養育費を払わないとどうなる?リスクや支払わなくていい場合、免除・減額の方法を解説

離婚・男女問題

この記事の監修

東京都 / 中央区
麻布龍土町法律事務所

離婚時に養育費を取り決めたものの、職を失ってしまった、病気にかかってしまったなどの理由で支払えない状況になってしまうこともあります。
しかし、支払えないからといってそのまま養育費を踏み倒してしまうことは後々のリスクが高いです。
場合によっては、強制執行によって財産を差し押さえられてしまう場合もありますので、相手方への対応は慎重に行いましょう。

そこでこの記事では、養育費を支払わないことによるリスクから、そもそも支払いが不要なケース、減額の合意を取るためのポイント等について解説します。
養育費を支払えない、減額したいと思っている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

養育費に支払い義務はある?


離婚後でも親子関係がある以上、親は子に対する扶養義務がありますので、養育費の支払い義務は発生します。
養育費の支払い義務は非常に重要視されており、経済的に苦しい状況であっても、養育費の支払いは継続する必要があります。
たとえ借金がかさんで自己破産をしても、養育費の支払い義務からは免れません。
離婚時の取り決めの種類によっては、養育費を支払わない場合、直ちに強制執行により財産が差し押さえられる可能性もあります。

養育費はいつまで払う?

養育費は「子どもが社会的・経済的に自立するまでの間、親が負うべき扶養義務」として支払うものです。
一般的には、未成年期間中は社会的・経済的に自立していないと考えられていますが、成人したら直ちに、社会的・経済的に自立していると考えられているわけではありません。
成人後の養育費を支払う期間は子どもの状況に応じて変わります。

また、2022年4月に民法改正により、成人年齢が18歳に引き下げられましたが、18歳時点では子がまだ学生であり、社会的な自立は難しいという場合がほとんどです。
そのため養育費の支払い期間も「未成年の間」ではなく「20歳まで」や「大学卒業まで」といった期間することが一般的です。

養育費を支払わないことによるリスクは?


養育費を支払わないことによって、未払い養育費の一括請求や遅延損害金の請求を受けたり、強制執行によりさまざまな財産が差し押さえられてしまう可能性などがあります。
養育費の支払いをしないことで、起こるリスクについて把握しておきましょう。

一括請求される

通常、養育費は「毎月いくら」という決め方をするケースがほとんどで、一括払いを定めることはあまり多くありません。

毎月の養育費について不払いを起こした場合については、少なくとも未払分については一括請求されることになります。

遅延損害金が発生する

養育費の支払いを滞納した場合は、規定の養育費に加えて、遅延損害金を請求されます。
「遅延損害金」は支払い期限を守らなかった場合に発生する損害賠償金であり、遅延による損失や被害の補償として支払われます。
遅延損害金の法定利率は、2020年3月31日までは年5%でしたが、現在は年3%に引き下げられました。
合意によって遅延損害金の利率を別に定めている場合は、約定の利率での負担が求められることもあります。
遅延損害金は、毎月の支払い期限を過ぎるたびに発生します。

財産を差し押さえられる

相手方が強制執行の申し立てをした場合、財産を強制的に差し押さえられてしまいます。
具体的には、下記の財産が差し押さえられる可能性があります。

  • 給与
  • 預貯金
  • 生命保険
  • 土地
  • 建物
  • 現金(66万円以上に限る)
  • 自動車
  • 宝石類

強制執行の手続きは、申立て書類が整っていれば比較的速やかに執行されます。
養育費の支払いを調停や公正証書によって定めている場合は、不払いが起きると直ちに強制執行が可能となることが多く、改めて調停等を経ずにいきなり強制執行を受ける可能性もあります。
不動産や土地の場合は、売却等を行う関係で手続きが複雑になっているため時間を要します。

養育費を支払わない合意をとるためのポイント

養育費を支払いたくない、または減額したい場合には、離婚時の取り決めが重要になります。
ここでは、養育費を支払わない合意をとるためのポイントを2つご紹介いたします。
納得のいく解決ができるよう、参考にしてみてください。

ポイント(1)財産分与を多めに渡す

財産分与は、婚姻期間中に夫婦で共有した財産を分割することを指します。
相手に多めの財産を分与し、養育費の支払いに代える取り決めをするという方法も一応存在します。
ただし、その後の事情の変更によって、一切の養育費の支払義務を免れる保証はありません。

ポイント(2)弁護士を代理に立てて交渉する

2 つ目のポイントは弁護士を代理に立てて取り決めを行うことです。
自分で対応しようとすると、重要なポイントを見逃したり、感情的な判断になったりして不利な条件で合意してしまうこともあります。
養育費トラブルに精通した弁護士に相談することで、どのようにして養育費を減額できるのか、適切なアドバイスを受けられます。
のちに、不利となってしまう主張などすることがないよう、早めに弁護士に相談しましょう。

養育費を支払わなくていい場合は?


下記のようなケースでは、養育費を払わなくていいと判断される場合があります。

  • 支払い能力がない
  • 相手の収入が高い
  • 子どもが再婚相手の養子になった
  • 子どもが経済的に自立している

このような状況であれば、養育費の支払い義務はなくなる可能性があります。
詳しい条件や理由について具体的に解説していきます。

支払い能力がないと判断された場合

養育費を支払う側には、子どもの生活レベルを支払う側と同等に維持することを求める「生活保持義務」というものがあります。
しかし、病気や怪我などで働けなくなり支払いができない場合には、自分の生活レベルを落としてでも支払う義務はないとされます。
このような理由で支払い能力がないと判断された場合は、養育費の減額や免除が認められやすくなります。

相手の年収のほうが高い場合

子どもの生活水準や必要経費に応じて養育費が適切に設定されるよう、相手の収入のほうが高い場合は、支払う側の養育費の負担が軽減されるか、免除されることもあります。
相手の収入が高い場合、その家庭における子どもへの影響が少ないとみなされるため、支払い側の負担が軽減されます。

子どもが再婚相手と養子縁組した場合

相手が再婚し、再婚相手との間で養子縁組を行うと、再婚相手が扶養義務者となります。
この場合、再婚相手が子どもの扶養を優先的に担う義務が生じるため、原則的に、実親の養育費支払義務はなくなります。
ただし、実親の扶養義務が完全になくなるわけではないため、
再婚相手が子どもを満足に扶養できない場合は、実親が不足する金額を支払う必要がある場合も存在します。

子どもが経済的に自立した場合

就職等により、子どもが社会的・経済的に自立した場合には養育の必要がなくなります。
養育費の支払いをやめたい場合には、父母間での話し合いや調停などで合意がとれた場合、支払い義務をなくすことが可能です。
これにより、子どもの利益や現状を十分に考えた上で支払いの停止が決定できます。
経済的に自立したからと言って、独断で支払いを停止するのではなく、適切な手続きを踏むようにしましょう。

養育費を免除・減額するには?


養育費の取り決めを話し合ったあとでも、何かしらの事情により支払いを免除・減額したいという希望が生じることもあるはずです。
一度決めた養育費を変更するには、何をすればいいのでしょうか。
ここからは、養育費を免除または減額するための方法をご紹介します。

まずは相手と話し合う

養育費の金額は法律上で具体的な支払い金額が定められているわけではなく、双方の合意あるいは裁判所の判決等によって決定されます。
そのため、養育費を一度決めた後で免除・減額をしたい場合は、当該合意や判決等が定められたときに基礎とされた事情に事後的な変更があることが必要です。
事情変更が生じた場合には、まずは話し合いでは相手からの合意が得られるよう、減額・免除を希望する事情や理由を説明するということも選択肢にはなりますが、後述する、直ちに調停を申し立てるという方法が有力な選択肢となります。

相手と合意に至った場合は、合意した内容は書面に残しておくことで、将来的な紛争や誤解を防ぐことができます。

養育費減額調停を申し立てる

養育費減額調停とは家庭裁判所で、裁判所の調停委員が間に入って話し合いを行います。
申し立てる際には、事情変更を示す資料を準備して、養育費を減額すべき理由を明確にし、収入資料などの証拠を用意して主張を行うことが大事です。
調停委員は中立的な立場から、納得できる解決を見つけるための助言を行います。
調停で合意に至らなかった場合は、審判手続に移行するため、事情変更について立証ができれば裁判官の判断によって、養育費の減額が認められます。
基本的に、養育費減額調停を申し立てた月からの減額という判断になることが多く、事情変更が生じたと考えられるときは、早期に調停申立てをすることが重要です。

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まとめ


約束した養育費を支払わずに放置すると、財産が差し押さえられてしまう可能性もあります。
既に、何らかの理由で支払いが難しい状況にある場合は、減額や免除ができる可能性もあります。
養育費のお悩みはひとりで抱え込まず、弁護士に相談してみましょう。
実際に、養育費の金額を免除・減額したい場合には、当事者間での話し合うこともできますし、
早期に「養育費減額調停」を申し立てることが重要になります。
また、このような法的手続きを利用する際には、弁護士のサポートを受けることも解決策のひとつとしてご検討ください。

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