借金の返済に追われ、日々の生活もままならないという方もいるのではないでしょうか。
生活費に回すお金が十分にないと、心身の健康も害してしまうかもしれません。
生活に苦しいときは「生活保護」を受給する選択肢もありますが、生活保護を受給すると借金はどうなるのでしょうか。
この記事では生活保護を受給したときの借金の扱いや、生活保護とあわせて自己破産も検討すべき理由を解説します。
▼この記事でわかること
- 借金と生活保護の関係
- 生活保護を受給しながら自己破産する条件
▼こんな方におすすめ
- 借金の返済で生活が苦しい方
- 生活保護を貰っている人で自己破産したい方
借金があっても生活保護は受給できる
そもそも生活保護とは生活に困窮する方を必要に応じて行政が保護し、「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条)を保障したうえで、生活困窮者が自立することをサポートすることを目的とした制度です。
次のような取り組みをしても最低限度の生活が維持できない場合には、生活保護の対象となります。
- 資産の活用:まずは預貯金を活用し、不動産があれば売却する
- 能力の活用:働くことが可能なら、労働によって収入を得る
- あらゆるものの活用:年金や各種手当を利用できる場合は、まずそれらを活用
- 扶養義務者の扶養:親族からの援助を受けられる場合は活用
これらに取り組んでもなお生活に困窮する場合は、生活保護を受給できます。
単身者であっても家族がいても受給可能です。
このように生活保護の受給条件に、借金の有無は規定されていません。
借金があったとしても生活保護の対象ですし、さらに自己破産したとしても生活保護を受給できます。
借金の返済義務は免れない
生活保護を受給したとしても、借金の返済義務は免れません。
生活保護はあくまでも「最低限度の生活」をサポートするための制度であるため、借金の免除は別の手続きが必要になります。
生活保護費で借金返済はできない
生活保護費はあくまでも「生活必需品」「住宅費」「医療費」「教育費」など、生活を維持するための費用です。
生活保護費を借金返済に使ってはいけません。
新たに借金をすることは?
生活保護費から借金の返済ができない以上、生活保護受給者は返済能力がないということになります。
当然、貸金業者も生活保護であることを知っていれば貸付を行いません。
生活保護であることを隠して借金をした場合には、詐欺行為などに該当する場合もあります。
生活保護費は差し押さえられない
借金の返済が滞っていると、収入や財産が差し押さえられることもあります。
ただし生活保護費は、差し押さえの対象外とされています。
生活保護受給時の債務整理は自己破産が得策
さて、借金があっても生活保護は受給できますが、借金が免除されるわけではありません。
その一方で、生活保護費で借金を返済することは禁止されています。
そのため生活保護を受けながら借金問題を解決するためには、救済制度の一つである「自己破産」を選ぶことが得策です。
自己破産以外にも、個人再生・任意整理・特定調停といった救済制度も存在します。
それぞれの特徴は次のとおりです。
債務整理の種類 | 免除される借金 |
---|---|
自己破産 | ほぼ全額 |
個人再生 |
|
任意整理 |
|
特定調停 |
|
自己破産以外の債務整理方法は、返済を継続する前提であるため、借金を返済してはいけない生活保護では選択することはできません。
生活保護受給時であれば自己破産によるデメリットが少ない
自己破産するためには、マイホームや自動車を手放す必要があります。
また、クレジットカードを作ることも難しく、新たな借入にも制限がかかります。
しかし生活保護を受けているのであればすでに不動産を手放しており、クレジットカード作成なども制限されているため、自己破産によるデメリットはほとんどありません。
法テラス利用で弁護士費用の負担を軽減できる
自己破産の手続きは弁護士へ依頼するケースが多いですが、弁護士費用を捻出することに不安を感じている方もいるでしょう。
しかし生活保護受給者の場合、法テラスが弁護士費用を無利息で立て替えてくれる「民事法律扶助制度」という仕組みを利用できます。
生活保護受給時に自己破産するための条件
生活保護受給時に自己破産するためには、いくつかの条件を満たしていなければなりません。
- 返済が不能な状態である
- 借金の理由が「免責不許可事由」に当たらない
- 借金が「非免責債権」に当たらない
それぞれの条件について詳しく解説します。
返済の支払いが不能な状態である
まず前提として、自己破産するためには借金返済が不能と認められなければなりません。
この判断は裁判所によってなされますが、生活保護を受給しているのであれば認められる可能性は高いでしょう。
借金の理由が「免責不許可事由」に当たらない
特定の行為によって、自己破産が認められないことがあります。
この行為を「免責不許可事由」といい、代表例は次のとおりです。
- ギャンブル・浪費などを理由に借金した
- 自己破産を前提に借金した
- 特定の債権者にのみ優先して返済した
- 裁判所に嘘をついた(意図的に財産を隠したことを含む)
- 前回の自己破産から7年以内に再び自己破産を申し立てた
ただし、これらに該当しても、裁判所の判断によっては自己破産が認められることもあります。
借金が「非免責債権」に当たらない
借金(債務)といっても、すべてが自己破産によって免除されるわけではありません。
次のような「非免責債権」は自己破産しても返済する必要があることを覚えておきましょう。
- 税金・国民健康保険料・年金保険料
- 水道料金などの公共料金
- 養育費
- 悪意の不法行為など一部の損害賠償金
なお、住民税・固定資産税・国民年金保険料などは自己破産では免除されないものの、生活保護受給者に対しては自治体が支払猶予してくれるケースも多いです。
生活保護申請時に、各自治体の担当者に確認してみてください。
自己破産を弁護士に依頼するメリット
さて、自己破産は自分で申請することも可能ですが、手続きが複雑なため弁護士へ依頼するケースが多いです。
弁護士へ依頼することには次のようなメリットがあります。
- 債権者からの督促や取り立てをすぐに止められる
- 書類の準備や裁判手続き等を任せられる
- 生活再建に向けたアドバイスをもらえる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
債権者からの督促や取り立てをすぐに止められる
自己破産手続きを依頼された弁護士は、債権者に「受任通知」という書類を送ります。
この通知を受け取った債権者は督促や取り立てを止めなければならないとされています。
債権者から直接連絡が来ることもなくなり、以降の交渉はすべて弁護士に任せられることがポイントです。
取り立ての精神的負担から逃れたい方にとっては、大きなメリットだといえるでしょう。
書類の準備や裁判手続き等を任せられる
自己破産を申請するためには、複雑な書類の準備はもちろん、裁判所との調整も必要です。
裁判所に提出する書類だけでも、次のように多数求められます。
- 自己破産申立書
- 陳述書
- 住民票
- 戸籍謄本
- 収入のわかるもの(給与明細など)
- 通帳のコピー
- 源泉徴収票
法律や裁判所とのやり取りに慣れていない方がこれだけの書類を用意し、さらに手続きすべてを自分で対応することは相当な負担になるでしょう。
弁護士に依頼すれば債権者との交渉だけではなく、裁判所への手続きもすべて代行してもらえます。
生活再建に向けたアドバイスをもらえる
債務整理に慣れている弁護士であれば、生活再建に向けたアドバイスをもらうことも期待できるでしょう。
弁護士の依頼の当てがない場合
都道府県の弁護士会、市町村の法律相談、法テラスなどで債務整理を依頼できる弁護士を紹介してもらえますので、相談してみましょう。
まとめ
借金を抱えていたとしても、生活保護を受けることは可能です。
ただし生活保護費から借金返済することは認められていないため、債務整理するためにも自己破産を検討してみてください。