁判で離婚が認められにくい
- 恋人ができたときに有責配偶者になる
- 子どもに悪影響を及ぼす
- 財産分与の対象額が増える
家庭内別居を続けるかどうかを冷静に考えるためにも、これらのデメリットの詳細を把握しておきましょう。
精神的なストレスを感じる
家庭内別居の大きなデメリットは、日々精神的なストレスを感じることでしょう。
とくに離婚を考えているのにもかかわらず、経済面や子どもなどが理由で家庭内別居を選んだ場合はストレスが大きくなりがちです。
ゆっくりと安心して過ごせるはずの自宅で、毎日相手と顔を合わせないように気を使って生活するのはかなり疲れるものです。
相手が物音を立てる、ソファに服がかけてあるなど、顔は見えなくても相手の気配を感じるだけでイライラする可能性もあります。
夫婦関係の修復が難しい
家庭内別居が常態化すると、夫婦関係の修復が難しくなるという問題もあります。
お互いが顔を合わせないように行動し、一切会話もしないようでは話し合いができないからです。
「仲直りするなり、離婚するなりすべき」と感じていても、話し合いに至るきっかけが掴めずズルズルと現状維持になるケースもあるでしょう。
裁判で離婚が認められにくい
夫婦のどちらかが離婚を決意したとしても、家庭内別居では裁判で離婚が認められにくいのもデメリットです。
完全に別居していて、その状態が長く続いている場合は「夫婦としての生活は一切ない」という主張に信憑性があります。
しかし、同じ家に住んでいながら「夫婦関係が破綻している」と主張されても、裁判所側は法定離婚事由に該当するといえるほどの状態なのかどうかが判断しづらいのです。
家庭内別居の状態で離婚を認めてもらうには、通話履歴やメッセージ等のやり取りが一切ないこと、家計を完全に分けていることなど、夫婦関係が破綻しているといえるだけの証拠を示す必要があります。
恋人ができたときに有責配偶者になる
家庭内別居状態でも、婚姻関係が解消されていない以上、恋人ができ不倫をしたら有責配偶者になります。
有責配偶者は原則として自分から離婚を請求することができないため、相手が離婚に応じてくれない限りは離婚できません。
それどころか、現配偶者から恋人共々不倫に対する慰謝料を請求される可能性もあります。
もともと夫婦関係が破綻していたと認められれば、現配偶者は慰謝料請求ができなくなりますが、前述のとおり家庭内別居では夫婦関係の破綻が認められにくい傾向にあります。
むしろ「不倫が原因で夫婦関係が破綻した」と判断され、自らを不利な立場に追いやる結果になることもあるでしょう。
子どもに悪影響を及ぼす
別居や離婚による子どもへの影響を考えて家庭内別居を選んだとしても、かえって子どもに悪影響を及ぼす場合もあります。
子どもは想像以上に親の雰囲気や顔色を感じ取っているものです。
両親が会話をしていなかったり、別々の部屋で過ごしていたりすれば「何かおかしい」と気づきます。
その状況が長く続くとストレスを感じ、精神的に不安定になったり、体調を崩したり、勉強に集中できなくなったりすることがあるのです。
財産分与の対象額が増える
家庭内別居状態から離婚手続きを進めると、財産分与の対象額が増えてしまう可能性があります。
財産分与とは、離婚にあたって夫婦が協力して作った共有財産を分割する手続きです。
どちらかが相手を養う立場であったとしても、原則として2分の1、つまり半々に分けるルールが適用されます。
財産分与の対象となるのは、「夫婦関係が破綻する前までに築いた財産」です。
別居している場合は、基本的に別居時までの財産が対象となりますが、家庭内別居は夫婦関係の破綻が認められにくいため、実際の夫婦関係がどうであれ、完全別居への移行時あるいは離婚時までの財産が対象とされる傾向にあります。
家庭内別居が始まった時期以降の財産も共有財産とみなされれば、その分財産分与する額も増えてしまいます。
家庭内別居による衝突を防ぐための対処法
家庭内別居から離婚を検討するにしても、夫婦関係の再構築を目指すにしても、いきなり状況を変えようとすると衝突するばかりで話が進まない可能性があります。
家庭内別居状態でも、円滑に話し合いを進めるための対処法を知っておきましょう。
家庭内別居に関する合意書を作る
家庭内別居に上手く対処するためには、あらかじめ夫婦の関係性についてのルールを定め、合意書を作成しておくのがおすすめです。
共有部の使用や家事の分担、家庭内別居中の生活費などについて、細かく決めておきましょう。
必要以上に関係が悪化しないようにするためには、会話はしなくても良いが挨拶はする、子どもの行事には夫婦で参加するなどのルールを決めておくのも有用です。
離婚を前提とした家庭内別居の場合は、離婚する時期や子どもの親権、養育費、年金の分割など、離婚の条件やルールも定めて書面に残しておきましょう。
別居をして冷却期間を作る
家庭内別居だと、顔を合わせないようにしていても相手が同じ空間にいるため、ちょっとしたことでイライラしてしまうことがあります。
思い切って完全に別居し、冷却期間を設けるのもおすすめです。
相手と離れて冷静になれば、自分の悪い部分と向き合いやすくなるため夫婦関係の再構築につながるかもしれません。
反対に別居をきっかけに離婚を決意し、きちんと話し合いの機会をもつきっかけになることもあるでしょう。
ただし、相手に何も告げずいきなり家を出ると、「悪意の遺棄(正当な理由なく夫婦の同居・協力・扶助の義務を放棄すること)」に当たるとして離婚の際に不利になるリスクがあるため、注意が必要です。
離婚カウンセラーなど第三者を交えて話し合う
家庭内別居が長引き、夫婦だけでは解決できない場合は、第三者を交えて話し合うと良いでしょう。
それぞれの両親や友人などの近しい人だと自分の身内に肩入れしてしまい、ますます話がややこしくなる可能性があります。
できれば離婚カウンセラーなど、夫婦のどちらとも深い関係がなく客観的な視点で判断できる人に依頼するようにしましょう。
弁護士に相談し協議離婚を目指す
家庭内別居が長引き再構築が難しいと感じている場合は、弁護士に相談して協議離婚することも検討してみましょう。
法律のプロである弁護士に相談すれば、スムーズに離婚をするためのアドバイスがもらえます。
弁護士から離婚請求の通知を内容証明郵便で送ってもらうことで、会話のきっかけすらない相手を話し合いの場に出せる点もメリットです。
家庭内別居から離婚するためにすべきこと
家庭内別居から離婚に進めるためには、弁護士に相談しながら事前準備を進めておくことが大切です。
具体的にどのようなことを準備すべきなのかを解説します。
離婚原因を証明する証拠を集める
家庭内別居から離婚に進むには、離婚するに値する状況であると証明する必要があります。
下記のような、「夫婦関係が破綻している」と客観的に判断できる証拠をできる限り集めておきましょう。
- 相手とのやり取りの形跡がない通話記録やメッセージツールのログ
- 通帳やクレジットカードの履歴など、生活費が別々であるとわかる書類
- 1人分しか用意されていない食事や、1人分だけ放置された洗濯物の写真 など
モラハラやDV、不倫などの問題がある場合は、それらの証拠も集めておきましょう。
どのようなものが証拠になるのか、弁護士に相談してみるのがおすすめです。
離婚条件を決めておく
離婚の話し合いが円滑に進むように、離婚条件も考えておきましょう。
子どもの親権や面会の日時、養育費や慰謝料の金額、財産分与、年金分割などについて、弁護士に相談しながら細かく検討します。
離婚条件においては、「養育費は出さない」「別の人との再婚を禁止する」など、相手や子どもの権利を侵害する条件はつけられないので注意しましょう。
離婚後の生活について考えておく
離婚後の生活をシミュレーションしておくことも大切です。
たとえば専業主婦・主夫だった場合、離婚後の収入を得るために早めに仕事探しを始めておくとよいでしょう。
お子様がいる場合、離婚後、母子手当・父子手当がいくら貰えるか、居住区の役場に事前に聞いておくことも重要です。
ほかにも住居はどうするか、子どもの保育園・幼稚園や学校はどうするかなど考えることは山積みです。
計画的に離婚をするために、早いうちから今後のことを考え行動を開始しましょう。
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まとめ
家庭内別居には経済的な負担を軽減できる、世間体を気にしなくて良いなどのメリットがある反面、日々ストレスを感じるなどのデメリットもあります。
また、子どもへの影響を考慮して家庭内別居を選んだはずが、かえって子どもに悪影響を及ぼすおそれもあるので、できるだけ早く解決したいところです。
とはいえ、会話もままならない家庭内別居は、夫婦だけで解決することは難しい傾向にあります。
第三者や弁護士に相談するなどの方法も検討してみましょう。