債務整理の種類|各手続きの特徴や利用条件、メリット・デメリットについて解説

借金・債務整理

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消費者金融やカードローンにより借金がふくらんでしまい、返済ができずお困りではないでしょうか。
返済が難しいからといって何もせず放置してしまうと、金利によってさらに借金額が増えてしまったり、貸金業者から催促がきて家族や勤務先に知られたりしてしまう可能性もあります。

そこでこの記事では借金返済に困っている方のために、自己破産・任意整理・個人再生といった「債務整理」のメリット・デメリットについて紹介します。
違法な手段を使わず債務を解消していくためにも、借金返済に困っている方はぜひ参考にしてみてください。

債務整理とは


債務整理とは借金の元本を減らしたり利息をカットしたりすることで、無理なく借金を返済するための手続きのことです。
「債務整理」とはあくまでも各種手続きの総称であり、具体的には次の5つが挙げられます。

  • 自己破産
  • 任意整理
  • 個人再生
  • 特定調停
  • 過払い金請求

それぞれの方の債務状況や希望に応じて、債務整理の方法を選ぶ必要があります。

債務整理の種類


ここからは先述した債務整理の手続きについて、整理対象や手続き方法についてより詳細に解説します。

債務整理の種類 免除される借金 裁判所の関与
自己破産 ほぼ全額 あり
任意整理
  • 将来利息
  • 遅延損害金
なし
個人再生
  • 将来利息
  • 遅延損害金
  • 元本の8割程度
あり
特定調停
  • 将来利息
  • 遅延損害金
あり
過払い金請求 払いすぎた利息 なし

自己破産

自己破産とは端的にいえば「借金をゼロにする」ための手続きです。
裁判所に債務免責を申し立て、利息や遅延損害金はもちろん、元本部分の返済まで免除してもらうことになります。
自己破産が認められるための主な条件は次の3点です。

  • 借金した理由が免責不許可事由ではない
  • 借金が返済できず、返済目処も立たない
  • 借金が非免責債権ではない

また「借金が返済できず、返済目処も立たない」状態であることも自己破産の条件となっています。
そのため自己破産が認められるためには価値の大きい不動産など財産(マイホームなど)は原則として手放し、返済資金に充てなければなりません。
不動産以外にも一部の自由財産(総額99万円)を除き財産処分する必要があります。

さらに自己破産手続き中は職業制限を受けることも特徴です。
弁護士・司法書士など法的な職業、宅建士・不動産鑑定士など不動産を扱う職業、証券会社外務員・生命保険募集人・警備員など他人の財産に関わる可能性がある職業は制限されるため注意してください。

免責不許可事由とは

「免責不許可事由」とは、返済義務の免除が認められない理由のことです。
破産法という法律で定められているもので、たとえば浪費やギャンブルを目的とした借金や、破産することを前提とした借金による自己破産は認められません。

また、債務者の次のような行動も、免責不許可事由に該当します。

  • 特定の債権者に優先して借金返済した
  • 財産を隠すなど、裁判所に嘘をついた
  • 前回の自己破産から7年以内に再び自己破産を希望した

自己破産の手続き期間・費用

自己破産の手続きに必要な期間・費用の目安は以下の通りです。
費用は、すぐに支払うことができない人が多いでしょうから、弁護士に依頼をして債権者への支払いをストップした後で、無理のないように分割払いに応じてくれる法律事務所がほとんどです。

期間 3〜12ヶ月程度
費用
  • 裁判所費用:10〜50万円程度
  • 専門家費用(弁護士費用):30〜50万円程度
  • 合計:40〜100万円程度

任意整理

任意整理は債権者(消費者金融やクレジットカード会社など)と直接交渉し、無理なく返済できるよう新たな返済方法を決める手続きです。
自己破産のように借金が免除されるわけではなく、借金返済スケジュールを立て直すための手続きともいえるでしょう。

任意整理ならではの特徴としては、整理対象とする借金を選べることが挙げられます。
たとえば消費者金融からの借金を任意整理するとしても、住宅ローンや自動車ローン、保証人がついた借金の債権者は対象から外すことが可能です。
そのため任意整理は自己破産と異なり、マイホームなどの財産や保証人に対する影響を最小限に抑えられます。
さらに任意整理手続きは裁判所を介さないため、家族や知人、勤務先に知られる心配も少ないです。

利息の減額・免除によって返済を目指す

任意整理が認められると「将来利息」については減額・免除され、返済を滞納していた場合に発生する「遅延損害金」についても減額・免除されることが特徴です。

また、元本部分については36〜60回での分割払いで返済期間が再設定されます。
つまり任意整理では将来利息をカットしつつ、元本については3〜5年程度で返済できるよう計画していくということです。

毎月の返済額は「元本+利息」から構成されています。
金利が高いと利息部分の割合が大きくなり、なかなか元本が減らず、いつまで経っても借金が減らないという事態になってしまうのです。
任意整理によって将来利息が減額・免除されれば、毎月の返済額は「元本」に限られます。
つまり、これまでは利息返済に充てていた金額を元本の返済に充てられることがポイントです。
また、仮に任意整理する債権者との間に、利息制限法の上限を超える金利での取引(通称:過払い金」が発生していれば、元本を減額することもできます。

任意整理の手続き期間・費用

任意整理の手続きに必要な期間・費用の目安は以下の通りです。

期間 3〜6ヶ月程度
費用 債権者1社あたり3〜7万円程度
+ 減額報酬(減額された金額の10%程度)

個人再生

個人再生は民事再生法221条以下に規定された民事再生手続の一部で、将来利息・遅延損害金を減免し、さらに元本も大きく減免される制度です。
自己破産と同じように裁判所に申し立てをしますが完全に借金がなくなるわけではなく、元本を20%程度に減額し、原則として3年間(最長で5年間)で返済していきます。
個人再生が認められる主な条件は次のとおりです。

  • 借金総額100万円以上(最低弁済額が100万円であるため)
  • 借金総額5,000万円以下(利息制限法の引き直し計算後)
  • 継続的・安定的な収入が見込め、再生計画に則り弁済(返済)できること

また、会社員や公務員が利用できる「給与所得者等再生手続」を認めてもらうためには、次の条件を満たさなければなりません。

  • 継続的な収入を得ている
  • 収入が給与であり、安定している(変動が少ない)
  • 過去7年以内に、自己破産・給与所得者等再生を行っていない

このように個人再生が認められるためには返済できる見込みがなければなりませんが、一定の要件を満たせばマイホームを手放さずに済むため、自己破産の前に検討すべき制度ともいえるでしょう。

住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは

住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは、個人再生の対象から住宅ローンを外してもらう措置です。

先述したとおり、自己破産では原則一定以上の財産は回収されてしまいます。
そのためマイホームを手元に残すことはできません。

一方で個人再生の住宅ローン特則を利用すれば、住宅ローンの返済を続けることで住宅処分を避けられ、なおかつ住宅ローン以外の債務は個人再生の対象として減額できます。

なお、住宅ローン特則を利用するための主な条件は次のとおりです。

  • 保証会社による代位弁済後6ヶ月を経過していない
  • 当該不動産(マイホーム)に住宅ローン以外の抵当権がない
  • 当該不動産の所有者が本人であり、かつ本人の居住用である
  • 当該不動産の床面積の半分以上が居住用

個人再生の手続き期間・費用

任意整理の手続きに必要な期間・費用の目安は以下の通りです。

期間 6〜12ヶ月程度
費用 裁判所費用:17〜30万円程度
専門家費用:20〜50万円程度
合計:37〜80万円程度

特定調停

特定調停とは裁判所の仲介によって債権者と話し合い、将来利息・遅延損害金の免除を目指す制度です。
裁判所への手続きが必要ですが、弁護士などに依頼することなく債務者自身で手続きできます。
特定調停の費用も1,000円程度と安価であるため、弁護士費用を支払う余裕がないという方にとって選択肢となるでしょう。

ただし債権者が協力的でないケースも多く、裁判所ごとの調停基準にもばらつきがあり、減免が成功しない可能性もあります。

過払い金請求

過払い金返還請求とは、利息制限法の上限を超えた貸付、いわゆるグレーゾーン金利での借金に対して不当に払い続けた利息の返還を求めることです。
厳密にいえば債務整理ではありませんが、借金(債務)を整理するための方法になります。

2010年(平成22年)6月に貸金業法が改正され、グレーゾーン金利は認められなくなっているため、過払い金請求ができるのは2010年6月17日より前に借りた借金に限られます。

また、過払い金請求には時効があることにも注意しなければなりません。
今も借金を返済中、もしくは完済してから10年以内であれば請求できる可能性があります。

2010年6月以前に消費者金融やクレジットカード会社から借金したことがあり、グレーゾーン金利(年利20.0%以上など)での返済が疑われる方は、過払い金請求ができるかどうか一度調べてみてください。

債務整理のメリット


ここからは債務整理のメリットについて見ていきましょう。
各手続きに共通したメリットはもちろん、それぞれの手続きごとのメリットについても紹介します。

借金の返済額が減るまたは免除される

借金額が減ったり免除されたりすることは、債務整理最大のメリットです。
減免額は手続きごと異なりますが、それぞれの方の返済能力に応じて負担が軽減されることは間違いありません。
今のままでは利息が高く、毎月の返済をしても完済が難しいと感じている方は、いずれかの債務整理手続きを検討してみてもいいでしょう。

債権者からの督促・取り立てを止められる

債務整理手続きを依頼された弁護士は「受任通知」という書類を債権者に送ることになっています。
この通知を受け取った債権者は督促や取り立てを止めなければならないとされています。

弁護士が介在しない場合でも、債務整理によって返済の目途がつけば債権者からの督促・取り立てはなくなります。

自己破産のメリット

自己破産は税金など一部の債務を除き、債務そのものが免責されます。
免責によって借金がゼロになることは、自己破産ならではのメリットだといえるでしょう。

主婦など無職の方など、どのような方でも条件を満たせば自己破産手続きは可能です。
債権者の同意も不要であるため、借金返済が本当に困難な方は自己破産も検討してみてください。

任意整理のメリット

任意整理の場合、自己破産のように借金の理由を問われることはありません。
この点は大きなメリットだといえるでしょう。
借金の返済そのものは続けなければなりませんが、過払い金がある場合はその分だけ元本を減らせますし、元本のみの返済(将来利息の免除)が認められる可能性もあります。

また、やむを得ない事情があれば特定の借入先のみと交渉できます。
保証人(連帯保証人)がいる債務を整理対象外とすれば、迷惑をかけることもありません。

裁判所を通さず交渉するため負担が軽く、家族や勤務先にバレにくいこともメリットです。
マイホームや自動車などの財産を処分しなくてもいいため、日常生活に大きな影響を与えません。

お金を貸している債権者の立場で考えてみても、任意整理にはメリットがあります。
もし個人再生や自己破産されてしまうと、借金の元本すら一部・または全額を免除しなければなりません。
しかし任意整理という形で話し合えば、将来利息は減額するものの元本は返済されます。
任意整理に合意することは、債務者と債権者の双方に意味のある交渉だといえるでしょう。

個人再生のメリット

個人再生のメリットとしては、借金の理由を問わず元本を20%程度まで大幅に減額できることが挙げられます。
マイホームを手放さずに済み、手続き中であっても自己破産のように資格・職業が制限されないこともメリットです。

任意整理では債権者と合意に至れないものの、自己破産は避けたいという場合には、個人再生を検討してみてください。

債務整理のデメリット


借金が減免される債務整理はメリットも多いですが、少なからずデメリットが存在します。
ここからは手続きごとに、デメリットについて解説します。

自己破産のデメリット

自己破産する場合、マイホームや自動車など一定以上の価値がある財産は手放さなければなりません。
手続きが難しく時間も費用もかかり、手続き中は一部の資格・職業が制限されることもデメリットだといえるでしょう。
また、「免責不許可事由」に該当する場合、免責が認められない場合もあります。

さらに自己破産した事実は信用情報に掲載され、5年程度は新規の借り入れやクレジットカード作成ができなくなります。
また、自己破産したことは官報に掲載されるため、知人に知られる可能性もあります。

なお、自己破産によって自分の借金返済義務がなくなったからといって、保証人・連帯保証人の義務まで消えるわけではありません。
自分が返済できないとなれば、保証人・連帯保証人が一括返済を求められることになります。

任意整理のデメリット

個人再生や自己破産と比べると、任意整理では返済額を大きく減らすことはできません。
また、任意整理に応じてくれない貸金業者や金融機関も存在します。

また、原則として任意整理から3年〜5年程度で完済できる安定した収入がなければ任意整理は認められません。
自己破産や個人再生と比べると、認められるハードルが高いこともデメリットだといえるでしょう。

また、任意整理した事実も信用情報に掲載されます。

個人再生のデメリット

個人再生は減額後の借金を3年間で返済しなければなりません。
そして個人再生する場合、自己破産と同様に、保証人・連帯保証人が責任を負うことになります。

さらに個人再生は債権者集会の決議が必要など手続きが難しく、任意整理と比べると時間も費用もかかります。
個人再生が認められるためには安定した収入も必要となるため、誰もが認められるわけではありません。

また、個人再生した事実も官報・信用情報に掲載されます。
自己破産したときと同じく、5年程度は新規の借り入れやクレジットカード作成ができないこともデメリットです。

債務整理の共通の影響はブラックリストに載ること


上記で言及したとおり、各債務整理手続きで共通するデメリットは信用情報に事故情報が掲載されること、つまりはブラックリストに載ってしまうことです。
ここからはブラックリストに載ることで被る影響について紹介します。

クレジットカードが利用できなくなる

債務整理から借金が0になってから5年程度は事故情報が登録されます。
この間はクレジットカードを作れなくなることは想定しておきましょう。
すでにクレジットカードを保有していたとしても、債務整理手続きによって強制解約となることも留意点です。

クレジットカードを利用できない間の代替手段としては、次のような例が挙げられます。

  • デビットカード
  • プリペイドカード
  • クレジットカードの家族カード
  • デポジット型のクレジットカード
  • スマホ決済サービス(LINE PayやPayPayなど)※前払いのみ

ローンが組めなくなる

当たり前のことかもしれませんが、ブラックリストに掲載されることで5年は新規のローン(借金)も契約できません。
自動車ローンなどの契約もできないと思っていたほうがいいでしょう。

スマホの分割払いができない

スマホの分割払いも一種のローンであるため、ブラックリストに掲載されていると認められない可能性が高いです。

賃貸住宅の契約に影響が出ることもある

賃貸住宅の契約時、家賃が払えなくなったときに備えて保証会社との契約が求められることがあります。
そして「信販系」と呼ばれる家賃保証会社だと信用情報機関に加盟していることも少なくありません。
ブラックリスト情報を閲覧されることで保証契約を断られてしまい、結果として賃貸契約や更新を断られてしまう可能性があります。

勘違いされやすい債務整理の特徴


最後に、勘違いされやすい債務整理の特徴について、その実態を解説します。

家族や会社等にバレることは基本ない

自己破産や個人再生の事実は官報に掲載されるため、誰でも閲覧できることは事実です。
ただし債務整理したことが家族・会社・知人などに連絡されることは基本的にはありません。
わざわざ官報を見ている人もほとんどいないため、債務整理したことがバレる可能性は低いでしょう。

ただし自己破産はマイホームの売却などが伴うため、周囲の方に知られてしまう可能性もあります。
また、郵便物などを見られることで、同居の家族に債務整理の事実が発覚するケースもあるでしょう。

債務整理することを隠しておきたい場合は、弁護士に「家族には秘密にしたい」と伝えておくことをおすすめします。
郵便物などの取り扱いについて配慮してもらえば、周囲や家族に知られることなく手続きを進められます。

就職や結婚への法的な影響はない

債務整理をしても、将来的な就職や結婚に悪影響が生じることはありません。

そもそも会社の面接で過去の債務整理の事実を質問される可能性は低いでしょう。
もし質問されたとしても、それはプライベートなことであるため、答える義務はないのです。

また、債務整理したからといって法的に結婚できなくなることはありません。
ただし結婚後に債務整理した事実を相手が知ると、なぜ隠していたのか追及される可能性はあります。
信頼関係を崩さないためにも、相手に事実を伝えておいてもいいでしょう。

戸籍や住民票に記録されることはない

債務整理した事実は信用情報には記載されますが、戸籍や住民票に記録されることはありません。
そもそも戸籍は出生・結婚・死亡・養子縁組など「身分関係」の情報を載せるもので、事故情報を載せるものではないためです。

年金や生活保護は受給される

たとえ自己破産したとしても、年金や生活保護は受給可能です。
生活保護については最低限の生活を支えるための制度であるため、自己破産したとしても条件さえ満たせば申請できます。
年金についても必要な保険料が支払われてさえいれば、自己破産したとしても受け取れます。(ただし当然、保険料が支払われていなければ受給できません)

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まとめ


借金の返済に困ってしまったときは、債務整理によって利息はもちろん元本も免除してもらえるかもしれません。
それぞれの債務整理手続きによって減免範囲や手続き後の影響が異なるため、どの制度を利用するかについては十分に検討することをおすすめします。

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