退職勧奨は違法?辞めてしまった後にできることとは

退職勧奨 辞めた後 労働・雇用

この記事の監修

東京都 / 豊島区
柳澤総合法律事務所
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コロナ禍の影響で厳しい雇用情勢が続く中、業績不振の会社などによる退職勧奨も増えているようです。
会社から「辞めてほしい」と突然の退職勧奨を受け、そのまま退職届けを出して辞めてしまったが、後悔している―。そんな人も少なくないでしょう。
退職勧奨を受けて退職した後、辞めた会社に対して何を主張できるかなど、以下に詳しく解説します。

▼この記事でわかること

  • 退職勧奨と解雇の違い、退職勧奨を受けてするべきことが分かります
  • どんな場合に退職勧奨が違法になるのか分かります。
  • 退職勧奨を受けて辞めてしまった場合、取り消すことができるかどうかお答えします。
  • 退職勧奨を受けて辞めた後、どんなことを会社に対して主張できるか分かります。

▼こんな方におすすめ

  • 退職勧奨を受けて応じるべきか悩んでいる人
  • 退職勧奨を受けて退職してしまったけれど、後悔していて会社に戻りたいと考えている人
  • 退職勧奨を受けて退職した後、辞めた会社に対して不満を感じている人

退職勧奨とは

退職勧奨の定義

退職勧奨とは、使用者が労働者に対し「辞めてほしい」「辞めてくれないか」などと言って、辞職や労働契約の合意解約の承諾を促し、退職を勧めることです。
あくまでも会社からの「お願い」なので、労働者は退職勧奨を受けたとしても、必ずしも辞める必要はありません。辞めるか辞めないかは、労働者の自由な意思によって決めることができるのです。

その分、注意も必要です。労働者が退職勧奨に応じて退職届を出した場合、一般的には自主的に退職する「自己都合退職」とみなされます。
自分から辞めるのですから、辞めた後に会社側に追加の支払いを求めたり、退職を撤回することは相当ハードルが高いと思ったほうが良いでしょう。

解雇とはどう違うの?

解雇とは、使用者が一方的に雇用契約を解約することを意味します。
例えば労働者が就業規則に違反した場合や、会社の業績悪化で人員削減の必要がある場合など、一定の要件を満たした場合は法律的にも解雇が正当化される場合があります。
いずれにせよ、解雇は会社が労働者を一方的に辞めさせることを指すため、「お願い」である退職勧奨とは大きく異なります。

労働者の意思にかかわらず辞めさせる解雇については、労働者保護の観点から、一定の要件、条件が設けられています。
解雇の手続きに関しても「30日前までに予告する」「予告しないときは30日分以上の平均賃金を支払う」などと定められているほか、労働契約法16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されているとおり、簡単には解雇を有効とはできないようになっています。

一方、退職勧奨は、基本的に労働者に裁量があるので、解雇のような労働法による規制はなく、その分会社側も比較的自由に行うことができます。

退職勧奨は違法?

通常は違法にならない

会社が労働者に退職勧奨することは、基本的に合法です。

有名な大企業などでも、希望退職を募るときに退職勧奨を行うことはよくあります。
また、退職金の積み増しなど条件を掲げた上で、早期退職を求めることも合法です。そうした場合も労働者は必ずしも応じる必要はありません。自身の人生設計や転職の見込みなどに応じて、退職勧奨に応じるか否か選択すればいいのです。

退職勧奨を受けて辞めた。取り消せる?

退職勧奨を受けて辞めた場合、取り消すことはできるのでしょうか。

退職勧奨に基づく退職は、あくまでも自分の自由意思で決めたとみなされます。
そのため、原則として取り消すことはできません。「退職勧奨を受けて退職届を出してしまったら撤回できない」と考えた方がよいでしょう。

また、前にも述べたとおり、退職勧奨を受けて辞めると通常は自己都合退職扱いになります。そのため、後になって「会社に何か請求したい!」と思っても、退職後に会社に対して主張できることは基本的になくなる点は、注意したほうが良さそうです。

違法と判断される可能性はある

通常は合法なことが多い退職勧奨ですが、割合的には少ないものの、退職勧奨が違法と判断されるケースもあります。
違法な退職勧奨を受けていた場合、会社側に損害賠償を請求することができます。

では、どのような退職勧奨が違法になるのでしょうか。
違法となるのは、退職勧奨の仕方が「社会通念上相当と認められる限度を超えて、不当に心理的な圧力を加えたり、その名誉感情を害する言動を用いたりするもので、労働者自らの自由な意思を妨げるものだったといえる」場合とされます。退職勧奨は、あくまでも労働者の自由意思による辞職や合意退職を促すものです。労働者の自由意思を侵害するような方法で行われる退職勧奨は、労働者の人格権を侵害する不法行為となり得ます。

退職勧奨、どんな場合に争える?

違法な退職勧奨で慰謝料請求

違法と判断される退職勧奨について、もう少し詳しく説明します。

一つのパターンとしては「退職勧奨自体が違法だ」と主張できるケースです。
この場合、具体的にポイントとなるのは、労働者が明確に「退職勧奨に応じません」「退職しません」と明確に会社側に伝えているかどうかです。
はっきりと「退職勧奨に応じない」と伝えたにもかかわらず、繰り返し、長時間にわたる面談で退職勧奨が行われたような場合、違法となり得ます。
面談の頻度や時間の長さ、対応した上司の言動といったことを総合的に考慮し、慰謝料請求が認められる可能性があります。

錯誤無効で争う

もうひとつのパターンとしては「勘違いにより、自ら辞めると言ってしまった。つまり、本来は辞める意思はなかった」と主張できるケースです。法律的に言えば「錯誤取消」など、民法の規定に当たるケースです。
正確には「退職勧奨の違法性」を争うのではありませんが、退職勧奨を受けて辞めると意思決定するに至った前提に、「錯誤(誤解、勘違い)があった」として退職の意思の取消が認められる場合があります。
この場合でも元の職場に戻るケースはあまり多くありません。ただし、「退職の意思表示には瑕疵がある」という判決を元に、会社との間で金銭的な解決を図ることができる可能性はあります。

実際、過去には「錯誤」により、退職の意思表示が無効だったと認定された事例もあります。

【昭和電線電纜事件(横浜地裁川崎支部判決平成16年5月28日)】
原告の従業員は、仕事上のミスなどを理由に退職勧奨を受け、退職しなければ会社から解雇されると思って退職に合意し、退職手続申請書を提出しました。
しかし後になって、従業員には解雇事由が存在せず、解雇が成立しない可能性が高かったことを知り、退職合意の無効などを求めました。
判決は、従業員には解雇処分を受ける理由がなかったにもかかわらず、解雇を避けるには、退職勧奨に応じて自己都合退職する以外の方法はないと誤って信じた結果、退職に合意したと認めるのが相当とし、退職合意を無効としました。

退職してしまった後に取り得る手段は?

退職した後、取り得る手段にはどんなものがあるのでしょうか。弁護士に聞きました。

退職勧奨を受けて、どうしても我慢できずに辞めてしましました。
それでも会社に何か言いたいと思っています。何ができるでしょうか。

「退職はしない」と何度も言っていたにもかかわらず、毎回個室に呼び出されて詰められた、辞めさせるために部署移動させられて仕事を与えられない等の行き過ぎた退職勧奨が行われていたと考えられる場合は、損害賠償請求をすることができます。
また辞めた会社で未払いの賃金、残業代などがあれば、退職後でも請求することが可能です。

 

なお、一連の事柄について弁護士に相談・依頼した場合は、退職勧奨の違法性について争うとともに、未払い賃金・残業代の請求も一緒に扱ってもらえるため、心強いかもしれません。

退職してしまった後に、取り得る手段として挙げられるのは、違法な退職勧奨について損害賠償請求をすることですが、退職勧奨とは別に、未払いとなっている賃金や残業代があれば辞めた会社に支払いを求めることができます。時間外・休日の割増賃金、休業手当、災害補償なども同様です。これまで未払賃金の請求権の時効は2年でしたが、2020年4月に延長され、2020年4月1日以降に発生した賃金債権については、消滅時効期間が3年となりました。

労働者個人として会社に対して損害賠償や未払賃金の請求をするのであれば、労働審判を活用することができます。
労働審判は、個別労働紛争の迅速で柔軟な解決を目的とした制度です。全国の地方裁判所で行われますが、通常の裁判とは違い、労働審判官(裁判官)と労働審判官(民間の有識者)2人で構成される労働審判委員会の下、手続が進められます。期日は3回以内と裁判に比べて短いため対応しやすく、当事者の意向や事案の実情を踏まえた解決も期待できます。

弁護士に相談するメリット

労働審判は弁護士を頼まなくても申し立てることはできますが、申立て段階で全てを出し尽くすような主張と立証をしなければなりませんので、現実的にはハードルが高いです。
退職勧奨をめぐって自分一人で会社と争おうとしても、法律的な知識がなければできない主張も多くあります。また会社側はたいてい弁護士を立ててくるため、労働者個人では議論に対応できなくなることも予想されます。
そのため、労働審判を申し立てる際も弁護士を代理人として選任するのが望ましいと思われます。

弁護士を頼むことには別のメリットもあります。
例えば未払賃金や残業代を請求しようとする場合、請求額を明らかにする必要がありますが、残業代などの計算は非常に複雑です。弁護士に相談すれば、請求額を計算してもらった上で、会社との交渉まで含めて依頼することも可能になります。

まとめ

退職勧奨に基づき辞めた場合、その違法性について会社と争えるケースは多くありません。退職勧奨を受けて退職届を出す場合は、よくよく考えてから出すようにしましょう。
一方で、退職勧奨のやり方が違法と判断されるようなものだった場合には、会社に対して損害賠償請求をしたり、退職の意思表示の取消を主張したりできる可能性はあります。
「あの退職勧奨は違法だったのでは?」「辞めさせられるから自分から・・・と思ったけど、実は首になる理由はなかったのでは?」などという場合は、労働審判を起こすことや弁護士に相談することを考えてみてもよいかもしれません。

(参考)退職前に退職勧奨を受けた場合の対応についてはこちらです。

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